日当たりがよい南東向きのマンションの住戸は、1日を気持ちよくスタートさせることができます。南東向きのマンションには、ほかにどのような特徴があるのでしょうか。購入するなら知っておきたいメリットやデメリット、どんな人が向いているかなどを紹介するほか、将来売りやすいかなど資産性についても解説。マンション管理コンサルタントで不動産エージェントの山本直彌さん(さくら事務所、らくだ不動産)にお話を伺いました。
マンションを購入する際、採光を重視する人は多いでしょう。そのため、日当たりの良い南向きの物件は人気です。部屋の窓が南を向いていれば南向きの部屋、リビングの開口部(バルコニー)が南を向いていれば南向きの住戸、南向きのマンション、と呼ばれます。「南東向きのマンション」は、真南よりも東に振れた方向にリビングの開口部ある住戸。東から昇る太陽の光が早朝からリビングを照らし、南からの採光も長時間得られるのが南東向きのマンションの特徴です。南向きや南西向きと同様、南からの光を部屋に多く取り入れられるので人気が高い住戸になります。
なお、南向き、東向きの住戸でも、南と東に窓が設けられた角部屋の場合も、南東向きマンションと同じように、東と南からの採光が期待できます。
南東向きの間取りの住戸には、どのようなメリットがあるでしょうか。
・リビングが明るい時間が長い
自然光の入るリビングは明るい気分になるもの。日照時間の短い冬でも、朝から日差しが入る南東向きのマンションは、北向きのマンションに比べて明るい時間が長くなります。
・朝から陽が入り、明るいダイニングで朝食をとれる
LDK(リビング・ダイニング・キッチン)が南東向きのマンションは、太陽が東から昇る早朝から日差しが入ります。そのため、明るいダイニングで気持ちよく朝食をとることができます。
・朝の光を浴びることで質の良い睡眠につながる
1日は24時間ですが、私たち人間の体内時計は25時間周期で動いているといわれています。毎朝、太陽の光を浴びることでこのズレが調整され、睡眠や目覚めのリズムが整うことで、質の良い睡眠が期待できます。朝の散歩や徒歩通勤でも効果がありますが、南東向きのマンションならリビングのカーテンを開けて朝日を浴びるだけでもOKです。
・洗濯物が乾きやすい(特に午前中)
採光の良い南東向きのマンションは、バルコニーやリビングの洗濯物が乾きやすい点がメリット。特に、午前中の日当たりが良いので、朝、洗濯物を干す習慣がある人には助かります。
・午後は、窓からの景色が明るくてきれい
南東向きのマンションは、午後からは直接の日差しは入りにくくなりますが、西に移動した太陽の光が窓の外の景色を照らすことになるため、窓からの景色が明るくキレイに見えます。眺めの良い住戸の場合、午後からの景色を堪能できる楽しみがあります。
・夏の午後、暑くなりすぎない
南向きや西向きは夏の強い日差しや西日が部屋に入ってくるため夏は暑さを感じますが、南東向きは午後からの採光が弱くなるため暑くなりすぎず、南向きや西向きに比べて過ごしやすいといえます。
・冬の朝、暖かい
冬の朝は低い角度から朝日が入るため、南東向きのマンションには部屋の奥まで日差しが届きます。そのため、朝日の入らない北向きや西向きの部屋に比べると、冷え込む朝でも暖かいのがメリットです。
・冷房や暖房の光熱費を節約しやすい
冬暖かく、夏の午後は暑くなりすぎないため、北向きや西向きのマンションに比べると冷房や暖房を抑えることができ、最近高騰している光熱費を節約しやすいといえます。
南東向きマンションのメリットの多くは採光の良さから生まれるものです。そのため、南東向きでも近い距離に建物があり日光を遮る場合など、日当たりの良さは思ったほど得られないことがあります。マンションの購入を検討するなら、物件だけでなく周辺環境もチェックすることが大切です。
採光が良く、明るく快適な暮らしがかなう南東向きの間取り。しかし、物件によってはその採光がデメリットにつながることもあります。
「タワーマンションなど、物件によっては天井から床までがガラス張りになるダイレクトウィンドウが採用されていることがあります。眺望は良いのですが、夏の昼間は暑すぎて、北向き住戸の方が過ごしやすいほどです。東京都内のタワーマンションが多いエリアを歩くと、ダイレクトウィンドウに銀色の遮熱シートを張っている住戸を見かけます。一般的には南向きの住戸が明るく日当たりが良いため人気ですが、実際に暮らしてみるとデメリットがあったという例もあるのです」(山本さん、以下同)
南東向きのマンションは、夏の暑さのほかに、どのようなデメリットが考えられるでしょうか。
・寝坊したい休日でも明るい
南東向きのリビングに隣接して寝室がある間取りや、すべての部屋が南東向きに並んだ間取りの場合、部屋が明るいのはメリットですが、その一方で、寝坊をしたい休日でも朝日が入ってきて目覚めてしまうのが難点。夜勤明けなのに部屋が明るすぎて眠れない、というケースもあるでしょう。遮光カーテンで光を遮るなどの工夫が必要です。
・夜型のライフスタイルの人は、日当たりの良さがメリットにならない
お昼近くや午後に起きて仕事に出かける、夜型のライフスタイルの場合、午前中に部屋が明るい南東向きの部屋は、日当たりの良さがメリットにはなりません。方角にこだわらない物件選びをするのが良さそうです。
・床や壁、家具などが直射日光で日焼けしやすい
窓からの紫外線はカーテンや家具、床、壁などの日焼けにつながり、よく日の当たる部分だけ変色してしまいます。UVカット効果のあるガラスを採用しているマンションもありますし、自分でUVカットフィルムを貼ることで紫外線による日焼けを防ぐといいでしょう。
・午後は南西向きより部屋の中がやや暗めになる
午後は日差しが入りにくくなる南東向き。暗くなるわけではありませんが、西向きや真南向きの住戸に比べると、室内はやや暗めになります。1日中明るい部屋が好み、という人にとってはデメリットといえます。
南東向きのマンションを選ぶと満足度が高いのはどのようなライフスタイルや家族構成の人でしょうか。
「南東向きのほか、南向き、南西向きの住戸全般にいえることですが、明るくあたたかい南向きは、子育て世帯や親御さんの面倒をみていらっしゃる方など、在宅時間が長い世帯に合っていると思います」
・家にいる時間が長い人
子どもや高齢者、現在仕事をしていない人など、在宅時間が長い人や家族がいる世帯では、南東向きのマンションを選ぶと昼間の採光の良さを楽しめます。
・リモートワークが多い人
在宅での仕事をしている人、リモートワークと出勤しての仕事を併用している人は、仕事をするスペースが明るいと気分が良いものです。また、北向きの落ち着いた部屋を仕事場にしていても、気分転換や食事の時は明るい空間がリフレッシュできます。南東向きや南向き、南西向きの住戸が向いています。
・朝型のライフスタイルの人
早起きの人には、朝日が入る南東向きの部屋が断然おすすめです。一日を晴れやかな気分で始められます。
・洗濯物は自然乾燥させたい人
乾燥機も便利ですが、洗濯物は太陽の光が当たるバルコニーで乾かしたい人、リビングや隣接する部屋で洗濯物を部屋干ししたい人は、日当たりのいい南東や南、南西向きの住戸がぴったりです。
「新築マンションでは、南東向き、南西向きの住戸は、床面積や階数が同じ条件の北向き住戸に比べると、10%ほど価格が高いと一般的にはいわれています。住戸の向きで人気なのは南向き、南東向き、南西向きで価格にもあらわれています。しかし、実際には周辺環境やそれぞれのライフスタイルで評価は変わります」
南東向きだからいい、北西向きだから暮らしにくいとは、一概にはいえないということです。
「不動産の資産価値は『いくらで売れるか』という観点から語られるのが一般的。その、資産価値を構成するのは新築マンションの場合は、相場価格、居住快適性、持続可能性、流通可能性。中古マンションは立地、建物の仕様、管理状況、相場妥当性。さくら事務所の『FACTORS 4』(新築マンション、中古マンション)というサービスでは、この4つを軸にマンションの資産性を評価しています」
採光面(開口部)が南、東、西、北の順で居住快適性は高くなりますから、南東向きは人気があり売却に有利な面はもちろんあります。しかし、フロアが低層なのか高層なのか、バルコニー前に眺望を遮るものはないか、角部屋かどうかなど、さまざまな条件のバランスも将来の売却のしやすさに影響します。
将来、売却の可能性も考えてマンションを購入するなら、下の表のような要素もチェックすることが大切です。
・相場価格
同じような条件のマンションに対して、高い査定額がつきやすいか
・持続可能性
資産性を維持し続けていく管理や修繕はどうか
・居住快適性
暮らす場所として快適に過ごせる建物仕様(スペック)になっているか
・流通可能性
建物の仕様に対して妥当なランニングコストになっているなど、価格にはあらわせない魅力があるか
・立地
駅からの距離などの利便性のほか、災害リスクの有無など
・建物仕様
共用部のスペックのほか、専有部分のリフォーム履歴など
・管理状況
管理組合の活動状況や、修繕積立金が確保されているか、長期修繕計画が定められているかなど
・相場妥当性
妥当な売り出し価格かどうか
参考:さくら事務所ホームページ
人気のある南東向きの住戸ですが、周辺環境や建物の仕様など方角以外の要件によって、暮らしやすさや資産性は違ってきます。さまざまな視点から物件探しをするようにしましょう。
南東向きマンションはリビングの開口部が南東を向いている住戸
南東向きマンションは朝から明るく暖かいのがメリット
窓が大きすぎると夏は室内が暑くなるデメリットがある
家で過ごす時間が長い人や家族がいる世帯に向いている
北向き住戸よりも高めの傾向があるが、将来、有利に売却できるかは方角以外の要素も影響する