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マンション探しのとき、室内だけでなく、部屋や住戸の外の廊下についてもチェックしておくことが大切。建築基準法で決められた廊下幅だけでなく、日常生活のしやすさやバリアフリーの観点からも使いやすい廊下幅について知っておくことが、長く快適に暮らすポイントです。また、共用廊下の使い方についても注意点を解説。一級建築士でマンション管理にも詳しい鈴木哲夫さんにお話を伺いました。
廊下とは、建物内にある細長い通路のこと。マンションの場合、住戸の玄関と部屋、部屋と部屋をつなぐのが専有部分(住戸の区分所有者が単独で所有している部分。住戸の内側部分)にある廊下。玄関の外にあって居住者や訪問者が通行するのが共用部分(専有部分以外の、区分所有者全員が所有する部分)にある廊下です。
さらに、マンションの共用部分の廊下は、外廊下と内廊下の2種類があります。外廊下は廊下の片側が柵や低い壁になっていて、外気に開放しているタイプ。開放廊下とも呼ばれます。内廊下は建物内にある廊下のこと。ホテルの廊下をイメージするとわかりやすいでしょう。
この記事では、マンションの廊下の中でも、「共用廊下」の快適に使える廊下幅や、使い方の注意ポイントを解説していきます。
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マンションの共用廊下は日常的に人が行き来するスペースであるだけでなく、火災など万が一の時には避難経路にもなる場所。そのため、スムーズに人が通れるように建築基準法で廊下幅の基準が定められています。
マンション(共同住宅)では、3階建て以上で住戸の床面積の合計が100m2を超えるフロアの場合に建築基準法での制限がかかります。最低限必要な廊下幅は、廊下の両側に居室がある場合は1.6m以上、廊下の片側にのみ居室がある場合は1.2m以上です。これは、下のイラストのように、壁の内側から内側まで(壁と壁で挟まれている空間の部分)の距離を指します。

現在、建っている分譲マンションや賃貸マンションでは、共用廊下はどれくらいの幅になっているのでしょうか。
「廊下幅は広いに越したことはないのですが、ほとんどのマンションが建築基準法で定められた1.2m、または1.6 mという最低基準より、ほんの少し広い幅になっています」(鈴木さん、以下同)
片側だけに居室がある場合の共用廊下は最低1.2m。親子が手をつないで歩いたり、人と人がすれ違ったりするくらいなら十分な幅ですが、車椅子と人がスムーズにすれ違うことは難しくなります。では、誰もが使いやすい廊下幅はどれくらいなのでしょうか。
車椅子の幅はJIS規格で70cm以下と標準化されています。自分で手動式の車椅子を動かす場合など、乗っている人の腕が車椅子の幅の外に出ていたりしますから、単に通過するだけでも廊下幅80cmは必要です。
「一般的な廊下幅の1.2mでは車椅子と人がすれ違うには人が横向きになる必要があります。お互いに正面を向いてすれ違うなら1.4mでギリギリ。スムーズにすれ違うなら廊下幅は1.5mは欲しいところです。しかし、多くのマンションでは廊下幅は1.2mより少し広い程度。この場合、各住戸の玄関前にアルコーブが配置されているマンションなら、すれ違う時に、どちらかが一旦、退避することができます」
ベビーカーの場合は、メーカーや商品によって本体の横幅はさまざま。幅45cm程度のコンパクトなものもあれば、幅70cmを超えるものも。大型のベビーカーを使用する場合は、人とすれ違う際には廊下幅が1.5m以上あるとスムーズです。

幅1.2m、または1.6mの共用廊下で大型の家具や家電の搬入、搬出が問題になることはないでしょう。ただし、要注意なのが廊下の曲がり角。
「幅1.2mの廊下の曲がり角は、大きな家具・家電を通すのが難しい。曲がる場合、廊下幅が狭い方の1.5倍程度の広さになっていたり、内側の角が面取りをして丸くなっていたりすると動かせるスペースに余裕が出ます」
マンションによっては外廊下の外側に排水用の溝があり、その溝に向かって廊下の床が斜めに下がっていることがあります。
「若い人や元気な人は気にならない程度の勾配でも、高齢になったときや体調が悪いとき、車椅子やベビーカーを使うときに移動しにくく、体に負担がかかることがあります。廊下の距離が長いほど体への影響が出てきます」
長く住むつもりでマンション探しをする際には、廊下の勾配にも注意しながら歩いてみるといいでしょう。
マンションの共用廊下に私物を置くケースがあります。自転車やベビーカー、傘、ゴルフクラブやゴルフバッグなど、マンションの住戸内の限られた収納スペースにしまいきれないから、土や砂がついているものを家の中に入れたくないから、プランターで花を育ててご近所の方を楽しませたいからなど、理由はさまざまです。しかし、理由は何であれ、私物を共用廊下に置くのはNG。
分譲マンションの場合は、管理規約や使用細則で共用部分の使い方のルールが決められています。多くのマンションが雛形にしている国土交通省の「マンション標準管理規約(単棟型)」の第13条には「区分所有者は、敷地及び共用部分等をそれぞれの通常の用法に従って使用しなければならない」とあります。そして、通常の用法については、使用細則で「専用使用権のない庭、廊下、階段その他の敷地及び共用部分等への物品の設置若しくは放置又はその占拠その他の排他的な使用」を禁止事項としているのが一般的です。
賃貸マンションの場合も、賃貸契約書などに共用廊下への私物の放置を禁止する項目が盛り込まれているのが一般的です。
つまり、マンションのルールで「共用廊下に私物を置いてはいけない」ということになっているのですが、それ以外にも区分所有法や消防法などの法律も関わってきます。
分譲マンションでも、賃貸マンションでも、共用廊下に物を置くことは消防法に関わってきます。
消防法によって各自治体が制定している火災予防条例では、避難に支障をきたす物を置いてはいけないとしています。例えば東京都の火災予防条例(第53条の2)には「火災の予防又は避難に支障となる物件を置くこと等の行為の禁止」として、「避難施設に、火災の予防又は避難に支障となる施設を設け、又は物件を置くこと」を挙げています。つまり、共用廊下は万が一の際の避難経路、つまり避難施設ですから、そこに火災の予防や避難の支障になる施設や物を置くことは消防法で禁止されているのです。
区分所有法というのは、区分して所有されている建物(区分所有建物)について定めた法律。この区分所有法では、廊下は共用部分とされており、管理規約に定められた使い方しかできません。前述の通り、共用廊下は管理規約や使用細則で物を置いてはいけないとされています。そのため、管理規約、使用細則を守らない行為、つまり共用廊下に私物を置くことは、区分所有法を守らない違法な行為にもなるのです。
賃貸マンションや賃貸アパートでは、部屋も廊下もオーナーの所有です。部屋を借りている人は、居室内を利用したり、廊下を通行したりはできますが、賃貸契約で禁じられている廊下に私物を置くことは民法上の所有権の侵害になり、トラブルになることがあります。
分譲マンションでも賃貸マンションでも共用廊下に私物を置くことは禁止されているはずなのに、便利なスペースとして使われているケースは多くあります。
「廊下や玄関前のアルコーブが共用部分だという認識がない人が多いことが一因でしょう。また、物を置いてはいけないとわかっていても、管理組合の理事長自ら廊下に物を置いてしまっていたり、ご近所づきあいを考えると面と向かって言えない空気になっていたり。しかし、共用廊下に物を置きっぱなしにすることは非常に危険。地震の時に自転車や棚など大きなものが倒れて通路を塞ぐことがあります。廊下幅が物によって狭くなっているわけですから避難にも支障が出ます」
多くのマンションの管理状態を見てきた鈴木さんは、ガスボンベなどの危険なものが共用廊下に置かれているケースも目にしているそう。
「ガスボンベやバーベキュー用のガスコンロ、バイク用のオイルなどが剥き出しで置かれていることがあります。子どもがライターなどを持ってきていたずらするとガスバーナーのように火が出てしまう事故につながることも。火災の時には爆発を起こしたりします」
また、古新聞など可燃物を放置しておくと、放火などを誘発する防犯上のリスクもあるので、共用廊下の使われ方、使い方に要注意です。
中古マンションや賃貸マンションを探すとき、駐車場やゴミ置き場がきれいに使われているかをチェックする人はいるでしょう。それにプラスして、不動産仲介会社の担当者に同行してもらい、共用廊下の使われ方を確認することも大切。
「最上階まで行って、階段で降りながら共用廊下がどんな風に使われているかを見てみましょう。おおよそですが、どんな人が住んでいるのか、管理は行き届いているかがわかります」
入居前には共用廊下の使いやすさや安全性、居住者がどのように使用しているかをチェック。そして、入居後には、共用部分である廊下の使い方のルールとマナーを守って、快適な暮らしを保つようにしましょう。

マンションの廊下幅は建築基準法で最低幅が決められている
マンションの廊下幅は廊下の両側に居室がある場合は1.6m以上、廊下の片側にのみ居室がある場合は1.2m以上
廊下幅1.5m以上あれば車椅子やベビーカーとすれ違いやすい
マンションの廊下は共用部分なので私物を置いてはいけないのがルール