トイレは家族だけでなく、お客様も使う空間です。注文住宅を建てるときには「トイレもおしゃれな空間にしたい」と考える人も多いのでは? 今回は、トイレ空間のなかでも、とくに「床材」について、種類と特徴や選ぶときのポイント、色・柄を決めるときのおすすめの方法などを、インテリアコーディネーターのMAKOさんに伺い解説します。
まずは、トイレでよく使われる床材の種類と特徴を確認しましょう。
クッションフロアとはその名のとおり、クッション性があるやわらかい塩化ビニール製の床材です。厚さは1.8mm、横幅1820mmのものが多いですが、3.5mmの厚手のタイプや、横幅910mmのものもあります。
「クッションフロアは床材としては安価で、デザインが豊富です。ただほかの床材と比べると、耐久性は劣ります。やわらかいのでちょっと重いものを置くと凹んでしまったり、温度や湿度、日当たりなどにもよりますが、床材に色移りする『ゴム汚染』が発生することがあるので注意が必要です」(MAKOさん/以下同)
フロアタイルはポリ塩化ビニール製の床材で、塩ビタイルとも呼ばれます。
「フロアタイルは、同じビニール製でもクッションフロアのようなクッション性はありません。またシート状ではなく、長細い板状や四角いタイル状になっているのが特徴です。フロアタイルもデザインが豊富で、エンボス加工で表現されたデザインはクッションフロアよりもリアルです。
またフロアタイルは耐久性が高く、掃除しやすいことがメリットです。ただしクッションフロアよりも、価格は高くなるのが一般的です」
タイルは土や石などを高温で焼き固めたもので、固くて水や汚れにも強いことが特徴の床材です。トイレには吸水性が低いセラミックタイルや磁器質タイルが使われることが多いです。
「セラミックタイルは粘土を焼いて作られるため、磁器タイルよりも柔らかく、水分を吸収しやすいです。そのため、水や汚れに弱く、割れやすいという欠点があります。
一方、磁器タイルは高温で焼かれるため、セラミックタイルよりも硬く、密度が高く、耐久性があります。水や汚れに強く、色や模様の種類も豊富です。ただし、磁器タイルはセラミックタイルよりも重く、高価で、施工が難しいというデメリットがあります。
また、セラミックタイルも磁器タイルも衝撃に弱いので、固いものを落とすとヒビが入ってしまうことがあります。タイルは張り合わせた間に目地ができますが、面積が少ないわりに汚れがたまり目立ちやすいのもデメリットです」
居室などに使われるフローリングも、トイレの床に使われることがあります。
「廊下にフローリングが使われている場合、デザイン的にきれいに見えるようならトイレも同じ材料で仕上げることもあります。フローリングのメリットは、やさしく温かみを感じられるトイレ空間を演出できることです。
ただし表面に塗装がなされていない無垢(むく)材フローリングは汚れやすく、耐久性も劣ります。トイレに使用する場合には、こまめにお手入れするか、表面塗装されたものを選ぶ必要があるでしょう」
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トイレの床材の費用目安は、以下のようになります。
床材の種類 | 費用の目安(材料費) |
---|---|
クッションフロア | 約3000~4000円/m2 |
フロアタイル | 約4500~10000円/m2 |
セラミックタイル・磁器タイル | 約5000~20000円/m2 |
フローリング | 複合フローリング:約6000~10000円/m2 無垢フローリング:約7000~20000円/m2 |
トイレはセラミックタイルや磁器タイルで仕上げると、コストが高くなりがちです。これらは素材自体の価格が高い傾向があるのに加え、タイル職人に施工してもらう必要があり手間もかかるためです。
対してもっとも費用が安いのは、クッションフロアです。クッションフロアは素材自体が安価なうえに、シート状になっているので、ほかの床材と比べると施工の手間が少なくてすみます。そのため全体的な費用を安く抑えやすいことが特徴です。
「トイレの床材には、それぞれにメリットとデメリットがありますが、デザイン性、機能性、費用感を総合的にみておすすめできるのは、クッションフロアだと思います」
トイレの床材を選ぶときには、どういった点に気を付ければよいのでしょうか?
「家族に男性がいると、トイレではどうしても『飛び散り』の問題を避けられません。また手洗いがある場合には、手を洗ったときの『水はね』も発生します。そのためトイレの床材選びでは、耐水性の高さが重要です」
床材のうち、クッションフロアやフロアタイル、セラミック・磁器タイルは、耐水性の心配は不要です。一方フローリングは木でできているので水に強いとはいえません。とくに天然木を切り出した無垢フローリングをトイレに使用するなら、こまめに掃除するか表面にウレタン塗装することも検討しましょう。
「無垢フローリングにウレタン塗装すると耐水性は高まりますが、無垢材の自然な感じは失われてしまいます。近年はクッションフロアやフロアタイルでも、本物のフローリングに見えるものも少なくありません。フローリングの耐水性が気になるのであれば、はじめからそちらを選ぶとよいでしょう」
トイレはこまめに掃除すると、汚れや臭いを防ぎやすくなるため、掃除のしやすさも床材選びのポイントになります。
「掃除のしやすさを考えるなら、トイレの床材は表面の凹凸が少なくフラットなものを選ぶことが大切です。ただし、トイレは水を扱う場所なので、ツルツルしすぎて滑りやすい床材は転倒するリスクがあるので避けましょう」
飛び散りや水はねが発生しても、すぐに掃除すれば問題はありません。しかしそうでなければシミになってしまいます。その都度掃除する自信がなければ、汚れの目立ちにくさを重視しましょう。
「色が薄い床材は、汚れが目立ちやすいので避けるのが無難です。薄い色を選びたいときでも、べた塗りの1色のものではなく、少し色が混ざったようなデザインにするのがおすすめです」
トイレの床材は、飛び散りによるアンモニア汚れや、それを掃除するための洗剤にも耐性が強いタイプを選びましょう。
「ただ最近は、トイレシートなどでこまめに掃除する方が多く、特殊な強い洗剤を使うことはなくなってきている印象です。汚れを放置すると強い洗剤が必要になりますが、普段から掃除できるようなら、アンモニアや洗剤への耐性はそれほど意識しなくてよいと思います」
それでは実際に床材の色や柄を決めるときの、おすすめの方法を紹介します。
「最近は手洗いも含めた『サニタリールーム』として、トイレ空間のデザインを考える方も増えてきました。トイレはほかの部屋とは区切られた狭い空間なので、リビングやダイニングなどでは試せないようなデザインにも思い切ってチャレンジできる楽しさがあります。
一般的に部屋の配色は、天井から壁、床の順番に濃くなるようにすると、足元が絞まりバランスがいいといわれています。確かにそうですが、トイレはもっと自由に、例えばアクセントクロスは1面だけではなく2面にするなど、ある程度冒険していいと思います」
「思い切ったデザインにチャレンジするときでも、ほかの部屋との統一感を持たせることが、トイレをおしゃれに仕上げるポイントです。具体的には、デザインの方向性や素材感はほかの部屋と同質なものを選び、根本はつながるようにすると統一感を出しやすくなります。
例えば全体的に無機質なイメージにしているのであれば、トイレに柄を持ってきたとしても無機質なデザインのものを選ぶ。そうするとその家にあったトイレになると思います」
柄が入った床材を選ぶときには、壁材は無地のものをあわせると、うるさくなりすぎず床の柄が引き立ちます。
「床材の柄は、大きすぎないものを選ぶこともポイントです。トイレは狭い空間なので、大きな柄を選んだとしても映えません。大柄は、ある程度の距離から俯瞰して見ることを想定してデザインされているためです」
「最近はトイレの手洗いボウルやドアノブなど、細かなインテリアデザインにこだわる人も増えてきました。トイレの床材も、インテリアとの相性を見て、例えば木目であってもヘリンボーン張りのデザインのものを選んだり、節の有無を検討するなどして、自分なりにこだわってみるとよいでしょう」
最後にあらためてMAKOさんに、トイレの床材の選び方についてアドバイスをいただきました。
「少し前までトイレの床は、トイレマットが敷かれているのが普通でしたが、今は掃除しやすさを優先してそのまま使うことが多くなりました。そのためトイレの床は、これまでより視界に入ることが増えています。トイレはお客様も使う空間ですから、床材についても質感がよく、より高級感を覚えるものを選ぶのがおすすめです。
なおトイレは床も含めて思い切ったデザインに挑戦しやすい場所ですが、突拍子もないデザインにすると居心地が悪く感じてしまうかもしれません。冒険する場合でも、自分が普段好きなもの、心地よく感じるものをベースにすると、飽きずにいられると思います」
トイレの床材は、耐水性や掃除のしやすさ、汚れの目立ちにくさを重視して選ぶ
トイレ空間は狭いので、床材に大柄なものを選んでも映えにくい
トイレではほかの部屋ではできないデザインにチャレンジしてみるのもおすすめ