注文住宅を建てるときに「トイレはおしゃれなタンクレストイレにしたい」「けれども価格が高い」と悩む人も多いようです。この記事では、タンクレストイレを選んで後悔しないために、タンクレストイレのメリット・デメリットや選ぶときの注意点、メンテナンス方法などをTOTOの松竹博文さんに伺い解説します。
タンクレストイレとはその名のとおり、便器の後ろにタンクがないタイプのトイレを指します。まずは、タンクレストイレの種類や仕組みを紹介しましょう。
高級感がありデザイン性が高いタンクレストイレは、メーカー各社が上位機種として取り扱い販売しています。代表的なタンクレストイレとしては、TOTOの「ネオレスト」シリーズ、パナソニックの「アラウーノ」シリーズ、LIXILの「サティス」シリーズなどがあります。
トイレのなかには、タンクをキャビネットで隠し、まるでタンクレスのように見えるタイプもあります。なかでもキャビネット内のスタンドに便器を固定し浮かせたフローティングタイプは、床面がフラットになり清掃性が高くなることが注目されています。厳密にはタンクレストイレではありませんが、デザイン性や清掃性を重視する人は検討してもよいでしょう。
従来のトイレは、便器の後ろに備えられたタンクから水を流し、落差による水圧で汚物を流す仕組みとなっていました。対してタンクレストイレでは、直結した水道からの水圧で流します。さらに各メーカーは、便器内に小さなタンクを備える、ブースターで加圧するなど、低い水圧でも少量の水で汚物を流せるようさまざまな工夫を凝らしています。
「弊社のタンクレストイレは、水圧に左右されない『タンク式』と、タンクレスでコンパクトな『水道直圧式』の長所を併せ持つ独自の洗浄技術『ハイブリッドエコロジーシステム』を採用しています。
まずは水道から直接流れる水がトルネードのように渦を巻き便器内部を洗浄し、さらに内蔵の小さなタンクから加圧された水でトラップ(水たまり部分)内の汚物を押し流す仕組みです」(松竹さん/以下同)
タンクレストイレはトイレのなかでは高級品であるため、寿命が気になる人も多いようです。
「トイレはどのタイプであっても、便器自体は陶器でできているため、耐久性は非常に高いものです。
トイレ内部については、タンクレストイレは電気で制御している部分があり、通常どおりに使用していてもいずれ故障したり、寿命が来たりしてしまいます。これはほかの電化製品と同様です。その点ではタンクがついたトイレのほうが、仕様的には単純なので、長期間利用できるといえるかもしれません。
弊社では、タンクレス・タンクありにかかわらず、ウォシュレット部分については1年間、大便器部分については2年間のメーカー保証をつけており、ご希望に応じて10年間の延長保証制度も用意しております。また製造終了後も10年間は部品を保存していますので、その間は修理が可能です」
タンクレストイレを選ぶメリットはどのような点があるのか伺いました。
「タンクレストイレは節水効果が非常に高いことが特徴です。現在のタンク式トイレの最少洗浄量は4.8Lですが、弊社の最新の床排水タイプのネオレストだと大で3.8L、小だと3.0Lしか水を使いません。結果的に水道代金の節減にもつながります」
「タンクレストイレは大きなタンクに水をためる時間が不要であるため、タンク式と比較すると短い間隔で洗浄が可能です」
連続して水を流したいときにタンクに水がたまるのを待つ時間が必要ないことは、ストレスを一つ減らすことにつながります。
「タンクレストイレはタンクがないので、スッキリしたデザインとなっています。そのためトイレ本体のデザインを楽しむのはもちろん、トイレ全体で開放感があるデザイン性の高い空間づくりを行っていただけると思います」
「タンクレストイレの奥行きは70cm前半程度の商品が多く、奥行きが70cm後半から80cm程度のタンク式トイレと比較すると10cm程度短くコンパクトです。タンクがないためタンク式トイレより背も低くなり、上に余剰空間が生まれるため、トイレ空間を広く使えることがメリットです」
タンク式トイレはタンクと便器の間に接合部分が生じるため、そこに汚れが入り込むことがあります。タンクレストイレはタンクがないので、そのぶんお手入れもラクになります。
「タンクレストイレは全体的に凹凸を減らし、さっと拭くだけで簡単に掃除できるようなデザインを意識しています」
タンクレストイレにはどのようなデメリットについても紹介します。
水を流すときに電気を用いるタンクレストイレは、停電時には特別な操作が必要になることがあり、人によっては不便と感じることもあるようです。
「弊社のタンクレストイレは、停電時には後方のレバーを引っ張ることで水を流せます。またレバーを操作しなくても、単純に便器内にバケツなどで水を流し込めば簡単に汚物を流すことが可能です」
タンクレストイレはどのメーカーでもハイグレードの位置付けであるため、タンク式トイレと比較すると本体価格が高いことがデメリットです。節水性が高いため水道代金は削減できますが、差額を回収できるかどうかは使用頻度によって異なります。なお設置工事にかかる費用はタンクレス、タンクありで違いはありません。
タンク式トイレよりも高額な傾向があるタンクレストイレ。価格の目安はどの程度なのか、主要メーカーの価格を調べてみました。
メーカー | ブランド | 価格の目安 |
---|---|---|
TOTO | ネオレスト | 約34.3万円(税込)~ |
LIXIL | サティス | 約30.4万円(税込)~ |
Panasonic | アラウーノ | 約28.4万円(税込)~ |
各メーカーはそれぞれのブランド内でさらに数種類のタンクレストイレを提供しています。例えばTOTOのネオレストシリーズには4種類あり、洗浄方法はすべてハイブリッドエコロジーシステムを採用していますが、外観デザインと機能に違いがあります。
価格の違いをどう考えるかは人によって異なるものです。トイレは1日に何度も使うものなので、価格とのバランスも考慮しつつ、気に入ったタイプを選ぶとよいでしょう。
タンクレストイレは高価なので、できるだけ後悔したくないですよね。選ぶときのポイントや注意点を、松竹さんに伺いました。
「タンクレストイレは手洗い器がないため、手洗いをどうするかをあわせて検討する必要があります。
トイレの広さは、一戸建てでしたら0.5坪(間口780mm×奥行き1690mm)がもっとも多いサイズです。この広さだと、奥行き180mm程度のスリムタイプやコンパクトタイプの手洗い器がおすすめです」
「トイレ内に奥行き280mm程度の広い手洗いカウンターを付けたい場合は、0.75坪(間口1235mm×奥行き1690mm)程度の広さが必要になると思います」
タンクレストイレが出始めた当初は水道の水圧のみで流していたため、水圧が低いと設置できないこともありました。
近年は低水圧でも対応できるよう、各メーカーは工夫を凝らしていますが、なかには水圧が低い一戸建ての2階や3階には適さないタイプもあります。タンクレストイレを検討するときには、設置が可能な水圧かどうかを工務店などに確認してもらいましょう。
「弊社の現在のネオレストシリーズは内蔵タンクを併用しているため、低水圧でも正常に動作します。一戸建ての2階や3階でも、従来のタンク式トイレが設置できる条件下であれば問題なくお使いいただけます」
タンクレストイレを長くきれいに使うためのお手入れ方法を伺いました。
「日常のお手入れは、濡れた雑巾などで水拭きを行います。汚れが気になるときには、薄めた中性洗剤を含ませた柔らかい布を使いましょう。とくにウォシュレット部分は、乾いた布で拭くと表面に傷がつく場合があるのでご注意いただきたいです。便器内部はトイレ用ブラシを使ってやさしくこすり洗いをします。
使ったあとや気がついたときに、さっとお掃除するようにして汚れをためないことを習慣にすれば、きれいな状態を保ちやすくなります」
「汚れが気になりだしたら、いつもよりていねいに掃除をします。とくに便器の縁の裏側は、飛び散った汚物が付着して汚れがたまりやすい場所です。洗い残しがあるとガンコな黄ばみや黒ずみになってしまうので、しっかり落としておきましょう。年に1~2度は便座・便フタを取り外し、拭き掃除することをおすすめします」
「その際、研磨剤入りの洗剤や金属製のタワシなど、傷が付くタイプは使わないことが重要です。業務用の強酸性・強アルカリ性洗剤も、陶器表面を傷つけたり侵したりすることがあるため使用を避けましょう」
「水が流れない、水がたまらない、水漏れするなどトラブルがあったときには、まずは停電や断水が原因でないかを調べるために、『電気がつくか?』『水が出るか?』を確かめましょう。
そのうえで、問題が解決しない場合は速やかにメーカーの相談窓口に問い合わせていただければと思います。トイレの水が止まらない、使えないなどのトラブルは緊急性が高いため、弊社では365日対応しています」
タンクレストイレを選択するときのポイントを松竹さんにあらためて伺いました。
「タンクレストイレはデザイン性の高さから、近年大変人気があります。家族はもちろんお客さまをおしゃれなトイレ空間でお迎えしたいと考える方にはおすすめです。
タンクレストイレを選ぶときには手洗いも一緒に考える必要がありますが、トイレの広さにあわせたおしゃれなデザインの手洗い器も多くあります。ぜひあわせて検討し、トータルコーディネートを楽しんでいただきたいと思います」
タンクレストイレとは、便器の後ろにタンクが備わっていないタイプのトイレのこと
各メーカーはタンクレスでも少ない水圧と水量で汚物を流せるよう工夫を凝らしている
タンクレストイレは手洗いとセットで検討することで空間コーディネートを楽しめる