大正レトロ、昭和レトロなどレトロモダンといわれるインテリアスタイルへの関心が高まっています。昔懐かしい雰囲気とモダンで洗練された意匠性が両立するレトロモダンが似合う家を建てたいときには、どのような工夫ができるのでしょうか?
今回は、大正レトロ、昭和レトロのデザインの特徴や、レトロモダンなインテリアスタイルにマッチする家づくりについて、(一社)国際カラープロフェッショナル協会の理事を務めるとおみねきよみさんに伺いました。「照明」「家具」などインテリアの選び方、コーディネートの仕方から、「外観」「内装」にできる工夫までを詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
まずは、レトロモダンとはどのようなインテリアスタイルなのか、とおみねさんに詳しく教えていただきました。
レトロモダンとは、どこか懐かしさを感じさせる雰囲気のなかに、モダンで洗練された意匠性を有したインテリアデザインのことです。日本でレトロモダンというときには、大正や昭和初期を思わせる「大正レトロ(大正ロマン)」や「昭和レトロ」を指すことがほとんどです。
「大正、昭和初期というと、海外のインテリアがどんどん日本に入ってきた時代です。その時代のインテリアや建築様式などを、現在のモダンなデザインのなかに採用するのが、いわゆるレトロモダンです」(とおみねさん/以下同)
大正レトロと昭和レトロには、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
「大正時代は1912年から1926年のほんの短い期間ですが、その間にどんどん西洋化が進み、住宅にも洋風の生活様式が取り入れられるようになりました。とはいえ、そのような『新しい時代』を楽しめるのは、金銭的に余裕がある富裕層だったと思われます。大正レトロは猫足や細かに彫刻が施された家具に代表されるように、全体的に高級感があるのが特徴です」
その後昭和の時代になると、西洋文化は庶民にとっても身近なものになっていきます。
「昭和、とくに戦後になると、一般家庭でもキッチンにはダイニングテーブルが置かれ、黒電話や扇風機なども普及しました。昭和レトロは、当時の一般家庭を再現するような、今から見ると懐かしさや温かみを感じるデザインのものを採用する点が、大正レトロとは異なります」
大正レトロ、昭和レトロを、よりモダンでオシャレに見せるポイントはあるのでしょうか?
「どの程度レトロテイストに寄せたいのかは、人によって違います。モダンのなかにほんの少しだけレトロテイストを取り入れたいのであれば、小物だけを採用する。もっとレトロに寄せたいなら、家具や内装もレトロを意識するなど、自分好みの配分を考えるとよいでしょう」
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レトロモダンな部屋にするときの、インテリアの選び方を紹介します。
大正レトロのインテリアは、全体的にダークトーンでありながら、高級感があることが特徴です。
「例えば家具は、暗めの茶や暗めの赤茶などの木材にニスなどを塗ってツヤを出し、あめ色や琥珀色に輝くイメージです。ソファやテーブルの足は猫足などにし、さらに彫刻が施されているなど、曲線的でデザイン性が高いクラシックなものを選ぶとよいでしょう」
「カーテンやソファの腰掛け部分などのファブリックは、カラーでいうと小豆色や深緑など、暗めの日本の伝統色。また市松模様や矢羽根柄を取り入れると、より大正レトロな雰囲気が出ます。カーテンもレトロに寄せるのであれば、ドレープが多く重々しいものを選びましょう。
照明器具は乳白色やあめ色のガラスシェード、よりデザイン性を高くするならステンドグラスのペンダントライト。電球は蛍光色ではなく電球色がおすすめです」
昭和レトロのインテリアは、大正レトロよりは庶民的な印象が強くなります。和室には畳の上にソファが置かれ、ダイニングには椅子やテーブルが置かれているといったように、インテリアも和と洋が混在しているイメージです。
「家具については、例えばソファであれば、腰掛け部分はくるみボタンが付いた革や布で、肘掛けや足はダークブラウンの木製。大正レトロと比較すると全体的にツヤ感や装飾性は低く、どちらかというと長く大切に使い込まれたレトロ感です。
また食器棚などの収納は、木製で曇りガラスや格子模様のガラスがはめこまれたものを選ぶと昭和レトロの雰囲気を出せるでしょう」
「カーテンは、モダンに寄せるのであればウッドブラインドを選ぶとおしゃれになります。よりレトロな雰囲気を出すのであれば、当時よく見られたストライプや花柄、サイケデリック柄など、柄物のカーテンを選ぶとよいでしょう。照明器具は、シェード部分が布でできたペンダントライトが、昭和レトロなイメージです。
あまりレトロに寄せすぎずにモダン要素を強くしたい場合は、柱時計や花柄のポット、レトロデザインの扇風機など、小物で雰囲気を出すとよいでしょう」
レトロモダンの雰囲気を演出したいときに、内装にはどのような工夫ができるのでしょうか?
大正レトロをイメージするなら、部屋には腰壁を設け、建具や床も含めて家具の色味と統一すると、全体的にまとまりが出ます。
「大正レトロでは、壁紙はビニールクロスよりも布製の壁紙。なかでも柄が入ったものを選ぶと、高級感がありより雰囲気が出ます。
大正レトロを存分に楽しむなら、フローリングはデザイン性を高めるためにヘリンボーン張りにするなど、張り方にもこだわりましょう。手軽に雰囲気を出すのなら、アンティーク柄などのじゅうたんを敷くのもおすすめです。
また建具には格子が付いたガラスやステンドグラスが入ったものを選ぶと、より大正レトロの趣が出るでしょう」
「昭和レトロについては、昭和のどこを切り取るかによってイメージが異なります。昭和初期であれば、ダークブラウンの大きな梁(はり)が見える天井に、しっくいの塗り壁といった、古民家カフェのイメージです。塗り壁ではなく壁紙にする場合は、アイボリーやベージュなど、淡い色合いのものを選ぶとよいでしょう。
床材は落ち着いたブラウンがあいますが、大正レトロほどダークではありません。またフローリングは正方形に張っていくと昭和レトロな雰囲気を出せます。もしくは深みのある赤や青のじゅうたんを敷いてもよいでしょう」
「同じ昭和でも、戦後の高度成長期であれば、ちゃぶ台がある畳の部屋に、ソファやテレビや扇風機などの家電があるといった、どこか懐かしい庶民的な昭和モダンな部屋になります」
「また大正、昭和にかかわらず、レトロな家には、タイルやレンガがよくあいます。例えば壁の一部にレンガを張ったり、洗面台やキッチンに六角形やランタン型などのモザイクタイルを張ったりすると、モダンな家でもレトロな雰囲気を加えられるのでおすすめです」
外観までレトロモダンなインテリアが似合う家にしたいときには、どのような工夫ができるのでしょうか?
大正レトロな建物というと、和風住宅というよりはデコラティブな洋館のイメージがあります。それは大正時代にモダンデザインを楽しめたのは富裕層であり、西洋のものを取り入れるというよりは、西洋の家そのものをまねることに意味があったためと思われます。
「これから建てる住宅に大正レトロな雰囲気を取り入れるなら、建物は左右対称を意識し、さらに大正時代の洋館でよく使われていたレンガやタイルを外観の一部に採用するとよいでしょう。また屋根は切妻の三角屋根、縁取りをしたような窓枠にするとより雰囲気が出ます」
「昭和レトロな雰囲気にする場合、土地の広さに余裕があるなら平屋にし、屋根は切妻や寄棟、片流れなど、天井高を高く取れる形状を選ぶと梁(はり)見せ天井にしやすくなります。とくに外壁の一部に焼き杉を使うと古民家の雰囲気を演出できます。
また掃き出し窓の前には縁側を設ける、外構に木製の面格子を設置する。また坪庭や中庭をつくって、家のなかに光を取り込むなどの工夫で、明るくモダンな昭和レトロの家をつくることができます」
最後にあらためてとおみねさんに、レトロモダンなインテリアを楽しむ家づくりについてアドバイスをいただきました。
「レトロモダンといっても、大正レトロと昭和レトロとではインテリアの方向性が異なります。また、レトロとモダンのどちらを強く出すのかによっても、仕上がりは違ったものになるでしょう。
そのためレトロモダンのインテリアが似合う家にしたいときには、自分たちにとって心地よい『和と洋のバランス』をはっきりさせておくことが大切です。小物や家具だけでいいのか、内装や外観もあわせたいのかをよく考えて、家づくりを進めてくださいね」
レトロモダンとは、大正や昭和のレトロな雰囲気と洗練されたモダンな意匠性を融合させたデザイン
大正レトロは高級感があり、昭和レトロはより庶民的で懐かしさを感じることが特徴
レトロとモダンのどちらに寄せるか、自分たちの好みのバランスを明確にしておくことが大切