洗濯、物干し、アイロン掛けまでできるとの理由で、家事の時短を目指してつくる人が増加しているランドリールーム。そこで旭化成ホームズのLONGLIFE総合研究所に、ランドリールームとはどんなスペースなのか、ニーズが高まっている背景と、使い勝手が良いランドリールームをつくるコツや間取りや広さについて教えていただきました。ランドリールームを自宅につくることで得られる具体的なメリットやデメリット、後悔しないために意識しておきたいポイントなども解説します。
料理やお掃除、洗濯は毎日行われている家事です。なかでも洗濯は、洗ってから畳むまでに手間や時間がかかり、お天気によって干し具合も左右されやすいため、負担に感じている方も多いのではないでしょうか。
「洗う、干す、取り込む、畳む、しまうという、洗濯にまつわる作業をすべて行える空間がランドリールームです。家の中を移動することなく作業ができるため、洗濯にかかる時間を短縮できます。当社では、洗濯機を置くスペース、室内物干し設備、換気設備、収納スペースを備えた空間を、ランドリーサンルームとしてご提案しています」(旭化成ホームズ LONGLIFE総合研究所 以下同)
近年ニーズが高まっているランドリールームですが、その理由は2つあるとそうです。
「ひとつ目の理由は、共働き世帯の増加です。厚生労働省の調査によると、2019年には共働き世帯数が専業主婦世帯数の約2倍になりました。つまり、今の主流は共働き世帯と言えます。共働きで、暗くなる前に帰宅するのが難しい場合、室内干しをされる方が多くなります。そうするとランドリールームが欲しいと考える方は増えるでしょう。
また、フルタイムで働く妻に聞いた“共働きで働く理由”が、近年大きく変わっています。以前と比較すると『自分の能力を活かせる仕事がしたい』『生活を維持するため』は下がり、『生活にゆとりをもたせたい』が大きく増えています。
時間や心の“ゆとり”をつくるために住まいができることは、家事動線を短くして無駄な動きを減らし、家事の時短につなげることです。そこで当社では、家事動線を短くする方法として、洗濯を一部屋で完結できるランドリーサンルームのある間取りをおすすめしています」
「もうひとつの理由は、外気がリスクを持つようになったことです。国内ではスギやヒノキ、ブタクサ、イネなど、さまざまな花粉が一年中観測されていますし、春先には黄砂やPM2.5による大気汚染が問題になっています。家族に花粉症の方がいる場合や、大気汚染による健康被害を防ぐために、洗濯物は年間を通して室内に干したいというニーズが増えていると考えられます」
ランドリールームの大きなメリットは、洗濯が終わったあとにその場で洗濯物を干せるところです。ランドリールームがない場合には、洗った洗濯物をバルコニーなどいつも干している場所へ運んでから干し始めなければなりません。一方ランドリールームがあると、部屋の中に設置されている物干し竿に洗濯物を干せるため、洗濯物を持って離れた場所まで移動する必要がなくなります。
ランドリールーム内に作業スペースが設けられている場合は、洗濯物のアイロン掛けや畳む作業までひとつの場所で済ませられます。洗濯物を洗う作業から、干す、取り込む、畳む、必要に応じてアイロン掛けまで、洗濯に関連する作業をまとめて行えるため、家事動線が短くなり作業の時短が可能です。
サンルームとは、太陽の光を取り込むため天井や壁などがガラス張りになっている部屋のことです。晴れた日には日当たりが良く、雨が降っても濡れないことから、洗濯物を干す場所や、ガーデニングを行う場所、くつろぐ場所などとして使われます。このようなサンルームがない場合でも、ランドリールームがあると天候に左右されずに洗濯物の部屋干しが可能です。
とりわけ黄砂や花粉が多い季節には、洗濯物を外に干していると花粉などが付着するため、なかなか洗濯物を外に干せない場合もあります。だからといってリビングで洗濯物を干していると、急な来客があったときに慌てて片付けなければなりません。ランドリールームがあると、来客や天候などに関わらずいつでも洗濯物を干せるため安心です。
洗濯物を外干ししていると、干している衣類などから、暮らしている人の情報が漏れるケースもあります。干している洋服のサイズや種類からは、女性や子どもが暮らしていることが分かります。制服や体操着を干しているのが外から見えると、子どもが通っている学校まで知られてしまうため、注意が必要です。
また、ブランド品の洗濯物を多く干している場合には、お金がある家だと判断されるケースもあります。洗濯物から家族や経済状態の情報が漏れてしまうと犯罪者に狙われる恐れがあるため、洗濯物を外に干す際には気を付けなければなりません。これに対し、室内のランドリールームであれば洗濯物が外から見られることもなく、防犯対策にもつながります。
自宅にランドリールームを設置する場合、洗濯物を干す場所や設備が必要です。たとえ室内に干す場所があっても、洗濯物が乾きにくい状態では乾燥までに時間がかかり部屋に湿気が溜まりやすくなるため、ランドリールームには換気扇や除湿・暖房などの機器を設置するケースがほとんどです。
ランドリールームの設備には、洗濯機、物干しユニット、換気扇や除湿器・乾燥機、作業台、アイロン台、収納棚などがあります。さらに、洗濯で使用する水道の配管、アイロン掛けなどに使用するコンセントも用意しなければなりません。こうした設備を設置する必要があるため、建築コストが多少上がる可能性があります。
ランドリールームをつくるには、2畳から4畳ほどの広さが必要とされています。4人家族の場合には、洗濯物をすべて干すために最低でも2畳を要するため、部屋干しをしてさらに作業スペースを設けたいなら、それなりのスペースを確保しなければなりません。
ただし、ランドリールームを広くする場合にはその分リビングやほかの部屋の広さが削られ、狭くなってしまう恐れがあります。これに対しては建物全体の面積を広くするという解決方法もありますが、建築費用が増加してしまうのが難点です。
ランドリールームに多くの洗濯物を干したい、洗濯に関連するさまざまな作業をしたいといった場合には、十分な床面積の確保が必要です。もっとも、広さを削っても構わない場所があったり、洗面脱衣室とスペースを兼用したりするのであれば、適度なスペースを確保しやすくなります。
ランドリールームをリビングから離れた場所に設置した場合、洗濯物を干す、アイロン掛けをするなどの作業を、家族が過ごす場所から離れて行うことになります。その間はほかの部屋の様子が分からないため、小さい子どもがリビングで遊んでいる場合などに、様子を見ながらの家事ができなくなります。
テレビを見たり子どもを見守ったりしながらリビングで洗濯物を畳むなど、ほかの部屋でも洗濯物関係の作業をしたい場合には、リビングのそばに設けることをおすすめします。
ランドリールームづくりで失敗しないためには、部屋の広さを十分検討しなければなりません。ランドリールームは、狭すぎても広すぎても使い勝手が悪くなります。狭すぎると作業がしにくくなりますし、広すぎると除湿器や乾燥機の効果が出にくく、掃除も大変になります。
ランドリールームの適度な広さは、洗濯物を吊るすスペース、作業スペース、通路などが確保できる程度です。家族4人暮らしの場合、適切な広さは3畳程度とされています。3畳の広さは1.7m×2.6mほどであり、2mの物干し竿を設置した上で、作業スペースなども確保できるのが目安です。
ランドリールームの場所を決める際には、家事動線を考慮することが大切です。洗濯以外にも日々しなければならない家事があるならば、さまざまな動線を考慮しないと家事効率の低下を招くかもしれません。
乾いた洗濯物を効率良く片付けるためには、洗濯物を干しているランドリールームからクローゼットまでの動線が重要です。料理の合間に洗濯をすることが多い場合だと、キッチンの近くにランドリールームを設置することで効率的に家事を行えます。普段からどのように家事をしているのか、どう動くと家事がしやすいかを考えて、ランドリールームの適切な場所を決めましょう。
また、ランドリールーム自体が使いやすいとしても、キッチン、クローゼット、リビングなどへの行き来が面倒なケースでは、全体として家事がしにくくなります。洗濯以外の家事との兼ね合いも考えなければなりません。
部屋干しをするランドリールームが風通しの悪い状態では、洗濯物が乾きにくくなります。湿気がこもりやすいランドリールームだと、洗濯物が生乾きになったり、室内にカビが生えやすくなったりするため、湿気対策が必須です。
湿気対策の根本は、風通しが悪い場所を避けることです。毎日洗濯物を干しても湿気が溜まらない状態を維持するには、窓や24時間換気の換気口、換気扇などを付けて換気をし、湿度を取るための除湿器を設置することが必要です。さらに、乾燥機を設置すれば、季節を問わず洗濯物をスムーズに乾かせます。
ランドリールームに収納スペースを設置しておかなかったことで後悔するケースは少なくありません。ランドリールームには、使用する洗剤、洗濯ネット、ハンガー、アイロン、掃除用具などの収納場所が必要です。普段使う物を収納できる場所がないと、使い勝手が悪くなります。
ランドリールームの位置が洗面所や浴室に近い場合は、タオル類などの収納もできると、家事動線のさらなる効率化が可能です。家族の衣類をまとめて収納できるファミリークローゼットの設置も効果があります。乾いた洗濯物をその場で畳んで収納まででき、洗濯が楽になります。
ランドリールームをつくる際にコンセントのことを忘れていたというのも、ありがちな失敗です。ランドリールームでは、洗濯機以外の電化製品として、除湿器、サーキュレーター、アイロンなど、さまざまなものを使用します。こうした電化製品に対してコンセントの数が不足していると、いちいち延長コードを使わなければなりません。
コンセントの数だけではなく、設置位置にも注意が必要です。コンセントの位置が悪いと作業しにくくなるため、電化製品を使う場所なども考えて設置場所を決めましょう。
洗濯専用の空間と言えるランドリールームは、家のどの辺りに設けると使い勝手が良くなるのでしょうか。
「家事動線を短くするためには、キッチンの近くが良いでしょう。例えば、2階にLDKがあり、1階に浴室と洗面室がある間取りの場合、家事動線を考えてキッチンの横に配置するご提案をします。キッチンと近いと料理や片付けと洗濯を同時進行しやすくなりますし、行き来も楽になります」
「休日やお天気が良い日は外に干したいという方には、ベランダに隣接させて配置するのも良いでしょう。ランドリーサンルームの近くに畳コーナーを設けると、乾いた洗濯物の一時置きや畳み作業がしやすくなり、家事の時短にも効果的です。
また、洗濯物は濡れると重くなります。家族4人分の洗濯前の衣類が6kgとすると、洗濯後は8.6kgになります。この重さを考慮すると、外干しする可能性のある場所の近くにランドリーサンルームを配置することをおすすめします」
ランドリールームをつくる場合、どの程度の広さにすれば良いのでしょうか。
「家族4人分の洗濯物(約6kg)を干したい場合、2畳程度の広さを目安にしてください。約2畳あれば、2mの物干し竿を2本設けられるため洗濯物を十分に干せますし、洗剤や柔軟剤などを収納できるスペースも確保できます」
スペースが限られた住宅の場合、洗濯専用の空間に2畳も使うのは……とためらうかもしれません。
「独立したランドリールームを設けるのが難しい場合、洗面室と兼用するプランをおすすめしています。一般的な洗面室は2畳程度ですが、約1畳分広くして3畳にすれば、室内物干し金具や部屋干しファンが無理なく設置でき、干し場も十分に確保できます。
さらに、収納スペースを広めにとり、洗濯・柔軟剤の他にタオル類や家族の下着・パジャマを入れられるようにすると、入浴時にも便利で使い勝手のよいスペースになると思います」
室内干しによくある悩みには「なかなか乾かない」「洗濯物に生乾きのニオイが!」「乾かしているお部屋がジメジメする」などがあります。洗濯物がすっきりと乾きやすいランドリースペースをつくるには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
「当社の施設で行った実験研究より、夜干しでも、換気扇と除湿器があれば約8時間で、換気扇と部屋干しファンがあれば約14時間で乾燥レベルまで達することが分かりました。つまり、夜に洗濯して部屋干しをしても、換気扇と除湿器を使えば翌朝までに乾きます。夜に干しても十分に乾くことから、日差しは必ずしも重要ではないのです」
洗濯物を干すときには日差しが必要と思いがちですが、先の実験結果より、乾燥させるためには換気や送風が重要で、日差しは必ずしも要らないということが分かりました。
「この結果を踏まえて、当社のランドリーサンルームは“窓の大きさ”を必要条件にはしていません」
ランドリールームにちょっとしたアイテムを置いたり工夫をしたりすることで、スペースの有効活用が可能です。ここでは、おすすめの収納アイデアを紹介します。
洗濯機の上は、デッドスペースになりやすい場所です。ランドリーラックを置いて収納スペースを増やすと、洗濯機の上のスペースを有効に活用できます。ランドリーラックには、場所を取らずに大容量の収納場所をつくれるタイプや、狭い隙間に洗剤・タオルなどをまとめて収納できるタイプなど、さまざまな種類があります。
ランドリーラックはデザインも豊富なので、インテリアに合う物を選べば、統一感のある雰囲気でまとめることも可能です。ランドリールームの広さに関わらず、手軽に収納を増やせます。
収納が少ないランドリールームでは、有孔ボードの活用がおすすめです。有孔ボードとは、パンチングボードとも呼ばれる、等間隔で穴が開いている板のことです。有孔ボードを壁面に設置して穴にフックなどを引っ掛けると、いろいろな物を収納できる壁面収納がつくれます。
棚に入れると場所を取るアイロン用品や掃除道具、ごちゃごちゃしがちな小物などは、壁面に吊るす収納や壁面の小物入れにまとめる収納できれいに片付けが可能です。空いている壁一面を収納場所にできるため、収納力が大幅にアップします。
ここまでランドリールームのプランのポイントを解説しましたが、実際の住まいではどこに配置され、どのように使われているのでしょうか。そこで、使い勝手の良いランドリールームがある2つの実例をご紹介しましょう。
共働きのFさんご夫婦は、家づくりにあたり「家事がしやすいこと」と「LDKのそばに学習コーナーを設けること」を希望されていました。
間取りは、採光が期待できる2階に広々としたLDKを配し、キッチンに両隣にはランドリールームと学習コーナーを設けています。キッチンとランドリールームをワンフロアにまとめたことで家事をスムーズに進められ、共働きの忙しい毎日でも家族一緒の時間を大切にできる住まいになりました。
洗濯機をランドリールームに置いたことで、洗濯関連グッズも収納されるため、散らかりがちな洗面所が片付くのもうれしいそうです。
都心のマンション暮らしが長かったRさんは、丘の上にある土地を散歩中に偶然発見。間取りを自由につくれ、マンションのような眺望も叶えられると家づくりを決意されました。
間取りは、眺望を楽しめるようにLDKを3階に配置。2階は浴室・洗面室を中心に配し、ランドリールーム、ウォークインクローゼット、個室を効率よく配置。洗濯や衣類収納を最短距離で行える動線にすることで、忙しいご夫婦の家事の時短をサポートしています。
ランドリールームの使いやすさや換気扇の要否など、気になる疑問への回答をまとめました。
使いやすいランドリールームの広さは、2~4畳程度です。狭すぎると洗濯物の量によってはすべてを干せなかったり、作業をするスペースがなくなったりします。一方広すぎると家事動線が長くなるため、効率良く家事を行えなくなる場合があります。
サンルームは、天井や窓がガラスになっている部屋のことです。洗濯物を干すだけでなく、ガーデニングの場所やくつろげる場所、子どもの遊び場などさまざまな用途に使えます。一方ランドリールームは、洗濯機や物干し、収納までそろっている洗濯作業に特化した部屋です。それぞれメリットやデメリットがあり、ライフスタイルによって使いやすさは異なります。
ランドリールームでは室内で洗濯物を干すため湿度が高くなります。洗濯物の乾きを良くしてカビの発生を防ぐためには、湿気対策をすることが大切です。換気扇と併せて除湿器もしくは部屋干しファンなどを活用するのがおすすめです。
ランドリールームには、物干しユニット、作業台、除湿器、収納棚などがあると便利です。洗濯作業に必要な設備、湿気対策用のアイテムなど、実際にランドリールームでする作業を考慮して決定します。フックで吊り下げ収納ができる網棚や、大容量収納が可能な壁面収納などがあると、スペースを有効活用できます。
サンルームは、ランドリールームよりも多くの用途に使用される部屋
ランドリールームを設置すると、洗濯作業関係の家事効率アップが期待できる
部屋の広さ、ほかの部屋との位置関係など、設置の仕方によって使い勝手が悪くなる