家を新築する際、駐車スペースをどうするかは悩ましい問題ですが、せっかくマイホームを建てるのであれば、愛車との暮らしをストレスフリーに楽しめる家にしたいもの。そんな希望があるのなら、ガレージハウス(ビルトインガレージ、インナーガレージ)を検討してみてはいかがでしょうか?
今回はガレージハウス(ビルトインガレージ、インナーガレージ)のメリットやデメリットを株式会社Atelier-Dの上野さんに教えてもらいました。
住宅の駐車場にはさまざまなタイプがあります。例えば、単純に住宅の敷地内に駐車場として設けられる青空駐車場、柱と屋根のみの構造のカーポート、壁に囲まれたガレージ(倉庫)などがありますが、ビルトインガレージやインナーガレージとは、建物内に設けられたガレージのことを指します。そして、このインナーガレージやビルトインガレージを設けた家のことをガレージハウスと呼びます。
自宅で愛車を眺めたり、ガレージを趣味部屋や大人の秘密基地として使えたりと、車好きにとっては、車のある生活をより楽しむことのできる家として、近年、ガレージハウスは注目を集めており、また、ガレージを組み込まない住宅に比べ予算はかかるものの、駐車場を借りた場合の賃料や、駐車スペース分の土地購入にかかるコストと比較して選択するというケースも多いようです。
屋根だけのカーポートや青空駐車場とは違い、駐車スペースが壁に囲まれているガレージハウスの場合は横殴りのような強い雨風も防ぐことができます。
「雨や風のほかにも、いたずらや盗難から愛車を守る、防犯面のメリットも見逃せません。シャッターや鍵のないカーポートとはセキュリティ面での安心感が違います」(上野さん、以下同)
建物内にガレージが組み込まれているガレージハウスは、住居スペースと車の距離が物理的に近いのもメリット。駐車場と住居の距離が離れていると、天候の悪い日などは特に、車までの移動が億劫なものですが、ビルトインガレージ(インナーガレージ)の場合は住居とつながっているので、雨の日も傘をさす必要がなく、濡れる心配がありません。特に小さい子どもやシニアがいる場合などは、車までの距離が近いことは外出の負担感を大幅に軽減することができます。
また、大きな買い物をしたときも、車と住居の距離が近ければ荷物の出し入れがラク。たくさん買い物をした日も安心です。
土地に建てられる建物の延床面積は容積率によって制限されています。ビルトインガレージ(インナーガレージ)の場合は屋根のない駐車場とは違い、延床面積に含まれますが、延床面積を考える際に、割り引いて換算する緩和措置の対象となるため、延床面積の5分の1を限度として容積率の計算からは除外されます。つまり、同じ容積率の敷地に建物を建てる場合、ビルトインガレージ(インナーガレージ)のある家の方が、延床面積の上限が広くなります。
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なお、この緩和措置は、容積率の計算上の延床面積を割り引くものであり、固定資産税評価の査定においては、登記簿謄本上に記載された延床面積が対象となります。
愛車を近くで眺められる、ガレージを趣味部屋として活用できるのはガレージハウスの醍醐味。車好きにとっては、なによりワクワクできる空間を手に入れられること請け合いです。
「車が好きな人ですと、休日は1日中、趣味部屋のようにしたビルトインガレージ(インナーガレージ)で過ごすという人もいます。ガレージが居住空間の延長のような空間になるので、時間を気にせず、思い立ったときにガレージに足を運んで、作業をすることも可能です。ガラスで仕切って室内側から車を見えるようにして、ショールーム的なつくりにする方も少なくありません」
ガレージハウスにすることで、駐車スペースのセキュリティが確保されることはもちろんですが、車と人の距離が近くなることによって、カーライフがストレスフリーに楽しめるようになるというのが大きなメリットのようです。
ガレージハウス(ビルトインガレージ、インナーガレージ)の場合、住居と同じ建物内でエンジンをかけるため、音や排気ガスなどが気になります。
「エンジン以外にも、シャッターの開閉時に音がします。家族が起きている時間帯であれば大丈夫でも、早朝や深夜などの場合はどうしても気になることがあるので、家族間で生活スタイルが違う場合は、プランニングの段階で部屋の配置に配慮しておくのがポイントです。例えば、寝室からどうしても車を眺めたいなど、音よりも優先順位が高い希望がある場合は別として、寝室や子ども部屋、同居する両親がいる場合は両親の部屋などはガレージから離しておいた方がいですね。
また、シャッターの音が気になる場合は、上部で巻き取るタイプのものではなく、巻かずに天井に沿って扉を収納するオーバースライダータイプのシャッターを選べば音も静かです。その分値段も少し高くなりますが、見た目もすっきりとしてスタイリッシュな雰囲気になります。
次に、排気ガスの問題ですが、居住スペースに排気ガスが入ってこないよう、換気扇は必ずつけるようにしてください。日常生活でも、冬場に暖機運転したい場合は必ずシャッターを開けておきましょう」
建物1階の大部分をガレージが占めるので、玄関や階段の位置などの自由度は下がります。また、ガレージ分、居住スペースも削られることになるので、住みづらい家にならないよう、各居室の配置プランをしっかり立てることが必要です。
さらに、1階に開口部を広くとる必要があるため、建物の強度を高めるための対策が必要になります。「開口部には壁がありません。壁のないガレージ部分は、壁のある居住部分に比べて、建物を支える部分が少なくなり、バランスが悪くなってしまいます。ガレージハウス(ビルトインガレージ、インナーガレージ)をつくる場合は、開口部が広くなる分、梁を太くしたり、強度の高い建材を使ったりするなど、耐久性の対策は不可欠です」
ビルトインガレージ(インナーガレージ)を設けることで、駐車場分の土地の購入費用や、月々の駐車場の賃料を捻出する必要はなくなりますが、やはり建設コストはかかります。
「ガレージの大きさや仕上げなどケースバイケースですが、6坪程度の一般的なサイズのもので、費用は250万~400万円程度かかります。敷地内にカーポートなどを設置する場合は50万程度の予算で1台分の駐車スペースを確保できるので、建設コストの部分で設置を悩む人は多いです」
車生活を便利に楽しむというメリット分のコストアップにはなりますが、家づくりの予算の大きな部分を占めることになるので、家族間できちんと優先順位を話し合っておきましょう。
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ビルトインガレージ(インナーガレージ)を快適に使用するために、照明やシャッター、収納スペースなどについては、実際に使用するイメージを持って選んでおくことが重要です。
「ガレージはシャッターを下ろすと光が入らない真っ暗なスペースになります。車の出し入れの際に困らないよう、最低1カ所は人感センサー付きの照明を設置しておくといいと思います。それに加えて、作業スペースとして活用したい場合などは、作業灯を設置するのもいいですね。
また、シャッターは利便性を考えると電動式がオススメです。手動式のものにすると、車の出入庫の際に毎回車を降りて開閉を行うことになるので、煩わしく感じることもあるでしょう。
さらに、ビルトインガレージ(インナーガレージ)は駐車スペースとしてだけでなく、物置スペースとしても重宝する空間なので、用途に合わせた収納を確保しておくといいでしょう。例えば、収納したいものが多い場合は、車庫の奥を壁で仕切って大容量の収納スペースを設けたり、作業のしやすさを重視するなら、工具などの収納スペースを横の壁に設置したり、ショールームのように使用するなら、自転車などを壁にディスプレイしながら収納できるような工夫をしたりするなど、収納を計画する際のポイントは、使い方をイメージしておくことですね」
ガレージハウスをつくるのにはコストがかかりそうですが、車好きにはやはり憧れの空間。日常に車が欠かせない人は、ストレスフリーなカーライフのために、家づくりの際は検討するのもいいかもしれません。
ガレージハウスは車を守り、カーライフが快適になる、車好きにとっては憧れの住まい
騒音や換気対策、間取りの工夫や耐久性の確保などのため、コストがかかることも
より快適な空間にするため、照明や収納などの工夫をしておくとベター