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玄関ホールは、住まいの第一印象を左右する重要な空間です。おしゃれさだけでなく、使いやすさや快適性も求められる場所だからこそ、設計段階から丁寧に考えることが大切。本記事では、おしゃれで使いやすい玄関ホールにするための基礎知識やデザインのコツをはじめ、後悔しないためのポイントについて実例を交えながら、シーズ・アーキスタディオ 一級建築士事務所の白崎治代さんに伺いました。
玄関ホールとは、玄関ドアを開けて最初に足を踏み入れる空間で、靴を履いたままの「たたき」部分(土間)の先にある、靴を脱いで上がるエリアを指します。たたきは主に靴を履いたまま使う床面のことで、玄関ホールはそのたたきと室内側の床をつなぐ中間領域ともいえます。
「玄関ホールは、廊下や階段へとつながる起点となるため、住まい全体の印象を左右する「顔」のような存在です。そのため、玄関ホールをどのようにしつらえるかはとても重要になります」(白崎さん、以下同)
玄関ホールの広さについては、住宅の規模や間取りによって異なりますが、最低でも1畳程度は確保したいところです。廊下や階段と連続する形で設ける場合、全体で2~3畳ほどの空間になることが多いです。
「狭すぎると出入りが窮屈になり、収納や装飾の自由度も制限されてしまいます。反対に、広すぎても無駄なスペースになりかねないため、適度な広さを見極めることが重要です」
玄関の広さについてもっと詳しく→
玄関の広さの理想は?2畳・3畳の目安と失敗しない間取りのポイントを解説

玄関は家の“顔”と言っても過言ではありません。家の第一印象を決める場所だからこそ、おしゃれな空間にするための6つのポイントを押さえておきましょう。
玄関ホールのデザインは、外観や室内のインテリアと調和させることで、住まい全体に統一感が生まれます。例えば、外壁がモダンな印象なら、玄関ホールも直線的でシンプルなデザインに。ナチュラルテイストの内装なら、木目調の建材やグリーンを取り入れると自然な流れが生まれます。
「色味や素材を揃えることで、違和感のない心地よい空間になります。また、玄関ホールの一面だけ壁の色や素材を変えてアクセントにすると、空間に奥行きが生まれます」
照明は空間の印象を大きく左右する要素です。玄関ホールには、ダウンライトや間接照明を使って壁面を柔らかく照らすと、奥行きと立体感が生まれます。ペンダントライトやスポットライトをアクセントとして取り入れるのも効果的です。
「人感センサー付き照明を採用すれば、帰宅時に自動で点灯し、安心感と利便性を両立できます」
壁紙は室内に占める面積の割合が大きいため、空間の印象を決定づける重要な要素です。白やライトベージュなどの明るい色を基調にすると、清潔感があり、空間を広く見せる効果があります。アクセントクロスを一部に使えば、個性を演出することも可能です。
「最近では、デザイン性に優れている壁紙が豊富に揃っています。おしゃれでありながら汚れが目立ちにくく、掃除しやすい素材を選ぶことで、日々のメンテナンスも楽になりますよ」
玄関ホールの床材は、土足で使う部分と室内側で異なる素材を使い分けるのが一般的です。たたき部分には、耐水性や耐汚性に優れたタイルやモルタル、天然石などが適しています。室内側には、フローリングなどを使うことで、居室とのつながりを自然に演出できます。
「玄関ホールは他の居室に比べると面積が小さいので、思い切って費用が高い素材を取り入れても大きな負担にならず、オススメです。特別感のある空間を演出することができます」
収納は隠すだけでなく、見せることでインテリアの一部として活用できます。壁の一部をへこませたニッチに雑貨やアートを飾ったり、間接照明を組み合わせて飾り棚として使ったりと、空間に奥行きと遊び心が生まれます。
「人が通ったときにぶつからないように、スペースを確保しましょう。玄関ホールが狭い場合はニッチにするとスペースを有効に使うことができます」
採光は玄関ホールの快適性を左右する重要なポイントです。北向きの玄関でも、窓を設ければ自然光が入り、清潔感が生まれます。特に、足元に光が入ると効果的です。ガラスドアや吹き抜けを採用すれば、より明るく開放的な空間になります。ただし、断熱性や防犯性とのバランスを考慮する必要があります。

玄関ホールは毎日使う場所だからこそ、デザイン性だけでなく使いやすさも大切にしたいもの。そこで、使いやすく快適な玄関ホールをつくるために、設計段階で押さえておきたいポイントについて解説します。
玄関ホールは、家族全員が毎日使う場所です。高齢者や小さなお子様がいる家庭では、たたきとの段差の高さに注意が必要です。一般的には15cm程度が理想とされており、段差を極力なくしたい場合でも完全なフラットにすると、砂やホコリが玄関ホールに侵入しやすくなるために少し段差を残すほうが実用的です。手すりの設置や滑りにくい床材の選定も、安全性を高める工夫として有効です。
玄関まわりには、靴や傘、ベビーカー、アウトドア用品など、意外と多くの物が集まります。家族の人数やライフスタイルに応じて、収納計画を立てることが重要です。シューズインクローゼットや扉付き収納を設けることで、生活感を隠しながら使いやすさを確保できます。収納内部にパイプ掛けや棚を設けると、機能性がさらに向上します。
「玄関まわりに収納したい物をあらかじめリストアップした上で、必要な広さや奥行きを確保することが大切です。出し入れのしやすさや動線も考慮しましょう」
昼間の自然光だけでなく、夕方や夜間の照明計画も忘れてはいけません。足元を照らす間接照明や、壁面を照らすダウンライトを組み合わせることで、空間全体が明るくなります。高齢者や小さなお子様がいる家庭では、なるべく明るい照明計画にすることで、安全性への配慮をしましょう。
「照明の色味は、昼白色で明るさを重視するか、電球色で温かみを演出するか、好みに応じて選びましょう」
玄関ホールに窓を設けることで、通風や採光が確保でき、空間の快適性が大きく向上します。ただし、窓の大きさや設置位置によって、防犯性やプライバシーへの影響もあるため、慎重な設計が求められます。
通風を目的とする場合は、開閉可能な縦すべり窓や横すべり窓を選ぶと、効率的に空気を入れ替えることができます。特に、玄関ドアの近くや下駄箱の周辺に設けることで、靴の湿気やにおいを逃がしやすくなります。
防犯面では、窓のサイズや位置に加え、人の侵入が難しい高さに設置したり、開閉制限のある窓や面格子付きの窓を選ぶことで、安全性を高めることができます。
「高窓や地窓を活用すれば、外からの視線を遮りながらも通風を確保できるため、通風・採光とプライバシーとの両立が可能です」
デザイン性だけでなく、掃除のしやすさや耐久性も考慮した素材選びが求められます。濡れた傘やレインコートの水滴がはねることを想定し、撥水性や防汚性のある床材・壁紙を選ぶと安心です。
「玄関ホールの床はフローリングにすることが多いですが、水や汚れに強くするためにたたきと同材(タイルなど)にするケースもあります。また、ビニール製のフロアシートやフロアタイルも、石調やモルタル調などデザインやカラーバリエーションも豊富なので、空間のアクセントにもなります」
玄関ホールは、家の中の動線の起点でもあります。キッチンやインナーガレージ、洗面所などにスムーズにアクセスできるように設計することで、日々の動きが効率的になります。
「複数の出入口がある場合は、それぞれのホールの役割や使い方を明確にし、動線が重ならないよう工夫しましょう」

靴のにおいや湿気がこもりやすい玄関ホールでは、換気と建材の工夫が欠かせません。窓を設けて自然換気を促すほか、24時間稼働の換気扇を設置することで、空気の循環を保てます。また、調湿・消臭機能のある壁材を採用することで、空間全体の快適性が向上します。
「玄関に靴を出しっぱなしにしたくない場合は、換気の行き届いたシューズインクローゼットを設けたり、下足入れの底板に通気口を設けたりすることで中に靴をしまっても、湿気やにおいを軽減できます」
ここでは、玄関ホールのアイデアを紹介。プランニングの参考にしてみましょう。
玄関ホール横に和室を設けたプラン。襖を開ければ玄関ホールと一体化した広々とした空間になります。客間としても使えるため、プライベート空間に通さずに玄関先で来客対応することができます。

玄関の壁面に棚を設けて、写真やお気に入りのアートを飾るスペースに。棚板の下のパイプに傘をかけられるようにして、限られたスペースを有効活用しています。

3階建ての狭小住宅のため、玄関ホールを最小限に抑えつつ大容量のシューズクローゼットを設けたプラン。シューズクローゼットには扉を設けず、扉の開閉スペースをなくし、収納量を最大限に取れるように工夫されています。階段の壁面に窓を設けて、明るい空間に。

玄関・階段とリビングへの扉が立体的に重なるプラン。階段の踏板が南からの陽光をルーバーで遮るような役割を果たし、光と影を演出した玄関ホールになっています。

玄関ホールは「たたき」につながる室内側の空間であり、住まいの印象や動線の起点として重要な役割を果たす。広さは最低1畳、理想は2~3畳程度が目安
おしゃれな玄関ホールをつくるには、外観や内装との統一感、照明や壁紙・床材の選定、採光の工夫など、デザイン性と機能性の両立がポイント
後悔しない玄関ホールづくりには、収納計画、バリアフリー設計、照明と換気の工夫、生活動線の最適化など、家族構成やライフスタイルを見据えることが大切