2025年~2026年の住宅建築費はどうなる?ウッドショックの今後と高騰の理由

最終更新日 2025年10月16日

ウッドショックとは?2024年はどうなる?不動産価格の見通しを不動産のプロに聞く

数年前に生じた「ウッドショック」は、住宅の価格高騰の一因となりました。現在もウッドショックや住宅価格の高騰は続いているのか、2025年~2026年の価格の見通しはどうなるのかなどを、住宅・不動産業界に詳しい竹内英二さんに教えていただきました。

ウッドショックとは?

ウッドショックとは「輸入木材の価格高騰」のこと

「ウッドショック」とは、いくつかの原因により輸入木材の需要が高まったため、木材価格が高騰している現象のことを表す言葉です。1970年代に石油価格が高騰した際に「オイルショック」と呼ばれたことから、このような言葉で表しているようです。

輸入木材のイメージ
(画像/PIXTA)

コロナ禍以降の国際情勢の変化が木材価格を直撃

ウッドショックという言葉を多く見聞きするようになったのは、2021年春ごろからでした。

「2020年に発生した新型コロナウイルス感染症を機に、世界中でテレワークが普及しました。家で快適に仕事をするために広い戸建住宅に住みたいというニーズが、アメリカや中国などで高まった結果、戸建住宅の建材となる木材需要が高まり、価格が一気に高騰したのです。

また、国際情勢の変化もウッドショックを複雑化させる一因となりました。
ウクライナ侵攻によるサプライチェーンの混乱や、世界的なエネルギー価格の高騰が引き起こした物流コストの上昇は、輸入木材の価格をさらに押し上げる結果となりました。この影響は、木材だけでなく、あらゆる資材や商品に波及し、先進国を中心とした世界的な物価高の引き金ともなったのです」(グロープロフィット 竹内英二さん。以下同)

つまり、ウッドショックは、コロナ禍による住宅ニーズの変化に始まり、国際情勢の不安定化や物流の停滞、それに伴う物価高が複合的に絡み合って引き起こされた問題でした。

現在もウッドショックは続いている?

ウッドショックは収束も木材価格は高止まりの状態

では、世界的な木材不足は、現在どうなっているのでしょうか?

「ウッドショックの最大の要因であった海外の住宅需要は、落ち着きを見せています。そのため、当時騒がれていた主たる原因は終息状況にあり、現在では別の原因により高騰が発生しています」

しかし、木材価格が元の水準に戻ったわけではありません。為替の変動や物流コストは依然として高い水準を維持しており、木材価格も高止まりの状態が続いているのが現状です。

ウッドショックは、家の購入や建築に影響がある?

ウッドショックは住宅の建築工事費を上昇させた

動産高騰のイメージ
(画像/PIXTA)

ウッドショックによる輸入木材の価格上昇は、特に戸建住宅の建築工事費に影響を与えました。

「ローコストの注文住宅や建売住宅は、輸入木材を原料とする木製建材を多く使って家を建てています。つまり、当時ウッドショックの影響を強く受けたのは、ローコスト住宅を建築・販売しているハウスメーカーや工務店と、その購買層でした」

影響は中古の戸建住宅の価格にも

ウッドショックにより新築住宅の建築工事費が高くなったため、予算オーバーで買えない人が中古の戸建住宅へ流れる傾向が見られました。首都圏では、埼玉や千葉にある中古戸建住宅のニーズが高まり、価格が上昇しました。

2025年~2026年以降、住宅価格はどうなる?

建築工事費は上がり続ける可能性が高い

住宅価格は、大きく分けると建築工事費と土地代からなります。
ウッドショックは収束傾向にあるものの、国土交通省のデータを見ると、木造・非木造問わず、建築工事費は依然として上昇を続けています。

建設工事費の変動率(2015年度の建設工事費を100とした場合)

木造住宅/非木造住宅の推移
建設工事費デフレーター(2015年度基準)「木造住宅/非木造住宅」の推移/出典:国土交通省

住宅の建築工事費の上昇は、木材をはじめセメントや鉄骨など、建築材の全体的な高騰と、建築工事の職人不足による人件費アップが大きな要因です。特に人件費については、職人不足が解消されない限り上がり続ける可能性が高いと考えられます。

円安も建築工事費を押し上げている

住宅建築に必要な木材や鉄は輸入に頼っているのが現状です。輸入建築材の価格は、コロナ禍以降の需要拡大や物流混乱に加えて、昨今の不透明な国際経済、貿易環境により、依然として不安定な状況が続いています。

さらに、2022年春頃から続く円安傾向も、輸入品全般の価格上昇の要因となっています。
「円安を是正するためには、金利の引き上げが必要です。しかしながら、日本は政府が大きな借金を抱えているため、中央銀行である日銀が機動的に金利を上げることができません。資本主義国家でありながら、中央銀行が物価高騰にブレーキをかけられない状況にあります」

住宅のハイスペック化も上昇の一因に

エコ住宅のイメージ
(画像/PIXTA)

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2025年4月から原則すべての新築住宅には省エネルギー基準への適合が義務付けられています。

住宅の省エネルギー基準とは、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)によって定められた、建築物が備えるべき省エネルギー性能の確保のために必要な、建築物の構造や設備に関する基準です。

省エネ基準を満たすためには、断熱性の高い窓や建材を用いる、太陽光発電システムなど創エネ設備を設置する、空調や給湯などは省エネ性能の高い機器を採用する必要があります。このように住宅を“ハイスペック”にすると当然建築工事費は高くなり、これまでの一般的な住宅と比べると1割程度アップするそうです。

「2025年4月以降、全ての新築住宅は、省エネ基準適合住宅とすることが義務化されました。従来よりも省エネ性能を高める必要性が出てきたことも、建築費高騰の原因となっています。

さらに2030年にはZEH水準の住宅にすることが義務付けられており、省エネ性能の仕様がさらに高まることから、今後も建築費が高騰することが見込まれます」

土地の価格も上昇傾向にある

建築工事費は、職人の人件費アップや円安の影響などで今後も上昇する可能性が高そうですが、土地の価格はどうでしょうか。

国土交通省の令和7年地価公示データを見ると、地域により差はあるものの、住宅地の価格は全国総じて2年連続で上昇しています。都市中心部や生活利便性に優れた地域はもちろんですが、生活スタイルの変化によりニーズが多様化し、郊外へと上昇範囲が拡大しています。

住宅価格の上昇に対してとれる対策は?

家のお金の疑問 ふきだしと電卓
(画像/PIXTA)

補助金制度をチェックしておこう

上昇が続きそうな住宅価格ですが、国や地方公共団体は、住宅取得を促進する補助金制度を用意しています。ここでは省エネ住宅や長期優良住宅の取得、国産木材を利用した住宅建築で利用できる制度を紹介しますが、年度によって要件や申請期間、補助金額が変わるので、詳細は各団体のホームページで確認してください。

子育てグリーン住宅支援事業

エネルギー価格高騰の影響を受けやすい子育て・若者夫婦世帯が、高い省エネレベルを有する新築住宅の取得を支援するために実施している事業です。補助額上限は住宅の種類や建築地域により異なり、ZEH水準住宅は40万円、長期優良住宅は80万円となります。

戸建ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH※) 支援事業

2030年度に家庭部門からのCO2排出量約7割削減(2013年度比)に貢献するなどを目的に実施している事業です。ZEHのレベルにより補助額上限は変わり、ZEH住宅は55万円、ZEH以上の省エネ・再エネ性を確保したZEH+住宅は90万円で、追加補助も用意されています。

※ZEH:住宅でつくったエネルギーのほうが、1年間の住宅におけるエネルギー消費量、もしくは二酸化炭素排出量よりネット(正味)で多い、または、その差がおおむねゼロ以下になることを目指す住宅のこと

エリアを見直し、中古住宅もチェック

全体的に住宅価格が上昇傾向とはいえ、具体的にどの程度上がっているのかは、エリアや物件によって異なります。まずは無理なく買える予算を決めて、その価格でどんな家が買えるのか調べてみることをおすすめします。

例えば、SUUMOの「価格相場から探す」機能を使うと、物件の価格帯が低い順に「駅」または「市町村」をピックアップできます。まず、新築一戸建てで予算に合うエリアを探してみて、通勤や広さなどの条件に合う物件がなかなか見つからない場合は、中古住宅(マンション・一戸建て)まで条件を広げて探すのも方法の一つです。

SUUMO検索画面
(画像/SUUMO)

2025年~2026年、住宅取得で注意したいことは?

住宅ローン金利の動向に注目を

住宅ローン金利の動向イメージ
(画像/PIXTA)

住宅取得の際、ほとんどの方は住宅ローンを利用するでしょう。2025年~2026年以降は、住宅ローンの金利の動きにも注意が必要です。

史上最低金利が続いた住宅ローン金利ですが、2022年から全期間固定型金利が上昇、そしてこれまで0.5%未満だった変動型金利も、2024年10月以降徐々に上がっています。

金利は日本銀行(日銀)の金融政策が大きく関係します。
固定金利は、主に新規発行10年物国債(10年国債)の利回りに連動しています。10年国債の利回りは国債価格が下がると高くなるため、日銀は国債を大量購入して利回りを低く維持する金融政策を実施していました。しかし2024年7月以降、長期国債買入れの減額に方向転換したのです。この影響を受け、10年国債の利回りはこの1年ほどで約0.6ポイントほど上昇し2025年8月現在は1.5%前後で推移。民間住宅ローンの長期金利も軒並み上昇しています。

かつて0.5%未満が多かった住宅ローンの変動金利も、2024年10月以降徐々に上昇しています。そして、現在、さらなる金利上昇の可能性が否めない状態です。変動金利は短期プライムレート(短プラ)に連動していますが、この短プラに影響を与える「政策金利」が、今後引き上げられる可能性があるためです。

「日銀が金利を上げれば、建築費をはじめとした物価高が収まることが期待できますが、現状では日銀が大胆に金利を上げる気配はありません。政府が本格的に財政再建に取り組み、金利を上げても国が国債の利払い負担に耐えられるようになれば、金利を上げることで建築費を抑えられることが期待できます」

むやみに先延ばしせず、自分たちのタイミングを重視しよう

建築費の上昇が続く中、家を建てるタイミングをどう見極めればいいのでしょうか。

「この10年間、建設業界では『住宅の建築工事費は今が一番安い』と言われています。これは『将来に比べて今が安い』ということ。住宅建築費の高騰は複合的な要因がからみあった構造的な問題で、今後下がる可能性は低いと考えられるのです」

さらに今は、住宅ローン金利の動向にも注意が必要です。

「住宅取得を検討するとき、住宅価格の推移や金利動向を意識することは大切ですが、『家が欲しい』と思ったときが、その人の取得のベストタイミングだと思います。特に家族で暮らすマイホームを取得する場合、不動産投資をする訳ではないので、必要な時に取得するのが一番でしょう。

家族のライフスタイルを考慮したうえで、自分たちのタイミングを重視してマイホーム取得計画を進めてください」

まとめ

ウッドショックとは、いくつかの原因により輸入木材の需要が高まったため、木材価格が高騰している現象のことを表す言葉。新築戸建住宅の価格には直接的、中古戸建住宅には間接的に影響を与えた

アメリカや中国など海外の住宅需要の落ち着きを受け、日本でのウッドショックは収束傾向にある

住宅価格は工事職人の人件費高騰や円安、住宅のハイスペック化、土地価格の上昇基調などにより、下がる可能性は低い

SUUMOコンテンツスタッフ
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