寒冷地でよく見かける「二重サッシ」とは、どのようなものなのでしょうか? 二重サッシと二重窓や内窓との違い、メリット・デメリット、新築で二重サッシが採用されるケースなどについてLIXILの酒井亮介さんに話を聞きながら紹介します。
二重サッシというのは、外側の窓と室内側の窓というように、窓が二重になっているものを指します。
二重サッシと二重窓は同じものです。なお、二重サッシのことを「内窓」という場合もありますが、厳密には違います。
「二重サッシの内側の窓が、内窓です。既存の窓に、リフォームで内窓を追加して二重サッシにするケースが多いため、内窓=二重サッシ(二重窓)のように言われることがあります」(酒井さん、以下同)
窓が二重と聞いて、複層ガラスを思い浮かべる人もいると思いますが、二重サッシ(二重窓)と複層ガラスは別物です。
「複層ガラスは、ガラスの部分が二重になっているものを指します。窓としては一重なので、二重サッシ(二重窓)とは違います」
二重サッシは、外側の窓と内窓というように、窓が二重になっており、窓と窓との間に空気層ができる構造になっています。この空気層が、二重サッシのさまざまなメリットにつながっています。
二重サッシに使用されるガラスの種類はさまざまです。
・ガラス板1枚の単板(たんぱん)ガラス
・ガラスが二重になっている複層ガラス
・複層ガラスの内側に特殊な金属膜をコーティングして機能性を高めたLow-E複層ガラス
などがあります。
さらに、防犯性能を高めたガラスや、目隠し効果のある型ガラス、より断熱性の高いトリプルガラスなどを選べるケースもあります。
二重サッシの外側の窓と内窓との間には、空気層ができます。この空気層が断熱性を高めます。高い断熱性により、冬には室内のあたたかい空気が逃げるのを防ぎつつ、室外の冷気が室内に伝わるのを防ぎます。
二重サッシは断熱性が高いため、室外の気温の影響を受けにくくなり、結露の発生を抑えることができます。
「発生した結露を放っておくと、カビやダニが繁殖して、アレルギーや喘息などの原因になることがあるため、結露防止効果は大きなメリットです」
ただし、二重サッシは、外側の窓と内窓が密閉されているわけではないので、外側の窓では結露が発生する場合があります。結露が発生した場合、こまめに拭き取る必要があります。
二重サッシにすると、窓と窓の間の空気層が防音壁の役割を果たし、遮音性が高まります。
「交通量の多い場所などに使用すると効果的です」
窓が二重になっている分、泥棒が侵入するまでの時間を稼ぐことができ、場合によっては侵入を未然に防ぐ効果も期待できます。
「さらに、割れにくい防犯ガラスを選ぶことで、防犯効果を高めることができます」
断熱性が上がるため、エアコンの効きも良くなり、光熱費を抑えることができます。
「LIXILの試算では、一般的な戸建て住宅で毎月の暖冷房費が約1400円節約でき、10年間で約16万円も光熱費がお得になることがあります」
省エネ効果を高めるリフォームには、各自治体によって補助金制度が設けられている場合がありますが、2023年現在は国の補助金制度「住宅省エネ2023キャンペーン」が実施されています。
住宅省エネ2023キャンペーンのうち、「先進的窓リノベ事業」と「こどもエコすまい支援事業」において窓の設置リフォームが対象になっています。詳しくは各事業のサイトをチェックしてみてください。
住宅リフォームがお得になる制度について、詳しくはこちら→
2022年度版住宅リフォーム補助金や助成金と減税、こどもみらい住宅支援事業を徹底解説!
通常使われる一重の窓に比べると、導入コストは高くなります。
「ただし、断熱効果によって光熱費が抑えられるので、ランニングコストは低くなりますし、補助金なども上手に使えば、導入コストも抑えられます。LIXILでは、既存の窓に内窓を取り付ける場合の費用(商品代+工事費)の目安を公開していますので、参考にしてください」
窓が二重になっているため、通常の窓に比べて、換気などのために開閉する際は、多少面倒になります。
外側の窓と内窓の間には、ホコリがたまりやすく、掃除には手間がかかります。さらに、外側の窓の結露のケアも必要なので、こまめに掃除をする必要があります。
メーカーにもよりますが、二重サッシが適用できる窓は、引き違い窓が基本です。一部、FIX窓や開きタイプの窓に対応しているものもありますが、サイズも含め、事前の確認が必要です。
二重サッシにするためには、窓枠に一定の奥行が必要です。
「リフォームで既存の窓に内窓を取り付けたい場合などは、事前に施工できるかどうか、現地確認が必要になります」
窓が二重になるため、通常の窓に比べると見た目がすっきりしない点はデメリットと言えるかもしれません。
「ただし、今はデザイン性を高めた内窓もありますので、見た目が気になる方は、そういった窓を検討してもいいでしょう」
二重サッシは、リフォームで既存の窓に内窓を取り付けるケースが多いのですが、新築で二重サッシを採用するとしたら、どのようなシーンが考えられるのか、紹介します。
道路や線路脇の住宅で、室外の音が気になる場合は、二重サッシにして遮音性を高めることで、騒音対策になります。
室内で楽器を演奏する場合などは、二重サッシにした防音室を設置することで、外に音が漏れにくくなります。
北海道や東北などでは、昔から断熱性の高い二重サッシが使われてきました。
「ただし、最近は二重にしなくても断熱性の高いサッシやガラスがあるため、新築時から二重サッシにする人は、あまり多くないでしょう」
それでは既にある窓を二重サッシにする場合、費用はどれくらいかかるのでしょうか。
前述のLIXILの調査によると、既存の窓に内窓を追加して二重サッシにした場合、商品代に工事費を加えた窓1つあたりの費用の目安は、下の表のようになります。
窓の大きさ | 参考価格例 (商品代+工事費、税込) |
---|---|
高さ60~100cm×幅100~150cm | 約7万円~11万円 |
高さ100~140cm×幅150~200cm | 約8万円~21万円 |
高さ190~245cm×幅200cm | 約11万円~29万円 |
最後にあらためて酒井さんに、二重サッシを選ぶときのポイントを聞きました。
「窓が二重になっていることに抵抗を感じる人もいると思いますが、二重サッシにすることで断熱性も上がりますし、省エネになって光熱費も抑えられます。さらには、CO2削減、地球温暖化対策にもつながります。今はデザイン性の高い二重サッシもあるので、断熱性や遮音性などのメリットに魅力を感じたら、選択肢として検討してみてください」
二重サッシ(二重窓)と複層ガラスは別の物
二重サッシは断熱性や遮音性が高く、メリットが豊富
対応している窓の種類や施工の可否など、事前確認が必要