二重サッシや二重窓とは? 断熱性や遮音性を発揮できるシーンも紹介!

最終更新日 2023年03月29日
二重サッシや二重窓とは? 断熱性や遮音性を発揮できるシーンも紹介!

寒冷地でよく見かける「二重サッシ」とは、どのようなものなのでしょうか? 二重サッシと二重窓や内窓との違い、メリット・デメリット、新築で二重サッシが採用されるケースなどについてLIXILの酒井亮介さんに話を聞きながら紹介します。

二重サッシとは? 二重窓や内窓、複層ガラスとの違い

二重サッシというのは、外側の窓と室内側の窓というように、窓が二重になっているものを指します。

二重窓や内窓との違い

二重サッシと二重窓は同じものです。なお、二重サッシのことを「内窓」という場合もありますが、厳密には違います。

「二重サッシの内側の窓が、内窓です。既存の窓に、リフォームで内窓を追加して二重サッシにするケースが多いため、内窓=二重サッシ(二重窓)のように言われることがあります」(酒井さん、以下同)

二重サッシ(二重窓)と内窓のイラスト
窓が二重になっているものが二重サッシ(二重窓)。その室内側の窓が内窓

複層ガラスとの違い

窓が二重と聞いて、複層ガラスを思い浮かべる人もいると思いますが、二重サッシ(二重窓)と複層ガラスは別物です。

「複層ガラスは、ガラスの部分が二重になっているものを指します。窓としては一重なので、二重サッシ(二重窓)とは違います」

複層ガラスのイラスト
複層ガラスは、ガラスの部分が二重になっている

二重サッシの構造

二重サッシは、外側の窓と内窓というように、窓が二重になっており、窓と窓との間に空気層ができる構造になっています。この空気層が、二重サッシのさまざまなメリットにつながっています。

二重サッシの構造を説明するイラスト
二重サッシの外側の窓と内窓との間には空気層ができる

使用されるガラスの種類

二重サッシに使用されるガラスの種類はさまざまです。
・ガラス板1枚の単板(たんぱん)ガラス
・ガラスが二重になっている複層ガラス
・複層ガラスの内側に特殊な金属膜をコーティングして機能性を高めたLow-E複層ガラス
などがあります。

さらに、防犯性能を高めたガラスや、目隠し効果のある型ガラス、より断熱性の高いトリプルガラスなどを選べるケースもあります。

二重サッシに使用されるガラスの例
二重サッシに使用されるガラスの例
二重サッシには、さまざまな種類のガラスが使用される(図/LIXIL提供の画像をもとにSUUMO編集部で作成)

二重サッシのメリットは?

断熱性

二重サッシの外側の窓と内窓との間には、空気層ができます。この空気層が断熱性を高めます。高い断熱性により、冬には室内のあたたかい空気が逃げるのを防ぎつつ、室外の冷気が室内に伝わるのを防ぎます。

通常の窓と二重サッシの室内側表面温度の比較(冬季)
通常の窓と二重サッシの室内側表面温度の比較(冬季)
室外温度0度、室内温度20度の試験結果。二重サッシの方が断熱性が高いことがわかる(図/LIXIL提供の画像をもとにSUUMO編集部で作成)

結露防止

二重サッシは断熱性が高いため、室外の気温の影響を受けにくくなり、結露の発生を抑えることができます。

「発生した結露を放っておくと、カビやダニが繁殖して、アレルギーや喘息などの原因になることがあるため、結露防止効果は大きなメリットです」

ただし、二重サッシは、外側の窓と内窓が密閉されているわけではないので、外側の窓では結露が発生する場合があります。結露が発生した場合、こまめに拭き取る必要があります。

結露をタオルで拭き取るイメージ
二重サッシには結露防止の効果もある(画像/PIXTA)

遮音性

二重サッシにすると、窓と窓の間の空気層が防音壁の役割を果たし、遮音性が高まります。

「交通量の多い場所などに使用すると効果的です」

二重サッシで騒音が気にならない様子
二重サッシにすると遮音性が高まる

防犯効果

窓が二重になっている分、泥棒が侵入するまでの時間を稼ぐことができ、場合によっては侵入を未然に防ぐ効果も期待できます。

「さらに、割れにくい防犯ガラスを選ぶことで、防犯効果を高めることができます」

二重サッシを前に侵入を諦める泥棒のイメージ
二重サッシには防犯効果もある

経済性

断熱性が上がるため、エアコンの効きも良くなり、光熱費を抑えることができます。

「LIXILの試算では、一般的な戸建て住宅で毎月の暖冷房費が約1400円節約でき、10年間で約16万円も光熱費がお得になることがあります」

二重サッシによる節約イメージ
二重サッシにすると光熱費が抑えられる

リフォームなら補助金が出る

省エネ効果を高めるリフォームには、各自治体によって補助金制度が設けられている場合がありますが、2023年現在は国の補助金制度「住宅省エネ2023キャンペーン」が実施されています。
住宅省エネ2023キャンペーンのうち、「先進的窓リノベ事業」と「こどもエコすまい支援事業」において窓の設置リフォームが対象になっています。詳しくは各事業のサイトをチェックしてみてください。

■住宅省エネ2023キャンペーンとは?

住宅省エネ2023キャンペーンとは、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、各家庭の省エネを推進する目的で新たに創設された3つの補助事業の総称です。

<3つの補助事業>
  • 【窓対象】こどもエコすまい支援事業:リフォームはすべての世帯を対象に幅広く支援
  • 【窓対象】先進的窓リノベ事業:断熱性能の高い窓の交換リフォームに特化して高い補助額で支援
  • 給湯省エネ事業:省エネ性能が高い高効率給湯器の設置に特化して支

各補助金について、同一箇所の工事を重複して申請することはできません。なお、同じ性能の窓でも、こどもエコすまい支援事業しか対象にならない場合と、先進的窓リノベ事業のほうが補助額が高くなる場合があります。詳細は、必ずキャンペーンサイトをご参照ください。

住宅省エネ2023キャンペーン総合サイト(国土交通省・経済産業省・環境省)

住宅リフォームがお得になる制度について、詳しくはこちら→
2022年度版住宅リフォーム補助金や助成金と減税、こどもみらい住宅支援事業を徹底解説!

二重サッシのデメリットは?

コストが高い

通常使われる一重の窓に比べると、導入コストは高くなります。

「ただし、断熱効果によって光熱費が抑えられるので、ランニングコストは低くなりますし、補助金なども上手に使えば、導入コストも抑えられます。LIXILでは、既存の窓に内窓を取り付ける場合の費用(商品代+工事費)の目安を公開していますので、参考にしてください」

既存の窓に内窓を追加して二重サッシにするコスト目安
既存の窓に内窓を追加して二重サッシにするコスト目安。2020年10月時点の“リクシルPATTOリフォーム”サービスショップ(青森、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪及び福岡の株式会社LIXILトータルサービス直営店)の実勢価格(税抜)の調査をもとに、調査結果の価格データに消費税10%を上乗せし、上下各10%を捨象した、中央帯の80%の価格に基づき千円台を四捨五入し算出した参考価格。工事の内容は現地調査・配送・取付諸経費を含む(図/LIXIL提供の図を元にSUUMO編集部で作成)

開閉が面倒

窓が二重になっているため、通常の窓に比べて、換気などのために開閉する際は、多少面倒になります。

二重サッシの開閉のイメージ
換気などのときに開閉するのが面倒

掃除の手間がかかる

外側の窓と内窓の間には、ホコリがたまりやすく、掃除には手間がかかります。さらに、外側の窓の結露のケアも必要なので、こまめに掃除をする必要があります。

二重サッシの掃除のイメージ
二重サッシの掃除には手間がかかる

窓の種類が限定される

メーカーにもよりますが、二重サッシが適用できる窓は、引き違い窓が基本です。一部、FIX窓や開きタイプの窓に対応しているものもありますが、サイズも含め、事前の確認が必要です。

内倒し窓のイメージ
内側に倒して開けるタイプの窓は二重サッシにできない(画像/PIXTA)

施工できないケースもある

二重サッシにするためには、窓枠に一定の奥行が必要です。

「リフォームで既存の窓に内窓を取り付けたい場合などは、事前に施工できるかどうか、現地確認が必要になります」

内窓の取り付け現地確認の様子
内窓を取り付けられないケースもある(画像/PIXTA)

見た目がすっきりしない

窓が二重になるため、通常の窓に比べると見た目がすっきりしない点はデメリットと言えるかもしれません。

「ただし、今はデザイン性を高めた内窓もありますので、見た目が気になる方は、そういった窓を検討してもいいでしょう」

デザイン性の高い内窓のイメージ
今はデザイン性を高めた内窓もある(画像提供/LIXIL)

新築で二重サッシの採用をおすすめするシーン

二重サッシは、リフォームで既存の窓に内窓を取り付けるケースが多いのですが、新築で二重サッシを採用するとしたら、どのようなシーンが考えられるのか、紹介します。

道路や線路脇の住宅

道路や線路脇の住宅で、室外の音が気になる場合は、二重サッシにして遮音性を高めることで、騒音対策になります。

道路や線路からの騒音に頭を抱えているイメージ
二重サッシの遮音効果で、道路や線路脇の騒音対策

防音室

室内で楽器を演奏する場合などは、二重サッシにした防音室を設置することで、外に音が漏れにくくなります。

窓辺でピアノを練習しているイメージ
音楽を演奏する際の防音室にも二重サッシは有効

寒冷地

北海道や東北などでは、昔から断熱性の高い二重サッシが使われてきました。

「ただし、最近は二重にしなくても断熱性の高いサッシやガラスがあるため、新築時から二重サッシにする人は、あまり多くないでしょう」

二重窓の外に雪が降っているイメージ
寒冷地では二重サッシが使われてきた

二重サッシの費用目安

それでは既にある窓を二重サッシにする場合、費用はどれくらいかかるのでしょうか。
前述のLIXILの調査によると、既存の窓に内窓を追加して二重サッシにした場合、商品代に工事費を加えた窓1つあたりの費用の目安は、下の表のようになります。

既存の窓に内窓を追加して二重サッシにする場合の参考価格例
窓の大きさ 参考価格例
(商品代+工事費、税込)
高さ60~100cm×幅100~150cm 約7万円~11万円
高さ100~140cm×幅150~200cm 約8万円~21万円
高さ190~245cm×幅200cm 約11万円~29万円
※引き違い一般ペアガラスの場合、ふかし枠などのオプションはなし。2020年10月時点の“リクシルPATTOリフォーム”サービスショップ(青森、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪及び福岡の株式会社LIXILトータルサービス直営店)の実勢価格(税抜)の調査をもとに、調査結果の価格データに消費税10%を上乗せし、上下各10%を捨象した、中央帯の80%の価格に基づき千円台を四捨五入し算出した参考価格。工事の内容は現地調査・配送・取付諸経費を含む

二重サッシを選ぶときのポイント

最後にあらためて酒井さんに、二重サッシを選ぶときのポイントを聞きました。

「窓が二重になっていることに抵抗を感じる人もいると思いますが、二重サッシにすることで断熱性も上がりますし、省エネになって光熱費も抑えられます。さらには、CO2削減、地球温暖化対策にもつながります。今はデザイン性の高い二重サッシもあるので、断熱性や遮音性などのメリットに魅力を感じたら、選択肢として検討してみてください」

まとめ

二重サッシ(二重窓)と複層ガラスは別の物

二重サッシは断熱性や遮音性が高く、メリットが豊富

対応している窓の種類や施工の可否など、事前確認が必要

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取材・文/福富大介(スパルタデザイン) イラスト/青山京子
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