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仏様になったご先祖様の位牌をご本尊の傍に置き、毎日お参りするためにある「仏壇」。家庭内のお寺として神聖な意味を成していますが、家を建てるにあたってどこに仏壇を置いたらいいかわからない人も多いはず。そこで、本記事では仏壇を置くのにふさわしい方角や場所、仏具やお供え物の飾り方などについてプロが解説。家づくりの際に、仏壇を置く場所も検討しましょう。
「仏壇(ぶつだん)」は、寺院の本堂にある御本尊を安置する内陣を小さな箱型にしたもの。“小さなお寺”のような存在で、各家庭が信仰する宗派の御本尊をお祀りします。
亡くなったご先祖様を祀り、故人を弔うためのものでもありますが、実は亡くなった人がいない場合でも購入してOK。生前に仏壇を買うことに抵抗感がある人もいるかもしれませんが、先述したように仏壇は家庭に御本尊を安置するものなので、なんら問題はないのです。
では、仏壇はどこに配置するのがよいのでしょう。
基本的には、
など、毎日仏壇に手を合わせやすいところを選ぶのがベストです。
反対に、
など、落ち着いてお参りができない場所や仏壇を傷めやすい環境は不向き。仏壇は木製で繊細なものなので、カビの発生や日焼け、ひび割れの原因にもなる場所は避けましょう。
また、仏壇の扉を開いた状態で置けるよう、左右に十分なスペースを確保することも大切なポイント。仏壇は普段から扉を開けておくため、約7.5cm~15cmほどの幅を確保しておくと安心です。

仏壇を配置するときには、「高さ」が重要なポイントになります。お参りするときに、御本尊の位置がお参りする人の目の高さより少し上になるように配慮しましょう。
もうひとつ、仏壇を置くときに注意したいのが神棚との位置関係です。神棚とは、主に神道においてお神札を納めて神様を祀る棚のこと。自宅や会社などに簡易的に設けた“小さな神社”のような位置付けです。
仏壇と神棚を同じ家に配置する場合は、どちらも尊重するという観点から上下や向かい合わせになるような配置は避けましょう。また、床の間の反対側にも置かないようにします。
仏壇の置き場所や向きについて、さまざまな考え方があり、家の方角や間取りによって適した場所が見つからず、迷ってしまうかもしれません。その場合には、ルールにとらわれ過ぎず、まずは日常でのお参りのしやすさを優先するなど、フレキシブルに考えるようにしましょう。
仏壇のデザインは、以下の写真のとおり、漆を施して内部を金箔などで仕上げた「金仏壇」、木材の木目を活かした伝統的なデザインの「唐木仏壇」、モダンなインテリアにも馴染む現代風の「家具調仏壇」の3タイプに分けられます。
浄土真宗は金仏壇といったように、宗派や地域によって仏壇の様式が決まっている場合もありますが、基本的にはライフスタイルやデザインの好みなどから自由に選択可能です。

仏壇にはタンスなどの上に置く上置きタイプと、床や畳に直接置く台付きタイプがあるので、どこに置くかによっても選べる仏壇が変わってきます。台付きタイプは高さ120~130cm×幅45~55cm×奥行40cm前後が目安。お位牌の大きさや数などに合わせて仏壇のサイズを選びましょう。
仏壇は、素材やデザイン、サイズなどによって価格が大きく異なります。手ごろなものだと30万円程度からありますが、希少性の高い木材を使用していたり、細やかな装飾を施していたりする場合は100万円以上になることも。
仏壇の予算を考える際は、仏壇本体の価格だけでなく、御本尊、お位牌、仏具も合わせた予算で検討しましょう。
仏壇を置く方角については諸説ありますが、一般的にはあまり気にしすぎなくてよいとされています。とはいえ、「なんとなくで配置するのはちょっと……」と迷うこともあるでしょう。これからご紹介する考え方を参考に、配置する方角について考えてみましょう。
なお、風水などを気にする人もいますが、仏教とは別軸の考え方なので、気にしなくても問題ありません。
特定の方角に配置すべきという考え方は、大きく「南向き(南面北座説)」「東向き(東面西座説)」「本山向き(本山中心説)」の3つに分類されます。それぞれの考え方や理由を解説します(いずれも諸説あり)。
仏壇を「南向き」に置く考え方。古代中国で王をはじめとする高貴な人物が南向きに座っていたことから、日本でも取り入れられたとされる。仏壇も南向きに置いて、仏様を祀る。
仏壇を「東向き」に置く考え方。インドからの影響を受けたもので、「日が昇る東は立身出世する縁起の良い方角であるから」や「西のかなたにある極楽浄土を拝めるように」など、理由についてはさまざまな説がある。
宗派を統括する中心的な寺院がある本山にある方角に向けて仏壇を置く考え方。そのため、住む場所や部屋の位置などによって仏壇の方角が異なる。
仏壇の方角にこだわらない考え方として、「春夏秋冬説」というものもあります。
方角を季節になぞらえ、どの方向に向けてもよいという考え方。「ご先祖様が安らかに過ごせるのならばどのような方角でも構わない」「『四季をはじめとするすべての事象は理にかなっている』という仏の教えから」など、理由については諸説ある。
春(東):万物のはじまり
夏(南):実を結び
秋(西):収穫の時期を迎え
冬(北):収める
上記のように、それぞれの方角に異なる意味合いがある。
信仰する宗派によっては、特定の方角への配置を推奨している場合があります。各宗派による違いを見ていきましょう。なお、先祖代々が依頼しているお寺(=菩提寺)がある場合は、その菩提寺に確認しましょう。
「南向き」を推奨。仏教を開いた釈迦が、説法をする際に南向きに座っていたためだといわれている。
仏壇は「東向き」に置くことが多い。これらの宗派における信仰の対象、阿弥陀如来が西方浄土(西側の方角)にいるとされており、その方角に向かって祈れるようにという意味がある。
真言宗では、本山のある高野山の金剛峰寺に向かって仏壇を置く本山中心説。そのため、住んでいる場所、仏壇を置く部屋、本山との位置関係によって方角を決める。
仏壇を置く方角に決まりはなく、自由に置いて構わない。
最後に、仏壇を配置したあとの仏具やお供え物の飾り方について解説します。注意点についてもしっかり確認しましょう。
仏壇は、本来宗派によって祀り方が異なりますが、現在は宗派に捉われず、それぞれのご家庭に合った祀り方をすることが多くなっています。
下の写真を見ながら、基本の配置についてチェックしていきましょう。まず、仏壇で重要になる仏具は、御本尊(仏像や掛軸)、お位牌です。仏壇の最上段中央に御本尊を祀り、左右には宗祖や名号が描かれた掛軸をかけます。お位牌は、御本尊が隠れないように、左右か一段低いところに安置します。
さらに下の段には、中央に仏器膳を置いて仏飯器・茶湯器を置き、その左右に高月を配置します。そして、最下段には、花立、線香差、マッチ消、香炉、火立、おりん・りん棒などを配置するのが一般的です。

【仏具の役割】
仏飯器(ぶっぱんき)…お供えのご飯を盛る仏具
線香差/マッチ消…線香を差しておくための台/マッチの燃えかすを入れる器具
茶湯器(ちゃとうき)…お供えのお茶や水を入れるための湯呑み
おりん、りん棒…仏様をお呼びする仏具
仏器膳(ぶっきぜん)…茶湯器や仏飯器を置き、一段高くして仏様に供えるための道具
高月(たかつき)…お菓子や果物などのお供え物を盛るための道具
香炉(こうろ)…香を焚くための道具
火立…ろうそくを立てるための台
花立…花を供えるための器具
仏壇へのお供え物は、仏様や故人に対する感謝などを込めて捧げます。お供え物には「香」「花」「灯燭(とうしょく)」「浄水」「飲食(おんじき)」があり、これらのお供え物を総称して「五供(ごくう)」と呼びます。「五供」の中でも特に頻繁に変える必要があるのが「浄水」と「飲食」。「飲食」は仏飯、お餅、お菓子、果物の順に重んじられています。
仏壇にお供え物を供えてお参りが終わったら、お供えしたご飯やお菓子などを家族で食べます。初物や頂き物などはまず仏壇にお供えしてご先祖への感謝の気持ちを伝えてから、「お下がり」をありがたくいただきましょう。
「香」である線香は、宗派によって本数が異なりますが、家族が多い場合などは線香の灰が香炉にいっぱいになってしまうので、日々のお参りは本数を気にしなくても問題ありません。
また、ろうそくは吹き消してはいけないので注意しましょう。ろうそくの消し忘れによる火災が心配な場合は、電池式のろうそくを使用すると安心です。
また、殺生を連想させる肉や魚、とげのある花やにおいの強い花は避けたほうが良いとされていますが、故人の好物や好きな花だった場合は、お供えしても問題ありません。その場合、花のとげを取り除いてから飾るとよいでしょう。また、お仏壇を汚してしまう可能性のあるお供物は高月に半紙を敷いたり、お皿にのせたりして供えましょう。
仏壇は、家庭内における“小さなお寺”のようなもの。各家庭が信仰する宗派の御本尊を祀るほか、故人を弔うためのものでもある
配置場所として、人の行き来が多い場所や湿気の多い水まわり、日差しが強く当たる場所は不向き
仏壇のデザインには金仏壇・唐木仏壇・家具調仏壇の大きく3タイプがあり、素材やデザイン、サイズなどによって価格が大きく異なる
仏壇を置く方角は宗派などによって異なるが、最近では宗派に捉われず、それぞれの家庭に合った祀り方を選ぶケースが増えている