建売住宅を検討していると「やめたほうがいい」「注文住宅のほうがおすすめ」と見たり聞いたりすることがあります。建売住宅に否定的な意見があることには、どのような理由があるのでしょうか? またそれは本当なのでしょうか。
この記事では、建売住宅はやめたほうがいいといわれる理由や、注文住宅との具体的な違いを紹介します。さらにどちらを選べばいいのかについて、後悔しないための判断ポイントなどを、SIRE代表取締役の木津雄二さんに伺い解説します。
建売住宅とは、ハウスメーカーやデベロッパー、工務店などが、土地とあわせて販売する住宅のことです。分譲住宅と呼ばれることもあります。
「建売住宅は、すでに完成されていることが多いですが、二期工事などでこれから建築する住宅が建売として販売されるケースもあります。ただしこれから建てられる場合でも、あらかじめ決められたプラン・仕様で建てられます」(木津さん/以下同)
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「建売住宅はやめたほうがいい」と聞くことがありますが、それにはどのような理由があるのでしょうか?
「建売住宅はあらかじめ決められたプラン・仕様で建てられるため、間取りを選ぶことができません。そのため家の間取りを気に入るか気に入らないか、妥協できるかできないかによって、満足度は変わります」
建売住宅は複数の住戸を同時に建てるため、建築資材を一括で注文します。その結果似たような外観の家になりがちで、間取り同様、自分の好みを反映することはできません。ただし、だからこそ価格が抑えられているともいえます。
「注文住宅であっても、完全な自由設計ではなくハウスメーカーなどが提案する規格型を選ぶのであれば、カタログに載っているような『どこかで見た外観』になるものです。必ずしも『建売だから没個性』とはいえないと思います」
建売住宅は建築途中の様子を見られないので手抜き工事が心配、との声もよく聞きます。
「建売住宅であっても、施工会社や分譲主が、必要な検査はきちんと行っているものです。とくに性能評価を受けるような住宅であれば、各工程で必ず検査が入り報告書が作成されます。
確かに自分の目で確認はできませんが、そういった書類をきちんとチェックすることで、リスクヘッジは可能です」
建売住宅を購入した人は、どのようなことを後悔しているのでしょうか?
予算を重視した結果、希望外のエリアで建売住宅を購入してしまうと後悔する傾向があります。建物についてはインテリアを工夫したり、外構を整えたりすることで自分の理想に近づけることは可能です。しかし、土地については駅までの距離や日当たりを変えることはできません。建売住宅を検討するときに、立地を妥協するのは避けましょう。
家族構成やライフスタイルによって間取りの使いやすさは違います。建売住宅では自分たち家族にあった間取りにできないので、実際に住み始めてから不満を持つ人もいます。
「例えば『動線があわない』『収納が足りない』など感じる人もいるでしょう。ただし間取りについては、こだわって注文住宅を建てたとしても、後悔する人は少なくありません」
建築途中の様子を自分の目で確かめられないため「欠陥住宅なのでは」との不安を持ち続ける人もいます。
「お伝えしたように、建築途中でどういった検査が行われ、どのように評価されたのかは、書類で確認が可能です。購入前に内容をチェックし、できるだけ不安を払しょくすることが大切だと思います」
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予算オーバーの建売住宅を購入した結果、住宅ローンの返済が苦しくなり後悔する人もいます。気に入った立地や間取りの建売住宅が見つかると、「ほかにいい物件は見つからないかも」「検討している間にほかの人に買われてしまうかも」と思ってしまい、十分に検討できないままに購入してしまうケースがあるためです。
建売住宅はプランや仕様が決まっているので「予算を抑えるために設備のグレードを下げよう」「建材はもう少し安いものにしよう」といった工夫もできません。
「家を建てるなら自分の理想をかなえられる注文住宅にしたい」と考える人は多いものです。そのため建売住宅を購入すると「妥協してしまった」と感じる人もいるようです。
「間取りや設備などに不満があっても、注文住宅であれば『自分が選んで決めたことだから』と思えます。そういった意味では、建売住宅は納得感を得にくくなるかもしれません」
建売住宅とよく比較されるのが注文住宅です。建売住宅と注文住宅は、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか?
注文住宅とは、新たに購入した土地やもともと所有している土地に、希望する間取りや外観、設備などを自由に設計できる住宅を指します。
注文住宅のなかには、すべてをフルオーダーする「自由設計型」と、豊富なプランのなかから好みの間取りや建材、設備などを組み合わせていくセミオーダーのような「規格型」があります。
建売住宅と注文住宅は、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
「建売住宅はすでに家が建てられているので、建物本体に対しての自由度はありません。これから建てられるケースでは、ドアの色を変えたいなど多少の願いをきいてもらえる可能性はありますが、基本的なプランや仕様は変えられないのが通常です。
対して注文住宅は、自由設計であれば設備はもちろん壁材や床材、ドアの種類や材質からドアノブ一つまで自分で自由に選べます。規格型であっても、間取りや外壁材、内装デザインなどは豊富な種類から選べるため、自分の理想に近い家を建てることができるでしょう」
「建売住宅は個別に設計することなく、また使用する設備も決まっているためコストを抑えて建てられます。そのため同じ5000万円の予算であるなら、建売住宅のほうが高品質な家になる可能性があります。
一方注文住宅は営業や設計士、インテリア、エクステリアなど別々に担当者がいて、多くの人が関わります。それだけ工数が増え、それは価格に反映されるので、同じ仕様の家を建てると仮定すると、建売住宅よりも高くなります」
「建売は土地と建物をまとめて購入する不動産の売買になります。プランや仕様が決まっているので、自分であれこれ考える必要がありません。
一方注文住宅は、土地を探して購入し、その土地にあった家を建てるためにハウスメーカーや工務店と請負契約を結びます。設計から使用する建材や設備などを一つひとつ決めていかなければならず、かなりの労力がかかります」
「建売住宅は、すでに建築済みであれば、住宅ローンを組む場合でも売買契約を締結してから1カ月半から2カ月程度で入居できます。
対して注文住宅は、土地探しからスタートし、どのような家にするか打ち合わせて設計して着工、竣工までに1年以上かかるのが一般的です。土地探しや設計にはいくらでも時間をかけられるので、もっと長くかかる人もいるでしょう」
比較内容 | 建売住宅 | 注文住宅 |
---|---|---|
自由度 | ほとんどない | 高い |
価格 | 抑えられる | 高額になる傾向がある |
かかる労力 | 少なくて済む | 多くかかる |
入居までの時間 | 短い | 長い |
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建売住宅と注文住宅のどちらを選ぶかで後悔しないためには、それぞれの特色を踏まえ、どちらが自分たちに向いているかで判断するとよいでしょう。ここでは建売住宅が向いている人・注文住宅が向いている人とは、どのような人なのかを伺いました。
「建売住宅は、建築が済んでいれば引き渡しを受けるとすぐに住み始められるので、引っ越したい時期が決まっている人に向いています。また2階からの眺望や各部屋の日当たり、風通しなどを実際に確認してから購入したい人も、建売住宅は適しています。
建売住宅は建築会社とのこまごまとした打ち合わせの手間や時間が必要ありませんし、それにかかる費用も不要です。コストを抑えつつ一定のクオリティーの家を購入したいのであれば、建売住宅はおすすめです」
「注文住宅は、間取りや外観、住宅性能など、細かな部分までこだわりや理想とする住まいがあり、それをかなえたい人に向いています。ただし理想を実現するには建築会社と何度も細かな打ち合わせが必要になるので、それを手間と感じないこと、対応できる時間があることが条件になります。
また注文住宅は、かけようと思えばいくらでもコストをかけられます。そのため予算が潤沢にあるか、あるいはきちんと予算管理ができる人、予算にあった建築会社選びができる人に適していると思います」
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最後にあらためて木津さんに、建売住宅で後悔しないポイントを伺いました。
「建売住宅は手間をかけることなく一定の予算で、多くの人が好むような家を手に入れられるなど、注文住宅では得られないメリットがあります。そのため決して『やめたほうがいい』とは思いません。とくに大規模に分譲されている建売住宅だと、街区が整備されるため『街並みの価値』も出てきます。
建売住宅か注文住宅かで迷うときには、まずは自分たちが家に対して求めるものを明確にしましょう。そしてそれを建売住宅で実現できるのか、注文住宅でなければかなえられないのかをよく考えることをおすすめします」
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