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賃貸物件を借りるとき、多くの人が2階以上を選び、家賃にも差があることが一般的です。そんな賃貸の1階は「やめたほうがいい」と言われることが多いですが、その理由は何でしょうか。この記事では、賃貸の1階のデメリットを解説するとともに、実は知られていないメリット、1階の部屋を選ぶ際のポイントなどをハウスメイトの伊部さんに解説してもらいます。
家賃が高騰している近年、賃貸物件で1階を検討する人もいるでしょう。一方で「1階はやめたほうがいい」という声もあり、悩んでいるかもしれません。実際、賃貸物件を探している人は2階以上を選ぶことが多いのでしょうか?
「検索サイトで『2階以上』にチェックするのはもちろん、『2階以上』を物件探しの条件に入れている方は一人暮らし、カップル、ファミリーなど属性を問わず多いです。防犯面や外からの目線の問題で、一人暮らしの女性は特に、2階以上を希望される方が多い印象です。1階を積極的に選ぶ理由がなければ、2階以上を希望する印象です」(ハウスメイト・伊部さん)

まず、「1階はやめたほうがいい」と言われる理由はどんなものか見ていきましょう。
1階は立地によって外から室内の様子や洗濯物が見えやすく、住民の行動パターンやどんな人が住んでいるのかを把握しやすいので、空き巣のターゲットになる可能性が他の階と比較して高くなります。
「空き巣に狙われる確率は、低層階のほうが高いというデータがあります。行き交う人の目や、『ここには女性が一人で住んでいる』といった匿名性を保てないことを気にされる方も多いですね」
警察庁「住まいる防犯110番」(令和6年)によると、侵入窃盗の発生場所別認知件数は共同住宅の4階建て以上が3.7%、共同住宅の3階建て以下が6.8%と、低層階のほうが窃盗の発生率が高いことが分かります。

防犯対策についてもっと詳しく
→ベランダの防犯対策は?狙われやすいベランダとは?家づくりでも重視したい防犯対策
1階は周りの建物や植栽に日光を遮られ、日当たりが悪くなる場合があります。
1階は防犯上窓を開けたままにしにくいので換気がしづらく、地面から近いため湿気がこもりやすくなります。日当たりと風通しが悪く湿気がこもりやすいと、洗濯物が乾くのにも時間がかかるため、生乾きの臭いが気になるかもしれません。
日当たりや湿気は内見をして、自分の目で見て感じることが一番です。図面上で窓があるから大丈夫と思っても、周囲に建物や植栽があったり、防犯上カーテンを締め切ることが多い窓なら日当たりは悪くなるからです。
日当たりにもよりますが、1階は上階より寒い傾向があります。冬は暖房を入れることが多くなり、光熱費が高くなる可能性があります。逆に夏は涼しいため、メリットにもなり得ます。
1階は道路に近いので、窓の開け閉めの際に虫が入ってくる可能性は上階より高まります。2階以上でも虫は入ってきますが、高層階になればなるほど虫が飛んでくる可能性は少なくなります。
特に飲食店やマンションのゴミストッカー(ゴミの回収場所も含む)が近い部屋は注意が必要です。気になる場合は、窓際に防虫剤や虫よけを置くなどで対策をしましょう。

高台に建っている場合を除いて、高層階と比較すると眺望はあまり期待できません。特に住宅地は周りに建物が多いので、窓を開けると通行人の姿や道を挟んだ住宅のベランダが見えることもあるでしょう。
同じ建物の1階でも、部屋の位置によって眺望は異なります。「こんなはずではなかった」とならないよう、実際に足を運び、部屋から眺望を確認してみるのが一番です。
1階の部屋は道路と近いので、通行人の話し声や車などの騒音が気になる可能性があります。特に人が集まりやすいコンビニやスーパー、公園、駐車場が近い場合は注意が必要で、商店街が近いと深夜まで音が聞こえて眠れないことがあるかもしれません。在宅ワークが多い人は公園や学校が近い立地は音が気になり集中できないことがあるので、注意して物件確認を行いましょう。

台風や大雨などによる浸水被害のリスクが高いのも、1階のデメリットです。川や海が近い場合、床下浸水や床上浸水などの被害が発生する可能性は高まります。
建物が床上浸水するなど被害が大きい場合は、建物を修繕するために一度退去しなければならなくなる場合もあります。家具や家電が濡れて使えなくなるリスクもありますので、心配な人はハザードマップを確認し、安全性が高い立地の部屋を選ぶようにしましょう。
1階のデメリットを解説してきましたが、実は近年、1階の部屋の人気が高まっているといいます。1階のメリットはどんなものがあるのでしょうか。
「新築物件で家賃の価格決めをする場合、設備や広さなど同じ条件であれば1階と2階では数千円の差があることが多いです。家賃が高騰している今、コストを抑えたい方にはおすすめです」
これは築年数が経った賃貸物件も同じです。同条件で2階以上と賃料が同じ場合は、値下げの交渉ができるかもしれません。
足音や振動のトラブルがなく、下の階への迷惑を気にせずに生活できます。小さいお子さんが元気に走り回る音で下の階へ迷惑をかけたくない場合、1階はストレスなく過ごせるはずです。
ほかにも深夜に帰宅することが多い人や、友人を呼ぶことが多い人などには1階がおすすめです。壁が薄い場合は隣の部屋に音がひびきやすいこともあるので、不動産会社に確認したり、内見でチェックしましょう。

物件にもよりますが、専用庭や専用駐車スペースがついている場合があります。
専用庭があれば、子どもの遊具やプールを出したり、布団など大型の洗濯物を干したり、ガーデニングを楽しむこともできます。ただし専用庭はマンションによって規約が異なるため、ルールを守って使用することが重要です。
専用駐車スペースがついている場合、キャンプや買い物の荷物を階段やエレベーターを使うことなく部屋に運べます。洗車も周りを気にせず行えるでしょう。
1階は引っ越しや外出がしやすい面もメリットです。
引っ越しでは階段やエレベーターを使わずに済むため移動がスムーズで、高層階よりかかる時間も短縮されるでしょう。
また、1階なら階段やエレベーターを使わずすぐ外出ができ、ゴミ捨ても気軽にできます。
「『足が悪いので上の階は避けたい』『子どもと荷物を抱えて上階に行きたくない』という方は、1階を選ばれます。また、ご高齢の方の物件選びに同行された方が『1階にしてください』と指定されることも多いです」

災害が起こった際、屋外に避難しやすいのも1階ならではです。特に高齢の人や子どもがいる家庭は、階段を使わない1階は避難しやすいでしょう。上層階に比べて揺れが小さい傾向があるので、家具が転倒しにくいのもメリットです。
災害以外にも、停電やメンテナンスでエレベーターが停止しても問題はありません。
1階は日当たりが上層階よりよくない分、夏は温度が上がりにくいので過ごしやすいでしょう。エアコンを使用する頻度や温度設定で光熱費の節約ができるかもしれません。
分譲マンションの1階住戸についてもっと詳しく
→マンション1階に住んで後悔する理由とは?デメリットが多い?良かった点も教えて!
防犯面の心配をなくすには、犯罪発生率が低いエリアを選ぶのがおすすめです。警視庁が公開している「犯罪情報マップ」なら、子どもや女性へのつきまといなど犯罪前兆事案のほか、侵入窃盗やひったくりなどの犯罪情報を地図上で確認できます。
ほかにも、「『建物周辺が薄暗くないか』『交番が近くにあるか』『最寄り駅やバス停からのルート』『周辺の街灯の数』などを、昼間だけでなく学校や会社から帰宅する時間帯も実際に物件周辺を歩いて確認しておくといいでしょう。物件周辺の交通量や、周辺の道が抜け道になっていないかなどもチェックしてみてください」
参考▶ 警視庁「犯罪情報map」
在宅で仕事をしている人は、学校や幼稚園、公園、病院、幹線道路など音が気になる施設が近くにない物件を選ぶと1階でもストレスはなくなります。人によって外部の音が気になる時間帯は異なるので、自分がどの時間帯に外部の音が気になるのかを把握し、内見の際不動産会社に確認してみましょう。

1階の部屋の近くにゴミ集積所がある場合、臭い(特に夏場)が気になる場合があります。ゴミ集積所のゴミの出し方が汚いとカラスや猫などが寄ってくることもあるので、ゴミ集積所の場所は事前に確認しておきましょう。蓋つきのゴミストッカーがあり、ゴミ置き場がネットや壁で覆われている物件、適切に維持管理がなされておりゴミ置き場周辺がきれいに保たれている物件なら、比較的臭いや虫の被害は少なくなります。
また、ゴミ置き場以外にも、飲食店など虫が寄り付く場所から離れている部屋を選ぶのもポイントです。
周辺に高い建物や影を作ってしまうものがある場合、1階の部屋は日当たりが期待できません。
しかし周辺に高い建物がない場所は限られる上、駅近物件など高い建物がある場合でも、部屋からの風通しや見通しがよければ快適に生活できるでしょう。
物件が立地的に災害に強いかどうかを調べるには、ハザードマップが便利です。特に河川や海に近い物件の1階を検討している場合、浸水被害のリスクがあるので、事前に確認をしましょう。ハザードマップは洪水、土砂災害や津波、高潮のリスクを調べることが可能です。
参考▶ 国土交通省・国土地理院「ハザードマップ」
1階の防犯面が心配なら、セキュリティのしっかりしているマンションを選びましょう。また、自分でできる防犯対策もありますので積極的に行いましょう。
【セキュリティのしっかりしているマンション】
【自分でできる防犯対策】

1階で虫が出るのが気になるなら、新築や築年数が浅い物件を選ぶことをおすすめします。特に築年数が古い賃貸物件は、経年劣化で網戸とサッシの間に隙間ができて室内に虫が侵入する可能性があり、古くなった排管からはゴキブリが侵入する可能性もあります。
アパート、マンションで出やすい虫はゴキブリ、ハエ、コバエ、蚊、カメムシなどです。入居時に行いたい害虫対策を紹介します。
「害虫対策では食べ残しをそのままにしない、季節ごとの衣類の入れ替えや防虫剤の利用など、不衛生な生活をしないことが一番効果的です」
都心から離れたり、駅から距離があると、一般的には住環境が静かになります。都心や駅近の1階で気になる日当たりやプライバシーの問題(ベランダや窓から道を行き交う人の目が気になるなど)が解消されることが多い上に、同条件の都心、駅近の物件より家賃も安くなる傾向があります。
同じ家賃で、日当たりがよく広い物件を見つけることができるので、在宅ワークが多い人などにはおすすめです。
浴室乾燥機がついている物件もおすすめです。「1階での一人暮らしでは洗濯物を外に干す人は少ないかもしれませんが、浴室乾燥機はお風呂場と洗濯物を同時に乾かすことができ、カビ対策にもなります」
一人暮らしでなくても防犯面や周囲からの視線を気にして外に洗濯物が干せない場合、浴室乾燥機があれば室内で洗濯物を干すことができ、梅雨など雨が多い時期も安心です。浴室乾燥機付きの物件なら1階でもストレスなく過ごすことができそうです。
「部屋を除湿するには、こまめな換気と風通しをよくすることが必要です。浴室乾燥機以外にも、換気口はこまめに掃除して、サーキュレーターや除湿剤を利用するのもおすすめです。内見して『カビの臭いがする』『じめっとする』『湿気っぽい』と感じる部屋はやめたほうがいいと思います」
「やめたほうがいい」と言われる1階も条件次第で住み心地はよくなります。「近年の家賃高騰や気温上昇を考えると、今後積極的に1階を借りる方が増えていくと予想しています。今はインターネットで検索すれば、『1階でも植栽で目隠しされている』『前の道は車通りが少なそう』などは分かるので、事前に調べてみるのもいいでしょう」
1階は「防犯とプライバシー面が不安」「日当たりが悪く、湿気がこもりやすい」「冬は寒い」「虫が入ってくる」などがデメリット
1階は「家賃が安い」「下の階への音を気にしなくていい」「専用庭や駐車場がついていることがある」などのメリットがある
「犯罪発生率が低いエリア」「騒音が気になる施設や幹線道路が近くにない」などの物件なら1階でも安心して住める