引越しで住民票を移さないとどうなる? メリット・デメリットや手続き方法・必要なものを紹介!

最終更新日 2024年09月26日

引越しで住民票を移さないとどうなる? メリット・デメリットや手続き方法・必要なものを紹介!

「引越ししたら住民票を移さないとどうなる? 何が困るの?」と疑問に思う人もいるでしょう。住所を移したら住民票異動の義務がありますが、移さなくてもいいケースも。住民票を移さないメリット、デメリット、住民税について、社会保険労務士の川部さんにお話を伺いました。詳しく紹介します。

住民票を移さないのは法律違反。5万円の過料やデメリットがある

「面倒だから移したくないと思う人も少なくない住民票の手続きですが、住所を移したら、原則住民票を移さないと法律違反になってしまいます」と川部さん。

住民票とは、住民基本台帳法に基づいて作成されている、住民に関する氏名、生年月日、性別、住所、世帯主との続柄などを記載した帳票のことです。

入学・就職・転勤等に伴う引越しなどで住所を移した場合、転居した日から、原則14日以内に、役所へ住民票の住所変更の届出が必要です。

これは、法律上の義務で、正当な理由がなく住民票を移さないでいると、5万円以下の過料に処されることがあります(過料とは、行政法規上の義務違反に対して少額の金銭を徴収するという罰則です)。

住民基本台帳法より抜粋
・転入をした者は、転入をした日から十四日以内に、市区町村長に届け出なければならない。
・正当な理由がなく、届出をしない者は、五万円以下の過料に処する。

住民票(住民基本台帳)は、国民健康保険、国民年金、児童手当、選挙人名簿への登録など各種行政サービスの基礎となっています。

そのため、住民票を移さないと、住んでいる市区町村で、十分な行政サービスを受けられなくなってしまうのです。

引越し後に住民票を移さない場合、5万円の過料以外に、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

■住民票を移さない場合のデメリット
・運転免許証の更新手続き(書き換え)などが旧住所でないとできない(案内も旧住所にいく)
・本人確認書類が旧住所のままになる
・住民票、所得証明などの各種証明書が新住所の役所で発行できない
・確定申告が、新住所を管轄する税務署でできない
・新住所で選挙権、被選挙権が行使できない
・図書館などの福祉サービスや公共サービスが利用できない、または利用が制限される

「住民票を移さないままでいると、選挙の投票や免許証の更新手続き(書き換え)のために、旧住所地域まで行かないといけません。住民票の交付や印鑑証明書、所得証明書も、旧住所の役所での発行になり、確定申告も旧住所を管轄する税務署です。遠方に引越した場合は、旧住所地に行くため、時間もお金もかかってしまうという不便があります」(川部さん)

過料以外にこのような住民票を移さないデメリットがありますが、免許証の住所変更やパスポート申請は、住民票を移さなくても新住所で手続きができます。住民税については、その年の1月1日に居住していた市区町村で課税することになっていますので、旧住所と新住所の両方で課せられることはありません。

給与明細書の住民税の欄
1月2日以降に他の市区町村に転居した場合、新年度の住民税は1月1日現在での住所地の市区町村で課税されるため、転居先の市区町村で途中から課税されることはない(画像/PIXTA)

引越し後に住民票を移さなくても良いケース

引越ししたのに、住民票を移さないのは、法律違反ですが、「正当な理由」があれば、住民票を移さなくてもよいとされています。住民票の異動が任意となる「正当な理由」とは以下の二つです。

  • 新住所に住むのが一時的な場合(元の住所に戻る見込みがある)
  • 定期的に実家に帰るなど、生活の拠点が異動しない場合

短期の単身赴任や進学で、週末に実家や元の住所に帰るなど生活の拠点が変わらなければ、住民票を移さなくてもよいとされています。

ただし、住民票を移さないメリットは、とりたてて、ありません。成人式については、住民票を移しても、成人式の案内状送付先の変更を事前に行えば、地元の成人式に参加できます。

「住民票を移さなかった理由で、実際に、過料を科せられた事例は聞いたことはありませんが、住民票を移さない場合の不便さを考えると、引越し後は、速やかに住民票を移したほうがよいでしょう。届け出は、原則14日以内ですが、過ぎてしまっても、受理してもらえます。短期の単身赴任や進学で住民票を移していなくても、不便に感じた時点で届け出が可能です」(川部さん)

住民票の写真
転出・転入・転居の届け出に使う住民異動届の用紙は、役所で配布しているほか、HPからダウンロードできる自治体もある(画像/PIXTA)

同じ市区町村内で住民票を移す手続き方法と必要なもの

現在住んでいる場所と同じ市区町村内で引越しをする人は、転出届、転入届は不要です。転居届だけで提出し、住民票を移しましょう。

※同一市内の別区への引越しは、転入届のみでよい場合や各自治体によって必要書類が多少異なりますので、引越し前に届け出先の役所に確認をしておきましょう。

転出届、転入届は不要

転居届

■転居手続きを届け出る場所、提出期限、必要なもの
届け出る場所 引越し前の市区町村の役所
提出期限 引越し日前後2週間以内
郵送・オンラインでの届け出不可
必要なもの
  • 転居届(役所にあります)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、マイナンバーカード等)
  • 保険証や医療証等(市区町村役所が発行している場合のみ・返却や記載内容の変更が必要な場合があります)
  • 印鑑(自治体によっては自署で可)

元の住所と異なる市区町村内に住民票を移す手続き方法と必要なもの

現在住んでいる場所と別の市区町村へ引越しをする人は、転出届と転入届の両方が必要です。転出届の手続き終了後に交付される「転出証明書」は、転入届時に必要になります。

転出届

■転出手続きを届け出る場所、提出期限、必要なもの
届け出る場所 引越し前の市区町村の役所
提出期限 引越し日前後2週間以内
郵送可。マイナンバーカードがあればオンラインで対応しているところもあるので、居住している自治体にご確認ください
必要なもの
  • 転出届(役所にあります)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、マイナンバーカード等)
  • 保険証や医療証等(元の市区町村役所が発行している場合のみ・返却や記載内容の変更が必要な場合があります)
  • 印鑑(自治体によっては自署で可)
  • 印鑑登録証(あれば)

転入届

■転入手続きを届け出る場所、提出期限、必要なもの
届け出る場所 引越し前の市区町村の役所
提出期限 引越し日前後2週間以内
郵送・オンラインでの届け出不可
必要なもの
  • 転入届(役所にあります)
  • 転出証明書(引越し元の役所で発行されたもの)
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、マイナンバーカード等)
  • 印鑑(自治体によっては自署で可)

転出届、転入届、転居届はオンラインで手続きできる?

マイナンバーカードがあれば、転出届はオンラインで提出できます。元の住所地に足を運ぶのが難しいときは、郵送で必要な書類を送れば、転出証明書を送ってもらうことも。オンラインで転出届を出すと、転入届提出時に特例として転出証明書の添付が不要になります。

転入届、転居届は窓口でのみ提出できる書類ですので、役所への登庁が必要です。

海外への引越し、海外から戻ってくるときの手続き

海外に1年以上滞在する場合は「転出届」の提出が必要

1年未満の海外留学や海外出張などの場合は、転出届を出す必要はありませんが、海外に1年以上滞在する場合、「転出届」を元の住所地の役所に提出しましょう。

帰国後1年以上日本で過ごす場合は「転入届」の提出が必要

海外から帰国後、日本で1年以上過ごす場合は、日本の住所地の役所で転入届を提出する必要があります。転入届とともに、パスポートや戸籍の附票の写しなどが必要です。

代理人に依頼して手続きできる?

住民票の手続きは委任状があれば代理人に頼むことができます。ただし同じ世帯の家族であれば委任状なしでも住民票を移すことができます。

住民票の手続きと一緒に役所の窓口で行いたいこと

引越しのさまざまな手続きは、住民票の届出と一緒に行うと一度で済むので便利です。

マイナンバーカードの住所変更

住民票の届け出と同時に、マイナンバーカード(マイナンバー通知カード)の住所変更をする必要があります。提出期限は、引越しした日から14日以内です。もし、転出届の後、転入届を出していたのに、90日以内に住所変更手続きを行わなかった場合、マイナンバーカードが失効してしまいます。マイナンバーによる行政手続きや証明書の発行、マイナポイントの利用などができなくなってしまうので、忘れずに行いましょう。

新たな印鑑登録

印鑑登録は住民票を置いている自治体に登録するものなので、新住所地の役所で新規登録をする必要があります。「転出届」を出す際に「印鑑登録証」を持っていけば、転出の届けと印鑑登録の抹消が同時にできます。抹消後は、転居先で新規登録してください。(「転出届」を出すと自動的に印鑑登録が抹消される自治体もあります。その場合も、新規登録は必要です)

  • 年金、保険などの手続き
  • 国民年金
  • 国民健康保険
  • 介護保険
  • 児童手当
  • 公立学校の転校手続き

住民票を移す手続きを忘れてしまった場合は?

引越しした日から14日以内に届けると法律で決まっていますが、期限を過ぎたとしても届け出することは可能です。行政サービスなどに支障をきたさないよう、気づいたらできる限り早く役所に届け出ましょう。遠隔地に引越しした場合も、郵送やオンラインで転出届の提出ができます。郵送の場合、申請時に同封した返信用封筒で転出証明書が送付されるので、それを持参して新住所地での転入手続きを行います。なお、マイナンバーカードを持っている人は転出証明書は不要です。

引越しの片づけ
引越しの片付けとあわせて、各種手続きもお忘れなく(画像/PIXTA)
住民票豆知識!

各種手続きの必要書類で、「住民票の写し」の提出を求められることがあります。「住民票の写し」とは、住民票原本に記載されている事項を写したものです。住民票原本は持ち出せないため、役所が発行するものは「住民票の写し」になります。したがって、そのまま提出すればよいのです。間違って、「住民票の写し」のコピーを提出してしまう場合がありますので、注意してください。

引越ししたら、住民票を移さないと、デメリットや不便なことがたくさんあります。移さなくてもいいケースに該当しない場合は、速やかに手続きをしましょう。

まとめ

引越しして住民票を移さないと法律違反になり、不便なことがたくさんある

1年未満の単身赴任や卒業後実家に戻る大学生は移さなくてもよい

住民票には、転出届、転入届、転居届があり、提出先や期限が異なる

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取材・文/内田優子、SUUMO編集部
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