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「デュアルライフ」が注目されている理由

「二拠点生活」といえば、軽井沢や八ヶ岳といったいわゆる「別荘地」に別荘を持ち、休暇を過ごすという、富裕層もしくはリタイヤ層をイメージするだろう。しかし、今注目されているのはそのような一部の人だけが享受できていたものではなく、20代・30代のビジネスパーソンが始めている新しい二拠点生活、「デュアルライフ」だ。金銭的、時間的余裕が必ずしも十分でない世代で、どんな風にデュアルライフが浸透し始めているのだろうか

20代、30代のビジネスパーソンで高まる
「もう一つの居場所」づくりとは

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「南房総2拠点サロン」の様子

東京新宿で行われた千葉県南房総での生活について情報交換を行う「南房総2拠点サロン」には、平日の夕方にもかかわらず50人余りのビジネスパーソンが集まった。すでに二拠点生活や、それを経た移住で顔見知りの間柄の人たちもいれば、興味があって挑戦してみたいと思う新しい人も、垣根なく緩いつながりをもてるのがこのイベントの特徴だ。主催者であり、東京と南房総の二拠点を行き来する生活を実践する永森昌志さんも、最近特にこのイベントの盛り上がりを感じている。「南房総のような自然豊かな里山での生活に興味をもつ人が、年々増えています。学生さんから、子育て層や50代、60代、それぞれ多忙で都会だけの生活では決して一緒にならないような人たちが、ここでは南房総という一つの地域を切り口につながるんです」
今、なぜ都心に住む人たちが、このように郊外のエリアに注目し、デュアルライフという選択肢を選ぶのだろうか。

住まいの都心回帰が、
心のゆとりを持てる二拠点目を求める要因に

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デュアルライフに注目が集まる背景に都心回帰・都心一極集中の影響からの反動があると思われる。かつては、子育てを考える年齢で住宅を購入、その場合、都心を避けて自然も残る郊外のニュータウンや住宅地を選ぶ家族が多くを占めていた。現在20代から40代の人の親がまさにその世代。通勤の苦しみはあるものの、週末など日常のひとときに緑や癒やしを感じていたのではないだろうか。しかし、近年は共働き世帯が増加、夫婦の仕事や子育ての利便性を優先し、都心部のより便利な立地の住まいを選ぶ傾向は年々高まっている。生活に必要なお金を稼ぎ、子どもの将来のために教育の選択肢を広げ、自分もキャリアアップの努力をする、おのずと、都心での生活は合理的になる。必要に迫られた日常だけに物足りなさや不安を感じ、都会とは全く違う環境に、心のゆとりがもてる空間を持ちたいと感じるようになる。この心理に共感する人も多いのではないだろうか。
また、大規模な災害から、家族の絆や、職場以外に貢献できる場を考える機会も増え、ビジネスパーソンとしての一面以外に、多様な人とのかかわりや居場所を求める人も増えている。このようなさまざまな背景が、都会だけの生活に満足できず、デュアルライフを求めるきっかけになっていると考えられる。

二拠点目への移動時間は
2時間以内で約6割。安・近・短で実践

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リクルート住まいカンパニー「デュアルライフ(二拠点生活)に関する意識・実態調査」現在2拠点生活を実施している東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県に在住の20~60代の男女(N=301)
※以下は対象から除いています:2拠点生活の目的が仕事(通勤)や介護・療養、2拠点目の年間滞在20日未満、投資家・年収100万未満の方、2007年以前に2拠点生活を開始した人
※構成比は小数点以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にはなりません

では、今、実際に二拠点生活をしている人はどんな人達なのだろう。こちらがSUUMOが実施した調査のデュアラーのプロフィールだ。60代までを対象にしているため、シニア層は含まれていないが、ご覧のとおり、20代30代で全体の約半数を占める。気になる世帯収入だが、1000万円を超える人たちも1/3はいるものの、800万円未満が全体の約半数を占める。滞在時間は月平均2日~5日と、週末におとずれ、1泊を1回から2回程度。移動時間は1時間から2時間が最も多くなった。近年、アクアラインの費用が安くなったり、バスタ新宿・東京駅などからも高速バスが便利になり、近郊都市への移動手段の選択肢が格段に増えた。近くで安く・短く滞在しリフレッシュする、そんなシンプルな二拠点生活が見えてくる。お金や時間の心配をしている人には、手が届きそうと思える結果ではないだろうか。

民泊、シェアリングエコノミー、
合理的選択肢も住まい選びを後押し

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そして、リーズナブルに二拠点生活を始められることの追い風となっているのが住まいの圧倒的な選択肢の幅だ。安い賃貸なら、エリアによっては月2万程度で借りられるところも。ほかにも、キッチンなどを共用するシェアハウス、宿泊所も3000円台で泊まれるようなところや毎月固定額で泊まり放題など提供されるサービスも増えている。所有するにしても、土地付きの古い空き家は300万円台で買えるものからバリエーションも豊富でDIYで自分好みに改修していく人も増えている。これも、家どうしの間隔が広く、ご近所への音を気にしなくてよい田舎ならではの選択肢だ。加えて、民泊にまつわる法とサービスが前進したことにより、都会もしくは二拠点目の住まいを活用し、キャッシュを産みながら二拠点生活に活かしていくこともこれからは可能だ。南伊豆の空き家を自らDIYした坂田華さんもその一人。「何も、こんなボロボロの家を…と反対もされましたが、手をかけて甦らせたプロセスも夫婦にとってはいい思い出。今では民泊で泊まりたいという人が多く、得られる収益が、さらにこの家を良くする原資となっているんです」と住まいの再生自体も二拠点目での大切なライフワークになっている。

デュアラーの目的はさまざま。
少しずつできることを増やしていく魅力も

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デュアルライフを実践している人をタイプ別に分けると大きく上記のように6つに分かれる。自然やキャンプが好きで、「趣味満喫」のための二拠点目を持ちたいと考えた川鍋さん(二拠点目/千葉県南房総市)は、デュアルライフを本格的に始める前にDIYを身に着けようとワークショップに参加。その後、二拠点目を借り、いまや「自然に癒やされること」「のびのび子育て」「ふるさと感」と、そこからさまざまな楽しみを得ている。また、近年は若者中心に「地方に貢献したい」という思いを持つ人も増えているが、実際に実践している人は必ずしも初めからそれが目的だった訳ではないようだ。自然環境や人の魅力にひかれ、通うようになる中で、地域の人との交流が始まったり、手づくり野菜をもらったお礼に、自分がなにかお手伝いしてあげたりなど、地域に溶け込んでいく中で、自分のできることを意識することから始まる人も多いという。デュアルライフは旅行と違って、何度も行ってその地域や人の魅力を深く知れるからこそ、魅力を開拓していく幅も広く、当初は想定していなかったことも楽しみになっていくのだろう。

二拠点での生活が、元から住んでいた
場所での生活にも良い刺激を生む

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※1 リクルート住まいカンパニー「デュアルライフ(二拠点生活)に関する意識・実態調査」
現在二拠点生活を実施している東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県在住の20~60代の男女(N=298)
・以下は対象から除いています:2拠点生活の目的が仕事(通勤)や介護・療養、
2拠点目の年間滞在20日未満、投資家・年収100万未満の方、2007年以前に2拠点生活を開始した人
・※構成比は小数点以下を四捨五入している為、合計しても必ずしも100%にはなりません。

※2 リクルート住まいカンパニー「デュアルライフ(二拠点生活)に関する意識・実態調査」
左図【デュアルライフ実施前後の生活満足度の変化】にて
[満足度が上がった]あるいは[やや満足度が上がった]回答者(N=221)

気になるデュアルライフ後の生活については、7割以上の人が生活の満足度が上がったと回答。その変化も、2拠点目でこそ得られる自然やゆとりといったメリットだけでなく、「オンオフの切り替えがよりできるようになった」、「新しいことに挑戦する機会ができた」、など、前からある生活拠点での充実につながっているという回答も多い。実際、デュアルライフ実践者=デュアラーの人を取材していても「ここに来れば、リラックス空間としてだけでなく、クリエイティブな仕事もはかどる、最強の仕事場(二拠点目/南伊豆町 坂田さん)」「普段の東京の仕事のなかでは接することがないタイプの人に出会え、以前と比べ、会社内でのチームづくりや、業務改善の方法などをより強く考えるようになった(二拠点目/長野県小布施町 丸山さん)」と仕事面での充実を語っている。デュアルライフは単に余暇の過ごし方としてだけでなく、暮らし全体に良い影響を与えてくれると言えそうだ。

まずはイベントや体験会から、
興味のあるエリアやコミュニティを見つけよう

デュアルライフに興味をもったものの、まずはどうしたらいいのか? 今回取材した事例の皆さんではきっかけは大きく二つに分かれる。もともと好きでよく行っていたエリアに、もっと居たくなり住まいを探した人と、場所は決めず、DIYや畑仕事の体験、地域が主催するイベントへの参加者募集などをきっかけに、自分に合うコミュニティを見つけた人。後者は、たまたまその場所が気に入った、もしくはその後、本格的に取り組むために適した場所を探しデュアルライフを始めている。まだ特に気に入った場所がないという人は、まずは気軽にイベントに参加して、自分に合った趣味やコミュニティを見つけるのがよいだろう。

今の暮らしと自分の価値観を変える大きなきっかけとなるデュアルライフ。拠点も目的もはじめからすべて整えようと思うと気おくれしてしまう。気軽に、自分に合いそうなものを探して、少しずつ居心地良くしていってみるぐらいの気持ちではじめてみてはどうだろうか。

取材協力/南房総2拠点サロン/https://www.facebook.com/boso2salon/

デュアルライフの実例を見てみよう!

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