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最近は子どもより数が多いといわれているほど、ペットが人気。特に一人で暮らしている高齢者にとってペットはかけがえのない家族の一員で、人生の最期をともに過ごしたペットに、何か残してあげたいと思う人もいるだろう。ではどうすればペットに遺産を残せるのか。その方法を調べてみた。
8年前、アメリカで資産家が飼っていたチワワのコンチータに約2億7000万円という莫大な遺産を残したことで、資産家の一人息子が訴訟を起こして話題となった。ペット愛好家としては、コンチータに遺産を残した資産家の心情に共感を覚えるかもしれないが、残念ながら日本ではペットが遺産を相続することは認められていない。
ペットは動産の扱いとなり、遺産の一部となる。ではペットの相続価額はというと、相続時点での売却価格(購入価格ではない)で決められる。古代魚のアロワナなどは、資産価値が高いと定評があり、相続財産にカウントされることもある。また成長すると価値が上がる動物などはそれなりの金額になる可能性はあるが、例えばどんなに血統がよくても去勢された成犬であれば、価格は期待できないだろう。30万円以下ならたいてい家財一式扱いになる。いずれにせよ、生前に何も手を打たなければ相続人の一人が引き取り、そのあとペットがどうなるかは分からない。
では、自分の死後、ペットに幸せな生涯を送ってもらいたいときはどうすればいいのか。その方法は大きく分けて二つある。一つは、遺贈と相続があり、遺贈は相手が相続人でも他人でも問題ない。この場合は条件を付けるから「負担付遺贈」である。遺言でペットの相続人を指定し、受遺者にペットを養うための遺産を与えるというものだ。法廷相続人にペットを相続させるなら、相続のほうが簡単だ。
もう一つはペットの信託だ。これは、委託者(ペットの飼い主)と受託者が「委託者の死後にペットの面倒を見る」という契約を結び、ペットを養うための遺産が受託者に支払われる。このとき受託人は個人でも団体でもいい。また受託者本人が実際の面倒を見ずに、別の人に代行させることもできる。


ただし、どちらの方法にも気をつけるべき点がある。まず負担付遺贈は、受遺者に指名された人が遺贈を放棄することができる(このときペットだけを放棄することはできず、他の遺贈される財産も放棄することになる)。また受遺者が仮にその後自己破産した場合、遺贈でもらった財産が債権者に没収されてしまい、ペットを養うどころではなくなる可能性もある。
一方のペットの信託は「契約」なので、負担付遺贈のように遺贈を放棄されることがない。また遺産も「信託された遺産」として保護されるため、受託者が自己破産しても遺産を誰かに持っていかれることはない。これらはペットの信託のメリットだ。
ただし負担付遺贈もペットの信託も、きちんとペットの面倒を見てくれるかどうかは分からない。極端な話、遺産をペット以外の私用に使う可能性だってある。それを防ぐためにも監視者として負担付遺贈なら遺言執行者を、ペットの信託なら信託監督人を置き、それらの人にペットがきちんと養われているか監督してもらうようにしたほうがいい。
さらにペットの信託の場合は、受託者と別に実際に飼う人を用意してもらい、実際に飼う人は一括でお金をもらうのではなく、実際にかかった費用を領収書ベースで受託者に請求する仕組みにすると、遺産を使い込むといったモラルハザードを防ぎやすい。
| 名称 | 負担付遺贈 | ペットの信託(遺言信託) |
|---|---|---|
| 特徴 | 遺言で財産をあげるので、その代り●●してください | ・重要なのは、受託者の選び方 ・契約で成立している ・どんな内容でも契約に盛り込める ・受託者は個人でも団体でも可能 |
| メリット | ・誰でもよい、友人、個人 ・財産を受ける人の意思表示が可能 ・監視者に管理を依頼できる |
・契約しているので安心 ・生前から実行できる ・信託法に抵触しなければ、個人でも請負が可能 |
| デメリット | ・受け取った人が死亡した場合 ・受け取った人が破産した場合 |
・契約内容を一から作成する ・受託者の選定が難しい ・請負先の事例数が少ない |
それ以外にも、ペットに遺産を残すにはまだまだクリアすべき課題がある。例えばペットが病気になったりケガをすれば治療費がかさむ。また他人に危害を与えた場合は賠償金等が発生することも考えられる。その際の費用をどう計算して残せばいいのか。こうしたケースに備えて、ペット保険に加入するための費用も見ておいたほうがいいだろう。
またペットの信託では、上記のような場合も含めて、何が起きたらどう対処するのかを契約書に記しておく必要がある。例えばペットが亡くなってもまだ財産が残っていた場合どうするのか、ペットがクルマにはねられて事故死した場合に裁判を起こしてまで争うのか、その費用は?…。契約書に書かれていないことは、基本的に受託者は遂行する義務はない。
ペットの信託はまだまだ始まったばかりで、現在までの事例から不測の事態を全て想定するのは難しいかもしれないが、委任者の意思をできるだけ尊重しようと額に汗してくれるような個人や団体を見つけることも、ペットの信託を行う場合は大切になる。もちろん負担付遺贈も同様だ。
またどちらの方法でも、相続人たちが遺言で初めて知ったとなると「なんでペットに遺産を…」と、先のコンチータ問題で訴訟を起こした一人息子と似たような感情を覚えるかもしれない。
生前に誰にも言わずに遺産を残すと、争いの火種になりがちだ。びっくりさせていいことは何一つない。