家を購入する年齢が年々遅くなってきています。住宅ローンは50代でも借りられるのでしょうか。【フラット35】なら借りやすいのかなど、50歳以上で住宅ローンを借りる場合の注意点などを解説します。
近年、晩婚化が進んでいる影響もあってか、住宅ローンを組む年齢も少しずつ高齢化が進んでいるようです。住宅金融支援機構による「2022年度 フラット35利用者調査」の結果を見てみると、2022年度の【フラット35】の利用者の平均年齢は42.8歳と、2021年度に比べて1.3歳ほど高齢化が進んでいます。
年代別の利用者の割合を見ると、30歳未満と30歳代の利用者が減少し、40歳代、50歳代、60歳以上の利用者が増えています。50歳以上の割合は10年前に比べて2倍近い26.5%にまで増加しています。つまり、2022年度の【フラット35】の利用者は、4人に1人が50歳以上だったわけです。
さらに、【フラット35】の利用者の融資区分別を「マンション」(新築マンション)に限定した調査結果を見ると、利用者の平均年齢は45.7歳でした。全体の平均(42.8歳)よりも3歳近く上がり、50歳以上の利用者の割合も36.7%と、全体の平均(26.5%)よりも10%以上増え、実に3人に1人は50歳以上だったことがわかります。
もともと【フラット35】は、旧住宅金融公庫である住宅金融支援機構がつくった住宅ローン商品で、窓口は民間金融機関などとなっていますが、商品性の本質的な部分は住宅金融公庫が直接融資をしていた時代から大きくは変わっていません。人への融資というよりは、物件への融資という意味合いが強いのです。したがって、人の条件よりも物件の条件のほうが厳しく、定められた所定の技術基準をクリアした物件でないと利用できません。逆に人の条件は、以下の条件をクリアしていれば基本的には借りられます。
なので、【フラット35】は、一般の銀行などの住宅ローン商品に比べると、人についての細かな利用条件は少なめになっているといえます。その意味では、50歳以上であっても、【フラット35】なら借りやすいといえるでしょう。
とはいえ、【フラット35】でも、50歳以上になると、返済期間を長く設定できなくなってきます。返済期間は、「80歳-申込時の年齢」という上限があるため、50歳だと最長30年、55歳だと最長25年となります。
組める返済期間が短くなると、それだけ毎月の返済額が増えることになるので、総返済負担率の基準をクリアするためにも、借入金額を少なくする必要性が出てきます。つまり、50歳以上になると、返済期間を長く組めない分だけ、たくさんは借りられなくなるということです。
なお、【フラット35】以外の一般の銀行などの住宅ローン商品は、各金融機関などの細かな審査内容は情報公開がされていないので、住宅ローンが借りられるのかどうか、いくらまでなら借りられるのかなど、正確なところは申し込んでみないとわかりません。当然ながら、きちんと返済できるかどうかが審査されますので、収入や年齢からみて、目一杯借りるのは避けるべきでしょう。
50歳以上で年収が高いと、組める返済期間が多少短くなるとはいえ、それなりに大きな金額を借りられる可能性があります。やはり、重要なのは、きちんと返済できるのかどうか、です。
60歳以降の収入の見通し、退職金の有無、年金収入の見通しなど、60歳以降の家計収支を冷静に見積もる必要があります。「夢のマイホーム」のために生活が立ち行かなくなってしまうのは、まさに本末転倒です。「ゆとりのある生活」になるような資金計画を立てるようにしましょう。
なお、50歳以上で住宅ローンを組む際、リスクを低くするためには、物件選びも重要です。立地条件のいい、価値の下がりにくい物件なら、「最悪の場合は売却してローンを完済すれば、ローンの返済に苦しむことはない」という状態にすることもできるはずです。
また、そういう物件であれば、リースバック(業者に売却して、賃貸として住み続ける)や、リ・バース60などの「リバースモーゲージ型住宅ローン」に借り換えることで、家計収支を改善できる可能性があります。
とにかく50歳以上は、失敗したときに取り返すための時間が若者に比べて短くなっています。そのことを十分に意識して、冷静かつ慎重に計画を立てることが重要でしょう。
住宅ローンを借りる年齢の上昇傾向が続いている
2022年度の【フラット35】の利用者 50歳以上の割合は、4人に1人、新築マンションに限定すると3人に1人が利用
銀行などの住宅ローン商品に比べると、【フラット35】は50歳以上でも借りやすい
50歳以上で住宅ローンを借りるなら、60歳以降の家計収支を冷静に見積もる必要がある
イラスト/杉崎アチャ