実家を相続するときにどのように分割する?兄弟姉妹・親族間のもめごとをなるべく減らすために知っておきたい注意点とは

公開日 2025年11月20日
ヒッシーのマネー騎士(ナイト)
実家を相続するときにどのように分割する?兄弟姉妹・親族間のもめごとをなるべく減らすために知っておきたい注意点とは

相続が発生した場合、分けやすい預貯金などとは違い、分けにくくもめごとの原因になりがちなのが土地や建物。兄弟姉妹がもめることなく相続を完了させるためのノウハウを紹介します。

実家の相続でもめるのはなぜ?

物理的に分けられない土地や建物があるときの選択肢は?

親が亡くなったあと、残された実家をどうするか。
これは、相続で最ももめやすいテーマのひとつと言えます。

預貯金などのお金であれば、相続人が多くても、きれいに分けやすいですよね。
でも、実家の土地や建物は「物理的に分けることができない」財産。
「誰が住むの?」「名義はどうする?」「売るならいくらで?」と、意見が割れやすく、兄弟姉妹の関係にヒビが入ってしまうケースも少なくありません。

そんなときの最も現実的な選択肢は、「換価分割」でしょう。
「換価分割」は、実家を売却して現金に換え、そのお金を相続人で分ける方法です。
最も公平でトラブルが少ない方法だと言えます。

ちなみに、その他の遺産分割の方法としては、「現物分割」と「代償分割」があります。

「現物分割」は、遺産をそのままの状態で分割する方法なので、実家の土地や建物の持ち分割合を決めて複数の相続人の共有名義にするかたちになります。所有者が複数人になってしまうので、将来の売却時や次の相続時に手続き等がさらに複雑になります。

「代償分割」は、1人または複数の相続人(=代償者)がすべての遺産を相続し、その代償者が他の相続人に代償金を支払うことで、遺産分割のバランスを取る方法です。例えば、実家の土地建物と田畑を引き継ぐ長男がすべての遺産を相続し、都会に住む次男には、長男が相応のお金を支払うことで遺産分割のバランスを取る方法などが該当します。

やはり、実家に誰かが住み続ける可能性が低いなら、売却してお金で分ける「換価分割」が最も無難だと言えるでしょう。

「換価分割」を進める前にやっておくべきこと

相続人全員での遺産分割協議

まず大切なのは、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)です。
「誰の名義にするか」「売却までの流れ」「売却代金をどう分けるか」などを明確に決め、遺産分割協議書にきちんと記載しておくことがポイントです。

感情的な対立を防ぐためにも、司法書士や弁護士といった専門家に同席してもらうのも有効です。家族だけで話すと、「親の面倒を見たのは誰だ」とか「土地は自分が管理していた」などと、昔の話まで蒸し返されがちですからね。

登記と抵当権の確認

そして、売却を進めるためには、名義変更(相続登記)が必要になります。被相続人(亡くなった親)名義のままでは売却できないからです。

特に、2024年4月からはこの相続登記が義務化されました。
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料(罰金)を科される可能性もあります。

つまり、「売る予定がなくても、とりあえず登記だけは済ませておく」が新常識です。

抵当権抹消登記

もうひとつ注意したいのが抵当権(ローンの担保)。
住宅ローンやリフォームローンの返済がすべて終わっていても、登記簿上に抵当権が設定されたまま残っていることがあります。これを放置すると売却できないため、「抵当権抹消登記」を済ませておきましょう。

家とお金のイメージ
遺産の家や建物を売却して現金に換え、そのお金を相続人で分けるのが換価分割 (画像/PIXTA)

単独名義で売って、代金を分けるのはOK?

遺産分割協議書への記載がポイント

よくあるケースが、相続人のうちの1人が名義を引き継いで売却し、あとで兄弟姉妹に代金を分けるパターン。このときに注意したいのが贈与税です。兄弟姉妹に「お金をあげた」とみなされると、贈与税の問題が発生する可能性があるからです。

ただし、このような場合でも、遺産分割協議書に「実家を売却し、その代金を相続人で分ける」ということをきちんと明記しておけば、贈与税がかかることはありません(遺産を受け取ることになるので、金額によっては相続税がかかる可能性はあります)。

逆に言えば、遺産分割協議書にきちんと記載していないと税務署に誤解される可能性があるわけです。文書で残すことが、家族間の信頼を守る最良の方法だと言えるでしょう。

売却で利益が出たら、譲渡所得税に注意

要件を満たせば特例が適用される

実家を売って利益が出た場合は、譲渡所得として課税される可能性があります。ただし、条件を満たせば「相続した空き家の3000万円特別控除」という特例が使えます。

これは、1981年5月31日以前に建てられた一戸建てなどを相続し、耐震リフォームまたは解体して売却した場合に、譲渡益から最大3000万円を差し引ける制度です。

ただし2024年以降は、相続人が3人以上いる場合は控除額が2000万円に減額されるなど、ルールが少し厳しくなっています。その他、細かな要件も多いため、税務署や税理士などに相談して特例を使えるかどうかを確認しましょう。

また当然ながら、実家を売ったあとでも、相続税の申告が必要なケースもあります。基本的に、相続財産の合計が相続税の基礎控除である「3000万円+法定相続人の人数×600万円」(例:法定相続人が3人なら4800万円)を超えている場合は、相続税を申告しなければなりません。

申告期限は、「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」です。期限を過ぎるとペナルティがかかることも。相続税の申告が必要なのかどうか、不安な人は早めに税理士などに相談するとよいでしょう。

相続した家のイメージ
「相続した空き家の3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)」は相続した日から3年を経過する年の12月31日まで、かつ、2016年4月1日〜2027年12月31日の譲渡が条件。ほかにも売却代金1億円以下など細かな要件がある(画像/PIXTA)

もめない相続にするためのコツ

専門家のサポートも受けてスムーズな相続を

不動産の相続は「お金の問題」であると同時に、「感情の問題」でもあります。金銭的な損得だけでなく、エモーショナルな部分にも気を配る必要があると思います。

兄弟姉妹の関係がこじれるのは、金額よりも“納得感”の足りなさが原因になるケースが多いようです。だからこそ、話し合いの段階から情報をオープンにし、きちんと文書で残すことが大切です。

ですから、専門家のサポートを受けることも重要でしょう。そうすれば、感情的な対立は避けられるでしょうし、手続きもスムーズになります。登記については司法書士、税金については税理士、遺産分割でもめそうなら弁護士といった各種専門家に相談するのも有効です。それぞれの専門分野で協力を仰げば、家族の負担はぐっと軽くなるでしょう。

相続の話になると、どうしても「お金」や「権利」に意識が向きがちですが、実際に大事なのは「家族の関係を壊さないこと」。相続は、家族が争う“争族”にしないことが、何よりの相続対策なのです。

相続について相談するイメージ
遺産相続についてわからないこと、迷うことがあれば専門家のサポートを受けるのも選択肢のひとつ(画像/PIXTA)
まとめ

土地や建物があるときの遺産分割の方法には換価分割、現物分割、代償分割がある

実家に誰かが住み続ける可能性が低いなら、売却してお金で分ける換価分割が無難

遺産分割協議書を作成し相続の詳細を記載すること

売却で利益が出た場合、譲渡所得税がかかることも。控除が適用になるかをチェック

相続の手続きは弁護士や税理士、司法書士など専門家のサポートがあれば負担が軽くなる

イラスト/杉崎アチャ

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