ZEH-M(ゼッチマンション)とはどんなマンション?選ぶメリットや新築マンションで増えている理由も解説

最終更新日 2024年06月21日
ZEH-M(ゼッチマンション)とはどんなマンション?選ぶメリットや新築マンションで増えている理由も解説

エネルギー消費を抑える省エネだけでなく、最近は太陽光発電などでエネルギーを作る創エネも身近になってきています。ZEHの戸建てのほか、最近はZEH-M(ゼッチマンション)の普及も進んでいます。ZEH-Mとは具体的にどのようなものなのでしょうか。住み心地にはどう影響するのでしょうか。戸建住宅や賃貸住宅に続き、新築分譲マンションのZEH化を推進している積水ハウスに取材しました。

ZEH(ゼッチ)とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」を略した呼び方

ZEH-M(ゼッチマンション)について解説する前に、まずは「ZEH(ゼッチ)」について説明しておきましょう。

ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略。住宅の断熱・省エネ性をあげ、太陽光発電などによってエネルギーを創ることで、年間の一次エネルギー消費量をゼロ以下にしようというものです。

ちなみに、一次エネルギー消費量とは、暖冷房や換気、給湯、照明の使用で消費されるエネルギー量のこと。テレビなどの家電による消費量は含まれません。

ZEH(ゼッチ)の仕組み
断熱や省エネ、創エネにより、消費するエネルギー0を目指すのがZEH(イラスト/いぢちひろゆき)

ZEHの普及は政府も後押し。なぜ?

ZEHの普及は政府が後押しをしており、2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」としています。

なぜ、ZEHの普及を目指すのでしょうか。
「地球温暖化対策のためのCO2排出量の削減、化石燃料からの脱却など、地球規模での課題解決に向けて、エネルギーをいかに有効に使っていくかという取り組みが住宅にも求められるからです」(積水ハウス・古谷さん、以下古谷さん)

特に日本のエネルギー自給率は約1割(経済産業省 資源エネルギー庁調べ 2019年度)で、OECD諸国38か国中36位と低い水準。住宅など家庭部門での省エネ・創エネはとても重要なのです。

ZEHはマンションでも普及。ZEH-Mの定義を知っておこう

2018年度以降、ZEH-Mの普及が加速

政府は、注文住宅でのZEH普及への注力から始まり、その後、建売戸建、賃貸住宅、そして、分譲マンションへと普及を後押しする対象を拡大してきました。

ZEH-Mが注目されたのは2018年。マンションにおけるZEHの定義を明確にし、補助金を事業者に交付することでZEH-Mの普及を支援し、加速させる「高層ZEH-M実証事業」「低・中層ZEH-M支援事業」をスタート。2018年度以降、ゼッチマンションが続々登場し、私たちも「ZEH」や「ZEH-M」という言葉を耳にする機会が増えました。

ZEH-Mは4タイプ。定義を解説

ZEH-Mと呼ばれるのは、どのようなマンションなのでしょうか。国が定めた定義を見てみましょう。

ZEH-Mは、省エネ率などによって4タイプに分かれています。

高い断熱性や省エネ性に太陽光パネルなどでの創エネをプラスして住棟全体で100%以上の省エネ率を実現するのが『ZEH-M』。そのほか、Nearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Orientedがあり、順に省エネ率の基準がゆるくなっています。

例えば、ZEH-M Orientedの基準は、住棟全体で20%以上の省エネを実現すること。他のタイプに求められる創エネの導入は条件になっていません。これは、階数の高いマンションになるほど、住戸数に対する太陽光パネルの設置数が少なくなるため。それぞれのマンションの規模に応じて、実現可能なタイプを目指せるよう定義が設けられているのです。

なお、マンションの場合、「共用部分を含む住棟」と「専有部分のみの住戸」のそれぞれで評価方法が定められているのが特徴です。

■ZEH-Mは4タイプ
4タイプあるZEH-Mの種類
(イラスト/いぢちひろゆき)

『ZEH-M』

強化外皮基準(地域ごとに求められる断熱性能の指標・省エネ基準を満たし、UA値を強化した基準。以下同)
住棟全体で再エネ(太陽光発電などでの創エネ、以下同)を含む省エネ率が正味100%以上
住棟全体で省エネのみの省エネ率20%
1~3階建のマンションで目指すべき水準

Nearly ZEH-M

強化外皮基準
住棟全体で再エネを含む省エネ率が正味75%以上100%未満
住棟全体で省エネのみの省エネ率20%
1~3階建のマンションで目指すべき水準

ZEH-M Ready

強化外皮基準
住棟全体で再エネを含む省エネ率が50%以上75%未満
住棟全体で省エネのみの省エネ率20%
4~5階建のマンションで目指すべき水準

ZEH-M Oriented

強化外皮基準
住棟全体で省エネのみの省エネ率20%
再エネの導入は必要ない
6階建以上のマンションで目指すべき水準

■ZEH-Mの評価基準
ZEH-Mの評価基準をまとめた表
出典:経済産業省「ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和5年度の関連予算案(令和5年3月)」(図表作成/SUUMO編集部)

ZEH-Mはどんなマンション? メリットは?

ZEH-Mにするために採用している建材や設備は?

断熱性能や省エネ性能が高いZEH-M。採用される建築材料や住宅設備は、会社や物件によって異なります。例えば、積水ハウスが販売する分譲マンション「グランドメゾン」での主なZEH対応は下の通りです。

  • 壁、屋根、柱、床などにそれぞれの住戸に応じた断熱材を施工
  • 窓には断熱性能の高い高性能複層ガラスを採用
  • 高効率な空調・給湯設備などを採用
  • 家庭用燃料電池エネファームを標準採用(物件や地域の特性によっては採用しない事例もある)

「建物の外気に接する壁や屋根、柱、床、熱の出入りの大きな窓の断熱性能をより高め、高効率な住宅設備を採用することで、一般的なマンションに比べて建築コストや販売価格は高くなります。しかし、快適性やランニングコスト面などのさまざまな別のメリットが享受できるのがZEH-Mです」(古谷さん)

健康面・快適性でのメリット

「断熱性が高いということは、室温が外気温に影響されにくいということ。窓や壁、収納の中に発生し、カビなどの原因になる結露の悩みが軽減されます。住戸内に温度差がないためヒートショックを防ぐことにもつながります。健康面に与えるメリットはとても大きいといえます」(古谷さん)

また、夏の猛暑や、冬の寒さの影響も受けにくいため、住戸内では夏涼しく、冬あたたかい快適な時間を過ごせます。

光熱費が抑えられるメリット

ZEH-Mの断熱性の高さは暮らしのランニングコストにもメリットを生みます。住戸内を快適な室温に保つためのエアコンや床暖房の使用が抑えられます。また、エネファームやエコキュート、エコジョーズなどの高効率な給湯設備や、各住戸に太陽光パネルが割り当てられていれば、創エネによってさらに光熱費は抑えられます。エリアや物件による差はありますが、余剰分の電気を売電することによる光熱費削減も大きなメリットです。

防災面で安心感が高いメリット

地震や台風などの影響で、停電が起こった場合、太陽光パネルと燃料電池エネファームが採用されているZEH-Mなら、ガスの供給が止まっていなければ電気やお湯をつくり、使うことができます。災害時に在宅避難をする場合に、照明が使えて夜も明るい部屋で過ごせたり、冷蔵庫内の食材を無駄にせずにすんだりといった安心感につながります。キッチンでお湯が使えるのも、特に寒い時期には大助かりです。

「電気の供給源が複数あることは、防災面でも重要だと思っています。当社では、今後、物件によっては、停電時には燃料電池から電気が供給されるよう自動的に切り替わるシステムの採用を計画しています」(古谷さん)

住宅ローン控除での節税効果がアップするメリット

ローンを借りて住宅を購入すると年末のローン残高の0.7%相当額が所得税・住民税から一定期間控除されるのが住宅ローン控除(住宅ローン減税)です。控除の対象となるローン残高には上限があり、省エネ性の高い住宅ほど上限額が高くなります。

例えば、控除期間の13年間、4500万円以上の年末ローン残高が続く借り入れをした場合、一般的な省エネ基準を満たす住宅の全期間最大控除額は364万円ですが、ZEH-Mでは最大409.5万円になります(子育て世帯等が住宅を取得し2024年1月1日から2024年12月31日までに入居する場合)。

実際に控除される税額は、住宅を購入・新築する人の世帯構成や住宅ローンの借入額、所得税・住民税の税額によって異なります。しかし、所得税等が戻ってくるという面では多くの人にメリットがあるといえます。

新築住宅の住宅ローン控除最大控除額(控除期間は13年)
対象物件 ローン残高の上限 全期間の最大控除額
長期優良住宅・低炭素住宅 5000万円 455万円
ZEH水準省エネ住宅 4500万円 409.5万円
省エネ基準適合住宅 4000万円 364万円
そのほかの住宅(一般住宅) 2000万円
(控除期間10年)
140万円
※19歳未満の子を扶養する世帯または、夫・妻のいずれかが40歳未満の夫婦世帯が新築住宅を取得し、2024年に入居する場合の最大控除額(2025年度の税制改正でも今回と同様の方向性で検討される予定)
※そのほかの住宅は、2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅。それ以降に建築された住宅は控除が受けられない。
※実際に控除される税額は、ローン残高などによって異なり、納めた所得税・住民税以上の税額が戻ることはない(図表作成/SUUMO編集部)

資産価値が維持しやすいメリット

ZEH-Mは、個人のリフォームでは変更できない建物自体の基本性能が優れています。そのため、耐久性や快適性、経済性を長く維持することができます。20年後、30年後といった将来、ZEH-Mの水準ではない物件と比べると、売却の際に有利になるなど資産価値の面でもメリットが出ることが考えられます。

ZEH-Mのメリットを伝えるイラスト
ZEH-Mにはさまざまなメリットがある(イラスト/いぢちひろゆき)

【実例】マンションの特性を活かしながらZEH-M基準をクリアした物件を紹介

立地や物件の特性や主な居住者層によって、マンションのZEH化のためのプランは異なります。ここでは、積水ハウスが手がけた物件から、それぞれの特徴を活かすポイントについて紹介します。

実例1:開放感と高断熱を両立するタワーマンション

・グランドメゾン上町一丁目タワー(大阪府大阪市)
大阪城に程近い大阪市の中心部に2022年11月下旬竣工の、36階建の「グランドメゾン上町一丁目タワー」(※全戸完売)。平成31年度超高層ZEH-M実証事業に初採択されたタワーマンションです。

「高層マンションの大きな魅力の一つは開放感。そのためには、最大限大きな窓を設けて眺望と採光を確保することが必要です。しかし、窓は熱の出入りが大きく、大きな開口部は断熱性に影響します。ZEH-Mには、通常はLow-E複層ガラスが採用されますが、グランドメゾン上町一丁目タワーでは、さらにグレードの高い超高断熱真空ガラスを採用しています」(積水ハウス・穴見さん)

超高断熱真空ガラスは、一枚ガラスの約9倍、Low-E複層ガラスの約3倍の断熱性。太陽熱をカットする日射遮蔽性能も高く、冷房費の節約にもつながります。断熱性能を確保するために大開口の窓を諦めるのではなく、高層マンションの魅力を活かすことを前提としたプランによって、ZEHの基準を満たしながら開放感と眺望、高断熱による快適性を両立させています。

開放感と断熱性を両立させたグランドメゾン上町一丁目タワーの内観
窓とサッシの断熱性を高めることで、ZEHの基準を満たした「グランドメゾン上町一丁目タワー」(画像提供/積水ハウス)

実例2:長期間快適で便利。将来を見据えてプランニングされたマンション

・グランドメゾン茨木片桐町(大阪府茨木市)
緑豊かで静かな住宅街に2023年6月竣工予定の「グランドメゾン茨木片桐町」。ゆったりと暮らせるファミリーにもぴったりのマンションです。

「環境に貢献できる方法はいくつもありますが、やはり長く使える建物をつくることが一番のエコではないかと考えます」(積水ハウス・高橋さん)

グランドメゾン茨木片桐町は、ZEH-Mの基準を満たし、さらに長期優良住宅と低炭素建築物の認定をダブルで取得。住宅ローン控除を利用する際には、最大控除額がZEH-Mよりも大きくなるメリットも受けられます。また、平均専有面積は約83m2を確保。長い年月、環境に優しく快適に暮らせるマンションです。

長く快適に暮らせるグランドメゾン茨木片桐町の外観
ZEH-M、長期優良住宅、認定低炭素住宅の基準を満たす「グランドメゾン茨木片桐町」(画像提供/積水ハウス)

今後、ZEH-Mはマンションのスタンダードに

「全世界で脱炭素社会への転換が求められている今、ZEH-Mの基準を満たすことがこれからのマンションのスタンダードになっていくでしょう。マンションでは、住棟単位での基準を満たすZEH-Mと、住戸単位で基準を満たす住戸ZEHがあります。

当社では、2023年以降に販売する分譲マンション「グランドメゾン」の全てがZEH-Mに。そして、棟内のすべての住戸がZEHとなります。今、住戸はZEH Oriented、住棟はZEH-M Oriented以上を基準としていますが、今後はその省エネ率−20%という基準をさらに超えていくよう取り組んでいきます」(古谷さん)

ZEH-Mはこれからのマンション選びの指標の一つになっていくはず。ZEH-Mのメリットを知ったうえで、各社の取り組みにも注目していきましょう。

まとめ

断熱や省エネ、創エネにより、消費するエネルギー0を目指すのがZEH

マンションにおけるZEH基準を満たすのがZEH-M

ZEH-Mは省エネ率などによって4タイプがある

ZEH-Mは快適性や光熱費、節税、防災、資産価値などの面でメリットが大きい

これからのマンションはZEH-Mがスタンダードに

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取材・文/田方みき イラスト/いぢちひろゆき
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