マンションでも物件によっては戸建てにあるような玄関ポーチが設けられていることがあります。来客の目に触れるマンションのポーチは、おしゃれに飾りたくなるものです。しかし、居住者が自由に使用しても良いものなのでしょうか? マンションのポーチのメリットや注意点、アルコーブとの違いなどを解説します。
マンションには住んでいる人や訪問する人が出入りする正面玄関にあたる「エントランス」と、住戸ごとの出入口になる「玄関」があります。この記事で解説するマンションの「ポーチ」とは、各住戸の玄関に関わる空間です。
戸建て住宅の玄関に多く見られるポーチ。玄関ドアの上に設けられた庇(ひさし)の下の部分を指し、階段やスロープで地面より高くなっているのが一般的です。
マンションの場合は、共用廊下に設けられた門扉から玄関ドアの前までのスペースをポーチといいます。角部屋の玄関前に設けられるケースが多いですが、共用廊下からくぼんだ位置に玄関ドアを設け、その前のスペースをポーチとしているマンションもあります。このスペースは、居住者が自由に使用しても良いものなのでしょうか。実は、マンションのポーチは共用部。マンションの区分所有者全員で所有しているものなので、使い方には制約があります。
マンションの玄関外のスペースには、ほかにアルコーブ(アルコープ)と呼ばれるものがあります。玄関前の共用廊下からくぼんだ位置に玄関ドアが設けられ、その前のスペースのことを指し、マンションの区分所有者全員で所有する共用部です。ポーチとよく似ていますが、門扉があるのがポーチ、共用廊下との境がなく廊下と同様の扱いになるのがアルコーブです。
玄関は住まいの第一印象を決める場所。人が行き来する共用廊下に直接面した玄関よりも、廊下との間が門扉で仕切られている玄関のほうが、より特別感が感じられるもの。各住戸の玄関まわりだけでなく、共用廊下全体の雰囲気にも高級感や重厚感が演出されます。
玄関ドアの前が門扉で区切られたポーチは、他の居住者や来訪者が自由に出入りしにくい空間になります。そのため、プライバシーが守られやすい点がメリット。防犯面でも有効といえます。
マンションは玄関ドアのデザインや色を自由に選ぶことはできません。そのため、どの住戸の玄関も見た目は同じです。後述しますが、物件によってはポーチに植物や小物などを置くことが可能。好きなインテリアでおしゃれに飾ることで、個性を出す楽しみもあります。
マンションのポーチは共用部分なので、ポーチスペースの掃除はエントランスや共用廊下と同様、管理会社や管理会社が委託した清掃業者が行うのが一般的です。しかし、ポーチに置かれている私物に触れたり移動したりしないように清掃が行われる場合は、汚れが残ることになります。また、マンションによっては、門扉を開け閉めされることに抵抗感のある居住者が多いなどの理由から、管理組合のルールでポーチはその住戸の居住者が行うことにしている場合もあります。ポーチがあることで、自分で清掃を行わなければならない場所が増えることが人によってはデメリットに感じられます。
門扉を開けっぱなしにしておくことは、共用廊下全体の雰囲気に影響しますから好ましいことではありません。出かける際や帰宅した際には毎回門扉の開け閉めをすることになりますから、面倒だと感じる人にとっては、ポーチの門扉があることはデメリットになります。
金属製の門扉は、レバーハンドルを下げたときに受けの部分にぶつかる音や、閉める際に両開きの扉同士がぶつかる音が気になることがあります。樹脂製の部品を採用するなど金属同士がぶつかる音を軽減する静音仕様の門扉もありますが、深夜に帰宅する際にはやはり気をつかうものです。
一つの建物を複数の人で所有しているマンションの場合、建物は専有部分と共用部分に区分されています。専有部分とは住戸内側の居住スペースのことで、その住戸の区分所有者が単独で所有しています。マンションの住戸はコンクリートでできた躯体や隣の住戸との仕切りになる戸境壁で囲まれていますが、専有部分はその内側です。
共用部分はエントランスや共用廊下、共用階段、エレベーター、宅配ボックス、防犯カメラなど、マンションの居住者が共用する設備や施設、外観に影響する玄関ドアの外側やバルコニー、窓など。共用部分はマンションの所有者全員で所有していることになります。ポーチは共用部分に含まれています。
「共用部分」であるポーチは、マンションの所有者全員の共有財産です。しかし、エントランスやエレベーターとは違い、その住戸の人しか使うことができない「専用使用権」が設定されているのが一般的です。
専用使用権が設定されている共用部分は、ほかにバルコニーやルーフバルコニー、専用庭、駐車場、集合ポストなどがあります。
ポーチの門扉のデザインが好みではないことがあるでしょう。また、門扉がないほうが出入りが楽だから撤去したいと考える人もいるでしょう。しかし、門扉はマンションの所有者全員の共有財産。例えば、バルコニーの手すりや玄関ドアのデザインや色を勝手に変更したりできないのと同様、ポーチの門扉も自由に変更することはできません。
ポーチ部分の床のタイルが割れてしまった、門扉に傷をつけてしまったなど、ポーチが破損した場合は誰の費用で修理をするのでしょうか。ポーチは共用部分ですから、破損の場合の修理にどう対応するかはマンションによって異なります。管理組合で加入している保険で対応できるか、破損の原因が居住者の過失にあるのか、故意によるものかなど、状況によって修理費用の負担が異なります。居住者が負担する場合でも、築年数によって負担割合が変わるケースもあります。破損に気がついたら、または破損してしまったら、自分で修理をしようとせずに、まずは管理員や管理会社に連絡をして、管理組合と相談しましょう。
マンションのポーチはその住戸の居住者が使える専用使用権が設定されているスペース。玄関前の共用廊下に観葉植物や傘、インテリア小物などを置くことはできませんが、ポーチには置くことができるケースがあります。
私物を置けるかどうかは物件によって異なり、そのルールを決めるのはマンションそれぞれの管理規約です。マンションによって、専用使用権付き共用部分であっても私物を置いてはいけないケースや、ベビーカーや自転車は禁止されていても小さめの観葉植物やインテリア小物はOKな場合などさまざまです。また、消防法によって定められている都道府県の火災予防条例では、避難の支障になるものを置いてはいけないとされています。
そもそもポーチに専用使用権が設定されていないマンションもあり、その場合は共用廊下と同様の扱いになりますから私物を置くことはできません。逆に、共用廊下と同じ扱いとされることが多いアルコーブに、管理規約によって小物などを置くことが認められているマンションもあります。マンションの購入を検討する場合は、バルコニーやポーチなどの専用使用権付き共用部分にどのようなルールが定められているのか、必ず管理規約を確認するようにしましょう。不動産仲介会社の担当者に依頼すれば、管理規約を取り寄せることができます。
ポーチに物を置くことができるマンションの場合でも、その置き方には注意が必要です。例えば、ポーチ内に電気や水道、ガスのメーターがあるメーターボックスが設けられている場合。メーターボックスのドアの前に観葉植物などが置かれていると、検針や点検で訪れた人の業務の邪魔になります。
マンションによってはポーチの使用方法が詳細に決められていないケースもあります。だからといって、自転車を何台も並べてポーチのほとんどを塞いでしまったり、収納棚や小型の物置を置いたりするのは大きなリスクがあります。大きな地震が発生した際に、自転車や棚が倒れることで玄関ドアが開かず、避難できなくなることもあります。倒れる方向によっては共用廊下を塞ぎ、他の居住者の避難に影響する可能性もあります。万が一のことを考えた使い方をすることが大切です。
住戸の独立性が高まり、玄関に個性も出せるポーチ付きのマンションは、観葉植物や小物を置いておしゃれに飾れる楽しみがあります。しかし、マンションによって管理組合によるルールは異なり、自由な使い方ができないことも。管理規約をしっかり確認することが大切です。
マンションのポーチとは門扉から玄関ドアまでのスペース
マンションのポーチは住戸の居住者しか使うことができない専用使用権付き共用部分なのが一般的
ポーチの使い方のルールはマンションの管理規約によって異なる
私物を置くことが認められている場合でも、避難経路を塞ぐ可能性があるなどリスクのある使い方はしないことが重要