あれ? どこかで落とした!? 鍵がなくて家の中に入れない…! 想像したくないまさかのトラブルですが、でも、これは誰の身に起こり得ること。とりあえず家の中に入るためにはどこに連絡すればいいのか、鍵を交換する場合はどうするか、マンションの集合エントランスのオートロックと住戸の鍵が同じ場合はどう対処するのか…対処の方法や注意点を、鍵と錠の専門メーカー GOAL(株式会社ゴール)の担当者に聞きました。
スマホ、財布、運転免許証、クレジットカード…紛失するとその後の生活に大きな不安を引き起こすモノのなかでも、「鍵」は特に重大なピンチを招くアイテムと言えます。何しろ、一人暮らしだったり、家族が留守だったりした場合、家の中に入れなくなってしまうのですから、事態は深刻です。
この状況を打破し、家の中に入るためには、専門業者に鍵開けしてもらうことが必要です。また、防犯上の理由から鍵交換をしたほうがいいでしょう。株式会社ゴール担当者によれば、「鍵交換」は厳密に言うと、鍵穴(シリンダー)部分のみの交換を指すとのことです。
では、不幸にも鍵を紛失した場合、実際の鍵交換はどのように進めていけばいいのでしょうか。
「現在の分譲マンションでは、ごく一部を除いて管理会社が各住戸の鍵を管理しているケースはないため、一般の鍵開けサービス業者や、鍵メーカーの系列サービス会社などに開けてもらう必要があります。救急の鍵開けサービスに対応する業者もたくさんありますので、状況に応じて選ぶと良いでしょう(以下のコメントは株式会社ゴール担当者)。
製品にもよりますが、錠本体のフロント部分を外すのみで交換できるものもあれば、サムターンなど内側の部品を外す必要もあるなど、鍵は多種多様です。しかし、鍵業者は各メーカーの製品を熟知しており、交換作業自体は手際良く行ってもらえるでしょう」
「時間は、シリンダー部分の交換のみなら1ロックあたり10分~15分程度が目安です。ただし、持ち手部分と一体型になっているなど、製品によっては分解の必要もあり、30分~1時間程度必要なケースもあります。
支払いの方法は一部では振り込みなどもあるようですが、主流は現金です。業者に連絡した際に、料金の目安、支払い方法を聞いておくと良いでしょう。
鍵交換は、既設の錠本体に合ったものしか使用できませんので、選択肢はほぼないと考えてください。ただ、仮に同じ鍵メーカーのシリーズであれば、グレードアップ(例えば当社製品であれば、ピンシリンダー→ディンプルキー)が可能な場合はあります」
「鍵業者」とは、さまざまなメーカーの鍵の開錠や交換を行う業者です。一方、「鍵メーカー」は鍵の製造からアフターサービスまでを行う会社。鍵明けや鍵交換はどちらに依頼するのがいいのでしょうか?
「理想的なのは、そのマンションで導入している鍵メーカーが認定しているサービス代行店に連絡して、開けてもらうことです。そのためには普段自分が使っている鍵が、どのメーカー製なのかを知っておく必要があります。メーカーがわかっていれば、各メーカーのHPからお住まいのお近くのサービス代行店を見つけることができます。
各鍵メーカーは、マンション別に自社製のどのような型の鍵が導入されているか、しっかりデータを管理している場合が多く、その情報を認定サービス代行店と共有しますので、問い合わせの際にマンション名・部屋番号を告げると、よりスムーズな対応が可能になります。
時間が夜遅く系列店が対応できない、あるいは緊急を要する場合などは、メーカーの系列店ではなく、一般の鍵開けサービス業者でももちろん大丈夫です」
なお、仮にシリンダーを壊さず特殊工具などで開錠できるなら、それもひとつの選択肢になります。とりあえず家の中に入ることができれば、当座は家の中に保管していたスペアキーで施錠・解錠ができるからです。ただ、紛失した鍵が第三者に悪用される可能性は残るため、早急に鍵交換を検討するべきなのは変わりません。
「鍵業者への連絡とともに、速やかに管理会社、さらに必要があれば管理組合に鍵を紛失したことを連絡してください。自宅ドアの鍵なので、直接的にマンション内の他住戸に悪影響はなさそうですが、分譲マンションの玄関ドアは、住んでいる方の固有財産ではなく、マンション管理組合が所有する“共有部分”です。住人だけの判断で勝手に錠交換はできません。許諾を得て、必要があれば管理会社立ち合いの元で鍵交換し、新たなキーを手に入れてください」
なお、マンションによっては、鍵紛失などのトラブルが発生した場合、まず管理会社に連絡し、その後、管理会社が手配して、指定のサービス会社に対応してもらう場合もあります。自分が住んでいるマンションはどうなのかをチェックしておきましょう。もちろん、警察への遺失物届を提出することもお忘れなく。
自宅の玄関の鍵が、マンションの共用施設である集合エントランスのキーと兼用だった場合、自宅玄関前にたどり着くのはおろか、そもそもマンションに入れなくなります。その場合はどうすればいいのでしょうか。
「まずは、そのマンションの鍵メーカー系列のサービス代行店への依頼をオススメします」
ただ、共用施設の鍵は個人の区分所有者ではなく、マンションの共有財産のため、原則的に鍵業者は開けることができません。業者がマンションに到着し、合流した後に自宅ドア前にたどり着くには、
・管理員さんに事情を話してオートロックを通してもらう
・インターホンで知り合いの他の入居者に開けてもらって通る
などの方法で移動するといいでしょう。
オートロック・マンションでは、自宅の玄関の鍵が集合エントランスだけでなく、サブエントランス、ごみ置き場など共用施設のキーも兼ねている場合もあります。そうなるとマンション全体のセキュリティに関わるため、より適切な対応が必要です。
そして、このタイプのマンションの場合、キー紛失後に気になるのが、失くしたキーを悪用されないか?ということ。
例えば、303号室の住人がキーを紛失し、管理組合の承諾を得て鍵を交換し、新たなキーを手に入れたとします。紛失した“旧303号室のキー”を何者かが入手していたとしても、鍵交換後の303号室に入ることはできませんが、集合エントランスを通ることができる可能性はあり、マンション共用部分のセキュリティを損ねる恐れがあります。
稀なケースではありますが、このような防犯性の低下を嫌い、オートロックのシステムごと交換することを検討する管理組合もあります。
ただ、これは全住人に関わることですし、100戸以上など規模が大きくなるほど交換に長い時間を要する上、物件全体のセキュリティ体制に直結するためマンション住民総会の決議も必要です(コストの面では管理組合が加入している保険でカバーできる場合も)。さらに、将来、同様のトラブルが発生する可能性もあり、結果的にオートロックの全システム交換は見送る管理組合がほとんどです。
なお、鍵が非接触型の場合、キーの電子登録情報を更新すれば、それ以降、紛失したキーは集合エントランスなどでは使えなくなります(ただし、共用施設の鍵穴を換えないと、鍵を差し込んで解錠される恐れは残ります)。
鍵紛失ではなく、中古マンションや賃貸マンションに入居する際に鍵の安全が気になることもあります。この場合はどうすればいいのでしょうか?
「鍵の交換が済んでいるか、忘れず仲介会社に確認してください。
ごく稀なケースですが、こんな場合には要注意です。マンション引き渡し時に受け取ったキーが、メーカー純正であることを示すメーカーのロゴマークが刻印されておらず、簡単にアルファベットが刻まれただけなど、妙に簡易な印象だったとしたら、それはマスターキーではなく複製されたものである可能性があります。
仲介会社に確かめて、複製だったとしたら鍵交換をオススメします。費用負担については仲介会社と相談してください」
キーをどこかで落として警察に遺失物届を提出後、運良く見つかって戻ってきたとしても、届けてきた人が実はこっそり複製をつくっているかも…? 最近のマンションのキーは短時間でやすやすと複製できるものなのでしょうか?
「マンション向けに限らず、最近の錠前メーカーから販売されている鍵については、従来の鍵に刻印されているナンバーだけでは複製できないものも多数販売されています
当社でも鍵に刻印されているナンバーと、付属したキーケースに入っているセキュリティIDで管理しており、それぞれに記されたナンバーの両方が複製キーの注文時に必要な製品があります。つまり、拾った鍵、盗み見た鍵ナンバーを伝えるだけでは複製が困難なわけです。
ただし、一部では、このような製品でも、現物だけを元にして鍵を複製する業者も見られます。しかし、そうした製品は加工精度が劣る場合もあり、使用していくにつれて経年劣化で錠が回りにくくなる・回らなくなるなど、不具合につながるケースもあります。
また、メーカー純正以外の鍵を使用され、鍵穴、錠前の故障、動作不良を生じた場合、保証期間内(通常2年程度)であっても保証対象外となります。
余計なトラブルを未然に防ぐためにも、追加、複製鍵は正規の錠前メーカー、系列のサービス代行店で注文されることをオススメ致します。
なお、強引な不正解錠に対して、最近のマンションには、官民合同会議によって制定された、厳しい基準を満たす防犯性能の高い錠前『防犯建物部品 CP製品』が導入されており、当社のほか、各社から発売されています」
管理組合の方針やマンションの構造、築年数によって、好みに応じてリフォームできるのが分譲マンションの魅力。では玄関の鍵はどうでしょうか?
「管理組合の許諾があれば交換は可能です。ただし、管理組合の規約などによっては、ドアの表から見えるシリンダーの色をそろえるなどの条件があります。
また、管理組合の許諾をもらえても、使われている鍵によっては、交換可能なものと不可能なものが存在します。交換可能ならホームセンターなどのスタッフに相談すると良いでしょう」
では、築年数が古く、オートロックではないマンションなどの場合、既存の鍵に加えて、補助錠を後付けして、自宅のセキュリティを強化することはできるのでしょうか?
「面付錠などの補助錠を追加することはできますが、共用部である玄関扉に穴をあけるなど躯体の変更を伴うものは難しいかもしれません。追加したい場合は管理会社に連絡し、管理組合の承認を得る必要があります」
なお、昨今登場している、両面テープなどで取り付けられて、穴をあける必要がないスマートロックなどなら、管理会社、管理組合へ報告する必要はありません。セキュリティ強化をしたい方は検討してみてもいいでしょう。
長年使い続けていると、何となく鍵がスムーズに鍵穴に入らない・回らない、などの違和感が出てくることも。その際、自分でできる対処法はあるのでしょうか?
「その現象にもよりますが、鍵を回すと重く感じる、引っかかるなどの場合、鍵穴専用のシリンダースプレーを鍵穴に吹きかけると改善することがあります。
また、鍵の切込み面を鉛筆でなぞった後、鍵穴に数回抜き差しすることでも改善する場合があります。
なお、すべりが良くなることを期待して、市販の潤滑油、防錆スプレーなどを鍵穴に吹き込むことは、絶対にやめてください。マンションの立地にもよりますが、例えば幹線道路沿い、海が近いといった環境では特にホコリを吸着しやすくなり、不具合が起きる原因となります。ひどいと鍵交換しなければならないことも考えられます」
最後に、株式会社ゴールの担当者さんからこんなアドバイスをいただきました。
「玄関ドアの向こう側にある住戸の内部には、お住まいの方の貴重な財産が詰まっています。その意味で鍵に刻まれているナンバーは、いわばクレジットカードのナンバーも同然の重要な情報です。クレジットカードを扱うのと同じセキュリティ意識を持つように心がけてください」
分譲マンションでの鍵交換は管理組合の許諾を得ることが大前提
中古マンションの場合、鍵交換されているかは忘れず確認
財産を守る大切な“カギ”。セキュリティ意識を高く持とう