一軒家を建て替えるときには、仮住まいはどうしているのか、期間は何日くらい必要なのか、気になる人も多いのではないでしょうか? また費用はいくらぐらいを見込んでおけばよいのでしょうか。この記事では、仮住まいの探し方や賃貸物件などを選ぶときのポイントを、SIRE代表取締役の木津雄二さんに伺い解説します。仮住まい探しでよくある問題と解決策や、疑問への回答なども紹介します。
建て替えで仮住まいが必要になるのは、既存の家の取り壊し工事が始まるタイミングから、新居の引き渡しまでの間です。
「仮住まいの期間は、おおよそ8カ月から10カ月程度が一般的です。内訳としては、まずは既存の家を解体して着工までに約2カ月から4カ月。これは解体する家の構造や地盤改良の有無などによって変わります。そして着工から竣工までに4カ月から6カ月程度かかります。
経済変動や自然災害の影響などで、必要な資材や設備が届かなかったりして工期が延びた場合、仮住まい期間がさらに延びることもあります」(木津さん/以下同)
仮住まいの期間については、工期が延びる可能性も考慮して、多少の余裕を持たせたスケジュールを考えましょう。
建て替え中の仮住まいを選ぶときのポイントはどのようなものがあるのでしょうか?
「小中学校に通うようなお子さんがいる場合、通学を考え『仮住まいは学区内で探したい』と希望する方が非常に多くなります。エリアが絞られると仮住まい探しはなかなか難易度が高くなるので、広さなどほかの条件は妥協することも検討しましょう」
「広さについては、仮住まいに持っていくものを絞り込み、必要な広さを見極めます。季節用品やアウトドアグッズなどはトランクルームを利用することを検討しましょう。
また仮住まい期間は限定的なので、今の家と同じ広さを求める必要はありません。『普段は家族それぞれの個室があるけれども、仮住まい中は部屋を共有しよう』といった判断もできると思います」
ここでは建て替え中の仮住まいの種類と、具体的な費用の目安を紹介します。なお費用については、夫婦と子ども2人の4人家族が部屋を共有し、10カ月仮住まいすると仮定して試算しました。
「ご夫婦いずれかの実家が近ければ、住居費の負担をしなくてよくなる可能性があります。そのため建て替えに際しては、仮住まいの第1候補となるでしょう。家具や家電もそろっているので、持ち込むものも少なくて済みます。ただし実家の部屋数に余裕がない場合は、手持ちの荷物をトランクルームに預ける必要はあるでしょう」
費用の種類 | 費用の目安 |
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住居費 | 0円~ |
トランクルーム | 1畳あたり6400円~10400円 |
合計 | 6.4万円~ |
近くに実家がない場合、賃貸住宅を選ぶ人がほとんどです。賃貸住宅には一軒家やアパート、マンション、UR賃貸など種類が多く、好みの広さや予算にあわせた物件を選べます。家具や家電をそのまま持ち込めるので、トランクルームを借りなくて済む、借りるとしても最小限に抑えられる可能性があります。ただし引っ越し代は、今の家から仮住まいへ、そして仮住まいから新居へと、2回分が必要です。
「仮住まいに賃貸物件を選ぶ際には、仮住まいであることは必ず事前に伝えておくことが大切です。なお短期の仮住まいを了承された場合でも、『2年以内の解約だと1カ月の違約金を申し受ける』など家主が短期違約金を設定しているケースがあります。賃貸を検討するときには、契約内容をよく確認しましょう」
費用の種類 | 費用の目安 |
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2LDKのマンションの家賃(1カ月あたり) | 約10万円~(東京都の場合・エリアによる) |
管理費・共益費(1カ月あたり) | 約5千円~(家賃の5%~10%が相場) |
礼金・敷金(各家賃の1カ月分が目安) | 約20万円~ |
保証料(家賃の0.5カ月分が目安) | 約5万円~ |
仲介手数料(家賃1カ月分が上限) | 約10万円 |
火災保険料 | 約4千円~1万円 |
合計 | 約140.4万円~ |
短期賃貸マンション、いわゆるウイークリーマンションやマンスリーマンションは、家具や家電が備わっているのがメリットです。ただし賃貸物件よりも、月々の賃料は高めです。
「短期賃貸マンションは、賃貸住宅と違って初期費用や仲介手数料がかかりません。ただし家具や家電が備わっているぶん、手持ちの家具や家電を処分しないのであれば、トランクルームに預ける必要があるでしょう」
費用の種類 | 費用の目安 |
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2LDKの短期賃貸マンションの賃料(1カ月あたり) | 約20万円~(東京都の場合・エリアによる) |
共益費(1カ月あたり) | 約2万円 |
トランクルーム | 1畳あたり6400円~10400円 |
合計 | 約226.4万円~ |
仮住まいにホテルを選ぶのはあまり一般的ではなく、利用している方も少数です。ホテルのなかには、長期滞在を前提としてキッチンや洗濯機、ちょっとした家具が備わっているコンドミニアムタイプもありますが、ホテルは清掃やシーツ交換などのサービスが付いているため、費用はかなり高額になるためです。とくに都心部では、あまり現実的ではなさそうです。
費用の種類 | 費用の目安 |
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滞在費 *1 | 1泊約4万円~(場所や季節による) |
トランクルーム | 1畳あたり6400円~10400円 |
合計(300日) | 約1206.4万円~ |
敷地に余裕がある場合、プレハブ(ユニットハウス)をレンタルすると、工事の様子も見られますし、荷物の移動も簡単です。ただし仮住まいのためにプレハブを建てるのは、一般的ではなく少数派です。
またプレハブを建てるには建築基準法に基づく必要があります。さらに台所など水まわり設備を含むレンタル代、設置・撤去費用などを考えると高額になりがちです。外気の影響も受けやすいので、真夏は暑さの、真冬は寒さの対策も考えなければなりません。そのためあまり現実的な選択肢とはいえないでしょう。
費用の種類 | 費用の目安 |
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レンタル代(20畳のユニットハウス1カ月あたり) | 約25万円~ |
設置・撤去費 | 約10万円~ |
合計 | 約260万円~ |
建て替え中の仮住まいは、どのように探せばよいのでしょうか?
「仮住まいは、施主さんがご自身で希望にあった賃貸物件を探されるケースがほとんどです。仮住まいは地域が限定されたり、短期での退去が前提となったりするので、物件探しは難航する傾向があります。物件を借りたいエリアの不動産会社さんに、仮住まいを始める2カ月ほど前に相談するのがおすすめです」
「賃貸物件であれば、インターネット上の物件探しサイトを利用すると便利です。希望のエリアや広さ、家賃などから候補を絞り込んでいきましょう」
SUUMOでも、沿線やエリアから賃貸物件を検索していただけます。
「ハウスメーカーさんや工務店さんは、年間を通して仮住まいの相談を受けているので、情報を持っている可能性があります。仮住まいできる賃貸を持っている会社もあるので、『みなさん仮住まいはどうしていますか』と気軽に聞いてみるといいと思います」
「建て替え時の仮住まいでもっともよく聞く問題は『短期で借りられる物件が見つからない』ことです。大家さんの多くはできるだけ長く借りてくれる人に貸したいと思うものなので、短期の仮住まいとなった時点で候補が減るためです。
解決策としてはできるだけ早く探し始めることです。ただし早く見つかると、家賃を払う期間がそれだけ長くなってしまいます。入居時期を退去時にあわせられないか、オーナーに相談してみましょう」
「短期であるのに加えてペット可物件となると、さらに難易度は上がります。希望のエリア内に対象物件がなければ、候補地を広げる必要もあるでしょう。仮住まいの期間だけでも実家や知人などに預けることも検討してみましょう」
「荷物が多く仮住まいの部屋に入らない場合は、必要最低限のものだけ持っていくようにして、使わないものはトランクルームに預けましょう。また家の建て替えにあわせて不要なものを処分して、荷物自体を減らすことも大切です」
建て替え中の仮住まいでよくある疑問と、その回答を紹介します。
住民票については、生活の拠点が異動(移動)しない場合や、異動期間が1年未満とあらかじめわかっているなら移す必要はないとされています。仮住まいが1年を超えるとはじめから見込まれている場合は、自治体に相談してみましょう。
「水道や電気、ガスは家自体を解体するので止めてしまいます。仮住まいに引っ越すタイミングにあわせて手続きしましょう」
なお家の建て替えで水道や電気、ガスを止めるときには、家を解体することを必ず伝える必要があります。単なる停止ではなく、メーターなどの設備自体の撤去が必要になるためです。
「郵便物の転送手続きも必要です。家を解体する以上、配達できなくなるためです」
なお郵便物の転送サービスは、1年間となっています。なんらかの事情で仮住まいが1年以上となったときには、再度手続きが必要です。
クレジットカードの住所は変更しておきましょう。クレジットカードに関する郵便は転送不要郵便物となり、郵便局で転送手続きをしていても転送されないためです。とくに更新時期に該当する場合は、新しいカードが手元に届かなくなるため気を付けましょう。
「火災保険は建物を対象としています。そのため家を解体するのであれば一度解約し、新しい建物に対して新たに契約し直す必要があります」
最後にあらためて木津さんに、建て替えの際の仮住まいについてアドバイスを伺いました。
「短期で住むことが前提の仮住まいは、賃貸を選ぶ方がほとんどです。通常、部屋を見つけて契約し、引っ越すだけでも2週間程度かかりますが、短期が前提となると条件にあう部屋を見つけること自体が簡単ではありません。そのため仮住まい探しは余裕をもって、取り壊しの2カ月ほど前には不動産会社などに相談し、探し始めることが大切です。事情を説明し、力になってくれる担当者を見つけてください」
仮住まいが必要になるのは、取り壊しから引き渡しまでの8カ月~10カ月程度が一般的
短期の居住が前提の仮住まいで借りられる賃貸は少ないので、2カ月前には探し始めよう
仮住まいのコストを抑えたい場合は、荷物を減らしたり広さを妥協したりする必要もある
オーナー自身が空室のポータルサイト掲載を依頼し、閲覧数や内見結果などの募集効果を把握できる賃貸オーナー向けサービス「ECHOES(エコーズ)」を運営