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土地を購入して、それぞれの家庭の希望を詰め込んだ二世帯住宅を新築するとなるとかなり費用がかかるもの。予算を抑えたい場合は、中古という選択肢も視野に入れれば、理想の二世帯住宅を手に入れることができるかもしれません。今回は中古で二世帯住宅を購入するメリットやデメリットに加え、探し方やリフォームのポイントをSIREの木津雄二さんに教えてもらいました。
結婚をして世帯を持ってからも、親世帯との近居や同居を希望する子世帯は少なくありません。実家を建て替える際などに二世帯住宅への建て替えを検討するケースをよく耳にしますが、子世帯がマイホームの購入を検討する際、親世帯も呼び寄せて二世帯住宅にと考えるケースもあるようです。
二世帯が暮らす家を建てるとなると、建物の床面積は広くなるため、その分、広い敷地が必要になります。すでにある土地を活かして二世帯住宅を建てるケースであれば、建物に費用をかけることも可能かもしれませんが、子世帯が親を呼び寄せて、一から二世帯住宅を建てるとなると、単世帯の家を建てるよりも広い土地を購入することになります。そのため、自分達の家を建てる場合よりも、二世帯住宅の場合、費用は高額になりがちです。
一方、土地を購入して新築するのではなく、中古の二世帯住宅を視野に入れることで、予算を抑えながら二世帯住宅を検討することが可能になります。
「木造住宅の減価償却資産の法定耐用年数は22年なので、築20年以上の木造住宅の場合は、土地のみの価格に近い売却価格のものも少なくありません。リフォームなどに費用をかけても、二世帯住宅を新築するよりは費用を抑えられると思います」(木津さん、以下同)
二世帯住宅は住む人数が増える分、どんな家にしたいかという希望も多くなるものです。子世帯と親世帯の意見が合わなければ、どのような家にするか、プランニングには時間がかかり、ストレスを感じてしまうこともあります。
「新築する場合は、どんな希望でも反映させることができるので、色々な人の意見をまとめていく過程で家づくりに疲弊してしまうこともあります。一方、中古の場合は、既存の建物を見て判断して購入するので、プランニングのストレスはありません。購入後リフォームをするにしても、世帯間での意見の食い違いによる苦労は比較的少なく済むでしょう」

限られた予算でも、中古であれば二世帯住宅を検討できるという点で魅力的な中古二世帯住宅ですが、一般的な一戸建てよりも物件数が限られるという点が一番の難点です。
「中古二世帯住宅は流通自体が少ないので、新築する場合のように、間取りや立地などのすべての希望を叶えることは難しくなります。選択肢が少ないため、物件が見つかるまでには時間がかかることも覚悟して探していくことが必要になるでしょう」

中古二世帯住宅の場合、希望条件にすべて当てはまる物件を見つけるのは難しいと前述しましたが、そんな中でも、物件探しを成功に導くためには、自分達の譲れない条件と譲れる条件を整理し、希望条件に優先順位をつけておくことが重要です。
「限られた予算と物件数の中で、条件に合った住まいを見つけるには、ある程度譲れるポイントをはっきりさせておくことが必要です。例えば、立地、間取り、築年数、駐車場の台数など、住まいに求める条件は色々あると思いますが、まず二世帯住宅の場合は、完全分離型、一部共用型、完全同居型のどのタイプにするかということを明確にしておいた方がいいですね」
二世帯住宅の場合は大きく分けて(1)完全分離型、(2)一部共用型、(3)完全同居型の3つがあります。
上下階、左右などで世帯を分け、玄関をはじめすべての空間が別々
キッチンや浴室、リビングなど、部分的に共用する
ほとんどすべての空間を共用する

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共用する空間が少ないほど、生活費のコストメリットは少なくなりますが、各世帯のプライバシーは確保しやすくなります。同じ二世帯住宅といっても、共用スペースがどの程度あるのか、また、どこの空間を共用するのかで暮らし方や住み心地は大きく異なるため、どのタイプの二世帯住宅を検討するのか、まずしっかりと考えて物件探しをはじめましょう。
「理想の住まいに出合うための可能性を広げるという視点で考えると、例えば、完全分離タイプの二世帯住宅を希望している場合は、二世帯住宅という選択肢以外にも、近居だったり、マンションの隣合った2部屋を購入するという選択肢を視野にいれてもいいかもしれません。中古で二世帯住宅を探す場合は、『100%自分達の希望に合った物件』はないのが当然ということを念頭に、譲れない条件が叶う物件であれば、前向きに検討するというのが、成功のポイントになると思います」
少ない選択肢の中で、立地条件にこだわり過ぎると物件数はさらに限られてしまいます。住まい探しでは、優先順位の最上位に『立地』を掲げるケースも少なくないと思いますが、中古で二世帯住宅を探すのであれば、検討可能なエリアの範囲を広げることで、条件に合った物件を探しやすくなります。
「立地については、優先順位を下げて、検討エリアを広げて考えておいた方がいいですが、検討範囲を広げ過ぎてしまっても、物件を探しにくくなってしまいます。検討エリアを広げるといっても、例えば、『〇〇区内』や、『〇〇沿線の〇駅から〇駅の間』など、ある程度は希望エリアを絞って探した方がいいでしょう。中古で二世帯住宅を探すというのは長期戦になることも考えられるので、検討エリアを決めたら、そのエリアの不動産会社などに直接条件などを伝えて、物件が出て来たら声をかけてもらえるようにしておくといいと思います」

中古で二世帯住宅を探す場合、自分の条件にぴったり合う物件に出合うのが難しくても、リフォームで希望を叶えることができる可能性もあります。間取りや設備についてはリフォームを視野に、柔軟に検討することも必要です。
「二世帯住宅に限らず、中古で住宅を購入する場合は、クロスの張り替えなど、ある程度リフォームを行うのが一般的です。簡単なバリアフリー工事や設備の交換などはリフォームで対応できるということを前提に、物件の取捨選択をした方がいいと思います」

リフォーム費用はリフォームの規模によって異なりますが、土地を購入して二世帯住宅を新築するよりも、中古の二世帯住宅を購入して大掛かりなリフォームを行う方が費用を抑えられるというケースも少なくありません。
「壁の撤去やキッチンの増設など、大掛かりなリフォームも視野に物件を探すことができると、物件の選択肢は増えます。また、リフォーム予算を1000万円程度まで考えても、土地を購入して二世帯住宅を一から新築するよりは費用が抑えられるケースは多いでしょう。
リフォームで間取りや設備などは希望を叶えることもできるので、ほかの条件は満たしているのに、一部分が気に入らないから購入しないという選択はしない方がいいと思います」
2019年4月にSUUMOリフォームで実施したリフォーム実施者調査によると、中古購入を目的としたリフォーム費用の相場は一戸建ての中心費用帯は600万~900万円です。
築20年程度までの物件で、水まわりの設備交換や内装工事程度であれば、キッチン・浴室・洗面・トイレの設備交換に約250万~350万円。一部床やクロスの張り替えなどの内装工事費用と合わせて500万円以内のリフォームも可能です。
間取り変更については、その内容にもよりますが、築20年までで構造補強が少ないなら約800万~1500万円が中心費用帯となります。
予算を抑えるために中古での二世帯住宅購入を検討しているのであれば、1000万円を超えるリフォームが必要になるとコストメリットが感じられなくなってしまうかもしれません。どの程度のリフォームが必要になるのか、物件選びの際は物件価格にリフォーム費用も加えた費用がいくらになるか、合計金額をしっかり考えて検討するようにしましょう。
| 設備交換(キッチン・浴室・洗面・トイレ×2) | 約250万~350万円 |
|---|---|
| 壁・天井張り替え | 約30万~50万円 |
| 床・1階のみむく材に張り替え(2階は既存利用) | 約70万~100万円 |
| 合計 | 約350万~500万円 |
| 築20年まで | 約800万~1500万円 |
|---|---|
| 築20年超 | 約1500万~3000万円 |
二世帯住宅の場合、遠からず訪れる親世帯の介護などを視野に入れておく必要もあるでしょう。購入時にリフォームをするのであれば、子世帯も親世帯も元気な「今」の暮らしだけでなく、20年30年後の暮らし方を見据えてリフォームの計画を立てておくと安心です。
「階段や廊下が多少狭くても元気な内は不便を感じませんが、車椅子が通れない幅だったり、手すりを取り付けにくかったりすることもあります。介護が必要になったときに暮らしづらい家では、せっかく二世帯住宅を購入しても、また近い将来、住み替えや介護リフォームが必要になる可能性もあるので、暮らし方の変化に対応できるようにリフォームを計画しておくといいでしょう」

土地を購入して新築するにはかなりの費用がかかる二世帯住宅ですが、中古も視野に入れれば、二世帯住宅での暮らしを実現させることができるかもしれません。リフォームも見据え、広い視野で住まい探しをはじめてみてはいかがでしょうか。
中古であれば、土地から購入して新築するよりも、費用を抑えながら二世帯住宅を検討することが可能
物件の選択肢が比較的少なく、希望条件にぴったりと合う中古二世帯住宅を探すのは難しい
リフォームも視野に入れ、優先順位を整理して物件を探せば、理想の二世帯住宅を中古で見つけることもできる