近年再注目されている平屋。ファミリーでも平屋に住みたい!という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、5LDKの平屋について坪数ごとの間取り実例や価格、5LDKの平屋を建てるメリット・デメリット、平屋を検討する際に注意すべきポイントなどを丸和建設の山野将幸さんにお話を伺いました。ぜひ参考にしてみてくださいね。
そもそも5LDKの平屋がおすすめなのはどんな人なのでしょうか? 必要な坪数やかかる費用などとあわせて紹介します。
「5LDKの平屋がおすすめできる人には、3つのパターンがあります」(山野さん/以下同)
順番に教えていただきました。
「個室を5室も確保できる5LDKの平屋は、基本的には大人数で暮らすことが想定されています。例えば子どもが3人いるご夫婦でも、5部屋あれば家族それぞれが個室を持てます」
同じ5LDKでも2階建てだとリビングと個室のフロアが分かれる傾向がありますが、平屋だと家族全員が常に同じフロアで過ごすため、互いの存在を感じながら暮らせます。
「5LDKの平屋は、親世帯・子世帯の二世帯で暮らしたい人にも向いています」
LDKを共有する完全同居型の二世帯住宅は、水まわり設備が一つですむため、完全分離型の二世帯住宅よりもコストを抑えて建てられることがメリットです。1階と2階に分かれる二世帯住宅とは違い、世帯間のコミュニケーションを取りやすいのもポイントです。
「子どもの数は少ないけれども、寝室以外に個室がほしいと考える多趣味な方にも5LDKの平屋はおすすめです。例えば寝室以外に書斎がほしい、シアタールームがほしい方などが考えられます。また近年は家でリモートワークをする方も増えているので、独立した仕事部屋を設けたい方にも5LDKの平屋は向いています」
5LDKの平屋にはどのような間取りがおすすめなのか、また坪数はどの程度必要なのでしょうか?
「5LDKの平屋は、中央に広いリビングを配置して、両側に個室を振り分けるケースが多いです。その際玄関から子ども部屋に行くには必ずリビングを通る間取りにすると、お子さまの様子が見えるので安心です。
また5LDKの平屋は、家族人数の変化に対応できるよう、可変性が高い間取りにしておくのもおすすめです。詳しくは注意点の箇所で紹介します」
「5LDKの平屋の延床面積は、LDKや個室の広さにもよりますが、最低でも32坪程度は必要だと思います。できれば35坪程度の延床面積を確保できると、ライブラリースペースやたっぷりの収納を設ける、バリアフリーにするなど、ゆったりとした余白のある間取りにできるのでおすすめです」
「一般的に一番分かりやすいことから、家を建てる際の費用は坪単価(総建築費を延床面積で割った、1坪当たりにかかる単価)で表現されることが多いです。坪単価に延床面積をかけて、建てるためにかかる費用を算出できます。なお坪単価は住宅性能や設備のグレードなどに応じて変わるのが通常です。
例えば30坪の平屋なら、坪単価50万円程度であれば1500万円ほどで建てられる一方、坪単価100万円であれば3000万円程度かかる計算です」
なおこれはあくまで建物本体にかかる費用です。実際に家を建てるときには、給排水工事や外構工事にかかる付帯工事費、住宅の登録などにかかる諸費用、10%の消費税なども見込んでおきましょう。
マイホームを建てるときに知っておきたい、5LDKの平屋にするメリット・デメリットはどのようなものがあるのでしょうか? 建築時に注意すべきポイントとあわせて紹介します。
「5LDKの平屋だと、家族5人まではそれぞれ個室を持てることがメリットです。家族一人ひとりがプライバシーを守って暮らせます」
「同じ5LDKであっても、2階建てだと上下移動が必要になってしまいます。しかし平屋にすれば平面移動だけですむので、バリアフリーで暮らせることもメリットです」
「個室が5部屋あれば、子どもが増えたときや親と同居することになった場合でも、家族が5人になるまでは個室を共有しなくてすみます。また子どもが独立して部屋が余ったときには趣味を楽しむ部屋にするなど、ライフスタイルの変化に対応しやすいことも5LDKの平屋にするメリットです」
「5LDKの平屋は最低でも延床面積30坪程度は必要になり、屋根面積も同程度の広さになります。屋根が広ければ太陽光発電パネルを乗せる場所や数を調整しやすく、太陽光発電がやりやすくなるのもメリットです」
「5LDKの平屋を建てるためには、それだけ広い敷地が必要になります。家を建てるのに必要な土地面積は建蔽率(建ぺい率=敷地面積に対する建築面積の割合)の影響を受け、例えば建蔽率40%の土地に30坪の平屋を建てる場合、最低でも75坪の土地が必要になる計算です」
「5LDKの平屋は、上下移動はないものの、水平移動の動線が長くなります。部屋数が多いため掃除をするのにも時間や労力が必要です。5LDKの平屋を建てるときには、家事動線をよくするために水まわりをできるだけ1カ所に集中させるとよいでしょう」
「基本的に平屋は、基礎や屋根などコストがかかる面積が2階建てよりも広くなるため、坪単価が高くなる傾向があります。5LDKの平屋となると建築面積が広いことから、建築コストもそのぶん高くなってしまいます」
実際に5LDKの平屋を建てるときには、どのようなポイントに注意するとよいのでしょうか?
「5LDKの平屋の中心部まで光が届き、風が抜けるようにするには、天窓を設けたり、勾配屋根にして吹抜けを設け高窓から光を取り入れたり。あるいは窓の向きや大きさ、位置などを検討する、建物の形状をL字型やコの字型にするなど、さまざまな工夫が必要です。
そのため5LDKの平屋を建てるときには、エリアに詳しく平屋の建築経験が豊富な担当者・会社に依頼することが大切です」
「5LDKの平屋のデメリットでもお伝えしたように、部屋数が多いと子どもが独立して家を出ていくなど将来家族の人数が減ったときに部屋が余る可能性があります。掃除やメンテナンスが大変といった理由で減築を相談されることも実際あるのですが、部屋を減らすのは簡単ではありません。
そのため家を建てるときには、家族の将来の変化を踏まえて部屋数を検討する、可動式の間仕切りで部屋を仕切るなど、可変性を高めておくことをおすすめします」
「部屋数を確保するために収納スペースを削ってしまうと、部屋にものがあふれて乱雑になってしまいます。家族の人数が多ければそれだけ荷物も多くなるため、十分な収納スペースを確保しておくことも大切です」
ここからは、5LDKの平屋の実例を、延床面積別に紹介します。
玄関ホールから個室に行くためには、必ずLDKを通らなければならない間取りとし、家族とコミュニケーションが取りやすいよう工夫されています。各個室には収納を設けず、ランドリールームの横に3.5畳の広々としたファミリークローゼットを設置することで家事動線の効率を高めました。玄関からは直接キッチンにアクセスできるので、家族が多いと多量になりがちな食材も楽に運び込めます。
広々した庭と家の中をつなぐウッドデッキを囲むように、コの字型に建てられた5LDKの平屋です。玄関から入って左手に夫婦の主寝室を設け、子ども部屋はリビングを通った奥に設けました。トイレは将来高齢になったときのことを考え、あえて主寝室横に配置。リビングと隣接する形で家族みんながくつろげる小上がりの和室と、共用のライブラリースペースがある、余裕が感じられる間取りとなっています。
同性の子ども部屋2室は可動式間仕切りにし、将来部屋を分けられるようにしていますが、部屋をシェアしているときでもライブラリースペースに行けば、一人の時間を過ごせます。
L字型で建てられた、インナーガレージ付きの5LDKの平屋です。5つある個室のうち、1室は仕事で使う接客サロンスペースに、さらに1室はインナーガレージの愛車を見ながら趣味を楽しめるスペースに利用。ほかにもウォークインクローゼットやパントリー、サンルームなどを確保した余裕がある間取りとなっています。
敷地内にはインナーガレージ含め車を4台駐車可能。この事例は店舗兼用という事情もありますが、一般的に5LDKだと住まう人数が多く車も複数台所有する傾向があります。平屋を計画するときには、駐車スペースを含めて検討することも大切です。
約140坪の広大な敷地を活かし、中庭のあるコの字型で5LDKの平屋を建てた事例です。玄関から入ってすぐの部屋は、客間として使う床の間のある和室とすることで、プライベート空間と分けました。各個室に備え付けの収納以外に、広々としたウォークインクローゼットを2カ所、さらに小屋裏収納を設けたことで十分な収納量が確保されています。
ウッドデッキが設置された中庭は、愛犬の恰好の遊び場です。
「5LDKの平屋は間取りのバリエーションが豊富ですが、リビングは日当たりがいい南向きを希望する方がほとんどです。敷地の南側が道路に面している場合は通りからの視線が気になりますが、フェンスを設ける、熱線反射ガラスを使うなど工夫すればプライバシーを守りやすくなります。
玄関については道路側に向けることが多いですが、家を出てすぐ目の前が道路なのは抵抗がある方も少なくありません。そのため例えば北道路の場合は、北側に玄関を配置するとしてもドアは東に向けるなど工夫しています」
部屋数が多い平屋は、建物の形状のバリエーションも多くなります。平屋のプランで見られるI字型、L字型、コの字型、ロの字型の特徴をまとめました。
プラン | 特徴 |
---|---|
I字型 | 細長く部屋を配置するプラン。東西に長い場合は、日が当たる部屋を多く取れる。 |
L字型 | アルファベットのLの字のように建物を配置したプラン。アシンメトリーでデザイン性が高い外観になる。 |
コの字型 | カタカナのコの字のように建物を配置し、中庭やウッドデッキを設けるプラン。軒を長く出し、中庭やウッドデッキに雨が当たらないようにすることも多い。 |
ロの字型 | 中庭を完全に囲うように、カタカナのロの字に建物を配置するプラン。外にはなるべく窓を設けず、プライバシーを確保したい方に向いている。 |
「なお家の形状は、複雑になるほど建築費が高くなります。複雑な形状はシンプルな箱形と比較すると壁面の数が多くなり、材料費や施工の手間が増えるためです」
「5LDKの平屋は動線が長くなること、また家族が多いと朝の時間帯には混雑することなどから、予算が許すのであればトイレは2つあったほうが便利だと思います。
2つめのトイレをどこに設けるかは、施主さまによってそれぞれです。出先から戻ってすぐ使えるよう玄関近くに設置する方もいれば、将来高齢になったときに備えて主寝室のそばに設ける方もいます」
最後にあらためて山野さんに、5LDKの平屋を検討している方へのメッセージをいただきました。
「5LDKの平屋は部屋数が多いため、部屋の配置や外観バリエーションが豊富です。検討するときには、これからどのような暮らしをしたいのか、将来的なライフプランも含め設計者に相談すると、適切なプランを提案してもらえます。
あとから『こんなに部屋はいらなかった』と後悔しないよう、平屋の建築ノウハウや経験豊富な会社に依頼して、納得のいく家を建ててください」
5LDKの平屋は大人数で暮らす人はもちろん、用途別に部屋を使いたい人にもおすすめ
将来、子どもの独立などで部屋が余ることも想定して可変性のある間取りを検討
5LDKの平屋は、最低でも30坪程度の延床面積が必要
5LDKの平屋を建てるには、エリアに詳しく平屋の建築経験が豊富な会社に依頼することが大切