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天井と壁の境目にある「廻り縁(まわりぶち)」や、壁と床の境目の「巾木・幅木(はばき)」には、どんな役割があるのでしょう。付けなくても平気? どんな種類があるの? 一級建築士の橋本さんに教えてもらいました。
廻り縁とは、天井と壁の境目に取り付ける部材。巾木・幅木は、壁と床の境目に取り付ける部材で、それぞれ壁の最上部、最下部に位置します。
「天井材と壁材を施工する際、その境目にどうしても隙間ができてしまいます。その隙間を隠すのが、廻り縁の役割です」と橋本さん。
つまり、天井と壁の隙間を隠して見た目をきれいに仕上げてくれるのが廻り縁なのです。「天井と壁を同じ素材・色で仕上げる場合、廻り縁を省くこともあります。珪藻土などはその一例です」
同様に巾木・幅木も壁と床にできる隙間対策として、見た目をきれいにする役割はもちろん、掃除機を使用する際に壁にぶつけてクロスなどを傷つけない役割があります。
廻り縁と巾木・幅木ともに、壁紙を上から押さえて施工するので、壁紙の剥がれ防止にも一役買います。
廻り縁や巾木・幅木は仕上げの部材のため、木造建築や鉄筋コンクリート造など、構造の種類は問いません。
廻り縁や巾木・幅木の素材は木材系が主流で、天然木や化粧シートを張ったMDF(中密度繊維板)などがあります。そのほかにも、水に強くて比較的安価なビニール製のタイプ、むく材やポリスチレン製などの樹脂系といった輸入材などがあります。床の仕上げがタイルの場合、そのまま壁にタイルを立ち上げて、巾木・幅木として使うこともあります。
「ビニール製のタイプは、主にクッションフロアなど同じビニール系の床材と合わせます。そのため、一部のマンションや賃貸住宅などで多く使われますが、逆に住宅メーカーで建てる住宅や注文住宅で使用することはほとんどないでしょう」
また、化粧シートタイプも水や油汚れに強いため、同様の特徴を持つビニール製をため、キッチンなど水まわりにわざわざビニール製を使う必要はないそうです。
インテリアの一部となる廻り縁や巾木・幅木は、さまざまなインテリアスタイルとコーディネートできるよう、進化しています。特に、化粧シートは高度な印刷技術で色や柄を自在に操れるため、よく使われるホワイトなどの単色はもちろん、天然木のような柄の中でも色の濃淡が異なるなど、多彩な色や柄がラインナップされています。
また、形状も豊富です。「大まかに分けるとスッキリとしたデザインと、デコラティブなデザインがあります。主に輸入材は、デコラティブなタイプが多いです」。例えば目立たないようにデザインされた廻り縁や巾木・幅木はスッキリとした印象で、壁や床材、その部屋に置いた家具類を引き立てやすくなりますし、デコラティブな輸入部材だと例えばクラシカルな室内で装飾品の一部として存在感が出ます。このように、インテリアの考え方に合わせて形状も選びやすくなっています。
住宅メーカーで家を建てる場合、商品によっては仕様が決まっていることも多く、廻り縁や巾木・幅木も数種類の中から選ぶことも多いでしょう。一方、注文住宅は、基本的に自由です。「廻り縁や巾木・幅木ですが、ドア・ケーシング(ドアの枠)・壁・床・天井の色や素材、またインテリアスタイルによって、選び方が変わります。例えば、巾木・幅木とケーシングのみそろえるケースやドアとケーシングのみそろえるケースなど、手法もさまざまです」
廻り縁や巾木・幅木をつくる建材メーカーも、自社製品とコーディネートしやすいよう、ドアやケーシングと同じ質感・色柄を用意しているので、同じ建材メーカーでそろえると安心でしょう。むしろ選ぶバリエーションが多いと「自ら選ぶのが大変」と思う方も多いのではないでしょうか。「そういうときは、こちらから何パターンか提案して選んでもらうようにしています。その際、予算を確認した上で、施主の好みや希望のテイストを共有することが大切です」
「自分で選んでみたい」「提案されてもどれがいいか迷いそう」と思ったら、インテリア雑誌やSNSなどで好みのインテリアをチェック。ドアや床材など他の部分と廻り縁や巾木・幅木とのバランスに注意して見ておくことをオススメします。
廻り縁や巾木・幅木の耐久性はどうなのでしょうか。「今は技術が向上しているので、昔のように化粧シートが剥がれたりすることはほとんどありません。ただ、巾木・幅木に掃除機をぶつけたりすると凹んだり、コーナー部分なら剥がれることもあります」
それに対応するため、コーナーに取り替え可能なキャップを用意している国産メーカーもあります。
また日々のメンテナンス性でいうと、巾木・幅木の上面にどうしてもホコリがたまりがち。そこを掃除するのが大変ですが、最近は下記のようにホコリがたまりにくいデザインのものや、大工仕事で巾木・幅木を壁に埋め込む方法もあります。
家を建てる際やリフォームの打ち合わせで、初めて『廻り縁』や『巾木・幅木』という言葉を聞く人のほうが多いと思いますが、実はインテリアの印象を左右する重要な部材。色や柄、形状も意外と多いのです。その分、選ぶのが大変ですが、まずはその部屋をどんなインテリアテイストにしたいか、雑誌などの写真をたくさん見て参考にしてくことから始めてみましょう。
廻り縁や巾木・幅木は、壁と天井、壁と床の隙間を隠し、綺麗に仕上げるための部材
廻り縁や巾木・幅木の素材は、天然木や化粧シートを張ったMDF(中密度繊維板)といった木材系が主流
廻り縁や巾木・幅木はインテリアの印象を左右するため、バランスに注意しながら選ぶことが大切