電気温水器の寿命は何年？交換時期の目安や費用を知って安心

お湯をつくる電気温水器は快適な暮らしに必須となる設備機器ですが、機器の寿命や故障につながるトラブルについて知らない人も多いのでは？そこで、主なトラブルや交換するときの費用の目安、エコキュートとの違いなどについて、建築家の佐川旭さんに教えてもらいました。

電気温水器の寿命は何年？寿命は延ばせる？

電気温水器の寿命は10～15年が目安

電気でお湯を沸かす電気温水器には、使うときにお湯を温める瞬間式と、水を貯湯タンクにためて沸かす貯湯式がある。一般的な住宅で、浴室や台所など複数個所で使用する場合、貯湯式を使うケースが主流だ。

なお、電気温水器の寿命は、方式や使い方などで若干異なるものの、10～15年が目安となる。

タンクにためた水を電気で沸かす、貯湯式の電気温水器。深夜電力を使ってお湯を沸かすことで光熱費が節約できる（画像／PIXTA）

寿命にかかわらず、不具合を感じたときは点検を

故障の前ぶれとなる不具合には、どのような症状があるのだろう。

「不具合で多い症状に、貯湯タンクのお湯がぬるくなる、貯湯タンクからお湯が漏れるなどがあります。このようなときには設備工事会社に点検を依頼しましょう。ただ、使い始めて10年を過ぎていたら、劣化具合をみて交換を検討するのもよいかもしれません」（佐川旭さん。以下同）

長く使うためには設置場所にも配慮したい

戸建住宅の場合、電気温水器は屋外に設置するのが一般的。基本的に機器は風雨に耐えられるものの、スペースが許すなら、雨や紫外線に直接あたらない場所への設置を検討しよう。

「注意したいのが、雨や屋根からの雨だれが電気温水器にあたる場所に置かないことです。雨だれが機器にあたって跳ね返り、外壁やサッシなどを濡らし続けることでカビが発生しやすくなり、家の傷みにつながります」

電気温水器は家の目立たない場所に設置するケースが多いうえ、跳ね返りの水が飛び散るのは貯湯タンク上部と高い位置なので視界に入りにくい。そのため、気付いたときには、飛び散った水により外壁やサッシのコーキングにカビが発生していることが多いそうだ。

湿気が原因でできたカビは、家を傷める原因になる（画像／PIXTA）

寿命以外で買い替えるタイミングって？

電気温水器が故障したり、寿命が来たりする前に買い替えるタイミングは、主に3つある。

■タイミング1：駐車・駐輪スペース確保のために、電気温水器を移動する

戸建住宅で多いのが、駐車場や駐輪場などを広くする際、電気温水器を移動するときに、ついでに新しい機器へと買い替えるケースだ。

「自動車の買い替えや2台目を置くスペースが欲しい、子どもの成長に伴い自転車を複数台所有するようになったなどの理由で、電気温水器の位置を少し動かして駐車・駐輪スペースを確保するケースはよくあります」

■タイミング2：リフォームを機に買い替える

浴室やキッチンなど水まわり空間のリフォームをするときに、併せて電気温水器も買い替えるケースは多い。

「リフォームは家族構成が変わったタイミングで行う人が多いですよね。新築時には夫婦と子ども2人だったので容量が大きい電気温水器を使っていたけれど、夫婦2人暮らしになったので、リフォームを機に小さい容量に買い替える人もいます」

■タイミング3：ランニングコスト（電気代）を抑えたい

電気代が高騰している昨今、電気温水器よりも少ない電力でお湯を沸かせるエコキュートへと買い替えるケースも多い。

「貯湯タンクが同じ容量なら、エコキュートは電気温水器の約１/３の電力でお湯を沸かせます。タンクのお湯を使い切ってしまう『湯切れ』を起こしたとき、機種によっては操作をすれば沸き増しすることができますが、その際の電気代も抑えられます。

また、消費電力を抑えられるとエコに貢献できるので、そこにメリットを感じている人も多いですね」

物価が高騰している今、電気代が抑えられるのは家計にとって大きな魅力（画像／PIXTA）

故障のサインと、故障ではないトラブルは？

よくある故障内容と、故障のサイン

電気温水器の故障内容には、お湯や水が出ない、貯湯タンクから水が漏れる、お湯が沸かないなどがある。

「よくある故障は、劣化により貯湯タンクの水抜き栓や給水管が錆びてしまったことによる水漏れです。他には、入浴剤を使うとフィルターに目詰まりが生じやすい機種があるので、使用前に取扱説明書で確認した方がよいでしょう」

故障のサインとしては、前述したようにお湯がぬるくなる、貯湯タンクの下が濡れているなどがある。気が付いたら早めに設備工事会社に連絡し、点検してもらおう。

故障かな？と思ったら、工事会社に点検してもらおう（画像／PIXTA）

故障ではないトラブル・現象とは

電気温水器の、故障ではないトラブルの代表的なものが『湯切れ』だろう。

「15～16年前の話ですが、新築で入居したばかりのお施主さんから“お湯が出ない。電気温水器が壊れたのでは？”という電話をもらったことがあります。よくよく話を聞いたら、親戚が泊まりに来ていて、いつもより多くのお湯を使ったとのことでした。引き渡しのときに湯切れの説明はしましたが、ピンとこなかったのでしょう。

このお施主さんに限りませんが、湯切れは、一度体験しないと分かりにくいトラブルだと思います」

湯切れ以外には、凍結や断水によりお湯が出ない、ブレーカーが作動してお湯が沸かないなどがある。凍結は外気温が０℃以下になると発生する可能性があるので、取扱説明書で予防方法を確認しておきたい。

電気温水器が壊れた！交換費用はいくらかかる？選び方のポイントは？

電気温水器を交換する場合の費用目安

電気温水器を交換する場合、新しい機器代にプラスして、工事費が10万～20万円程度必要になる。工事費の内訳は、古い機器の処分費、新しい機器の設置費、電気や配管の接続費、諸経費などだ。

「機器が置いてあった基礎コンクリートの状態によっても、工事費は変動します。例えば、コンクリートが水平でなかったり、一部分が土に埋もれていたりする場合、コンクリートの補修工事が必要になります」

工事を依頼するときには必ず見積書をもらい、内容と費用をチェックしたい（画像／PIXTA）

新しい電気温水器はタンク容量とタイプで選ぶ

電気温水器を選ぶポイントは、タンク容量とタイプの２つだ。
タンク容量は、一般家庭の場合、370リットル、460リットル、550リットルから選ぶケースが多い。

「個人住宅を設計するとき、一般家庭なら370リットル、お子さんが多かったり二世帯の場合には460リットル、温水式床暖房を入れる場合には550リットルをご提案しています。機器代はメーカーによって異なりますが、容量が大きくなると20万～30万円程度高くなります」

タイプは、給湯専用、オート（セミオート）、フルオートの3つ。給湯専用はお湯が出る機能のみを備えており、オートはボタン一つでお湯はりが可能、フルオートはお湯はりや足し湯、保温を自動運転する機能がある。

「一般家庭ならオートかフルオートのいずれかでしょう。設計時にフルオートをすすめることが多いのですが、今の住まいでオートを使っていて不便を感じないなら、同じでよいかもしれませんね」

電気温水器とエコキュートの違いとは？

違いは製品価格やランニングコスト（電気代）

電気温水器が故障したとき、省エネ性が高いエコキュートへと交換するケースは多い。
エコキュートとは、電力を使って空気中の熱を取り込み、その熱で水を加温しタンクにためる高効率給湯器のことだ。

「発売当時、エコキュートはかなり高価だったのですが、普及に伴い価格が落ち着いてきました。最近では、タンク容量が370リットルの場合、電気温水器は50万～60万円程度、エコキュートは80万～100万円弱なので、金額差は20万～30万円ぐらいです。

毎月の電気代が抑えられることやエコ意識の高まりもあり、最近の住宅設計ではエコキュートを選ばれる方が多いですね」

ちなみに、新築時にエコキュートを導入したり、電気温水器をエコキュートへ交換したりする場合、補助金がもらえる自治体がある。例えば、東京都新宿区の場合、一定の要件を備えた機器を選択し、施工完了後に必要書類一式を揃えて申請すれば10万円の補助金がもらえる。
申請受付期間や、期間内でも予算枠数に達した場合、受付を終了することもあるので、詳細は自治体に問い合わせてみよう。

■電気温水器

お湯はり、保温、足し湯がスイッチ一つでできる、フルオート機能付きの電気温水器。貯湯タンクの容量は460リットル。同梱されている浴室用とキッチン用のリモコンで会話することができる。DH-46G5QU 希望小売価格61万円・税別（画像提供／パナソニック）

■エコキュート

狭小地にも設置しやすい薄型モデルのエコキュート。フルオート機能のほか、リモコンに設置されたセンサーが人の出入りを感知し、無駄なく最適な湯温に調整する。貯湯タンクの容量は460リットル。HE-W46KQS 希望小売価格112万5000円・税別。コミュニケーションリモコン（浴室用とキッチン用）HE-WQWKW 希望小売価格5万9000円・税別（画像提供／パナソニック）

設置スペースの広さと、音の発生の有無も異なる

電気温水器とエコキュートは、設置スペースに必要な広さと、音の発生の有無も異なる。

「通常、電気温水器の設置スペースは幅1m×奥行1m程度ですが、エコキュートは幅２m×奥行1m必要です。ただ、エコキュートはコンパクトサイズや薄型サイズなども用意されているので、敷地に合わせて選択できます」

さらに、音の発生の有無も異なる。

「お湯を沸かすとき、電気温水器は音が出ませんが、エコキュートは空気中の熱をコンプレッサーで圧縮して熱をつくるため、低いモーター音が発生します。浴室やキッチンにいるなら気にならない程度の音ですが、寝室に近いと、深夜にお湯を沸かすときに気になるかもしれません」

電気温水器をエコキュートに交換する場合の費用目安

電気温水器をエコキュートに交換する場合、電気温水器に交換するより工事費は高くなる。

「先述したとおり、製品価格は電気温水器よりエコキュートの方が高いです。さらに電気温水器よりエコキュートの方が機器を置くスペースが広いため、機器を置く基礎コンクリート工事をやりなおす必要があります。

機器代と工事代を合わせると、電気温水器に交換するより40万～60万円ぐらい高くなると思います」

交換するときに工事会社はどう選ぶ？一緒にリフォームもするべき？

家から近い工事会社を選べば、万が一のときに安心

交換を依頼する工事会社を、工事費の見積もり額で選ぶ人は多いだろう。ただ、長く使う機器なので、トラブル発生時や故障時に点検・修理を依頼する可能性は高い。

「見積もり額も大事ですが、トラブル発生時に早めに対応してもらえるように、家から30～40分ぐらいの場所にある工事会社を選ぶと安心です」

リフォームは先々を考慮して選択を

古い戸建住宅の場合、電気温水器の交換と同時に、水まわりのリフォームを検討する人もいるだろう。

「機器の交換だけにするか、リフォームも併せて行うかは、自分たちのライフサイクルと機器の寿命を考慮して選択しましょう。例えば、今は50代なら、次の交換は70歳前後になります。リフォームには気力や体力が必要となるので、50代のうちに機器交換と併せてバリアフリーへとリフォームしておくとよいかもしれませんね」

機器の交換かリフォームかは、先々を見据えて検討を（画像／PIXTA）

賃貸住宅の場合、電気温水器が壊れたらどうすればよい？

トラブルが生じたら、管理会社か大家に連絡を

賃貸住宅の場合、他の住宅設備と同様、設備機器の修理・交換は大家の負担となる。お湯の出方が悪い、湯温が不安定、妙な音がするなどのトラブルが発生したら、管理会社か大家にすぐに連絡をして、点検や修理を依頼しよう。