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2024年現在利用可能な蓄電池の補助金や、太陽光発電と蓄電池をセットで導入することのメリットを解説していきます。電気代の高騰が叫ばれ、太陽光発電の売電価格の低下、停電を伴う災害を経験した今、より効率的な太陽光発電の運用を模索したいところ。蓄電池の追加導入の補助金や効果についてニチコンの末沢さんに取材しました。
2050年のカーボンニュートラル実現のため、再生可能エネルギー、特に太陽光発電の導入が促進されています。政府は、電源に対する再生可能エネルギーの構成比を36%~38%に引き上げる計画を進めており、うち14~16%程度を太陽光で賄う予定です。
太陽光発電システムの設置義務化を進めている自治体もあります。東京都では、2025年4月から対象となる新築住宅への太陽光発電システムの設置を義務化しました。神奈川県川崎市でも、延べ床面積2,000m2未満の新築の建築物を一定量以上供給する事業者に対し、太陽光発電設備の設置を義務付ける「特定建築事業者太陽光発電設備導入制度」の2025年度施行を目指しています。京都府でも「京都府地球温暖化対策条例」によって、延べ床面積300m2以上の中~大規模建築物に対し、再生可能エネルギー設備の設置を義務付けています。
「かつて、自宅で太陽光発電を持つことの魅力の一つに、『固定価格買取制度(FIT)を利用して利益を得ること』がありましたが、売電価格が年々低下している今、発電した電気を自宅で『賢く使う』ことへのシフトが始まっています。これに伴い、発電した電力を自宅で有効活用するために蓄電池を導入する家庭が増えています」(ニチコン 末沢さん)
蓄電池は昼間に発電した電力を貯めておくことで夜間や天気が悪い日などいつでも利用でき、電力の供給を安定させ、災害時のバックアップ電源としても活躍します。電気代が高騰する中、太陽光発電と蓄電池の組み合わせは家庭の電力コストを削減する効果的な手段です。また、EV(電気自動車)の普及とともに、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)を家庭で倍速充電するだけでなく、EVやPHVの電力を家庭で活用できるV2H(Vehicle to Home)も広まり始めています。
太陽光発電と蓄電池は、地球にも家計にもやさしいニューノーマルなシステムです。これから、蓄電池の導入時に活用できる補助金について紹介します。

太陽光発電についてもっと詳しく
→太陽光発電の家は停電や災害にどのくらい強い?設置費用やメリットデメリットは?
国が公募している補助金の中で、2024年(令和6年)の6月現在、交付申請が可能なものを、家庭用蓄電池を購入する個人に関係する部分を抜粋して紹介します。再生可能エネルギーに関する補助金の出所は、国、都道府県、市区町村などさまざま。基本的に、国からの補助金は併用することができませんが、国の補助金と都道府県の補助金なら併用可能なこともあります。また、現在交付申請がオープンになっていない補助金も、これから今年度分の募集が開始するかもしれません。詳しい情報はリンク先の公式サイトでご確認ください。
ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略。「使うエネルギー≦創るエネルギー」になる住宅を指します。ZEHの新築一戸建てを建築・購入する個人向けの補助金があり、蓄電システムの購入も加算対象となります。ZEHの認定を受けるには、申請者と契約をする工務店か設計事務所のいずれかがZEHビルダー/プランナーである必要があります。


詳しくはこちら
→2024年の経済産業省と環境省のZEH補助金について|sii
子育てエコホーム支援事業は、エネルギー価格高騰の影響を受けやすい子育て世帯や、若者夫婦(申請時点で夫婦のいずれかが39歳以下)向けの補助金です。2023年3月31日に申請開始した分は、予算上限に達したため受付終了しています。
DR補助金補正とも言われており、需要応答型(Demand Response)蓄電システム導入支援事業のことで、家庭や業務産業用の蓄電システムを導入する際に提供される補助金です。

蓄電池への補助金は、都道府県や市区町村などの自治体からも提供されていることがあります。自治体の補助金は、基本的には国の補助金と併用可能です。補助金の有無、内容や金額、他の補助金と併用可能か否かは自治体ごとに異なるため、住んでいる地域の公式サイトや窓口で詳しい情報を調べてみましょう。例として、東京都、川崎市、京都市の補助金を紹介します。
2030年のカーボンハーフ実現に向け、省エネ・再エネ住宅の普及拡大を促すための、太陽光発電設備・蓄電池の設置等に対する補助事業です。

脱炭素社会を実現するために、再生可能エネルギーの利用と地域内での消費を推進する目的で、市内に住んでいる(または住む予定のある)人に対し、太陽光発電設備の設置費用の一部を補助します。
「京都再エネクラブ」とは、京都市が2050年までにCO2排出量をゼロにすることを目指し設立したクラブで、主に太陽光発電の普及に取り組んでいます。クラブの会員になると、市内の加盟店で利用できる「さんさんポイント」が付与されるなどの特典があります。蓄電池の設置にもさんさんポイントが発行されます。
詳しくはこちら
→京都再エネクラブ

蓄電池の購入を検討している人の中には、EVの購入や、V2Hの導入を考えている人も少なくないでしょう。車両や充電設備の購入に使える補助金もあります。詳しくはこちらのコーナーで紹介しています。
詳しくはこちら
→EV(電気自動車)を活用したV2HでEVの電気を家で活用!補助金もあり
蓄電池がない場合、自宅で発電した電気を利用できるのは晴れている時だけです。蓄電池があれば太陽の出ている時間に発電した電気を蓄電池に貯めておいて、天気の悪い日や夜間などいつでも電気を使用できます。発電した電気を最大限活用できるので電気代の削減につながります。
地震や台風による災害で停電が発生した場合、蓄電池に貯められた電気は非常用の電源として非常に役立ちます。蓄電池があることで夜間も電力を利用でき、冷蔵庫の中身を腐らせずに済みます。また、災害時にスマートフォンやテレビなどを利用でき、情報を得ることもできます。
太陽光発電システムのパワーコンディショナは、停電時に手動で切り替えをする必要がありますが、蓄電システムは基本的に自動で切り替わる仕様になっています。
蓄電池を満タンに充電したら、どのくらい電気を使えるのかシミュレーションしてみましょう。
蓄電池の使用可能時間は、以下の式で求められます。
計算式
使用可能時間 (時間) = 蓄電容量 (kWh) / 消費電力 (kW)
家庭用蓄電池の蓄電容量は製品によって異なりますが、最も多く出荷されているのは6kWh以上~10kWh未満の製品で、平均は8.48kWhです(JEMA 蓄電システム自主統計2023年度上期)。「kWh(キロワットアワー)」という単位は、電力(kW)を時間(h)でかけたもので、1kWhは1kWの電力を1時間使用することを意味します。例えば、1kWの電力を消費する家電を1時間使うと1kWhが消費されます。
それでは、普段使っている家電の消費電力はどのくらいなのでしょうか。クール・ネット東京の「家庭の省エネハンドブック 2024年度版」から、停電時にも使いたい家電の一部を抜粋しました。スマートフォンの充電については一般的な充電器のワット数を記載しています。
| 家電 | 消費電力 |
|---|---|
| 電子レンジ | 1400W |
| ドライヤー | 1000W |
| エアコン(6畳用) | 450W |
| 冷蔵庫 | 200~300W |
| 蛍光灯照明 | 100W |
| 液晶テレビ | 50W |
| スマートフォンの充電 | 10W |
停電のとき、満タンに充電された9kWh の蓄電池があったら、300Wの冷蔵庫と450Wのエアコンを何時間使用できるのか計算してみます。
9kWh / (0.3kW[冷蔵庫] + 0.45kW[エアコン]) = 12(時間)
計算上では、12時間の使用が可能。これなら太陽が沈んでいる時間も安心です。

太陽光から作った電気は、CO2を排出しない再生可能エネルギーです。太陽光発電で作った電気を効率よく使用することはCO2削減や環境保全につながります。自宅で作った電気を自宅で使うので環境にやさしい暮らしが送れます。

V2Hとは、「Vehicle to Home(クルマから家へ)」の略。EVに蓄えた電気を家庭で使えるようにするシステムのことです。EVに充電されている電力は、そのままでは家庭で使用できません。V2Hのシステムによって、EVに充電されている直流電力が家庭で使用可能な交流電力に変換され、家庭の分電盤から家電に供給されます。
V2Hによって、自宅の太陽光発電で作った電気をより効率よく活用できます。EVの蓄電容量は、車種によって20kWh~100kWh以上のものまで。蓄電池単体よりも圧倒的に蓄電容量が大きいため、非常時の電源として大変頼もしい存在です。
「現在、新しく太陽光発電と蓄電池をセットで導入する場合、太陽光パワコン機能(太陽光パネルで発電した直流電力を家庭で使用できる交流電力に変換するもの)と蓄電池が一体となった『ハイブリッド蓄電システム』を採用するのが主流です。最近では、すでにEVを持っていたり、次の買い替えではEVを検討している人も増えており、その影響で、ハイブリッド蓄電システムにV2Hも搭載した『トライブリッド蓄電システム』の人気も上がってきています」(ニチコン 末沢さん)

蓄電池と同じく、EV購入やV2Hの導入にも、国・都道府県・市区町村などの自治体から補助金が交付されています。代表的な例として、一般社団法人次世代自動車振興センターからEV等の車両購入に交付される「CEV補助金」、EV等の充電設備の導入にかかる経費を補助する「充電設備・V2H充放電設備・外部給電器補助金」などがあります。
受付期間や対象車種は、公式サイトでご確認ください。EVに関する補助金は非常に人気が高いため、早めに情報収集や申し込みを済ませておきましょう。
詳しくはこちら
→補助金情報一覧|一般社団法人次世代自動車振興センター
太陽光発電で得た電気は、家庭用蓄電池を導入することでより効率的に自家消費できます。2050年のカーボンニュートラル実現に際し、補助金などのサポートも充実してきている昨今。すでに太陽光発電システムだけは持っているという人も、新たに太陽光発電を導入したいという人も、蓄電設備の導入も考えてみてはいかがでしょうか。
自宅の太陽光発電で作った電気は、「賢く売る」時代から、蓄電池を活用して「賢く使う」時代へ
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、国や自治体からさまざまな補助金が交付されている
家庭用蓄電システムを導入すれば、昼間の太陽光から作った電気を貯めておけて、夜間・悪天候時や停電時に活用できる
V2Hの機能もついた『トライブリッド蓄電システム』によって、EVから自宅への放電も可能
大学卒業後、ニチコン株式会社に入社。
世界初の商品化となった「V2Hシステム」や「家庭用蓄電システム」のソフトウェア開発を経験し、2019年からは商品企画に従事し、ニチコンブランドの認知拡大のために、全国の自治体イベント、講演会やTV、メディアなどにも多数出演。