災害や事故で電気が止まってしまうと暮らしが成り立たなくなってしまう現代。停電時に助けとなる太陽光発電ですが、実際にはどのくらい役に立ち、普段どおりの生活はできるのでしょうか?太陽光発電を設置すれば停電時に出来ることや設置費用などについて、TEPCOホームテックに伺いました。
太陽光発電とは、住宅の屋根などに太陽電池を設置して、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みのことです。太陽光発電システムとも言われています。
戸建住宅の場合、太陽の光エネルギーを受ける太陽電池モジュールで発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ、家庭内に電気を供給する分電盤、発電状況を表示するモニターなどの機器が必要です。
住宅に太陽光発電を設置すれば、どのような事が出来るのでしょうか。
太陽が出ている昼間であれば、光エネルギーでつくった電気を家庭内で使うことができます。つくった電気の分は、電力会社から電気を買わずにすむため、電気代の節約につながります。
住宅用の太陽光発電には、発電した電気を固定価格で10年間売電できる『FIT(固定価格買取制度)』があります。FITは売電価格が発電量と年度によって異なり、一般家庭でシステム容量10kW未満の場合、2023年度の価格は16円/kWhとなります。
「電気代が高騰している今、電気料金の単価は買う方が売るよりも高くなっています。昼間に太陽光発電でつくった電気は、自分の家で消費するのが一番お得なのです」(TEPCOホームテック 経営戦略本部。以下同)
自然災害などで停電になっても、晴天の日中であれば太陽光によって発電された電気が使えます。ただし、雨の日や雲が多い日などは、発電ができなかったり、不安定になる可能性があります。
太陽光発電の自立運転時に使える電気は1500Wです。太陽光発電システムのメーカー、搭載量には関係なく、1台あたり1500Wが上限となります。
「1500Wまでなら複数の家電を同時に使えるので、液晶テレビや省エネ冷蔵庫、スマホの充電など、消費電力が比較的少なく、使えないと困る家電を優先して利用すると良いでしょう。
精密機器などは、天候により発電が不安定になり急に電源が切れる可能性を考えると、使用は避けた方が良いかもしれません。
寒い日には電気ヒーターや電気ポットなどを使いたくなりますが、モーターで電気を熱に変える家電は消費電力が大きいので、消費電力を確認したうえで注意して利用したいですね」
停電時に太陽光発電の電気を使う場合、いくつかの手順が必要です。手順は機器のメーカーによって異なりますが、ここでは、一般的な手順について紹介しましょう。
1 分電盤にある「主電源ブレーカー」をオフ(切)にする
2 分電盤にある「太陽光発電専用ブレーカー」をオフ(切)にする
3 パワーコンディショナを「自立運転」へと切り替える
「一般的なパワーコンディショナは、通常、電力会社と売電などのやり取りを行う『連系運転』を行っているのですが、停電になると連係が途切れてしまいます。そのため、基本的に手動で『自立運転』に切り替え、つくった電気を家庭内だけで利用できるようにする必要があります。
いずれにせよ、停電に備えて、どうすれば自立運転ができるようになるのか、事前に把握しておくことが大事です。突然停電になると慌ててしまうので、冷静に行うためにも、定期的に確認しておくと良いと思います」
パワーコンディショナを「自立運転」へと切り替えたら、停電時用の「非常用コンセント(自立運転コンセント)」に、家電のコンセントを差し込めば電気は使えます。
「停電時に使えるコンセントは決められていて、パワーコンディショナが屋内にある場合、パワーコンディショナに付随している非常用コンセントだけです。パワーコンディショナは分電盤の隣など高い位置に設けられているケースが多いので、延長コードを用意しておくと便利かもしれません。
屋外にパワーコンディショナがある場合、部屋の中に非常用コンセントが設けられているので、ここに使いたい家電のコンセントを差し込んで使います。非常用コンセントの位置は、太陽光発電の設置工事のときに相談して決めますが、配線が目立たないような場所に設けるケースが多いですね」
停電時、太陽の出ている時間帯は太陽光発電の電気を使うことができますが、雨の日や夜間は発電しないので電気を使うことができません。雨の日や夜、停電時などに太陽光で発電した電気を使うなら、蓄電池の設置は必須となります。
現在、蓄電池はさまざまなタイプが販売されていますが、選ぶポイントは3つあります。
家庭用の蓄電池として、主に4~10kWhの製品が販売されています。
「災害時の停電に備えて蓄電池を設けたい方は、災害時にどれくらいの時間、どのような家電を何時間動かしたいかを考慮し、それに見合う容量の蓄電池を選定しましょう。家庭用蓄電池の容量は4kWh~10 kWhなどがありますが、弊社では5kWhをおすすめすることが多いです」
最近では、『卒FIT』の人が蓄電池を導入されるケースが増えています。卒FITとは、前述したFIT制度の買い取り期間を満了したという意味です。FIT制度は2009年11月にスタートしたので、10年経った2019年以降から卒FITされた方が徐々に増えています。
「卒FIT後も売電はできるのですが、今まで最も高い時は48円/kWhだった売電価格が、東京電力エナジーパートナー株式会社に売電する場合は8.5円/kWh(取材時)となります。売電先によって買取価格は異なりますが、7円~9円/kWh程度が多いようです。
現在、電気代が高騰していることもあり、電力会社から電気を買うより、発電した電気を貯めて家で使った方が光熱費は抑えられます。卒FITを機に蓄電池を導入される方は、過去の売電実績を参考にして蓄電池の容量を決めると良いでしょう」
負荷タイプは「全負荷型」と「特定負荷型」に分かれます。
全負荷型は、停電時に家全体に電気を供給できるタイプ、停電時でも家中の照明やコンセントなど普段どおりに使えます。ただ、停電時にいつもどおり電気を使ってしまうと貯まっている電気の減りが早いので、利用するときに注意が必要です。
特定負荷型は、停電時に使える回路をあらかじめ決めておくタイプです。使える回路を絞って電力消費を抑えるため、貯めた電気を長時間使用できます。200Vの電化製品が使えない機種もありますが、停電時に最低限の電気は使えますし、全負荷と比較すると機器の価格が安いものが多いです。
弊社では、災害時にどのように過ごしたいかを伺ったうえで、いずれかのタイプをご提案しています」
パワーコンディショナには、「単機能型」と「ハイブリッド型」があります。
今使っている太陽光発電のパワーコンディショナをそのまま使う場合、蓄電池用に単機能型のパワーコンディショナが必要です。パワーコンディショナを計2台設置することになりますが、単機能型のパワーコンディショナは比較的低価格です。
ハイブリッド型は、蓄電池と太陽光発電と合わせて1台で使えるタイプです。電気の変換ロスが少ないため、発電効率が良いという特長があります。ただ、すでに太陽光発電を使っている場合、パワーコンディショナの入れ替えが必要になります。
『電気自動車を蓄電池の代わりに利用する』ということを、よく耳にします。
「蓄電池の代わりに電気自動車を利用する場合、V2H(Vehicle to Home)の購入が必要です。V2Hとは、電気自動車の充電や、電気自動車に貯められている電気を家庭で使うために必要な変換器で、蓄電機能はありません。
『太陽光発電でつくった電気を貯めたい』という目的の場合は、蓄電池を選ばれるケースが多いです。
V2Hを選ばれるケースは、すでに太陽光発電はあるが蓄電池を設置していないご家庭が、電気自動車に買い替えるタイミングでしょうか。電気自動車の充電用にV2Hを導入し、蓄電池としても利用するイメージですね。
電気自動車は、家庭用の蓄電池よりも多くの電気を貯めることができます。停電時、電気自動車にフル充電されていれば、その電気で3~4日程度は普段に近いかたちで生活できるでしょう」
太陽光発電を導入する場合、気になるのがその費用です。
「太陽光発電の導入費用は、太陽光パネルの容量(発電能力・kW単位)で変わります。東京都の場合、屋根面積の都合で4~5kWのパネルを導入されるケースが多いです。
例えば、5kWの家庭用太陽光パネル、パワーコンディショナ、発電モニターの機器代と工事代を合わせると150万円が目安になります。ちなみに蓄電池の費用は、一般的な場合は5kWhで120万円が目安です。
したがって、太陽光発電システムと蓄電池を合わせて導入すると300万円弱は必要になります。ただ、国や自治体から補助金を受けられるケースが多いので、導入を検討される方はホームページなどで調べておくと良いと思います」
初期費用の高さから導入をためらう場合、リースで太陽光発電を導入するという方法があります。
「弊社のサービス『エネカリ』では、10年または15年の契約で初期費用は0円、月々の利用料のみで太陽光発電や蓄電池などを導入できます。利用期間中は故障時の修理費も無料(※)で、風水害や落雷などの自然災害補償も付いています。
毎月の利用料ですが、太陽光発電の利用料は、屋根の面積や方位などにより導入できる設備が異なるため、現地調査をしたうえで金額をご提示しています。蓄電池の利用料は、容量5kWhで利用期間15年の場合、月額9000円程度です。
自治体によりますが、リースでも補助金が利用できる制度は多くなっています。お住まいの自治体のホームページを是非チェックしてください」
(※)故障の原因により有償の場合もあります
ここで、太陽光発電をリースで導入した事例をご紹介しましょう。
東京都にお住まいのKさんは、東京都の助成金制度を活用し、太陽光発電を初期費用0円の『エネカリ』サービスで導入されました。
導入した2019年10月の東京都の助成金制度は、リースを利用すると発電出力1kW当たり10万円の助成金が出るというものでした。Kさんは太陽光パネル容量4.44kWの太陽光発電を設置、助成金制度により44.4万円の助成金を得ています。
ちなみに、2019年のFIT制度による売電単価は24円/kWhです。
Kさんの1年後の実績は、払うはずだった電気料金は17万1419円でしたが、太陽光発電の自家消費により、実際に支払った電気料金は12万4047円でした。
この12万4047円に、リースの年間利用料6万2928円を足した金額が「支出」となりますが、売電収入が7万4496円あったため、実際に支払った金額は11万2479円でした。
前述したように、2019年と現在とはFIT制度の売電単価も電気料金も異なるため、あくまでもひとつの目安として参考にしてください。
初期費用がかからずに太陽光発電が利用できるリース契約はとても魅力的ですが、契約期間終了後はどうなるのでしょうか。
「弊社のエネカリは、契約期間が終わると設備を無償譲渡します。太陽光パネルの寿命は30年程度なのでそのままご利用いただけますが、パワーコンディショナの寿命は10年~15年程度です。
新しいパワーコンディショナを購入することもできますが、初期費用0円のエネカリでご利用いただけます。新しいパワーコンディショナの契約を結ぶ際に、蓄電池やエコキュートなどを追加して契約される方もいます」
エコキュートとは、エアコンにも使われているヒートポンプ技術を活用し、空気の熱を使い、少ない電気でお湯を沸かす電気給湯機です。一日に使用するお湯を夜間にまとめて沸かし、タンクに貯めておく貯湯式の給湯機なので、自然災害で断水が起きた場合、タンクに貯めてあるお湯を生活用水として利用することができます。蓄電池と同様に、災害時に役立つ設備として注目されています。
最近は、リース契約の太陽光発電が搭載されている新築戸建が、数多く販売されています。
「弊社ではさまざまな住宅事業者と提携し、新築戸建に、リース契約をした太陽光発電を搭載しています。SUUMOでも弊社のサービス名『エネカリ』で検索すると、たくさんの物件をご覧いただけます」
一般的な太陽光発電の搭載物件と比べると、リース契約なので物件購入時の初期費用が抑えられているのが大きなメリットです。また、リース契約の月額利用料金が分かっているので、住宅ローン返済額と併せて資金計画を立てられることもメリットと言えるでしょう」
太陽光発電のある家は、太陽光が出ている昼間であれば、光エネルギーでつくった電気を家庭内で使うことができます。使える電気はパワーコンディショナ1台あたり1500Wが上限ですが、消費電力が少ない家電であれば、同時に複数の家電を使うことが可能です。
ただ、太陽光発電があっても、蓄電池のような電気を貯める機器がないと、雨の日や夜間には電気を使うことができません。
「4人に3人が蓄電池とのセットを検討されるものの、蓄電池の価格がネックとなり、導入を見送られる方もいらっしゃいます。ただ、エネカリなら初期費用がかからないので、導入しやすいと思います。
日本は災害大国なので、万が一の停電を考えると、太陽光発電と併せて蓄電池を導入すると安心です。蓄電池があれば夜も電気が使えるので、在宅避難もしやすくなるでしょう。
防災面の安心感だけでなく、電気料金の節約にもつながりますので、太陽光発電と蓄電池はセットで導入されることをおすすめします」
太陽光発電を設置すれば、日中はつくった電気を使え、余った電気を売れる。蓄電池も導入すれば、つくった電気を貯めておき、夜や停電時に使うことができる
停電時に発電した電気を使うには、パワーコンディショナの機種によって手動での切り替えが必要。停電時に使える非常用コンセントは1カ所で、利用できる電気の上限は1500Wとなる
太陽光発電の購入費用の目安は、太陽光パネル5kWで約150万円。蓄電池を合わせて導入すれば300万円程度となる。リースなら太陽光発電も蓄電池も初期費用は0円で導入でき、月額利用料のみ発生する