スマートホームとは?どんなメリットや課題があるの?やわが家をスマートホーム化するための基礎知識

公開日 2021年03月29日
「スマートホーム」とは? 我が家をスマートホーム化するための基礎知識

最近よく「スマートホーム」や「IoT住宅」「スマートハウス」といった言葉を見かけませんか。いずれもIT技術の進化で登場した言葉なのですが、それぞれの違いがよくわからないという人も多いでしょう。そこで今回は「スマートホーム」とは何か? どんなメリットやデメリットがあるのか? 「スマートホーム」に詳しい電子情報技術産業協会の志村昌宏さんに教えてもらいました。

「スマートホーム」とは? 「スマートハウス」や「IoT住宅」と何が違う?

「スマートホーム」と、「スマートハウス」「IoT住宅」それぞれの定義とは?

「スマートホームとは、暮らしている住人がIT技術によって快適に暮らせるだけでなく、社会インフラなど外部とも繋がることで、さまざまなサービスを受けることができている“状態”、と定義しています」。こう教えてくれるのは、電子情報技術産業協会の志村昌宏さん。電子情報技術産業協会とはIT(情報技術)・エレクトロニクス分野において日本を代表する業界団体で、デジタルをキーワードに、サービス業などのあらゆる産業の企業が参加している団体です。

他の似たようなキーワードと比較するとさらにわかりやすいと思います。まず「スマートホーム」の“ホーム”が“ハウス”に変わるだけの「スマートハウス」を見てみましょう。“ハウス”の名が示すように、「スマートハウス」とはハードとしての「家・建物」のことであり、一般にIT技術を使い、家の中の照明や冷暖房設備など、電気やガスを使用する機器を制御して、エネルギーの消費を最適に制御する“家”のことを指します。

また「IoT住宅」や「コネクテッドハウス」といった言葉もあります。いずれもIoT、つまりさまざまな「モノ」がインターネットに接続され、それらがやりとりすることで、家の中の暮らしが便利になる“家”のことです。例えば、スマートスピーカーに話しかけるだけで、照明をつけたり、エアコンを操作できる、という具合です。

これらに対し、志村さんは「『スマートハウス』や『IoT住宅』『コネクテッドホーム(ハウス)』がハードとしての『家・建物』を指すのに対し、『スマートホーム』は、家の外にある多様なサービスとつながりながら暮らしている“状態”を示す言葉として使用しています」とのこと。

スマートホームは「外部サービスと連携している人の営みが行われている状態」を示す
スマートホームについての図解
スマートホームについての図解(画像作成/SUUMO編集部)

「ハウス」がネットワークにつながることで「コネクテッドハウス」となり、この「コネクテッドハウス」で人が生活し、機器が使われている状態を「コネクテッドホーム」といいます。さらに社会インフラなど、外部サービスと連携している人の営みが行われている状態を「スマートホーム」と呼ばれています。

スマートホームにすると、どんなことができる?

では「スマートホーム」になると、具体的にどんなことが出来る“状態”になるのか、見ていきましょう。

例えば現在、救急車を呼ぶと患者本人が痛がっていても「かかりつけ医はいるか?」「名前は?」「血液型は?」「持病は?」など、さまざまなことを救急隊員が尋ねなければなりません。その回答を受けて救急隊員は受け入れ先の病院を探します。しかしスマートホームであれば、そうした手順が不要になります。救急車はすぐに患者を受け入れ先の病院へ送ることができ、病院も患者の医療情報などをすでに把握しているので、適切な処置をスムーズに施すことができます。なぜなら、患者の医療情報を常に救急隊員や病院など、家の“外部”にあたる医療関係者と共有している状態だからです。

「また、通院で時間をとられがちなのが、処方箋に応じた薬の受け取りですが、これも処方箋データを共有することで、後で家まで送ってもらうということが可能になります」

そのほか住民の医療情報を外部の役所や企業などと共有すれば、例えば役所が妊婦さんの家の近くまでコミュニティバスなどの送迎サービスを向かわせることができたり、家電メーカーが住民の家にあるエアコンの温度調整を住民の体調にあわせて設定してくれたりできるようになります。

医療関係との連携がスムーズに行える
スマートホーム(医療)についての図解
個人の健康・医療情報のほか、救急車や病院の稼働状況など医療にまつわる情報をデータベースに集約。緊急時に関係各所が必要な情報をすぐ引き出せます(イラスト提供/電子情報技術産業協会)

また「アメリカのある地域では、各家庭のインターフォンのカメラを防犯カメラとして利用することも行っています。このように家庭に必ずあるリソースを地域で共有することで、例えばアメリカと同じようにインターフォンのカメラを使えば地域の見守り体制の強化や、地域の防犯性を高めることもできます」

他にも、各家庭の冷蔵庫の在庫量を食品メーカーや流通が把握できるようになれば、フードロスを減らすこともできます。またそのデータからゴミの量を解析すれば、ゴミ収集がもっとスムーズになります。

このように、家の中だけのものが繋がるのではなく、外部と繋がることで、よりよい暮らしを送ることができるサービスを享受できる。それが「スマートホーム」なのです。

現在のスマートホームはどれだけ便利になっている?

暮らしが便利になる家電とサービスが続々登場している

では現状、スマートホームはどこまで進んでいるのでしょうか。既に販売されている家電とそのサービスの一例を、志村さんに教えていただきました。

「例えばシャープの洗濯機「COCORO WASH」は、同社が提供しているサービス「COCORO WASH(ココロウォッシュ)」に繋がることで、状況に合わせてベストな洗濯方法を提案してくれます。COCORO WASHサービスにあるクラウドのAIが、その日の季節や天候、気温や湿度などから判断し、オススメの洗濯方法を提示する(例えば、雨の日は乾燥機能をオススメ)というサービスです。また洗濯の後に専用アプリから洗濯物の仕上がり具合を評価すると、AIがユーザーの好みを学習し、洗う度に理想の仕上がりに近づいていけます。

また同社の調理家電の『ヘルシオ』や『ホットクック』、『冷蔵庫』を、同社が提供しているサービス「COCORO KITCHEN」に連携すると、クラウド上のAIがオススメの料理を提案してくれます。それだけではなく、『ヘルシオ』や『ホットクック』向けに、食材や調味料がセットされたものを宅配してくれるサービスがあり、届いた食材を調理家電にいれてボタンを押せば料理が出来上がります。また「COCORO KITCHEN」と外部の買い物代行サービスが連携して、オススメのメニューの食材を届けてもらえるサービスも2020年から一部地域で始まっています」

一流シェフや料理研究家監修の料理キットが届く
「ヘルシオデリ」、シャープの「ヘルシオ」イメージ
シャープの「ヘルシオ」や「ホットクック」は、一流シェフや料理研究家が監修した料理キットの宅配サービス「ヘルシオデリ」が使える。事前にカットされた食材なので、届いたら「ヘルシオ」や「ホットクック」に入れてボタンを押すだけ(画像提供/シャープ)

上記の場合は、家電のユーザーと家電メーカー、さらに宅配企業などがデータを共有することで、暮らしが豊かになる一例です。例えば洗濯機の例で言えば、今後洗剤メーカーとデータを共有すれば、汚れが落ちやすくなるなど、さらに高性能な洗剤が生まれる可能性もあります。このようにスマートホーム化によって、多様なサービスの登場が今後期待されています。しかも、こうしたサービスや機能の追加はクラウド上で行われるので、従来のように新しいサービスが登場するたびに家電を買い替える必要がなくなります。パソコンのソフトウェアをアップデートするのと同じなのです。

「家」による住人の見守りサービス

暮らしが便利になるだけではありません。暮らしの安全の分野でも“スマートホーム化”が着々と進んでいます。例えばJVCケンウッドは、浴室でヒートショックなどにより住民が意識を失ったとセンサーが検知すると、外部の警備会社に連絡をして、いち早く救命作業を行えるようにする「浴室あんしん安全システム」を開発しています。実は家の中の死亡事故は、交通事故よりも多いのです。

入浴時の死亡事故を防ぐシステム
入浴時の死亡事故を防ぐシステム
天井に備えられたセンサーが、入浴者の頭部位置を把握。位置に変化があった場合、溺水などの有無を判断し、音声アラームで本人に通知。それでも反応がない場合、外部の警備会社等に連絡してくれる「浴室あんしん安全システム」(画像提供/JVCケンウッド)

また「積水ハウスは、『家』が住まい手のバイタルデータを非接触で検知・解析し、急性疾患発症の可能性がある異常を検知した場合に緊急通報センターに通知、オペレーターが呼びかけにより安否確認し、救急への出動要請、そして救急隊の到着を確認し、玄関ドアの遠隔解錠・施錠までを一貫して行う世界初の仕組みを開発し、実証実験を進めています。住まい手の体に何かを付ける必要はなく、家にあるさまざまなセンサーが人体に接触せずとも検知してくれるので、今まで通りの生活をしていながら、急性疾患発症の早期発見や対処に繋げられるというものです。家の中にあらかじめセンサーを張り巡らせることができるため、住まい手の快適な生活を犠牲にしない、ハウスメーカーならではのサービスと言えます。

急性疾患を早期発見して対応してくれる「家」の実験がスタート
急性疾患早期対応ネットワーク「HED-Net」
積水ハウスでは、急性疾患早期対応ネットワーク「HED-Net」の実証実験を2020年12月からスタート。首都圏で約30棟の実証実験を予定している(画像提供/積水ハウス)

スマートホームのメリットや課題とは

現状のスマートホームのメリットと課題

このように家の中と外とが繋がることで、従来にはなかった便利な暮らしが享受できるようになるのが、スマートホームのメリットです。では課題は何でしょうか。

「1つは、まだスマートホームのサービスが少ないことです」。その原因の1つは、家電メーカーが多数あるため、各社でデータを共有するための家電製品の仕様統一が難しいことです。

また家電を使う側も、例えば自分の家の冷蔵庫の在庫データが外に出ることに、心理的なブレーキが働きがちです。そうなるとこうした機能を持つサービスの利用率は低くなります。

しかしAIは大量のデータを解析することで、より精度の高いサービスを提案することができます。上記で述べたように、シャープの洗濯機も、使えば使うほど、洗濯物が好みの仕上がりになります。データ量が増えることで、解析の精度が高くなるからです。こうしたユーザーのデータが増えるほどに、さらに洗濯物の仕上げにも好影響が生まれるでしょう。ですからユーザーにとって本当に価値のあるサービスが提供できなければ、スマートホームサービスは普及しません。

もう一つの課題は、膨大なデータを扱う際のセキュリティ対策です。データの共有に関係するのは家電メーカーだけでなく、インターネット事業者やメンテナンスする事業者などもあります。さらにサービスが増えるほど参入するさまざまな企業がデータに係わるようになりますし、当然利用者も増えます。つまりネットワークが大きくなるほど、データの漏洩などの危険性も高まります。こうしたセキュリティをどう強化していくかも、スマートホームが浸透していくための課題です。

まずは「スマートホーム」の利便性を体感してみる

いろいろと課題を挙げましたが、だからといって不安がっているだけでは、せっかく目の前にある利便性を享受できません。例えばインターネットのセキュリティが不安だからといって、今さらスマートフォンをやめるという人はほとんどいないでしょう。

まずは上記で紹介したような、“外と繋がる”家電を利用することから始めてみてはどうでしょうか。百聞は一見にしかずというように、文字でメリットを理解するよりは、体感してみることが一番です。

まとめ

スマートホームとは、家の外部の多様なサービスとつながっている状態を示す言葉

スマートホームによって、従来より迅速で適切な医療サービスなど、さまざまなサービスを、普通に暮らしているだけで享受できるようになる

まだスマートホームのサービスは数が少ない。今後ネット家電などでその便利さを体感した人が増えるほど、発展していく

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取材・文/籠島康弘 
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