ローコスト住宅、失敗&後悔しないための家づくり

公開日 2021年06月23日
ローコスト住宅、失敗&後悔しないための家づくり

ローコスト住宅と聞くと、長く住むものだけに「大丈夫なの?」と思う人もいるかもしれませんが、ローコスト住宅がどういうものかを知れば、不安や失敗、後悔は回避できるもの。ローコスト住宅が自分たちに合うタイプの家づくりなのかをメリットやデメリットを知り、見極めて選ぶことが大切です。今回はそんなローコスト住宅について、一級建築士の三村邦彦さんにお話を伺いました。

ローコスト住宅とはどんなもの?

ローコスト住宅とは、一般的に坪単価30万~60万円程度、大体1000万円台に収まる価格帯で建てられる住宅のことを言いますが、明確な定義はありません。

「ローコスト」という言葉に不安を持つ人もいるかもしれませんが、そもそも住宅は、建築基準法を満たしていなければ建てられません。そのため、ローコストといっても満たすべき性能を省くものではありません。この点は安心して良いでしょう。

ローコスト住宅の特徴

・プランを規格化する
・平面・立体的に凹凸の少ない整形なプランを採用
・スケールメリットを活かした仕入れで材料費を抑える
・シンプルな間取りを採用して建築費を抑える
・設備のグレードを基本プランにする

といった工夫をしている住宅です。

ローコスト住宅は、家に過剰な質や機能を求めるのではなく、施主が住まいに求める条件や質のレベルをクリアしつつ、それ以外の部分はなるべくシンプルなプランを選んで費用を抑えた住宅、と考えるとしっくりきます。あれもこれもと複雑なプランを盛り込んだり、ハイグレードな設備を選んだりすると家づくりの人件費や材料・建築費のコストはアップしますから、それよりも、シンプルで安いことを優先したい人に向く家のつくり方です。

また、満足度の高いローコスト住宅がつくるコツとして
全ての面で安いものを選ぶのではなく優先順位を付け、
・どうしてもかなえたいところにお金を使う
・こだわりがない部分は極力お金をかけない
、など
メリハリをつけた選択をするとよいでしょう。

どんな家づくりにも言えることですが、家に求めることの優先順位がはっきりしていると、プランや建築会社の選択もしやすく、失敗や後悔を避けやすくなります。

例えば「長期優良住宅並みの機能性や耐久性を重視しつつ、コストを抑えたい」という希望があれば、そのようなプランが得意な会社に依頼するのがベストです。会社ごとに目指す姿がありますので、自分が大切にしたいことに合致するか確認しつつ会社選びをすると良いでしょう。

ローコスト住宅、費用を抑えられる理由を知ろう

同じ広さの家を建てるなら、一般的な注文住宅よりも、規格型プランの方が安く建てられます。なぜ安く建てられるのか、その理由は大きく5つあります。

ローコスト住宅が建てられる理由

1.プランがシンプル

シンプルな形状は壁の表面積が少ないため、建築費用を抑えられる。また、居室を減らし壁が少ない大空間の間取りで簡素化を図ったり、水まわりをまとめて配管の距離を短くしたりするなど、レイアウトの工夫で費用を抑えられる。

2.材料費が安い

高い素材を選ばないのは鉄則。また、規格型プランは、人気のある間取りを取り入れた、何パターンかのプランから選ぶ規格住宅であることが多い。規格が決まっているので、スケールメリットを活かして材料を安く仕入れられる。

3.人件費を抑えられる

プランがシンプルなローコスト住宅は、現場で作業をする工期が短くなりやすいので、人件費が下がる。また、タイルやぬり壁といった左官作業や木工の造作など、特別な職人がいるプランを控えることで人件費を抑えることもできる。

4.設備、仕様、建具がローコスト

設備や仕様のランクを落とすのが費用を落とす近道だが、2と同様に、スケールメリットを活かして最新の設備を安く仕入れられることも。また、意外と費用がかかる窓やドア、収納の扉などの建具をなるべく減らすと費用を抑えられる。

5.広告宣伝費

直接的に施主が費用を抑えることにはつながらないが、会社選びの際に念頭に置く項目。地元の口コミ評判が営業活動の中心といった会社の場合は、広告費用が掛からない分、抑えた建築費を期待できる。

1~4は、建築会社とプランを練る中で、自分たちの取捨選択で費用を抑えることにつながる部分です。5は、会社選びの際に知っておけば、家の品質以外の企業努力ということが理解でき、安心できると思います。

ローコスト住宅

ローコスト住宅、要望に合う依頼先を選ぼう

ローコスト住宅の依頼先

ローコスト住宅を依頼する先は、ハウスメーカー、工務店、建築事務所などです。会社の特性により、コストを抑えるための工夫が異なります。なお、上記の3については、プラン次第な面が大きく、会社の特性はあまり関係ありません。

ハウスメーカー シンプルで人気のあるローコスト住宅用のプランの中から選ぶ規格住宅の場合が多いので、プランの自由度は低め。
2・4など、スケールメリットを活かした仕入れで費用を抑えるのが得意。安い自社企画の製品がある場合も
地元の工務店 地元に密着しているため、5が少ない。また、比較的人件費が抑えられている。ある程度規格をそろえて2・4を安く仕入れることも
プランはある程度自由がきく
建築設計事務所 1の自由度が高く、2・4については、スケールメリットというより、よりコストを抑えたアイデアをプランに盛り込み、細やかに調整する

ローコスト住宅を建てられる会社はいろいろありますが、会社によって考え方や得意分野が違います。自由設計が得意な会社や、水まわりの造作が得意な会社などさまざま。好みのデザインの施工事例が多い会社や、自分が凝りたいと思う部分をかなえてくれる会社をリサーチしておくことが大切です。

ローコスト住宅のメリット

コストメリットが大きく、あきらめていた注文住宅が建築できることも

ローコスト住宅を選ぶメリットは、なんといっても建築費を抑えられることです。「わが家の予算では、注文住宅は難しいかな?」と思っていた人が、ローコスト住宅に出合うことで注文住宅がかなえられるというのは、大きな喜びにつながります。土地探しから家づくりをする場合には、土地代と建築費のバランスをとりやすいのもうれしいことです。また、建築費を抑えた分、インテリアをはじめ、ほかに使えるお金が増えるメリットがあります。
なお、家づくりには、直接的な建築費以外にも、住宅ローンや登記にかかる諸費用などがあります。提示された金額に含まれる範囲をしっかり確認し、含まれていない金額があれば、どれくらいかかるものなのか確認し、トータルで予算に収まるかを確認しておくことが重要です。

ローコスト住宅

ローコスト住宅のデメリット

後悔しないために知り、失敗しない対策をとろう

ローコスト住宅は、価格を抑えるさまざまな工夫をしています。裏返せば、その工夫により自分たちの家づくりで重視したいことがかなわなければ、不満や後悔につながります。デメリットは建築会社の考え方により異なりますが、あらかじめ不満や後悔につながりやすい点を把握しておきましょう。

プランの自由度が低い

ハウスメーカーの場合は、ローコスト用に規格化されたシンプルなプランから選ぶケースが多いです。間取りや建材などの選択肢が限られ、設備や建具のグレードも低めのものから選ぶのが基本となります。そのため、プランへのこだわりが強い人には、希望どおりの家がつくれないと感じられることも。規格に収まらないプランへの変更やオプションプランを付けると、結局コストが高くついて後悔することも。注意しましょう。

住宅性能重視派には物足りないことも

耐久性・耐震性・気密性・断熱性能などは、建築基準法を最低限クリアしているレベルで、高性能でないことも。建てる地域や土地の条件により、災害対策を重視したいケースや、住んでからの光熱費の軽減や快適性を強く望む場合は、その点がクリアになるか事前によく確認しておくのがオススメです。ローコスト住宅をうたう会社の中でも、性能の質にこだわりがある会社を選ぶと良いでしょう。

また、住宅性能評価制度を引き合いに、どの項目のどの等級に対応して欲しいか要望を伝えることで、その評価基準に適した住宅を建てることも考えられます。建築前に、予算内で可能な範囲を確認しておくと安心です。

アフターサービスの期間が短めなケースも

一般的な注文住宅は、アフターサービスの保証期間が20年~60年程度と、会社による設定に差があるものです。ローコスト住宅は、このアフターサービス期間が短いことがあります。ただし、法律で雨漏りと基本構造部分についての瑕疵は10年間を保証期間として建築会社が対応する義務がありますので、ローコスト住宅であっても、このラインは守られています。アフターサービスの期間と対応内容は、もともと会社によりさまざまなものなので、契約前にしっかり確認することが肝心です。たとえイニシャルコストを抑えても、ランニングコストやメンテナンス費用が高くなってしまっては、長期的にはローコストになりません。そのバランスにも注意が必要となります。

デメリットにあげた内容は、自分が要望しないものであれば、基準値ギリギリのスペックであっても満足度や後悔にはかかわってきません。自分の希望をしっかり見据えて優先順位をつけたうえで、いいなと思う家づくりを多くしている会社を選ぶようにするのが、満足度の高いローコスト住宅をつくる成功のカギとなります。

まとめ

ローコスト住宅は、1000万円台程度で建てられるが、明確な定義はない

安くつくれる理由や会社による特長を知っておくと、安心して選択できる

すべて最低限のレベルというものではなく、優先順位をきめ、メリハリのあるお金の使い方で、満足度の高い家をつくろう

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取材・文/竹入はるな
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