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家の周りを囲うフェンスは、プライバシーを守れて家の装飾にもなります。ひと言でフェンスといってもいろいろな種類がありますが、それぞれどのような特徴やメリットがあるのでしょう? リフォーム会社の東京ガスリノベーション リヴィングモア横浜湘南店の店長・山口隆司さんに教えてもらいました。

「かつては生け垣やブロック塀などが多かったのですが、最近の主流は鉄と比べてさびにくく、生け垣や木製フェンスのようなメンテナンスもいらないアルミ材。ひと言でアルミといっても、近頃はさまざまな種類があり、色やカタチが多様です。かつての木製フェンスや鉄製の鋳物フェンスもアルミ材で再現されています」(山口さん、以下同)
もう一つ、最近人気になっているのは「木粉(もくふん)入り樹脂」製のフェンスです。木粉を入れた樹脂は、木の風合いもありながら、樹脂の特性を持っているため、木と違い雨で腐食せず、塗装が剥がれることもなく、メンテナンス性に優れています。ウッドデッキの代わりとしても人気が高い素材です。
では、現在の外構フェンスには具体的にどのような種類があるのでしょうか。それぞれの特徴を見てみましょう。
「アルミ形材(かたざい)フェンス」は、シンプルな形状のアルミ形材を組み合わせてつくられた、すっきりとしたデザインが特徴。横ラインや縦ライン、格子状、ルーバー状、さらに一本一本の太さや間隔がそれぞれ異なるなど豊富な種類があります。
どれもシンプルなデザインのため、コーディネートしやすいフェンスです。またデザインを統一しやすいよう、多くの場合は同じデザインの門扉も用意されています。印刷技術の進歩により、見た目はまるで木製フェンス、というようなタイプも。
アルミ形材フェンスと同じアルミ素材ですが、鋳物(熱して液状にした金属を型に流し込む)のため形材フェンスより複雑なデザインが可能。そのため、尖った先端や曲線を使った重厚なデザインが多いのが特徴です。
素材はアルミですが、鉄のような色や表面の加工が施されたタイプも。欧風住宅の外観に合わせやすいタイプが多いですが、現代のモダンな住宅に合わせやすいデザインも展開されています。
木の風合いのある木粉(もくふん)入りの樹脂を使ったフェンスです。見た目は従来の木製フェンスとほとんど変わりません。そのため和風住宅に合う格子状や、和モダン住宅に合う横バーなど、従来の木製フェンスのようなデザインがそろっています。
細い格子状デザインが多い、スチール製のフェンス。存在を主張しすぎないので、さまざまなデザインの住宅に合わせやすいでしょう。格子の隙間が大きいため開放感があり、風通しも良いですが、その半面目隠しの用途(プライバシー確保)には向きません。
このほかにも、和の雰囲気にマッチする「天然木材」や「人工竹材」などのフェンスもあります。天然木材は経年劣化しやすいというデメリットがありますが、美しい木目と木のぬくもりを感じられるのが魅力。人工竹材は昔ながらの竹垣のような表情ながら、樹脂製なので耐久性にも優れています。
外構フェンスを設置すると、どのような効果が期待できるのでしょうか。代表的な4つの役割と機能について詳しく見ていきましょう。
大きな窓や庭が道路に面している場合、家の中の様子や干している洗濯物を見られてしまう心配も。外構フェンスを設けることで、近隣の住居や道路からの視線を遮ることができます。フェンス=日光や風を取り込みにくくなる、と思われるかもしれませんが、フェンスの高さや形状などを調整することで採光性・通風性と、プライバシー性を両立できるでしょう。
一戸建て住宅はマンションやアパートなどよりも侵入窃盗に狙われやすいため、不審者を入り込ませないための工夫が必要です。高さのあるフェンスがあると侵入経路が限られ、不審者は物理的に侵入しにくくなります。さらに、“対策をしている家”と周知させることも防犯対策に効果的。不審者にとって、心理的なプレッシャーとなります。
外構フェンスは家の外観、つまり家の顔としての機能も持ち合わせています。
「和風の家をスクエアでモダンな家にリフォームした場合、外構が昔の和風のままだと違和感があります。そのため家をリフォームされる際に、門扉や外構フェンスなども家の外観に合わせてリフォームされる方が多いですね」
外構フェンスの大きな役割の一つが、所有する土地と隣接地・道路との境界を示す「境界線」を明確にすること。一戸建てや土地の売買の際には、取り引きする土地の範囲はどこなのかという点が明確に決められています。境界線に沿って外構フェンスを設けることで、近隣の家や道路との境目がよりはっきりします。
フェンスの外構工事をするにあたって気になるのが費用面。実際にどのくらいかかるのか、チェックしていきましょう。
どのフェンスを選ぶのかによっても、かかる費用が異なります。フェンス材別に見てみましょう。
| 価格 | 注意点 | |
|---|---|---|
| アルミ形材フェンス | 約2万5000円~約6万円 | 形状やデザインによって価格幅がある |
| アルミ鋳物フェンス | 約6万円~約10万円 | 幅は1m以内のタイプがほとんど |
| 木粉入り樹脂フェンス | 約5万5000円~約9万円 | 形状やデザインによって価格幅がある |
| スチールフェンス | 約1万5000円~約2万円 | 目隠し用途には向かない |
上の表をざっくりと高い順に並べると、「アルミ鋳物フェンス」>「木粉入りフェンス」>「アルミ形材フェンス」>「スチールフェンス」となります。ただし、商品によって価格帯の重なるものもあります。
では実際に施工すると、それぞれどれくらいになるのでしょうか。
フェンスの外構工事では材料費のほか、既存撤去費や廃材処分費、施工費、消費税が発生します。下記では「既存のブロック塀の下段2段のみ残して上部を撤去、上に高さ1mのフェンスを20m備えた場合」、メーカー希望小売価格(支柱の価格を除く)を参考に、編集部で簡単な試算をしてみました。なお、フェンスが変わっても施工費はあまり変わらないため、ここでは同一金額としました。
・アルミ鋳物フェンスの例
材料費/7万8000円(幅2m)×10=78万円
既存撤去+廃材処分+施工費=69万円
消費税(10%) 14万7000円
合計 161万7000円
・木粉入り樹脂フェンスの例
材料費/6万9000円(幅2m)×10=69万円
既存撤去+廃材処分+施工費=69万円
消費税(10%) 13万8000円
合計 151万8000円
・アルミ形材フェンスの例
材料費/4万2000円(幅2m)×10=42万円
既存撤去+廃材処分+施工費=69万円
消費税(10%) 7万4000円
合計 121万1000円
・スチールフェンスの例
材料費/1万5000円(幅2m)×10=15万円
既存撤去+廃材処分+施工費=69万円
消費税(10%) 8万4000円
合計 92万4000円
※リフォーム費用については、取材先監修に基づきSUUMO編集部が試算しました(2025年8月)
かかる材料費は、フェンスの長さにほぼ比例します。使用するフェンスが長ければ高くなり、短ければ安くなるわけです。例えば、先ほど計算した「アルミ形材フェンス」の使用枚数を10点から15点にした場合、材料費だけで3万5000円×5=17万5000円が追加になります。ただし、施工費には人件費なども含まれているため、単純に100mなら200mの半分の費用になるわけではありません。
大きな費用がかかるフェンスの外構工事。なるべく安く抑えたい場合は、次のポイントを意識してみましょう。
機能性を重視して良いフェンス材を選びたいところですが、アルミ鋳物フェンスや木粉入り樹脂フェンスですべてを囲ってしまうと多額の費用がかかります。境界線を示すだけの場所は安価なスチールフェンス、家の顔になる部分にはアルミ鋳物フェンスを……といったようにスポットごとに使い分けてみましょう。
安い順でいくとスチールフェンス、次いでアルミ形材フェンスとなりますが、アルミ形材フェンスもデザインで価格の幅があり、どのフェンスも施工会社によってはメーカー希望小売価格より安く請け負ってくれるところもあります。複数社から見積もりを出してもらってしっかり比較することもコスト削減の秘訣です。
最後に、外構フェンスの施工手順とトラブルを防ぐために知っておきたい注意点をご紹介します。
依頼したい施工会社を決めたら、敷地調査とプランニング(計画)からスタートします。以下は、施工計画の段階で立案される内容の一例です。不明点や心配事がある場合は、事前に確認しましょう。
施工計画がまとまれば、実際に設置するフェンスを選定し、契約締結となります。このあと工事がはじまりますが、該当か所の周辺に物を置いている場合は移動させておくのがオススメ。また、近隣への挨拶なども済ませておくとスムーズに工事をはじめられます。
周辺環境や地盤によっても異なりますが、一般的には次の手順で工事が進められます。
1.地盤調査と基礎工事
フェンスを安全に設置するにあたって、まずは地盤調査が実施されます。地盤の状況によって、必要があれば基礎工事も追加されます。
2.フェンスの設置
選んだフェンスや支柱を決めた位置に設置し、固定すれば工事は完了です。隣家との境界線や法律・条例による規制に触れないよう、適切な位置を指定しましょう。工事前には、事前に渡される設計図面に記載されたフェンスの位置や高さ、大きさなどに相違がないかも確認してください。
3. 施工内容のチェック、引き渡し
最後に、施工会社と施主による最終チェックを終えて引き渡しとなります。
住宅と同様、外構フェンスも定期的にメンテナンスをする必要があります。外構フェンスは常に雨風や太陽光にさらされているため、汚れや塗装の剥離、サビなどが発生することも多いもの。選ぶ素材によっては思っていたより早く経年劣化する可能性もあります。
汚れを長期間放置すると腐食やシミの原因になるため、最低でも半年に1回はメンテナンスを。下記のとおり、ほうきやブラシ、ぬれ雑巾、目の細かなヤスリなど、フェンスの素材に合った方法で掃除しましょう。
フェンスの設置にあたって、最も注意したいのが近隣とのトラブル。自分の家だけでなく、日当たりや景観の変化などから不満を持たれる可能性もあります。当然、少しでも境界線を越えてしまったら大きな問題になります。
「突然家をぐるりと取り囲むように外構フェンスを備えると、隣家との境界線はここだと意味することになります。隣家とのトラブルを防ぐためにあらかじめ工事をする旨を伝え、双方の合意のうえで実施する必要があります」
何も告げられずに突然フェンスが設置されると、「交流を持ちたくないのかな」「なにか気に障ることをしたかな」と不安に思う人もいるかもしれません。トラブルを回避するためにも、実際に工事をはじめる前に一声かけたほうが安心です。
外構フェンスにはプライバシーの確保や防犯対策、外観をより魅力的に見せるなどの機能・役割がある
最近の主流はアルミ材や、木粉(もくふん)入り樹脂製
材料自体の価格は、「アルミ鋳物フェンス」>「木粉入り樹脂フェンス」>「アルミ形材フェンス」>「スチールフェンス」の順に高額となる
近隣トラブルを回避するため、施工前に隣家へ一声かけておくと安心