賃貸アパートやマンションを探すときにお世話になる不動産会社。でも、仲介手数料や管理費って、物件によってはないこともあるし、いったい何に使われるの? そもそも大家さんと不動産会社の違い、不動産管理会社と仲介会社の違いなどが分かりにくい!などという声も。ここでは、それぞれの違いと、支払うお金の使途などについて、ハウスメイトマネジメントの伊部尚子さん、ミニミニの永田徹さんにお話を伺いました。
そもそも大家さんと不動産会社の役割の違いが分からないという声も少なくない。不動産会社には管理会社と仲介会社があり、詳しくは後で解説していくが、まずはざっくりと言うと、このような役割の違いがある。
賃貸物件を所有している
※管理もしているケースがある
部屋探しから契約までをサポートしたり、入居後の支払いやメンテナンスを管理したりする
不動産会社としてひとまとめにされる「管理会社」と「仲介会社」ですが、それぞれ行う業務内容は大きく異なります。
仲介会社 | 管理会社 | |
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主な業務内容 |
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簡単に言えば、管理会社は物件全般の管理を、仲介会社は部屋探しから契約締結までのトータルサポートを担っています。仲介業務を行うという特性上、仲介会社では宅建業の免許や宅地建物取引士の資格が必要です。
管理会社と仲介会社のほか、仲介と管理業務のどちらにも対応する「仲介管理会社」もあります。管理会社と仲介会社についてさらに詳しく見ていきましょう。
ひと口に管理会社と言っても「賃貸アパート・マンションの管理会社と、分譲マンションの管理会社は、役割も業務内容もまったく違います」とハウスメイトマネジメントの伊部尚子さん。「それぞれ根拠となる法律があり、それを営むには国土交通省に登録することになっています」。法律の中にそれぞれの定義が明示されているので見ていこう。
●業務内容
・賃貸住宅の維持保全
・家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理
【根拠となる法律の条項】
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第2条2
この法律において「賃貸住宅管理業」とは、賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、次に掲げる業務(以下「管理業務」という。)を行う事業をいう。
一 当該委託に係る賃貸住宅の維持保全(住宅の居室及びその他の部分について、点検、清掃その他の維持を行い、及び必要な修繕を行うことをいう。以下同じ。)を行う業務(賃貸住宅の賃貸人のために当該維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理を行う業務を含む。)
二 当該賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務(前号に掲げる業務と併せて行うものに限る。)
●業務内容
・管理組合から委託を受けて管理をする
【根拠となる法律の条項】
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第2条7
マンション管理業。管理組合から委託を受けて管理事務を行う行為で業として行うもの(マンションの区分所有者等が当該マンションについて行うものを除く。)をいう。
賃貸住宅は基本的にオーナーから管理会社が委託されて維持保全や家賃管理などを行うが、分譲マンションはバラバラな区分所有者の集団である管理組合から委託されて行う。「賃貸管理業は、家賃や共益費を徴収するなど、入居者とのやりとりが発生しますが、分譲マンションの管理は、建物全体を管理する、という点が大きな違いです」(伊部さん)
上のように役割ははっきりと区分できないところもあるが、例えば、入居後に部屋のエアコンが壊れたとしたら、というケースで考えてみよう。「前に借りていた部屋では、不動産会社に連絡するように言われたのに、今借りている部屋では大家さんにと言われた。どっちがホント?」という経験のある人もいるだろう。
これは「誰が管理をしている物件なのかによって違います」とミニミニ関東本部管理部部長の永田徹さん。「大家さんが自主管理している物件の場合は、大家さんが修理をすることになっています。不動産会社が管理している物件は不動産会社が修理し、かかった費用を大家さんに請求します。大家さんが管理している物件の場合、不動産会社は修理する権利がないんです」
自分が借りる部屋がどちらの管理なのかは、契約のときに確認するはずだが、「分かりやすいのは、誰に家賃を誰に払うのか。家賃の回収者が物件の管理者ということになります」
仲介会社も根拠となる別の法律に則って(のっとって)定められている。
●業務内容
・宅地や建物の売買
・賃借の代理や媒介
などを行う。
【根拠となる法律の条項】
宅地建物取引業法 第2条2
宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
つまり、前出の管理会社と違い、仲介会社は短期間のやりとりとなる。「管理会社は契約から入居、更新、退去までと長期間にわたって入居者とのやりとりがありますが、仲介会社と入居者が接するのは、契約して引き渡しまでの短期間となるのが一般的です。このような点が、管理会社と仲介会社との大きな違いとなります」(伊部さん)
まず、不動産会社とひと口に言っても「管理会社」と「仲介会社」の業務内容には大きな違いがあることを知っておこう。
「管理会社」は、入居者募集に加え、賃貸アパート・マンションのメンテナンスや家賃・敷金等の管理、退室時の原状回復やリフォームなどが仕事。大家さんからもらう「管理料」が管理会社の収入源となる。
入居者が支払う「管理費」はこれとは違い、共用部分の電気、エレベーターの点検費用などに使われている。
「仲介会社」は、文字どおり入居者と大家さんの間を仲介する会社。大家さんからの依頼で空室の入居者募集を行い、入居希望者には条件に合った部屋を探し、双方の賃貸借契約のためのさまざまな手続きをすることなどが仕事。「仲介手数料」は、その対価として支払うお金であり、仲介会社の収入源となる。
賃貸物件を探していると、なかには「仲介手数料なし」というケースもある。でも先ほど説明から考えると、それでは仲介会社の商売は成り立たないのでは?ということも気になるが、その代わりに入居後や契約時にデメリットが生じるのでは?と不安になる人もいる。
ところが、仲介手数料なしの場合、「その多くは管理会社の自社物件です」と永田さん。「例えば管理会社が大家さんから10戸まるごと借りて、入居者に貸す場合、10戸分の家賃を大家さんに払うことになるため、仲介手数料なしでいいから1日でも早く家賃が欲しい、といった場合などに設定されることがあります」。つまり、仲介だけをする不動産会社ではなく、仲介・管理の両方を行う不動産会社ならではの設定となる。
なお、仲介会社は貸主(大家さん)と借主(入居者)の両方から仲介手数料を受け取ることができ、その上限額は「合計で賃料の1カ月分」と宅建業法により定められている。現状は入居者が支払うケースが一般的だが、これも上記のケースと同様、1日でも早く家賃が欲しいために、大家さんが支払うケースもある。この場合も、入居者が支払う仲介手数料は0円となる。
また、賃貸物件には「管理費」がないケースもある。入居者からすると、払わなくて済むのはありがたいが、しっかり管理してもらえないのでは、と不安になることもあるだろう。
ところが、「家賃に管理費が組み込まれているだけ、というケースがほとんど。家賃も管理費も、税法上で言えばすべて家賃収入なので、名目上分かれていても、管理費込みの家賃となっていても実態は変わらず、最近は後者が増えています。あまり気にせず、家賃・管理費の合計額に納得できるかどうかで考えましょう」(永田さん)
仲介手数料も管理費も、満足できる部屋探しや快適な賃貸ライフに欠かすことのできないお金。不動産会社(仲介会社・管理会社)、大家さんのそれぞれの役割を知れば、納得して支払えるはずだ。もし契約書によく分からない費用があった場合には、不動産会社にきちんと説明を求め、理解したうえで契約しよう。
管理会社は賃貸住宅の維持保全と家賃などの金銭の管理をする
仲介会社は部屋探しから契約までをサポートする
仲介手数料は大家さんと入居者の契約の手続きに対する手数料