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借金の返済義務が免除される「自己破産」は生活を立て直す一歩ですが、「今住んでいる家から追い出されないか」「新しい賃貸物件は借りられないのでは」と、住まいの不安は尽きません。特に、入居審査に通るのかは大きな心配事でしょう。
この記事では、自己破産後の賃貸契約に関する疑問について、不動産仲介会社SIRE代表の木津雄二さんに伺いました。保証会社の審査で見られる点や、契約しやすい部屋の探し方など、具体的な注意点を分かりやすく解説します。
さまざまな事情により借金が返済できなくなった人が、裁判所に申し立てを行うことで、借金の支払い義務が免除される「自己破産」。自己破産の手続きをすると、今住んでいる賃貸物件から退去を命じられることはあるのでしょうか?

「法律的には、自己破産を理由に賃貸借契約の解除を求められることはありません」と木津さん。賃貸借契約書に「破産宣告の申立を受けた場合は賃貸借契約を解約できる」旨の特約があったとしても、2004年の破産法の改正により、自己破産を理由とした賃貸借契約の解除は不可となりました。借金がゼロになったとしても、住む場所がなくなってしまえば仕事にも支障をきたし、その後の生活が立ち行かなくなるからです。
自己破産後、家賃を滞りなく支払うことができれば、そのまま住み続けることができます。
なお、自己破産したことは、大家さんや管理会社に申告する必要はありません。ただし、「自己破産手続き中に財産を管理する破産管財人(弁護士)が、破産者の財産を債権者に分配して精算していきます。物件の貸主は利害関係者の一人ですから、管財人から通知がいけば、自己破産したことはいずれ知られることにはなります」(木津さん)

自己破産を理由に賃貸借契約を解除されることはありませんが、家賃の滞納は解除の理由になります。
また、破産前に滞納していた家賃は免責の対象になり返済義務が免除されるものの、破産手続き開始後に発生する家賃は免責にはなりません。
「家賃の支払いは本来1日でも遅れるとNGです。振り込みが数日なければ電話連絡、1カ月なければ書面で督促状が、3カ月続くと内容証明で解除通知が届くことがあります」と木津さん。
具体的にどれくらい滞納すると解除になるかは契約によりますが、一般的には3カ月以上が目安とされています。「3カ月連続、延べ5カ月分など、賃貸借契約書に記載されていることもあるので確認しましょう」(木津さん)
また、家賃が収入に見合わない物件の場合は、破産管財人から退去を促されることもあるといいます。自己破産後の生活水準を鑑み、家賃の支払いが難しいようなら、安い家賃の物件に住み替えるのがいいでしょう。
それでは、心機一転住み替えよう、となったとき、新たに賃貸物件を借りることは可能なのでしょうか。
「自己破産していても、賃貸物件を借りることはできます。ただし、入居審査に落ちるケースがあるので注意が必要です」と木津さん。詳しく見ていきましょう。
賃貸物件の契約を申し込むと、入居審査が行われます。
入居審査には(1)貸主・管理会社の審査 と(2)家賃保証会社の審査があり、それぞれチェックされるポイントが異なります。
主に、「滞納せず家賃を払ってくれるか、トラブルを起こす心配がないか」をチェックされます。家賃の支払い能力は、年収、勤務先、勤続年数などから総合的に判断され、安定した収入があればフリーランスでも問題ありません。口座残高を確認して審査が通るケースも。
近年では、ほぼすべての物件で加入が求められる家賃保証会社。厳格な本人確認、支払い能力、家賃が収入の30%以内に収まっているかという家賃比率も審査されます。加えて、CIC(指定信用情報機関)やJICC(日本信用情報機構)といった個人信用情報機関に、クレジットカードの支払い状況を確認する保証会社も。ローンや家賃の滞納履歴もチェックされます。
家賃保証会社によっては審査が厳しい会社、比較的審査に通りやすい会社があるようです。保証会社については、下の「自己破産後に入居審査に通るためにはどうすればいい?保証人・保証会社の審査は?」でも解説します。
こうした審査を経て、最終的に貸主が貸すかどうか判断を迷う場合もあります。そんなときは面談の機会が設けられ、上記の「トラブルを起こす心配がないか」を含め、人となりも判断基準に加味されるケースがあるといいます。言葉遣いや身だしなみに気をつけて、好印象を残したいものです。
「大家さんにとって、自己破産しているというと心象がよくないですが、面談した結果、最終的にOKがもらえることも十分ありますよ」(木津さん)

自己破産をすると、借金の返済義務がなくなる一方で、暮らしの中で少し不便に感じることが出てくるかもしれません。例えば、クレジットカードが使えなくなったり、新しくつくれなくなったりします。
また、住宅や車といった高額な買い物のためのローンを組むのも難しくなるでしょう。
自己破産の手続きを始めると、これまで使っていたクレジットカードは全て強制的に解約され、利用できなくなります。これは、自己破産をした情報が「信用情報機関」という個人の金融取引の記録を管理する機関に登録されるためです。
クレジットカード会社は、この情報をもとにして契約を見直すため、利用が停止される仕組みになっています。クレジットカードに付帯しているETCカードも同じように使えなくなるため、車に乗る方は注意が必要でしょう。
もし、公共料金や家賃などをクレジットカードで支払っていた場合は、早めに銀行口座からの引き落としや請求書払いへ変更の手続きをしてください。現金を持ち歩くのが不安なときは、銀行口座から直接代金が引き落とされるデビットカードなどを上手に使うと、不便さを少し和らげられます。
自己破産をすると、信用情報機関に履歴が記録されている間は、新しいクレジットカードをつくるのが難しくなります。カード会社は申し込みがあると必ず信用情報を確かめるため、自己破産の記録があると「支払い能力に不安があるのでは」と判断され、審査に通りにくくなるからです。
この情報は最低でも5年間は残るので、その期間は新しいカードを持つのは難しいと考えておきましょう。
もし審査に通らないからといって、短い間にいくつものカード会社へ申し込みを繰り返すことは避けるのが無難です。「申し込みをしたけれど審査に落ちた」という記録も信用情報に残ってしまい、かえって自身の状況を不利にしてしまうため、注意してください。
まずは暮らしを立て直すのに集中し、信用情報から自己破産の記録が消えるのを待つことをオススメします。
自己破産をした後は、住宅や自動車の購入、教育資金といった、まとまったお金を借りるためのローン契約が基本的にできなくなります。これもクレジットカードがつくれない理由と同じで、信用情報機関に登録された自己破産の情報が影響するためです。
銀行などの金融機関は、ローンの審査のときに個人の信用情報を厳しく確かめるため、自己破産の記録があると返済能力を心配され、審査の通過はできません。家や車などの大きな買い物は、現金で一度に支払うか、自己破産の情報が消えるまで待ちましょう。
もし配偶者などの家族に安定した収入があれば、家族の名義でローンを組む方法も考えられます。自己破産の影響はあくまで個人のものなので、家族の信用情報に直接影響はありません。
自己破産をすると、支払い能力に問題があったとみなされるため、自身が誰かの「保証人」や「連帯保証人」の審査に通らない可能性が高くなります。保証人とは、お金を借りた本人が返せなくなったときに、代わりに返済する責任を負う人のことです。そのため、保証人になるには、きちんと返済できるだけの能力と信用がなくてはなりません。
自己破産をした場合、支払い能力に問題があったとみなされ、保証人としての条件を満たせなくなります。例えば、子どもが奨学金を借りるときの保証人になったり、家族がアパートを借りるときの連帯保証人になったりするのが難しくなるでしょう。
自己破産をした記録は、いつまでも残り続けるわけではありません。この情報は「信用情報機関」という専門の機関で管理していますが、一定の期間が過ぎれば削除されます。
情報が永久に残るのではと心配し過ぎる必要はありませんが、暮らしを立て直していく上で、しばらくは制約があると知っておくと安心です。
信用情報機関には、主にクレジット会社が加盟するCIC(指定信用情報機関)、主に消費者金融系会社が加盟するJICC(日本信用情報機構)、主に銀行や信用金庫が加盟するKSC(全国銀行個人信用情報センター)の3つがあります。自己破産の手続きをすると、そのうちJICCとKSCに事故情報として登録されます。JICCが履歴を保有する期間は5年※、KSCは最長7年です。
※裁判所から債権者であるクレジットカード会社などの登録会社に通知があるわけではないため、自己破産による免責の情報が更新されない場合があります。
「自分の情報が具体的にいつまで登録されているのか知りたいときは、信用情報機関に開示請求すれば照会することができます。開示請求には手数料が必要で、郵送で取り寄せる場合は1500円がかかります」(木津さん)。
※CICはインターネットの開示請求を停止していましたが、2025年10月9日からマイナンバーカードによる本人確認を強化して再開に伴い開示手数料が変更
JICCはスマホでのデータ開示が1000円、郵送で受け取る場合は1300円、KSCはインターネットでの開示1000円、郵送1679円~(※)です。CICは、郵送で取り寄せることが可能です。簡易書留の場合、手数料として550円かかります。

近年では、保証人をつけず、家賃保証会社の利用を必須とする物件がほとんどです。自己破産した場合、保証会社によって、入居審査の通りやすさに差はあるのでしょうか。
「家賃保証会社の審査」と聞くと不安になるかもしれませんが、保証会社によって、程度や審査のレベルが異なり、それぞれの会社によって特徴があります。過去の信用情報を重視しない保証会社を選べば、自己破産をした後でも賃貸契約を結べる可能性はあります。
家賃保証会社は、審査の方法によって分けられるため、それぞれの特徴を知って、部屋探しの参考にしましょう。
クレジットカードの個人信用情報を照会して審査。自己破産の手続きをすると事故情報が登録されるので、入居審査はかなり厳しいと考えられる
全国賃貸保証業協会(LICC)に加入している保証会社。同じ協会に加入する別会社の信用情報が共有されるため、家賃滞納歴などが審査の判断材料になる
信販会社の信用情報や協会のデータベースではなく、独自の審査基準を設けている会社。申し込みの際に得た収入や勤務先の情報で審査が行われるため、信販系・協会系保証会社よりも審査に通りやすい傾向がある
ほとんどの物件は保証会社の利用が必須ですが、公営住宅やUR賃貸住宅なら、保証会社も保証人も不要で申し込むことができます。
公営住宅は都道府県や市町村が建築し、主に低所得者向けに提供している公的賃貸住宅のこと。控除後の月収15万8000円以下が基準で、入居者の収入によって家賃の価格帯が変動。入居者は抽選で決定します。
UR賃貸住宅は、UR都市機構という独立行政法人が管理運営する公的な賃貸住宅です。物件によっては敷地内に公園や保育園、病院を備えているところも。部屋の面積も広めですが、家賃は高めに設定される傾向があります。また申し込みの資格として、平均月収額が家賃額の4倍以上ないといけないなど、収入面での審査基準はやや厳しいといえます。
いずれも、礼金や仲介手数料、更新料が不要なのもメリットです。

もし急いで引っ越す必要がなければ、自己破産の情報が信用情報機関から消えるのを待つのも1つの方法です。先述のとおり、事故情報が登録されている期間は、およそ5年から7年です。この期間が過ぎれば信用情報はきれいな状態に戻るため、入居審査で不利になる可能性が低くなります。
自身の情報がいつ消えるか正確に知りたい場合は、信用情報機関に情報を開示してもらい、確かめるのをオススメします。
ただし、情報が消えた直後は取引の記録が何もない状態のため、かえって審査で慎重に判断されることもある点には注意が必要です。
家族など同居人がいる場合は、同居人名義で申し込むことで、入居審査が通って契約できることもあります。事故情報は個人単位で登録され、家族の信用情報には影響しないためです。
最近の賃貸契約では、家賃保証会社の利用が条件となるケースがほとんどです。賃貸保証会社とは、入居者が家賃を滞納したりした場合に、大家さんに対して家賃を保証する会社のことを指します。以前は親族などに連帯保証人になってもらうのが一般的でしたが、今は保証会社がその役割を担うようになりました。
しかし、今でも少数ながら、保証会社の代わりに「連帯保証人」を立てて契約できる部屋もあります。親やきょうだいなど安定した収入のある親族にお願いできれば、保証会社の審査が不安な場合でも、大家さんが安心して部屋を貸してくれる可能性が高まるでしょう。
保証会社についてもっと詳しく
→部屋を借りるときの「家賃保証会社(賃貸保証会社)の利用」って必須?入りたくない場合、拒否できる?
最後に、スムーズに賃貸契約を結ぶためのポイントを木津さんに伺いました。
不動産会社に自己破産したことを伝えなくても、保証会社の審査に落ちたりすればいずれ発覚してしまうこと。「申告しないとダメなわけではありませんが、あらかじめ相談しておけば、最初から審査に通りやすい保証会社を選ぶなど、配慮してくれます」と木津さんは言います。
「なかには自己破産というと門前払いするような会社もあるかもしれません。でも、不動産会社は世の中にたくさんあります。全部がそういう会社ではありませんので、めげずに次を当たってみること。ひとりで考え込まず、ぜひ相談してみてください」
担当者が味方になってくれれば、なにより心強いはずです。

前提として、家賃の支払い能力をつけ、信頼回復に努めることが大切。転職したばかりという場合は、雇用条件通知書などを提示すれば、見込み収入で審査してもらえます。「正社員でなくても問題ありません。個人事業主でも、確定申告書などで収入が証明できれば大丈夫」(木津さん)。現在の生活水準、収入に見合った物件を探すこともお忘れなく。
ここからは、自己破産と部屋の契約について、今まで解説してきた内容をあらためておさらいしていきます。
正しい知識があれば、過度に心配せず、次のステップへ落ち着いて進めるでしょう。
今住んでいる部屋は、家賃をきちんと支払っていれば、自己破産を理由に退去を求められることはありません。しかし、家賃を滞納していると契約を解除される可能性があるため、注意が必要です。
これから新しく部屋を借りる場合は、入居審査が厳しくなる傾向にあります。特に信販系の保証会社は審査が通りにくいですが、先述のとおり、審査基準が異なる保証会社や公営住宅など借りられる部屋は見つかるので、過度に心配する必要はないでしょう。
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自己破産の後でも賃貸の審査に通る可能性は十分にあります。重要なのは、自身の状況に合った部屋を選ぶ点です。審査の際に信用情報を重視しない「独立系」の保証会社が利用できる部屋や、保証人が不要な「公営住宅」「UR賃貸住宅」を探してみてください。
また、安定した収入のある家族の名義で申し込むのも有効な方法の1つです。現在の支払い能力をきちんと示せれば、新しい部屋を借りるのは不可能ではありません。
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自身から大家さんや不動産会社へ、自己破産したことを伝える義務はありません。しかし、隠し通せるかどうかは状況によります。
信販系の保証会社を利用する賃貸契約では、審査の過程で信用情報を調べられるため、自己破産の事実は分かってしまいます。最初から不動産会社に事情を正直に相談してみるのもよい方法です。
親身な担当者であれば、審査に通りやすい部屋を探す手伝いをしてくれるかもしれません。隠すよりも協力者を見つけるほうが、スムーズな契約につながるでしょう。
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自己破産をしても、家賃を滞納していなければ現在の部屋にそのまま住み続けることができる
自己破産が必ずしも賃貸契約の妨げになるわけではないが、入居審査には注意が必要
一人で抱え込まず、事情を理解してくれる不動産会社に相談しよう