一人暮らしの女性の部屋はベランダに注意したほうがいい? 不審者に狙われるリスクを減らして安心して暮らすためには、物件の探し方にも、入居後の暮らし方にも気をつけたい点がありそうです。部屋探しでチェックすべきポイントと入居後の防犯対策などについて、賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントの伊部尚子さんにお話を伺いました。
ベランダの掃き出し窓は腰高の窓よりサイズが大きく、またベランダの床は侵入のための足場となりやすく、不審者の侵入やのぞきなどに使われるリスクが高い場所。特に一人暮らしの女性の部屋では、さらにリスクが高くなりがちです。そもそも前提として、どんな状況や条件で狙われやすくなるのでしょうか。
「まず、狙う相手を特定している場合と、特定していない場合があります」とハウスメイトマネジメントの伊部さん(以下同)。
「例えばストーカーなどが特定の相手の部屋に侵入しようとする場合は、侵入のしやすさに関係なく、どんな手を使ってでも侵入しようとするかもしれません。ところが、狙う相手を特定していない場合は、侵入しやすそうな部屋だから、女性の一人暮らしのようだから(助けてくれる家族がいないから)、などといった理由で狙われてしまうことがあります」
つまり、侵入されにくい部屋、周囲から見つかりにくい状況をつくり、女性の一人暮らしだと知られないよう努めることが、狙われるリスクを最小限に抑えるポイントといえそうです。
次の章から、狙われにくい部屋探しのポイントと暮らし方について解説していきます。
ベランダからの侵入のリスクを最小限に抑えるためには、どんな部屋を選べばよいのでしょうか。部屋探しの段階でチェックしておきたいポイントについて解説します。
2階以上のベランダでも、近くに足場になるものがあれば侵入できてしまうケースがあります。
例えばエアコンの室外機、ポンプ室、ゴミ捨て場、登りやすい木や電柱などのほか、「階段から手すりを伝ってベランダに移動できたり、車からよじ登れたりしないかもチェックしましょう」
不審者が恐れているのは、人の目。目的の部屋に到達するまでの間に身を隠せる場所が多いと、誰かに見つかる可能性が低くなり、動きやすくなってしまうので、植栽など死角になる場所がないかチェックしましょう。
ベランダそのものが見通しのいいつくりになっていると、犯行に及ぶ前にそもそも侵入をあきらめるケースもあるよう。
「どうにかベランダまでよじ登れたとしても、フェンスが見通しのいい格子状になっていたりすると、そこで洗濯物を盗んだり、のぞきをしたり、カーテンの隙間からのぞいたりなどはしにくいもの。ベランダは壁になっているより、格子状か半透明パネルなどのほうが防犯性は高いと言えるでしょう。」
ベランダが通行人や近隣住民から見えやすい位置にある、ベランダの近くに街灯があると、さらにラッキー。夜になっても適度な明るさがあると、狙われにくくなります。
例えば共用部の電球が切れっぱなしになっている、郵便受けのまわりが散らかっているなど、管理が行き届いていない物件は、不審者からも軽く見られ、狙われやすくなってしまいます。
「共用部がきちんとしていないところは、入居者も、建物や他人に無関心な人が多い傾向があります。例えば電球が切れたまま長期間放置されている物件は、それについて誰も何も言わないということなので、不審者がうろうろしていても警戒心を持たれにくいだろうという印象を与えてしまいます」
一方、管理が行き届いていて、入居者も細かいことに気づく物件は、不審者に緊張感を与えます。
防犯カメラや人感センサー付きライトなど、要所要所に最新の防犯設備が付いていると侵入されにくくなります。
防犯カメラは、付いているだけで防犯意識の高さをアピールできるうえ、不審者は自分の姿が映像として残ることを嫌がるので抑止力になります。人感センサー付きライトは、侵入しようとした時点で点灯すれば、それ以上の侵入を防げる可能性が高まります。
ただし、一人暮らしのアパートやマンションで、これらの防犯設備がついているのは、基本的にエントランスなどの共用部分。部屋ごとに付いているケースはあまりないでしょう。次の章で紹介する、入居後に設置できる防犯設備も参考にしましょう。
階によって侵入されやすさは変わります。1階には基本的にベランダはありませんが、窓からの侵入と考えると、侵入される危険性は2階以上よりも高くなるので「防犯の観点からは、2階以上にしたほうが安心感をもって暮らせるといえるでしょう」
ただし、階が上になるほど危険性が低くなるというわけでもないので注意が必要です。例えば防犯意識が低くなりがちな高層階をあえて狙い、屋上などから垂らしたロープを伝ってベランダに降りる、下がり蜘蛛という手口もあるので、どの階を選んでも防犯の意識を持つことが大切になります。
ベランダの防犯対策についてもっと詳しく
→ベランダの防犯対策は?狙われやすいベランダとは?家づくりでも重視したい防犯対策
ベランダから侵入されにくい部屋を探すためのチェックポイントを解説してきましたが、ここからは入居してからでも自分でできる防犯対策を紹介します。
下着を外に干さないという人は多いようですが、女性の一人暮らしでは「下着以外の服も含めて、女性のものとわかる洗濯物は外から見える位置には干さないようにしましょう」
下着泥棒を未然に防ぐ目的だけでなく「下着以外の衣類で、性別や年代まで判別されてしまうことを防ぐためです。女性の一人暮らしの部屋だな、と知られてしまうと狙われやすくなってしまうので、そのような洗濯物の外干しは避けましょう」
カーテンの選び方にも注意が必要です。「窓のサイズに合ったものを選び、隙間なくぴったり閉めて、のぞかれないように気をつけましょう」
最近はレースカーテンだけの部屋が流行していて、インテリア系のSNSなどでもよく見かけますが、防犯の観点から考えると危険性が。日中は明るく開放感のあるレースカーテンだけでもいいのですが「夜は透けないドレープカーテンも必要。夜、照明をつけるときにレースカーテンだけだと部屋の中の様子が外から透けて見えてしまうので、2枚使うのがおすすめです」
また、カーテンの色・柄を選ぶときも気をつけたいもの。上の洗濯物と同様の理由で、女性の一人暮らしの部屋だな、と知られてしまうのを防ぐために、外から見えるカーテンにはピンクや花柄などは避けるのが無難です。性別がわからないような落ち着いた色・無地を選ぶといいでしょう。
市販の防犯アイテムには以下のようなものがあります。
人の動きを感知して自動で点灯する人感センサーライトは、不審者が侵入しようとしたときにパッと照らすもの。最近は工事や電源不要で設置できるタイプもあります。
このほか、窓の室内側に設置する防犯フィルムや補助錠も有効。防犯フィルムはクレセント錠のまわりに張ることで、ガラス破りを未然に防ぐことができます。
また、万が一ガラスを破られて窓の鍵を壊されたとき、補助錠を設置しておくことで侵入にかかる時間を稼ぐことができます。これも工事不要で設置できます。
ほかにも市販の防犯アイテムにはさまざまなものがありますが、賃貸アパートや賃貸マンションでは設置が難しいものもあるよう。
「ベランダと窓の外側は共用部分なので、工事を伴う防犯アイテムや大掛かりなものを設置するには大家さん・管理会社の許可をもらわなければなりません。人感センサーライトや防犯フィルムは、退去時に原状回復できれば問題ないことが多いですが、設置前に管理会社に確認しましょう」
ちなみに、防犯カメラを個人でつけるケースは少ないよう。防犯アラームのような音が出る防犯アイテムは近隣からのクレームにつながる可能性もあるので、設置したい場合は管理会社に相談してみましょう。
ベランダにモノを置かないようにすることも大切。雑然とした印象を与え、侵入されやすくなったり、大きなモノは足場に使われてしまったり、固いモノはガラス破りの道具に使われてしまったりすることも。また、置いてあるモノの種類やデザインなどにより、この部屋は女性の一人暮らしだな、と判断されてしまうケースもあります。
「ベランダにはモノを置かず、常にすっきりとさせ、こまめに掃除をしておきましょう。靴の跡が目立ってしまうほどきれいな状態にしておけば、侵入を防ぐことにもつながります」
2階以上だから侵入されにくいはず、と気を緩めるのは禁物です。思わぬところからベランダに侵入されてしまい、部屋の中をのぞかれてしまったり、部屋の中に侵入されてしまうケースも。「2階以上だからと安心せず、窓を開けっぱなしで外出したり、就寝したりしないように注意しましょう」
侵入されにくい部屋を選ぶときは、足場になるものがない・人目につきやすい物件を選ぶ
入居後の生活にあたっては、洗濯物を外に干さないなど、女性の一人暮らしとわからないように
市販の防犯アイテムを設置して防犯性を高めたいときは、事前に大家さんや管理会社に相談を