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エコな賃貸住宅とは、断熱性能を高めるなど、環境に配慮した賃貸物件のこと。快適性が高く、光熱費を削減できるなど入居者にもメリットがあります。国が定めた環境基準をクリアしたマンション住宅、ZEH-M(ZEHマンション)や賃貸のZEH-Mも増えています。最新事情を旭化成ホームズの福田浩司さんに伺いました。
国際社会が共通して掲げる持続可能な開発目標SDGsへの取り組みが進むなか、エコを取り入れた賃貸物件への関心が高まっています。しかし、漠然としたイメージで、「なんとなく環境に優しい住まいのこと?」と疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。エコな賃貸物件は、環境によいだけでなく、住む人にとって、たくさんのメリットがあります。
賃貸物件でのエコは、
「断熱材や窓・玄関ドアなどの断熱性能が高いもの」
「自然素材を使用したもの」
「採光・通風を取り入れたもの」などがありますが、そのなかでもエコな賃貸物件の優れた特徴は、高断熱です。

高断熱の賃貸住宅に住むと、どのようなメリットがあるのでしょうか。
高断熱の住宅は、冷暖房が効率よくかかるため、電気使用量が少なくなり、電気代を節約できます。暖房器具などで使うエネルギーが減れば、電力会社の発電量も少なくなるため、SDGsの目標であるCO2排出量を減らすことにつながります。
高断熱住宅は、外気温の影響を受けにくく、夏も冬も快適な温度で暮らせるといわれています。部屋内・部屋間の温度差が少ないため、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす可能性があるヒートショックのリスクを減らすことができます。
結露とは、ガラス窓や壁と部屋の中の空気に温度差が生じることで水滴が発生する現象のことです。断熱性の高い住宅は結露が起きにくく、結果として、カビやダニの発生を防げるので、室内を清潔に保てます。
そのほか、優れているのが、遮音性能です。外壁による遮音で防ぎきれなかった音を壁の中の断熱材が一部吸収。そのため、音の侵入や自分の生活音が外に漏れるのを防いでくれます。
さらに、省エネ性能の家電を備え付けた賃貸物件を選べば、電気代の節減がより期待できます。エアコンや冷蔵庫などを自分で購入するときも、省エネ性能のものを選べば、古いものを使い続けるより、コストがかからなくなる場合が多いのです。
エコな賃貸物件は、年間を通じて快適で、お財布にも環境にも優しいメリットがあります。

環境に優しく健康によいエコな賃貸物件で、最近、普及が進んでいるのが、ZEH-M(ゼッチ・マンション)です。ZEH-Mとは、Net Zero Energy House Mansion(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)の略。エコな賃貸で紹介したように断熱性能を大幅に向上させ、高効率な設備・システムの導入により省エネを実現した上で、創エネ(太陽光発電などでエネルギーを創ること)により、1年間の住宅で消費する一次エネルギー消費量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナスゼロ(もしくはゼロに近づける)ことを目指した集合住宅をいいます。ZEHマンションや賃貸ZEHともいいます。

ZEHの集合住宅には、ZEH-M(ゼッチ・マンション)、Nearly ZEH-M(ニアリー・ゼッチ・マンション)、ZEH‐M Ready(ゼッチ・マンション レディ)、ZEH-M Oriented(ゼッチ・マンション オリエンテッド)
という4つの種別があります。マンションの高層化にともない、創エネで全体のエネルギー消費量をまかなうことが難しくなっていくことを考慮して定義されています。
4つの種別全てに、
①外皮断熱性能が全住戸で「強化外壁基準(1~8地域の平成28年省エネルギー基準(ηAC値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA値 1、2地域:0.40[W/m2K]以下、3地域:0.50[W/m2K] 以下、4~7地域:0.60[W/m2K]以下)」※に適合していること
②再生可能エネルギー等を除き、共用部を含む当該住棟全体で、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量を削減していることが求められ、再生可能エネルギーを含む省エネ率がそれぞれ異なります。
※強化外皮基準とは、地域毎に定められた外皮(熱的境界にある外壁・天井・屋根・窓・ドアなど)の断熱性能基準(外皮熱貫流率UA値)のこと
地域の強化外壁区分についてもっと詳しく
→断熱等級が同じでもクリアする基準は地域で違う
・ZEH-M(ゼッチ・マンション)
一次エネルギー消費量削減基準(再生可能エネルギー除く):20%以上
「創エネ」(再生可能エネルギー)を含む省エネルギー率:100%以上
・Nearly ZEH-M(ニアリー・ゼッチ・マンション)
一次エネルギー消費量削減基準(再生可能エネルギー除く):20%以上
再生可能エネルギーを含む省エネルギー率:75%以上100%未満
・ZEH‐M Ready(ゼッチ・マンション レディ)
一次エネルギー消費量削減基準(再生可能エネルギー除く):20%以上
再生可能エネルギーを含む省エネルギー率:50%以上75%未満
・ZEH-M Oriented(ゼッチ・マンション オリエンテッド)
一次エネルギー消費量削減基準(再生可能エネルギー除く):20%以上
再生可能エネルギーを含む省エネルギー率:再生エネルギーを導入しなくてもいい
| ZEH-M | Nearly ZEH-M | ZEH‐M Ready | ZEH-M Oriented | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 強化外皮基準(外壁、屋根、 窓部分) |
|
||||
| 一次エネルギー消費量削減基準 |
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また、ZEH-M(ゼッチ・マンション)の現状について、普及に取り組んでいる旭化成ホームズ マーケティング本部集合住宅事業推進部の福田浩司さんに伺いました。
「住宅のZEH化に力を入れていますが、賃貸住宅・賃貸マンションのブランド『へーベルメゾン』については、ZEH-M(ゼッチ・マンション)の基準を満たした物件の契約が増えています。耐久性・断熱性に優れた独自の建材を採用している『へーベルメゾン』は、元々、高い断熱性、省エネ性を有しているので、太陽光を設置すれば、ほとんどの物件がZEH化できます。ZEH-Mには、エネルギーの使用状況をチェックできるHEMSという機器を設置する必要があるため、太陽光を搭載した『へーベルメゾン』には、各住戸にHEMSがついています」(福田さん)
さらに、エコな賃貸物件として、ZEH-Mのほかに、採光・通風を取り入れた間取りの賃貸住宅や、自然共生がうまく成り立つような外構・植栽計画を推進し、地球温暖化の防止を意識した賃貸住宅を手掛けています。
ZEH-M(ゼッチ・マンション)は、国の支援事業で普及が進み、今後不動産市場に増えていく見込みです。賃貸物件を探すときに、選択肢のひとつになる日も遠くありません。
ZEH-Mに住むと、次のようなメリット・デメリットがあります。
旭化成ホームズでは、オーナーの負担を軽減し、太陽光発電設備導入を推進するため、独自のZEH-M仕様を満たした賃貸住宅「Ecoレジグリッド」を販売しています。
「太陽光発電・蓄電池を設置し、入居者や自社の関連施設に再生可能エネルギーを供給する仕組みです。太陽光設備等の設置費用とメンテナンスを旭化成ホームズが負担します。オーナーは、初期投資を抑えることができ、入居者は、割安な料金でグリーン電力を利用可能で、災害による停電時には、共有部の電気や住戸内のWi-Fiが利用できるメリットもあります。EcoレジグリッドにもHEMSが設置されています」(福田さん)

日本では、関係省庁が連携して、住宅の省エネ・省CO2化に取り組んでおり、補助金制度などで、ZEH-Mの普及を図っています。
※令和7年度の一般公募は受付中です。(2025年9月18日現在)


検討が進められている省エネ表示ラベルの表示義務化を控え、入居者募集のチラシやカタログに、ZEH-Mマークの表示をするほか、BELS(ベルス)という制度で建築物の省エネ性能等を第三者評価機関が共通基準により、評価・表示したエネルギー消費量の削減数値(%)を星印でラベル表示する試みも検討されています。

「エコな賃貸物件の選び方は、まず、募集広告にZEH-Mマークがあるか確認します。ZEH-Mマークがあれば、基本的に高断熱で省エネ・創エネを満たした物件です。注意すべき点は、ZEH-Mは建物として基準を満たせばいいので、マークがあっても全部の住居に再生可能エネルギーによる電力が供給されているわけではありません。契約時に説明されると思いますが、表示だけでなく契約内容をよく確認したほうがよいでしょう」(福田さん)
入居者の認知はこれからですが、国や開発事業者により進むZEH化。地球環境に優しく、健康のために、ZEH-Mを含むエコな賃貸物件が、お部屋探しの優先条件になる日が近づいています。
エコな賃貸物件の最大の特徴は、優れた断熱性能にある
高断熱により、光熱費の削減や健康によいメリットがある
高断熱・省エネに加え、創エネができる集合住宅のことをZEH-Mという