「老後に賃貸物件が借りられない」は嘘? 高齢者が賃貸を借りづらい理由や対策、賃貸・持ち家の老後の住宅資金シミュレーションを解説

公開日 2025年09月29日

「老後に賃貸物件が借りられない」は嘘? 高齢者が賃貸を借りづらい理由や対策、賃貸・持ち家の老後の住宅資金シミュレーションを解説

人生100年時代と言われ、平均寿命も延びている昨今、老後の住まいをどうすればいいか不安に思う人も多いのではないでしょうか。この記事では賃貸物件と持ち家のメリット、デメリットや、それぞれの住宅資金シミュレーション、パートナーに先立たれたら住まいをどうするかなどをハウスメイトの伊部さんに解説してもらいました。

老後に賃貸物件は借りられないは嘘!? 高齢者が賃貸物件を借りにくい理由と対策

「老後に賃貸物件を借りられない」という噂を耳にして、不安に思う人もいるかもしれません。老後、賃貸物件が借りられないというのは嘘になりますが、借りにくくなる事実はあるようです。まずは高齢者の入居者に対する懸念点、借りにくくなる理由を解説します。

65歳以上の人口は全体の約3割 賃貸オーナーが高齢者の入居に不安に思うこと

戦後、日本は高齢化が進み、65歳以上の人口は1950年(昭和25年)には4.9%でしたが、2024年(令和6年)10月には29.3%、2070年には38.7%(国民2.6人に1人が65歳以上)に達すると予想されています。

参考▶ 内閣府 令和7年版高齢社会白書「高齢化の状況」

内閣府「令和7年版高齢社会白書/高齢化の状況」
内閣府「令和7年版高齢社会白書/高齢化の状況」より

また、内閣府「高齢社会白書」によれば、高齢者の入居に対する賃貸人(大家等)の意識は、7割弱が「抵抗感がある」と答えているデータがあり、高齢者が増えていく中で、高齢者の賃貸入居者に対して抵抗感があるのは確かなようです。

ではどのようなことが理由なのでしょうか。

参考▶ 内閣府 令和7年版高齢社会白書「高齢化の状況」

内閣府「令和7年版高齢社会白書/高齢化の状況」
「拒否感はあるものの従前より弱くなっている」(44%)、「従前と変わらず拒否感が強い」(16%)、「従前より拒否感が強くなっている」(6%)

高齢者が賃貸物件を借りづらい理由

1.収入面での不安

「一番の理由は高齢になると収入が年金のみになり、家賃を払い続けられるのか不安な点です。保証会社もそこを見ています」(伊部さん)
家賃に対して年金額が十分でない場合、収入が保証会社の審査基準を満たさないケースもあります。

2.健康面や孤独死の不安

「高齢者の一人暮らしの場合、貸主は病気や孤独死の可能性を考え、高齢者との契約を敬遠することがあります」

高齢になると病気や介護のリスクが高まります。入院や介護費用が掛かるようになると、家賃が支払えなくなるのではと入居を断られる場合があります。また、一人暮らしの高齢者は、家の中で倒れた場合に発見が遅れることもあります。万一の時に身寄りがいない場合、残った荷物の処理や貸借権の解消などに時間がかかるため、貸主が契約を結びたがらないケースも考えられるでしょう。

3.近所とのトラブルが不安

高齢になると、誰もが認知症を発症する可能性が高くなります。認知症を発症すると金銭の管理が難しくなり家賃を滞納するほか、設備の使い方が分からなくなる、部屋の鍵を失くす、コンロの火を点けたことを忘れてボヤを起こす、ゴミの分別ができない、ゴミ出しの日を忘れるなどさまざまなトラブルを起こす可能性が考えられ、貸主は高齢者との契約を嫌がる傾向にあります。

認知症を発症した夫婦
認知症を発症すると近隣とのトラブルの可能性も高まる(画像/PIXTA)

高齢者が賃貸物件を借りるポイント

1.「なぜ賃貸に引越ししたいか」という理由を説明できるようにしておく

物件を借りる相談に行った際、「なぜ賃貸物件に引っ越しをしたいのか理由があると不動産会社は安心します。
「例えば、『持ち家が広すぎて、手入れができない』『住んでいたアパートが取り壊しになる』『子どもの近くに住みたい』『配偶者が亡くなり一人になったので便利な所に住みたい』『病院に通いやすいところに住みたい』などの理由があると、不動産会社側としても貸主にも説明がしやすく安心です」

2.家賃を支払っていける預貯金があることを示す

預貯金残高証明書や銀行通帳のコピーなどで、家賃を支払えるだけの預貯金があることを証明します。貸主や管理会社の考えにもよりますが、年金が少なくてもある程度まとまった金額の預貯金があると審査を通過しやすくなる場合もあります。
「貯蓄や金融資産を証明する通帳のコピーを提出することで、審査に通り契約がスムーズに進むことがあります」

3.家族や親族の住居と距離が近い(近くに身元引受人がいる)物件を選ぶ

「お子さんと一緒に来店するほか、『娘夫婦の自宅に近いエリアに住みたい』ケースは子どものサポートが見込めるので貸主は安心します。また、近くに家族や親族がいると、入院や介護での家賃滞納や孤独死のリスクが減るため契約はしやすくなります」

4.高齢者向け住宅やUR賃貸住宅、都営・市営住宅を選ぶ

高齢者向けに作られている住宅は段差などが少ない、見守りサービスがあるなど、安心して暮らせる設備が整っています。「一般の賃貸物件では高齢を理由に入居を断られることがありますが、高齢者向け優良賃貸住宅やサービス付き高齢者住宅は一般的には60歳以上の自立した生活ができる方が対象のため、年齢で入居を断られることはありません」

賃貸マンションに住み替えを考える高齢の夫婦
賃貸マンションに住み替えを考える高齢の夫婦(画像/PIXTA)

老後の住まいとして賃貸物件を選ぶメリットとデメリット

老後、賃貸物件に住むメリット

持ち家よりコストがかからない

賃貸は毎月の家賃や共益費、更新料はかかりますが、ローン費用はかかりません。
また、持ち家でかかる固定資産税や自宅の修繕費などがかからず、設備が故障した場合は所有者である貸主が費用を負担します。

引っ越しが気軽にできる

「ライフスタイルに合わせた住み替えが便利な賃貸ですが、高齢になっても『高齢者施設に入りたい』『娘の自宅の近くに住みたい』など、ライフスタイルや健康状態が変わったときに引っ越ししやすいのがメリットです。収入や貯蓄が減り、安い物件に引っ越したい場合も便利です」

管理の手間がない

持ち家は長く住んでいると壁や屋根などの修繕や庭の手入れ、設備の修理などの管理の手間やコストが発生します。賃貸物件なら所有者である貸主や管理会社が行うので、管理業務に伴う手間やコストのストレスから解放されます。

車いす、杖と賃貸マンション
バリアフリーの物件に住み替えたい場合も、賃貸なら決断しやすい(画像/PIXTA)

老後、賃貸物件に住むデメリット

審査に通りにくく、毎月の家賃支払い、更新料が発生

高齢者は賃貸契約の際の審査に通りにくいのがデメリットです。契約できたとしても、賃貸は毎月家賃の支払いと更新月の際は更新料が発生しますので、住んでいる限り支払いは続きます。ローンのように返済が終われば支払いがなくなるということはありません。

資産としての家は残らない

持ち家は自分の所有物のため売却や賃貸に出して資金を得ることが可能です。また、将来子どもや孫に所有権を譲るなど資産としても活用できます。しかし賃貸は家賃を払い続けても自分のものにならず、資産としての家は残りません。

リフォーム・リノベーションの制限

賃貸物件は退去の際に原状回復義務があり、基本的にリフォームやリノベーションなどの工事はできません。老後に病気やケガなどで手すりを介護保険や自費で設置したいと思っても、工事には貸主の許可が必要となります。

賃貸物件のメリット、デメリット
老後の住まいとして賃貸物件はメリットもデメリットもある(画像/PIXTA)

老後の住まいとして持ち家を選ぶメリットとデメリット

老後、持ち家に住むメリット

(ローンの完済をすれば)家賃の支払いがない

家を購入した場合、月々のローン支払いがありますが、完済すれば出費はなくなり、住宅費の負担が軽減されます。ただし、各設備のメンテナンス費、修繕費、火災保険料、固定資産税などの負担は続きます。

資産として活用できる

持ち家は将来子どもに資産として残すことができ、いざというときにまとまった資金源になります。「在宅医療が進んでいる地域なら在宅でもいいですが、高齢者施設に入所することを考えた場合、持ち家を売って資金に替え、入所の頭金にすることが可能なのがメリットの一つです」
駅から徒歩5分や学校が近いなど、売りやすく貸しやすい物件を選ぶことで、売却や賃貸に出す際スムーズです。

「持ち家がある人は資産価値を知っておくといいですね。また、周辺にどんな高齢者施設があるのか、施設に入るための費用など、お子さんとも話し合っておくことも重要です」

住まいに困ることがなく、社会的信用が高まる
持ち家は、いざというときまとまった資金源になる(画像/PIXTA)

住まいに困ることがなく、社会的信用が高まる

持ち家の場合、長年勤務した会社を退職して年金で生活するようになっても、住宅ローンを完済していれば収入減を気にせず、ずっと住み続けることができます。また、自宅を所有していることにより社会的信用を得ることも可能です。

住まいの自由度が高い

子どもが自立したり、身体の自由が利かず車いすなどになった場合など、ライフスタイルの変化に合わせて間取りを変更したり、身体的負担に合わせてバリアフリー化するなど、リフォームやリノベーションを自由に行えます。

老後、持ち家に住むデメリット

管理の手間がかかる

「子どもが自立したりパートナーと死別した場合、家の広さと自分が暮らすスペースが合わず、管理しきれないデメリットがあります」
荷物を減らす理由がないので、自分の死後子どもや身内に遺品整理などを行わせることになる可能性もあります。

税金や保険料などの支払いが続く

持ち家の場合、所有者は固定資産税を毎年納付します。住んでいる場所によって都市計画税を支払う場合もあります。

また、持ち家だとローン完済後の支払いはありませんが、住宅設備の修繕費や外壁を塗り替える場合などはまとまった資金が必要です。ほかにも火災保険料や、集合住宅の場合は修繕積立金や管理費の負担が続きます。

相続の手続きが面倒

自分が死後、持ち家を子どもや身内に相続させるために、さまざまな手続きが必要になります。
相続がスムーズに進むよう遺言状を作成したり、相続人の確定をするほか、持ち家の資産価値や預貯金など財産がどのくらいあるのか調査を行います。

相続の手続きに悩む高齢夫婦
持ち家の場合は相続の手続きが必要(画像/PIXTA)

賃貸と持ち家、住宅費シミュレーション

賃貸の場合

老後、賃貸物件に住む場合の住宅費はどのくらいかかるのでしょうか。

令和6年度の賃貸物件の平均月額家賃は77,677円で、これに共益費4,441円を足すと月額82,118円となります。この家賃で65歳から20年間住み続けると、(家賃に変更がないとして)19,708,320円(約2000万円)です。2年ごとの更新費用(1カ月分家賃を10回)は計776,770円なので、合わせると約2048万円となります。

<65歳から20年間>
費用項目 費用
平均月額家賃 77,677円
平均月額共益費 4,441円
更新費用(1か月分家賃を2年に1回) 776,770円
合計 約2048万円

参考▶ 国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書」

持ち家の場合

持ち家の場合はどうでしょうか。

令和6年度の分譲戸建住宅の購入資金は平均 4,591万円で、頭金0円、固定金利1.9%、ボーナス加算なし、35年住宅ローン、元利均等と仮定した場合、総返済額は6,289万円となります。

持ち家の場合ローン返済額のほかにも、固定資産税や地域によっては都市計画税を支払わなければなりません。また、設備の故障や外壁が経年劣化したときの修繕費のほか、バリアフリーにするリフォームを行った場合はリフォーム費用(平均154万円)がかかります。

<35歳で購入、70歳でローン完済として、65歳から5年間>
費用項目 費用
分譲戸建住宅の購入資金平均(令和6年度) 4,591万円
ローン総返済額 6,289万円
年間返済額(月返済額15万円×12か月) 180万円
リフォーム費用平均 154万円
合計 180万円×5年間+154万円=1054万円
※頭金0円、固定金利1.9%、ボーナス加算なし、35年住宅ローン、元利均等と仮定
※ローン完済後の70歳以降は、上記以外の金額はかからないものと仮定。また固定資産税などの税金は変動があるため含まずに算出

パートナーに先立たれたら住まいはどうする?

日本の平均寿命は男性が約81.09歳、女性が約87.14歳(厚生労働省・令和6年簡易生命表)です。女性の平均寿命は男性より6年長く、パートナーに先立たれたあとの住まい選びは気になるところでしょう。

「パートナーに先立たれた場合、『何かあった場合に頼れる子ども(または身内)の近くに住みたいので、賃貸住宅を選ぶ』という方も多いですね」

頼れる子どもや身内がいない場合も、『一人で自宅を維持管理できるか』『買い物や外出が問題なくできるか』などを考えて住まいを選ぶようにしましょう。「管理が難しい場合や、買い物に行くのに公共交通機関を使わねばならず外出が億劫になるようなら、持ち家を売却して駅近くの賃貸物件に引っ越しをするのもいいでしょう」
ほかにも、『老後の資金を残しておきたい』『もう少し小さな部屋でいい』などで住み替えを選ぶ人も多いようです。ただし、「賃貸物件は賃料や共益費以外の費用が発生せず、生活資金が限られている高齢者には安心ですが、これが絶対ではありません。賃貸物件は住まいの選択肢の一つとして考えましょう」

持ち家を購入してローンを組んでいる場合、完済時年齢の上限は一般的に80歳、中には85歳までに完済としているケースもあります。その前のローン契約時に「団体信用生命保険」に加入していれば、住宅ローン利用者が死亡または所定の高度障害状態になったとき、生命保険会社がローン契約者に代わってローン残高相当分の保険金を金融機関に支払ってくれます。

パートナーに先立たれた場合、持ち家と賃貸どちらが安心かのイメージイラスト
パートナーに先立たれてしまった後の住まい選びは重要(画像/PIXTA)

老後の住まい選びのポイント

老後の住まい探しでは、「頼れる子どもや身内がいるか」「金銭面」「健康状態」が重要ですが、置かれた状況や実現したい生活によって住まい選びは異なります。以下ポイントを参考にして、自分に合った住まいを探してください。

高齢者向け賃貸住宅を選ぶ

1.サービス付き高齢者住宅(サ高住)

年齢が一定以上であれば健康でも入所できますが、亡くなるまで住める住宅と、そうではない住宅があります。前者でも健康状態が悪くなったら住めないこともあるので、健康状態が悪くなったらどうするか考えておく必要があります。

2.シニア向け賃貸マンション

食堂やお弁当サービス、高齢者向け見守りサービスなどがあります。

3.高齢者向けのUR住宅

世帯収入が一定額以下の場合に国とURが家賃の一部を負担することで、入居者の家賃負担を軽減する高齢者向け優良賃貸住宅制度や、低所得の高齢者世帯を対象に家賃を減額する家賃減額制度などがあります。

バリアフリー住宅を選ぶ

段差の有無や手すりや引き戸の設置、浴室やトイレの広さなどを考慮して選ぶと、健康状態が悪くなったときも安心です。
「バリアフリー物件は家賃も高いので、家賃との兼ね合いで選ぶといいでしょう」
手すりを付ける場合などは介護保険で補助が出るため、持ち家でも安全な住まいに変更することは可能です。

周辺の環境のよさ

病院や日常の買い物をするスーパー、必要な公共交通機関へのアクセスの良さなどはチェックしておきましょう。ほか、治安の良さや近隣住民の構成なども分かる範囲で確認しておくと安心です。

身元引受人がいることをアピール

「保証会社の書類の緊急連絡先には、近くに住む家族の連絡先を入れましょう。ほかにも部屋探しの際にお子さんと一緒に不動産会社に足を運ぶ、契約自体をお子さんが行うなどは部屋を貸す側としても安心です」

老後はすぐにやってきます。「まだ先のこと」と考えず、50代くらいからさまざまな選択肢を考えて情報を収集しておくと、老後に慌てることなく快適で安心な住まいを手に入れることができるはずです。

まとめ

高齢者が賃貸物件を借りにくい理由は、収入面の不安、健康面や孤独死の不安、近所とのトラブルの不安が挙げられる

高齢者が賃貸物件を安心して借りるポイントは、家賃を払っていける預貯金があることを示す、近くに身元引受人がいる、高齢者向けの住宅を選ぶこと

パートナーに先立たれた場合、賃貸物件は賃料や共益費以外の費用が発生せず、生活資金が限られている高齢者には安心だが絶対ではなく、住まい方の選択肢の一つとして考える

SUUMOコンテンツスタッフ
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