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新しい住まいを探すとき、気になる物件の他にもいくつか見てみたくて「この物件を仮押さえしておきたい」と思うことがあるでしょう。この記事では、そもそも賃貸物件を借りる際に仮押さえは可能なのか、仮押さえができる場合の流れや仮押さえができる期間、キャンセルはできるのかなど、仮押さえに関する疑問を株式会社レオコーポレーションの深澤さんに聞いてみました。
一般的に仮押さえというと、「他の人に権利を取られないよう申し込み前にキープしている状態」を指しますが、賃貸物件の場合はどうなのでしょうか。
「賃貸物件において、申し込みをしない状態での仮押さえは基本的にできません。入居の申し込みをした時点で仮押さえという扱いになります」(深澤さん)
つまり、「申し込みをせずキープする」ことは不可です。これは申し込み前に仮押さえをしてしまうと、オーナーや仲介業者はその間募集活動をしないので他の入居希望の申し込みを受けられず、契約のチャンスを逃すことになるためです。
「まれに大家さんと仲介会社との関係性が深く、その仲介会社しか扱えない物件で入居の申し込みをしなくても仮押さえできる場合もありますが、レアケースといえるでしょう」

賃貸物件では、入居申し込みをすると仮押さえとなります。その入居申し込みの手順は以下のようになります。
不動産会社の申込書に氏名、性別、生年月日、現住所、連絡先などの必要事項を記載します。仕事をしている場合には、勤め先に関する情報や勤続年数、年収などの記載が必要となります。申込書には押印箇所がありますが、押印がなくても受け付けてくれるケースも多いです。申込書の他には本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きのもの)の提出を求められることが多いです。その他に提示する可能性がある書類として、健康保険証(勤務先の確認を兼ねることもある)、社員証(在籍確認のため)、収入証明(自営の方の他、物件のオーナーによっては申し込みの際に求められる場合がある)などがあります。
入居審査には、本人の所得を証明する書類(源泉徴収票や給与明細のコピーなど)が必要です。提出書類を管理会社や物件のオーナーが確認し、入居審査へと進みます。入居審査では本人確認のために電話がかかってくるので、電話に出られるようにしておきましょう。
数日から1週間程度で入居審査の結果が出ますが、問題なければ重要事項説明を受け、賃貸借契約を結ぶことになります。
「入居申し込みの際、申込金は必要ないケースが多いですが、物件によっては家賃の1カ月程度を支払う場合もあります。キャンセルする場合は、払った申込金が返金されるかどうか事前に不動産会社に確認しておきましょう。また、キャンセルをする際に領収書や振り込み履歴のコピーを求められることがあるので、現金で支払う場合は領収書を必ずもらうようにしましょう」
「一般的に数日から1週間程度で審査の結果が出ます。結果が出たら不動産会社はメール、電話などで結果をお知らせしますので、そのタイミングで入居の意思表示をしていただきたいです。当社の場合、連絡がつかない場合でもすぐキャンセルということはなく、必ず『○日までに連絡がなければキャンセルとなります』などと伝えます」
申し込みの際、「○○のタイミングで本人から連絡がなければキャンセルとなります」など、キャンセル期限の説明があった場合はそれに従いましょう。
また、大学受験などで事前に物件を見て合否が分かるまで1~2カ月程度仮押さえをしたいというケースは多いようです。
「多くの場合は先に契約をしておき、実際に家賃が発生する日にちを3月または4月からにするご相談をすることになると思います。家賃発生前にキャンセルとなった場合には、約1カ月分を違約金としてご負担いただくケースが多いです」
不動産会社やオーナーによって対応は異なるため、仮押さえをお願いした時点で確認をしておきましょう。

申し込みをした本人と連絡がつかない場合も、不動産会社側で勝手にキャンセルの手続きをすることはなく、電話またはメールで「○日までに連絡しない場合はキャンセル手続きをします」などと連絡があるはずです。それまではその物件の入居を希望する人がいたとしても物件を案内することはありません。ただし期限を過ぎたらキャンセル扱いとなり、他の人に案内をすることになるので注意しましょう。
申し込みをした物件とは異なる物件に決めた場合、キャンセルは可能なのでしょうか。また、キャンセルが出来る場合にはキャンセル料金などは発生するのでしょうか。
自己都合による申し込みのキャンセルは、自ら不動産会社に連絡をします。
「契約は重要事項説明を受け、貸主と借主の双方が契約書に署名捺印をすると成立します。署名捺印するまでは契約が成立したことにはならないので、契約締結前であれば入居審査の結果が出た後であっても、原則は違約金など発生することなく入居申し込みのキャンセルは可能です。ただし会社によっては審査を承認後にキャンセルをすると違約金が発生する場合もあります。これは申し込み時に説明があるはずなので、確認してから申し込みをするようにしてください」
受験の例のように契約を先に締結した場合は、キャンセルではなく契約の解約となり、契約書にそって解約手続きを行います。申込金を支払っている場合、契約内容によっては返金されないケースもあります。初期費用を既に支払っている場合も一部返還されない場合があるので注意しましょう。
早期解約の違約金が設定されている場合には、その費用も支払うことになります。このように解約の際にはさまざまな費用が発生する可能性が高いので、自己都合でキャンセルをしたい場合は、入居審査の結果が出て重要事項説明を受ける前までに管理会社に申し出ることをおすすめします。
また、入居審査に通らなかった場合はそもそも契約が難しいので、自動的に申し込み自体がキャンセルとなり仮押さえの状態はなくなります。
「契約締結前であれば、原則キャンセル料金はかかりません。ただし会社によって違約金がかかるケースもありますので、申し込みの際にきちんと確認することが大事です。また、契約締結後のキャンセルは、家賃発生前でも違約金が発生する契約内容もあるので、契約締結時に確認をするようにしましょう」
「キャンセルのご連絡はメールでも電話でも構いません。仮押さえの間は不動産会社やオーナー側は募集活動をストップしている状態です。やむを得ずキャンセルをする場合には出来るだけ早くご連絡ください」
安易に仮押さえやキャンセルすることは、入居審査を行ったり、契約の準備をしている不動産会社やオーナーに迷惑がかかると十分理解しておきましょう。

賃貸物件の仮押さえをする際に、注意すべき点を深澤さんに聞きました。
「契約前であれば入居申し込みをしていてもキャンセルできるので、例えば不動産会社A、B、Cでそれぞれ1件ずつ申し込みをして仮押さえをすることは理屈上可能です。しかし、マナーとしてはやめておいたほうが無難です」
申し込みをした時点から不動産会社やオーナーが入居審査やその後の契約に向けて動いています。キャンセルした場合、たくさんの人たちに迷惑がかかるためマナーとしてすべきではありません。入居の申し込みは契約を前提に行うもので、やむを得ない場合のみキャンセルをするという認識を持っておきましょう。
また、同じ不動産会社で複数物件の契約をすることは多重契約となるため出来ません。申し込んだ物件の不動産会社が違ったとしても、保証会社が同じ場合には多重契約とみなされ、同じ保証会社を利用している他の物件の入居審査も通らなくなる可能性があるため注意しましょう。
申し込みをして仮押さえをしているということは、不動産会社側としては契約に進むと考え、募集活動をストップして契約に向けて準備をしている状態です。他に住みたい物件が見つかった、引越し自体がなくなった、転勤先が変更になったなどやむを得ない理由でキャンセルをする場合には、分かった時点で早めに不動産会社に連絡をしましょう。
また、キャンセルをする場合の期限を設けられている場合には必ず期日を守り、誠実な対応を心がけてください。無断でキャンセルをしたり、連絡を怠るようなことは相手に迷惑がかかるので絶対に避けましょう。

賃貸契約は貸主と借主の信頼関係で成り立っています。期限を守らなかったり、連絡を怠るような対応をしては信頼関係を築くことができないばかりか、トラブルになる可能性が高くなります。
「申し込みの際に既にキャンセルの可能性があることが分かっているのであれば、その旨を伝えていただけるとありがたいです。キャンセルになった際すぐ募集をかけられるよう準備しておけますし、『申し込みまでしたのにキャンセルをすると言いにくい』などと連絡を躊躇する方も、キャンセルを伝えることに不安にならなくて済むのではないでしょうか」
不動産会社では「キープ」の意味での仮押さえはできず、申し込みを行って入居手続きを進めることを仮押さえと呼んでいます。契約前であればキャンセルは可能ですが、不動産会社やオーナー側が入居に向けて準備をスタートしていることを考え、複数の物件に申し込みをすることなどは避けるのがマナーです。
※地域や会社により対応や必要書類などが異なることがありますので、事前に担当者に確認するようにしてください。
賃貸物件では申し込みをせずに「キープ」することは原則できない。入居申込書を提出した時点で仮押さえとなる
契約締結前であれば、入居審査の結果が出た後であっても原則は違約金など発生することなく入居申し込みのキャンセルが可能。契約締結後は、キャンセルではなく契約の解約となる
入居申し込みをした時点で不動産会社やオーナー側は物件の募集活動をストップし、契約の準備を進めている。やむを得ない理由でキャンセルをする場合には、多くの人に迷惑をかけていることを自覚し、早めに連絡をして誠実な対応を心がけよう