住宅ローンを利用してマイホームを新築したり購入したりする場合は、将来にわたる自分と家族のライフプランを踏まえたうえで、きちんと返済していける安全な計画を立てることが重要です。
順序としては、いきなりモデルルームやモデルハウスに行くのではなく、現在の家計から支払っていくことのできる返済可能額を冷静に見積もってから、その範囲内の借入金額と手元にある頭金の額から購入可能な物件価格を算出します。そして、算出した物件価格の範囲内の物件を探しに行けばよいのです。そうすれば、将来のライフプランにシワ寄せのいく無茶な資金計画を避けることができますし、家計から見て背伸びをした物件に目がいってしまう可能性も低くなることでしょう。
このとき、購入可能な物件価格を見積もるうえでの住宅ローンの返済計画は、とりあえず概算のものでかまいません。例えば、借入予定額2000万円を、35歳から返済していくとするなら、60歳までに返済が終わる返済期間として25年あたりに設定し、ローン金利は、現在(2018年8月)の【フラット35】(全期間固定金利タイプ)の最低金利である1.340%よりも少し高めの金利である2%程度で計算してみるとよいでしょう。
というのも、住宅ローンは融資実行時点の金利が適用されるのが一般的で、申込時点の金利よりも適用金利が高くなる可能性があるのと、収入減などの不測の事態が起きてもある程度は対応できるように購入可能な物件価格を厳しめに見積もるためです。
ちなみに、借入額2000万円、金利2%、25年返済だと、ボーナス返済なしで毎月返済額は8万4770円、年間だと約102万円の返済となります。借入額が4000万円の場合は、毎月返済額16万9541円、年間返済額約204万円になります。
借入額 | 2000万円 | 4000万円 |
---|---|---|
毎月返済額 | 8万4770円 | 16万9541円 |
年間返済額 | 約102万円 | 約204万円 |
実際に購入する物件が決まってきたら、具体的な資金計画を検討します。まずは、どの金融機関等の住宅ローンを利用するのかを考えます。
住宅購入の契約に向けた手続きを進めていくと、業者が提携している金融機関の住宅ローン商品をすすめられる場合があります。しかし、住宅購入については必ずしも業者のすすめてきた金融機関でローンを組まなければならないわけではありません。自分で金融機関等を探して、利用する住宅ローンを決めることが可能なのです。
利用する金融機関等を決めるうえでポイントになるのは、まず、全期間固定金利型である【フラット35】(返済期間20年以内の場合は【フラット20】)を使うのかどうか。【フラット35】を使うのであれば、【フラット35】を取り扱う金融機関等のなかで金利や手数料の低いところを探すことが重要になってきます。
なぜなら、独立行政法人である住宅金融支援機構がつくった【フラット35】は、基本的な商品性はどこでも同じですが、適用金利と手数料等が取扱機関ごとに異なるようになっているからです。面倒でも、【フラット35】同士の比較検討を重ねるようにしましょう。傾向としては、中小の金融機関等やネット系の銀行、住宅ローン専門業者等のほうが適用金利は低めに設定しています。まずは金利の低いところを探し、手数料を比較してみましょう。
なお、全期間固定金利型は、各金融機関独自の住宅ローン商品として取り扱っているところもあります。【フラット35】よりも金利や手数料が低いのであれば、金融機関独自の全期間固定金利型のローンを利用してもよいでしょう。
一方、【フラット35】などの全期間固定金利型ではなく、変動金利型や固定金利期間選択型(2年固定や3年固定、5年固定、10年固定など)を利用したいのであれば、各金融機関等が提示している金利や手数料を比較し、低いところで決めていくとよいでしょう。ただし、目先的な金利が【フラット35】などより低くても、将来の金利変動リスクがあることをくれぐれも忘れないでほしいものです。
ちなみに、金融機関等によっては、勤務先の会社との関係(会社のメインバンクなど)で従業員に対して金利優遇を行っていたり、給与振込口座や積立定期などの取引実績に応じて金利優遇を行ったりと、通常の条件より有利な特典を用意しているところがあります。自分にとって有利な金融機関等はどこなのか、手間はかかりますが、調べてみる価値はあります。
また、これから住む自治体によっては、自治体からの利子補給が受けられる金融機関などがありますし、これまで取引をしたことがない地域金融機関である信用金庫やJA(農協)などの住宅ローンのほうが、メガバンクなどよりも有利な商品を取り扱っていることもあります。
それらの金融機関等で用意している特典も、給与振込口座の指定や積み立てなどの条件が設定されている場合がありますが、比較的多くのところが住宅ローンを申し込むまでに給与振込口座などの変更を済ませておけば問題なく利用できます。とにかく、これまで利用したことのない金融機関等も含めて、さまざまなところに当たってみることが大切です。
なお、インターネット専業の金融機関等や規模の小さな金融機関では、なんとなく不安だという人もいるかもしれませんが、お金を預ける側ではなく、お金を借りる側にとっては、金融機関等の安全性は必要以上に心配することはないでしょう。
イラスト/杉崎アチャ