賃貸住宅のトラブル事例と解決法~隣人トラブルの対処法~

最終更新日 2024年07月03日
賃貸住宅のトラブル事例と解決法~隣人トラブルの対処法~

細心の注意を払って家探しをしても、「住み始めてから問題が出てきてしまった……」なんてことはよくあるもの。特に、隣人とのトラブルは、未然に防ぐのは難しい場合が少なくない。そこで今回は、隣人トラブルで悩んでいる人に向けて、トラブル事例と相談窓口、解決法を紹介しよう。

お話を伺ったのは
永田徹さん

ミニミニ関東本部管理部部長。賃貸住宅の管理を長年にわたり手がける。宅地建物取引士

森田雅也さん
弁護士。法律事務所オーセンス所属。賃貸住宅をはじめとする不動産や相続にまつわる案件を数多く担当している。著書に「自分でできる『家賃滞納』対策」(中央経済社)がある

よくある隣人トラブルは騒音、におい、マナー違反

イラスト

隣人とのトラブルでよくあるのが、生活音や子どもの走り回る音などの騒音問題、タバコやゴミ、ペットなどのにおい問題、それにゴミ出しやあいさつなどのマナー違反などだろう。なかでも「もっとも相談が多いのは騒音トラブルです」と話すのは、賃貸住宅の管理を手がけるミニミニの永田徹さんだ。「友人を呼んで夜中に話し込んでいたら、隣から壁を叩かれたというのはよくある話。なかには下の階の人から天井を棒で叩かれたり、新聞受けにホースを突っ込んで水をまかれたり、といったケースもあります」

騒音トラブルは中々解決が難しい

音の問題は人によって感じ方が違うこともあるので、トラブルを完全に回避するのが難しい面がある。自分では注意しているつもりでも、隣人や下の階の住人から苦情を言われてしまうこともあり得るのだ。また逆に、他人の出す音に自分が悩まされるケースももちろん考えられる。「上の階の人がいやがらせのようにわざと椅子から飛び降りて音を立てるというケースもありました」と、賃貸住宅のトラブルに詳しい弁護士の森田雅也さんは話してくれた。

ペットをめぐるトラブルも…ペット可物件でもトラブルは発生する?

ペットをめぐるトラブルは、ペット不可の賃貸住宅でルールを破ってペットを飼う住人がいると発生するケースが多い。「ペット可物件ではお互いさまなのでトラブルはさほど多くはありません。トラブルになりやすいのは、賃借人を確保するために大家さんが途中でペット可に変更してしまうケース。先に入居していた人が動物アレルギーだったりすると、『ペット不可のはずなのにどうして隣の人は飼っているの?』ともめることになりかねません」(永田さん)

マナー違反の代表例はゴミ出し

マナー違反の代表例はゴミ出しだろう。ゴミ収集の曜日や時間を守らなかったり、分別されていないゴミを出してしまったりするケースは後を絶たない。「集合ポストに置いてあるチラシ用のゴミ箱に、生ゴミが捨てられていたケースがありました。当社に連絡がありましたが、住人が出したのか、近隣の人が置いていったのか、結局は分からずじまいでした」(永田さん)このように、悪質なケースもあるという。

隣人トラブルの対応法!大家さんか管理会社に相談するのが先決

イラスト

こうした近隣トラブルに遭遇してしまった場合、どうすればよいのか。「まずは大家さんか管理会社に相談するのが先決でしょう」と、森田さんは教えてくれた。「トラブルを起こしたときに、苦情を言われた相手と直接話をすると、余計に対立が強まり、さらなるトラブルに発展するケースが少なくありません」。もちろん、壁を叩かれたからといって叩き返したりすれば火に油を注ぐことになりかねないのでやめたほうがよい。

実際に物件を管理する立場にある永田さんも、同じ意見だという。「例えば隣同士の騒音トラブルなら、当人と管理会社の3者で話し合えば、『お互い気を付けようね』ということで丸く収まるケースがほとんどです。子どもの走る音が原因の上下階のトラブルでは、お互いの部屋を交換して1時間ほど過ごしてもらい、上の階の音がどのくらい響くのかを下の階の人に体感してもらうこともあります」

ただ、大家さんや管理会社を介しても、話し合いが難しいケースもある。例えば若い女性の一人暮らしの場合、相手が男性だと、注意をしたこと自体を知られたくない場合もあるだろう。また集合ポストのゴミ捨てのように、だれがトラブルを起こしているのか特定できない場合もそうだ。

そんなとき、管理会社が使うワザが「貼り紙作戦」だ。「まずはエントランスに『近隣からクレームが来ています』というフワッとした内容の貼り紙を出します。それでも収まらなければ『これ以上続くようなら部屋を特定し、厳重注意します』と書いて貼るのです。たいていはこれで収まりますね」(永田さん)

もし解決しなかった場合は…?行政・専門機関にも相談

しかし、管理会社や大家さんも、完全な証拠がない限り、強く注意できないケースもある。
もし大家さんや管理会社に相談しても解決できなかった場合や、状況が変わらなかった場合は、行政や専門機関に相談する方法もあるため、検討してみよう。

相談機関名と対応相談内容
公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 賃貸物件での生活の安定と向上の促進を目的とした団体。補助金の紹介など、生活支援を相談できる。
一般財団法人 不動産適正取引推進機構 不動産の売買や賃貸借の仲介など不動産取引の相談が可能。契約解除の方法など、賃貸借契約トラブルの相談もできる。
日本司法支援センター 法テラス 国が設立している総合案内所。法的なトラブルの解決を行っている。敷金返金に関する相談や、家賃滞納で退去を要求された際の対処法を弁護士に相談できる。
警察の相談窓口 緊急性がない場合は、警察相談専用電話「#9110」に相談することが可能。ご近所トラブルや、生活の安全に関する困りごとも相談できる。匿名での利用も可能。

弁護士からの内容証明郵便で収まるケースも

トラブルを起こした本人の親に注意してもらう

それでもダメなら法的手段に移るのだが、その前にもう一つ、強力な手段があるという。トラブルを起こした本人の親に注意してもらうのだ。「若い人の場合は親が身元保証人になるケースがほとんどなので、親から言ってもらうのが一番です」(永田さん)

弁護士に相談し、法的手段も検討

さて、いよいよ法的手段となると弁護士に相談することになる。その場合もいきなり訴訟になるわけではない。「まずは弁護士事務所から警告の文書を内容証明郵便で相手に送ります。それだけで解決するケースも少なくないのです」(森田さん)

いざ訴訟となると、被害の有無を証明する資料を作成しなければならない。特に騒音トラブルでは実際に音を出している「現場」を押さえなければならないので、室内に騒音計を持ち込んで計測するといった作業が必要な場合もあるという。「自治体の環境条例で基準を定めているケースが多く、普通の会話程度の50dB~65dBを超える騒音が繰り返し発生していると受忍限度を超え、不法行為として認められる場合が多いようです。損害賠償が認められると、数十万円程度の慰謝料が支払われるのが一般的でしょう」(森田さん)

訴訟ともなると大ごとだが、弁護士に相談したからといってすぐに裁判沙汰になるわけではない。訴訟にならないように解決するアドバイスをしてくれることも多いという。最近は弁護士を検索できるサイトなども増えているので、だれに話せばいいか分からない場合は気軽に相談してみるのもよさそうだ。

トラブルをスムーズに解決するポイントと対応法とは

トラブルはできるだけスムーズに解決したいものだ。以下の二つのポイントを押さえて、一度実践してみよう。

証拠を集める

隣人の騒音問題に困っている場合、「どの部屋からの騒音なのか?」を突き止めなければいけない。
しかし、大音量のテレビの音や扉を閉める大きな音はどの部屋から聞こえてくるのか、部屋を確実に突き止めるのはなかなか難しい。
「左隣の部屋から音が聞こえる気がする」「上の階の住人がわざと大きな音をたてている」など、証拠もないのに思い込みで犯人扱いをしてしまうと、さらなるトラブルに発展してしまう。

トラブルになったときには、「証拠」を集めることが大切だ。具体的な日時をメモしたり、音声レコーダーで録音したりするなど、証拠をとっておこう。管理会社や大家さんに立ち会ってもらい、証人になってもらうこともおすすめだ。

賃貸契約書の画像
賃貸借契約書の内容を見直そう(画像/PIXTA)

賃貸借契約書を確認する

部屋を借りたときに交わした「賃貸借契約書」の内容を見直すことも忘れてはいけない。
賃貸借契約書には、トラブルになった場合の連絡先や、トラブルに対処するための方法が記載されていることもある。
賃貸借契約書は、紛失したり、どこに保管してあるか分からなくなったりする人も多いので、保管場所を決めておこう。
さらに賃貸借契約書には、賃貸物件に住むための注意点や心得などが書いてある。普通に生活しているつもりでも、周囲の部屋にテレビの音が漏れていたり、友人との話し声が迷惑をかけていたり、他の入居者の駐車場に間違えて車を停めてしまうことも多い。
集合住宅に住んでいるならなおさら、他の入居者の迷惑にならないように心がけることが大切だ。

隣人トラブルは未然に対策できる!? 自主管理物件かどうかで対応に差が出ることも

イラスト

ところで隣人とのトラブルは、物件探しの段階である程度は未然に防ぐことができる。例えば騒音については、最上階の部屋を借りれば上からの音に悩まされるリスクはなくなる。また隣り合う部屋の間取りを確認するのもポイントだという。「リビングや浴室など音が出やすい場所と隣の寝室が接していると音が漏れやすいですが、例えば隣の部屋の収納と接していれば聞こえにくくなります」(永田さん)

建物の構造が原因となるケースもある。ワンルームなどコンパクトな部屋の場合は、左右どちらかの壁が鉄筋コンクリートではなく、音が漏れやすいブロック造のケースが多い。その場合はブロック造の壁側に家具を置くなどして、生活空間を少しでも壁から離す工夫をしたい。また施工不良などで音が聞こえやすい建物の場合は、大家さんなどに相談して改善してもらう方法もある。「鉄骨造のアパートで隣の留守電も聞こえてしまうケースがありました。大家さんに相談したところご自分でもびっくりされて、すぐに壁に防音材を設置してくれたことも」(永田さん)

なお、不動産会社に相談する場合、その会社が物件を管理しているかどうかで対応に差が出ることがあるという。「大家さんが自主管理している物件の場合、不動産会社に相談しても大家さんに取り継ぐだけになるので、しっかり対応してくれるかどうかは大家さん次第です。不動産会社や管理会社が管理を受託している物件では、住人からの相談にも会社が直接対応するので、隣人との話し合いなどがスムーズに行われることが期待できるでしょう」(永田さん)。なお、その物件が大家さんの自主管理かどうかは借りるときに不動産会社に聞けば分かるので、確認するとよさそうだ。

ちなみに、隣人とのトラブルを防ぐ究極の対策は、「隣人と仲良くなること」(永田さん)だそう。部屋を借りるときには両隣の住人はもちろん、上下階の住人にもあいさつして顔見知りになっておくことが、リスク回避につながるかもしれない。女性の一人暮らしなど、顔見知りになるのが難しいケースでは、信頼できる不動産会社が管理している物件を選ぶことが最良の対策といえるだろう。

トラブル防止のポイント

そもそもトラブルが起こらないようにするために、以下のトラブル防止のポイントを確認しておこう。

ガイドラインを確認しておく

トラブルに巻き込まれないようにするためには、自分自身が「トラブルの原因」になるのを防ぐことが大切だ。東京都などの自治体が作成している「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」や、国土交通省住宅局が作成している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認しておこう。
ガイドラインを把握しておけば、賃貸住宅での生活ルールを守ることができ、トラブル防止につながる。

迷惑をかけないよう最低限の注意を払う

子供が遊んでいる横で、母親が防音マットを敷いている画像
子どもがいる場合、防音マットを敷くと防音対策になる(画像/PIXTA)

トラブルを防止するためには、入居者一人ひとりが、他の住人に迷惑をかけないように生活する意識をもつことが大切だ。その一つに、「生活音への配慮」がある。例えば、以下のような対策がおすすめだ。

  • 足音軽減のために、小さい子どもがいる場合はカーペットややわらかい素材のマットを敷く
  • 集合住宅の一階を選ぶ。または一階が店舗などのテナントになっている物件の上階に住む
  • 部屋の扉を静かに閉める、隣の部屋との間に家具を置く

日々の細かい配慮がトラブルを防止することもある。できる範囲で対策を考えてみよう。

共有部はきれいに使う

トラブル防止のためには、共用部の使用方法にも注意したい。よくあるトラブルや迷惑行為は以下の通りだ。

  • 故障して使用しない自転車を共用の自転車置き場に放置している
  • 階段の下にいらなくなった子どものおもちゃを放置している
  • 郵便ポストのチラシを回収せずそのままにしている

賃貸住宅の共用部は、みんなで協力して使う場所だ。トラブルにならないように決められたルールはしっかり守るようにしよう。

賃貸物件を探す
引越し見積もりをする
中古マンションを探す
新築マンションを探す
新築一戸建てを探す
中古一戸建てを探す
土地を探す
注文住宅の会社を探す
売却査定する
リフォーム会社を探す
カウンターで相談する
ハウスメーカーを探す
工務店を探す
取材協力:弁護士ドットコム、株式会社ミニミニ
 イラストレーション/杉崎アチャ
関連する最新記事を見る
住みたいエリアや購入価格からマンション・一戸建てを探そう!
住まいの種類
住みたいエリア
  • エリア
  • 都道府県
  • 市区郡
購入価格

お役立ち講座・個別相談のご案内無料

住まい選びで「気になること」は、人それぞれ。スーモカウンターのアドバイザーは、新築マンション選びと会社選びをサポートします。講座や個別相談を通じて、よかった!と思える安心の住まい選びをお手伝いします。
カウンターアドバイザー

住み替えサポートサービス

ページトップへ戻る