登山ができる街、高田馬場にもっとみんな住んでもいいと思うんだ。

著: narumi 

ぼくが高田馬場に住んでいたのは20代半ばから30歳まで。社会人の初めのころの記憶がこの街とともにある。ほとんど帰って寝るだけだったけど、「高田馬場はいいぞ」といまでも家探しをしている人に力説してしまう。

張り切ってここに住むことの素晴らしさを並べ立てようと思ったが、でも考えてみるとそういう場所でもない。にぎやかなようで垢抜けなくて、何とも言えない魅力があるのだ。

「へー、ちょっといいじゃん」くらいに思ってもらえるとうれしい。地図でいうと、だいたいこのあたりの話をする。

地味だけど便利。新宿から歩いて帰れる心強さ

高田馬場のイメージといえば何だろうか。

たぶん何もないか、かろうじて「早稲田大学?」「学生街?」と答えるくらいだと思う。山手線の駅のなかでもわりとパッとしないイメージだ。住んでみようと思ったことがある人は少ないかもしれない。

でもこれが意外と便利。JR山手線のほかに東西線、ちょっと歩けば副都心線・西早稲田駅もある。明治通りと早稲田通りという主要道路も交差していて、とにかく交通の便が良い。

住んでいた当時の職場は神保町(九段下)だったから、東西線で10分くらいだった。大手町や日本橋みたいなビジネス街にも1本で行けるし、渋谷にだってJRと副都心線で出られる。会社が移転しようと、自分が転職しようと、高田馬場にいればそんなに困らない。

夜、飲んだあとは新宿あたりからであれば余裕で歩いて帰れる。完全に散歩圏内。満員電車に乗るくらいなら酔い覚ましに歩いて帰ったほうが気分がいいくらいである。

途中、歌舞伎町のバッティングセンターで情熱を振り回したり、新大久保のやたら大きなドン・キホーテに寄ったり、何かと楽しかったのを覚えている。20分も歩けばもう高田馬場だ。



だから、若かったせいもあるけど、ほとんどタクシーに乗ることはなかった(あるいはよく上司に相乗りさせてもらった)。お金もないから平日することがなくて、とりあえず遅くまで仕事をしていた。そんな若い世代にはぴったりの街だと思う。

そりゃ便利で楽しいといえば、渋谷とかに住めばいいのかもしれないけど、そっちはなんとなく気後れしてしまうという人もいると思うので。

意外と優しい街

住んでた家はたしか家賃6万5000円。いま考えると相当安いなと思う。1Kのとにかく狭い部屋で、寝るか、寝ながらパソコンをいじるか。ほぼベッドの上だけで生きていたようなものだった。だからか部屋の写真は1枚も残っていなかった。

良かったところといえば東西線の出口から徒歩30秒という至近距離で、酔っ払って足元がおぼつかなくても家に帰れるところ。場所はあのコットンクラブの真裏。

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学生街だからか、なんだか優しい場所だった気がする。

あるとき、朝起きたら仕事用のパソコンが入ったバッグがないことに気づいた。頭がガンガンに痛くて完全に二日酔い。どう探しても家の中にはない。「昨日飲んでたお店に忘れてきたのかも…」なんて思いながら会社に行ったが、やっぱりバッグもPCもなかったので仕事にならない。

手持ち無沙汰な中、お店に電話したらそんな忘れ物はないと言う。夕方、そろそろと始末書のテンプレートを検索し始めたころに会社の電話が鳴った。後輩が電話に出たところ、「はい。ええ、ナルミというものはおりますが…カバン…?」と話し始めたので受話器を奪った。

近所のスナックの店員さんが、道端に落ちてたバッグを拾って保管しておいてくれたらしい。中に入ってる名刺を見て電話をくれた。始末書一歩手前だったのをいま思い出した。

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あのへんに一晩中落ちてたらしい。あぶなかった。治安いいー。

早稲田松竹、いい感じの映画館がある。

目の前にTSUTAYAがあったのでそこでよく映画を借りていたが、「早稲田松竹」にもよく行った。

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この早稲田松竹はいわゆる“名画座映画館”。ロードショーの終了した作品や過去の名作を、この劇場ならではのセレクトで上映している。しかも2本立て。

場合によってはこんな組み合わせになることも。



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料金は1300円。連続して2作品観ればかなりお得。たいていどちらかはつまらなかったりするが、意地でも外に出ないのが自分なりのルールだった。時間だけはあったから。

あと、20時くらいから上映される「ラスト1本」だけ800円に割引されるというサービスもあるから、スケジュールはまめにチェックして通っていた。NetflixやAmazonプライムがある今も、やっぱり映画館で観たい作品というのはある。

最近だと「ベイビー・ドライバー」や「ダンケルク」はロードショーで見逃したので、早稲田松竹で2月に上映される予定なのがとてもうれしい。

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あの有名店も「高田馬場店」だけは穴場

住みやすさという点では、たぶん高田馬場にはすべてのチェーン店がだいたいある。特に調べてないけど全国チェーンは全部ある、と思う。ファストフードからドラッグストアからファミレスからスーパーからドンキからスタバからユニクロからしまむらまで、もうそれこそ全部だ。何も心配いらない。

そういえば大学も高田馬場だった。所沢の実家から1本で行ける便利さから選んだ。あまりに便利すぎるので授業が終わったらすぐに地元に帰り、中学・高校時代の友人たちと変わらずつるんでいた。

なにしろ誇張ではなく1人も友達がいなかったから、覚えているのは大学の目の前にあるうどん屋、カレー屋、洋食屋くらい。1人で気兼ねなく行けるお店は貴重だった。

卒業から数年後、1人暮らしで戻ってきたときも、相変わらず行くのは同じうどん屋、カレー屋、洋食屋だった。「ごんべえ」「メーヤウ」「キッチンオトボケ」。いまでもたまに行きたくなる名店ばかり(メーヤウはもうないらしい、残念)。

ごんべえはうどん屋だが、必ずカツ丼を食べてほしい。650円であんなに美味しいカツ丼はそうそうないはず。まわりはみんなカツ丼を食べていた気がする。

考えてみると意外と東京中の名店がそろってるし、しかも空いてる。

例えば神保町店には行列ができるカレー屋「エチオピア」だが、高田馬場店はそんなでもない。「チキンカレーの5倍」あたりが好きだった。

同じく神保町店では行列ができて怖いお姉さんに「注文は!?」と詰められていた「キッチン南海」も、高田馬場店はゆっくりとした空気が流れていた。

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ひらめフライと生姜焼きのセット、通称「ひらめ生姜」が一押し。

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新大久保や渋谷では人気の韓国焼肉「とんちゃん」も高田馬場店ならいつも入れる。サムギョプサルをお腹いっぱい食べてビールを飲んで3000円くらい。コスパすごい。

なんというか街全体に穴場感があるのだ。「困ったら高田馬場店を探せ」みたいな。

いまでもよく行くお店は焼き鳥なら「鳥やす」「はちまん」「串味亭」。鳥やすはとにかく安くて美味い。

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焼き鳥はいまどき珍しい1本60円から。盛り合わせは7本で490円と格安。

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そんな高級なものじゃないけど、友人たちと仕事後にビールを飲みながら、「あーこういうのでいいんだわ……」っていう感じのちょうどよさ。まったく気取ったところがないので、毎日1人でも行きたくなってしまうタイプの焼き鳥屋。

はちまんはだいぶ違うタイプ。小綺麗で大人の焼き鳥屋。串味亭はその中間くらいに位置する便利な名店。

深夜にお茶を飲むなら「コットンクラブ」、ボリュームのあるフレンチなら「ラミティエ」。美味しい魚を食べるなら「魚清」。そしてたくさんのラーメン屋…。

一つひとつ紹介するといくらスペースがあっても足りないのでさらっと流したいけど、ラミティエはかなりやばい。前菜とメインのコースがなんと2800円。しかも1皿のボリュームがすごい。

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例えば4人で行って前菜4、メイン4を頼んでお酒を飲むと1人5000円でめちゃくちゃ満足度の高いフレンチが食べられる。これはホタテ。

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これはラムチョップ。最高に美味い。

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あと魚清はもともと鮮魚店なので刺し身のクオリティが素晴らしい。天ぷらや野菜も美味いし、お座敷でゆっくりと飲めるのもうれしい。それでいてお値段は手ごろ。見て、この刺し盛り。

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とにかく安くて美味しいボリュームのある店が多い。渋谷や六本木のように仕事関係の知り合いにまったく会わないのもすごくいい。実は高田馬場はゆっくり人と話ができる場所としても優れている。

緑が多い。大きな公園に川、なんと「山」もある。

「戸山公園」というけっこう大きな公園がある。明治通りで仕方なく東西真っ二つに分断されているけど、あわせると高田馬場駅から早稲田駅までをつなぐほどに横たわっている。

東のほうは新宿スポーツセンターと新宿コズミックスポーツセンターという2つの異なるスポーツ施設に接していてる。両スポーツ施設にはフィットネスジムやプールがあって、しかも安いのでけっこう通った。なぜ至近距離に2つもスポーツ施設があるのかは謎だ。

このへんは早稲田大学理工学部もあって、その周囲はジョギングコースにぴったりだった。いま思えば高田馬場に住んでるころはかなり健康的に暮らしていた気がする。飲んだ帰りは歩いて、休日はジョギングにぴったりな公園と区のプール。運動するには困らない環境だった。

しかも登山ができるというから驚きだ。いや何かの例えではなく、本当に登山。戸山公園の西側には山手線内で最も標高の高い地点である「箱根山」という山がある。

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登山道は鬱蒼とした木々に囲まれ、歩いているとここが新宿区にいるとは思えなくなってくる。

標高44.6メートルだが、そこそこ疲れるし、頂上からの眺めは素晴らしい。

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眺望がかなり開けていて、これはまぎれもない山。ちゃんと「登山証」だってもらえるので、帰りに戸山公園サービスセンターに寄るのを忘れずに。

ジョギングするなら神田川沿いの遊歩道も気持ちいい。考えてみれば山!川!海はないけどめっちゃプールあるし、近所のレジャー環境、最強じゃないですか。

あ、山手卓球っていう昔ながらの卓球場もあるわ、そういえばスケートリンクもある。なんなんだここは。

「いつかまた住みたいな」と、気がつけば不動産検索…

4月〜5月の新入生歓迎シーズン、高田馬場は駅から家まで酔いつぶれた学生が屍となって道を塞いでいた。またいで歩くのが億劫になって、30歳になったときにふと、引越すことにした。

だけどやっぱりいまも思うけど、高田馬場はいい街だった。安くて美味いお店も好きだし、戸山公園も早稲田通りもスケートリンクも夢民も西友もジーンズメイトもさかえ通りも餃子荘ムロも……。

できればまたあのへんに引越したい。たまに高田馬場に住んでる人に会うと羨ましいなぁと心から思う。30代後半となったいまなら、ちょっと落ち着いた西早稲田のあたりもいいかもしれない。

地べたに転がる酔っ払いを避けながら帰る夜が少し懐かしい。気がつけば不動産検索をしている自分がいる。

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著者:@narumi

@narumi

東京生まれ、何度引越してもなぜか西武線沿線から離れられない。趣味はポッドキャスト、普段はBuzzFeed Japanのエディターです。

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