「ずーっと109が大好きなんだよね」伝説のギャル漫画『GALS!』藤井みほなさんの変わらぬ渋谷愛【楽しい大人の暮らし方】

インタビュー: 劇団雌猫 構成:太田冴 

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渋谷最強のカリスマコギャル女子高生・寿蘭(ことぶきらん)が主人公 ©藤井みほな/集英社
好きなものがあると、毎日はもっと楽しい。

劇団雌猫がオタク趣味に生きる人に好きなこと、好きな街や暮らしについて聞くインタビュー企画「楽しい大人の暮らし方」。

今回お話を伺ったのは、平成を彩った伝説のギャル漫画『GALS!』の作者・藤井みほなさん。令和元年、流星のごとくTwitterに現れ「りぼん」を愛読していたアラサー女子たちを沸かせました。11月にはアプリ「マンガMee」にて2002年の渋谷を舞台にした新連載『GALS!!』をスタートし、大きな反響を呼んでいます。

そんな藤井みほなさんの、『GALS!』の舞台ともなった渋谷への熱い想いをたっぷり伺いました。

りぼんっ子のみんな~!本物の「みほなっち」に会ってきたよ~!!

「コギャルの制服」が美術館に

――  突然のTwitterスタートに、まさかの連載再開、本当に驚きました。

藤井みほなさん(以下、藤井):ねー! この展開には、私が一番びっくりしています(笑)。

Twitterを始めたきっかけは、弥生美術館の「ニッポン制服百年史」という展覧会でした。「コギャルの制服を描いた当時のカラー原稿を展示したい」といううれしい依頼を受けて探したのですが、肝心の原稿がなかなか見つからなくて……。

自宅の一角に連載当時の資料や原画を全て保管している「GALS!部屋」があるんですが、押入れから引き出しから何から何まで全部ひっくり返して探したんです。

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「ニッポン制服百年史」で展示した1枚。コギャルの象徴だったハイビ(ハイビスカス)がカバンやブレスレットに(藤井さんのTwitterより)©藤井みほな/集英社

せっかくこれだけ引っ張り出したらいろいろ見つかったし、しまう前に写真を撮っておこうかな、もったいないし、と。もしかしたら懐かしがってくれる人もいるかもしれないな〜、と思って軽い気持ちで始めました。

――  まさに懐かしいイラストばかりで大興奮でした!「え、みほなっちがTwitter!?」と大騒ぎでしたよね。

藤井:投稿し始めた初日は、全然気付かれなくてフォロワー4人とかだったんですけど(笑)、翌日の夜に突然「藤井みほな」と「GALS!」がトレンド入りして。私のことを覚えている人なんて100人くらい? と思っていたので、本当にびっくりしました。

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今見てもかわいい&懐かしく当時のりぼん読者は大興奮(藤井さんTwitterより)©藤井みほな/集英社

その後、109さんから「109をテーマにした漫画を描きませんか?」というオファーをいただいて! あの大大大好きな109ですよ!? うれしくてうれしくて、二つ返事でお受けしました。

たった4ページの漫画だったのですが、『GALS!』の読者だった方たちが思い出して盛り上がってくださって、本当にうれしかったです。



「自分が好きな自分が好き」令和も輝くギャルスピリット

――  最近、あらためて単行本を全巻読み直したのですが、登場人物たちの「ギャルスピリット」にとても励まされました。大人になったからこそ沁みるなと……。

藤井:「私は私を愛していて、大好きで、認めていて、そして自分が好きな自分が好き」。それが、ギャルのスピリットだと思っています。

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©藤井みほな/集英社

人に認めてもらわないと、自分を認められない、みたいな風潮があるけれど、自分の価値は自分が知っていればいい。他人に何を言われようと、私は私でいいんだ、っていうことを、ずっと伝えたかったんです。

だから、「寿蘭ちゃんみたいになりたい」と育った子たちが、今もそういうスピリットを心に住まわせてくれているなら、それは私にとって大きな手応えだなと思いますね。

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©藤井みほな/集英社

新章は「コミケで手売りするつもりだった」

――  Twitterでのバズからの109とのタイアップ。そのころはまだ連載再開は考えていなかったんですか?

藤井:全然! ただ、本当にたくさんの方が盛り上がってくださったのがうれしくて、何かお礼はしたかったんです。スピンオフ的な短編漫画を描いて、コミケとかで手売りしようと思ってました(笑)。

――  ええ!? ファンが殺到してしまう……。

藤井:勝手にやるわけにもいかないし、権利の関係もあるから一応相談しておこうと連載当時の編集担当「とみっち」に相談したら、「もう一度集英社で描かないか?」と言ってくださって。

職業としての漫画家に戻る気はその時点では少しもなかったので、「なるほど、それもできるのか!?」と気づいた感じでした。

―― 「GALS!」連載終了後は、漫画自体ほとんど描いていなかったとか。

藤井:そうなんです、もうやることはないかなと思っていたんですが……やってみたらできた(笑)。

私、「漫画家スイッチ」があって、それをオンにすると一気に“描ける”モードになるんですよ。絵もスラスラ描けるし、ストーリーも迷わず思いつくし、睡眠時間短くなっても平気(笑)。久しぶりにそのモードを起動しています。

――  物語はスッキリ終わっていたからこそ、先生の中では「続編」の発想はなかった?

藤井:なんというか、「コギャル」って高校生だけのものだと思っていて。コギャルを描いているということは、コギャルじゃなくなった時点で、物語は終わりだ、と思っていたんですよね。寿蘭ちゃんたちが高校を卒業した後も物語が続く、という概念がありませんでした。

―― では、連載再開のときには物語に悩んだのでは?

藤井:それが、全く!(笑)いざやってみようと考え始めたら、どんどん浮かんできました。

最初はスピンオフを描くつもりでプロットを練っていたのですが、回りくどいことをせずに、高校卒業後をそのまま描いた方が分かりやすいんじゃないか、と方向転換しました。なので、舞台は昔の連載が終わってすぐだった2002年にしています。

カリスマ店員がトレンドを作る。毎週流行が変わるスピード感

――  2002年の渋谷の雰囲気も忠実に描かれていますが、当時の資料はお持ちだったんですか?

藤井:「りぼん」で連載していたときの写真や動画資料をずっと保管していたので、それを見ながら描いています。当時と今を比べると、渋谷は本当に様変わりしていますよ! センター街なんて特に!オムライスが美味しかった恋文食堂もなくなってしまったし……。

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1999年頃の渋谷


―― 「恋文食堂」なつかしい! 連載当時はどれくらい渋谷に通っていたんですか?

藤井:少なくとも週1回は行っていましたね。MOUSSYにEGOIST、CECIL McBEE……買い物しながら109の地下2階から8階まで全てのお店をチェックしていました。1週間で全然違いますからね! ショップも入れ替わるし、売っているものも、流行も変わる。

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最先端のギャルファッションも魅力だった ©藤井みほな/集英社


―― すごいスピード感!

藤井:当時はカリスマショップ店員さんがいて、その人が着ているものは一瞬で売り切れていくんです。で、店員さんはまたどんどん新しいものを着るから、毎週毎週売れているものが違う。本当に刺激的な場所でした。

当時はスマホもないので、資料用にハンディカムで街行く人たちを撮影したり、マックで仕事をしながら隣の女子高生の会話に聞き耳を立てたり。そんなこんなで、しょっちゅう渋谷にいた気がします。

――  当時の渋谷と、今の渋谷ってずいぶん変わりましたよね。

藤井:歩いている人の服装から違いますよね。当時は、治安も悪くて小汚い人が多かった(笑)。

夜になると普通に「オヤジ狩り」があったし、カラーギャングやチーマーの抗争とかも残っていた時代でした。渋谷駅から109まで歩いている間にも、風俗やキャバクラのキャッチだらけだったもんね。

援助交際でおじさんを待っている女の子が109の前でたくさんたむろしているのも見ていました。当時は17歳による少年犯罪がニュースをにぎわせていましたし、なんというか……若者がヒリヒリしていた。大人への反発みたいなものを、街全体から感じました。

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―― 確かにそんな時代だった……。治安はずっとよくなりましたね。

藤井:ハチポリ(渋谷駅ハチ公前の交番)のお陰かな(笑)。あとは、IT企業がたくさん渋谷にオフィスを構えるようになってから、綺麗めな人が増えた感じがします。外国の方も増えましたしね。

渋谷大好き!だけど憧れの街は…

――  それだけ通い詰めていたということは、渋谷の近くに住んでいたんですか?

藤井:いえ、当時は、武蔵小金井に住んでいました。中央線で吉祥寺まで行って、そこから井の頭線に乗り換えて。30分以上かけて、渋谷に通っていました。

――  結構遠いですね、意外です! むしろ「渋谷に住みついている」くらいなのかと思っていました。

藤井:それはなかった! というか、住めるような街じゃなかったですよ!(笑)とにかく治安が悪かったもん。

逆に住みたい街でいうと、吉祥寺にはめっちゃ憧れがありました。芸術家やクリエイターが多い街というイメージもあって。

漫画家さんもたくさん住んでいたし「将来は吉祥寺に住んで、近所に住む漫画家さんと吉祥寺でお酒を飲むんだ!」と夢見ていたけれど、叶わなかったですね(笑)。

吉祥寺って、ユザワヤとか画材屋さんとか、とっても充実していたんです。当時はアナログ原稿だったので、画材を買いによく行っていました。

なんだろうな、あの吉祥寺への憧れ……。分かる人には分かってもらえると思う!(笑)

――  現在の連載では、「タツキチ(寿蘭の彼氏)」の地元でもある町田も大きくフィーチャーされています。町田には何か縁があったんですか?

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マンガmee新連載「GALS!!」1話より ©藤井みほな/集英社

藤井:以前、神奈川県に住んでいたことがあったんです。町田って、東京なんだけど神奈川みが溢れていて、「町田をディスって愛する」みたいな風潮があるじゃないですか(笑)。

いじられて、愛されている。それをキャラクターにも投影したら、愛されるかな、と思いました。Twitterで人気キャラのファン投票をしたら、見事にぶっちぎり男性キャラ最下位でしたけど……(笑)。

「やっぱり私はずーっと109が大好きなんだよね」

――  どんどん再開発が進む渋谷ですが、最近も行かれてますか?

藤井:しょっちゅう行きます! 109は今もよく行くし、買い物もしています。ビル自体は2002年のころから変わってないので、階段のところやピロティーの雰囲気なんかは参考にしています。

ギャルファッションの聖地のイメージが強いですけど、案外大人でも買えるお洋服がたくさんあるんですよ〜。着やすくて、安いものが多い。

あそこに行けば、常に流行の最先端がありますから。渋谷が常に若者の最先端として流行を引っ張っていっているというのは、昔も今も変わらないし、それがうれしいです。

―― 渋谷という街の一番好きなところは?

藤井:新しいものを否定しない。ひとつのものにこだわらずに、流行を取り入れて、どんどん発信していく。そういうところが、渋谷の良いところだなと思います。

――  変わりゆく渋谷で、最近のおすすめスポットはありますか?

藤井:え〜〜どこだろ!? でもやっぱり私はずーっと109が大好きなんだよね。

あ、あれだ、地下2階にある、「MOG MOG STAND(モグモグスタンド)」!今流行りの美味しいものが、色々食べられるんです。

―― ぜ、全然知らない……。タピオカとか……?

藤井:タピオカはもちろんだけど、さらにもっともっと最先端のもの!(笑)いちご飴がすっごく美味しくて可愛いのでおすすめですよ〜。お祭りで売ってるような、りんご飴とかいちご飴とか、そういうのを可愛くおしゃれに食べる、っていうのがブームなんです!

BTSのコラボカフェとか、kemioくんのプロデュースカフェとか、いっぱい面白いものあるから、行かないと! 行った方がいいよ!

――  先生の深い渋谷愛とギャルスピリットを感じる答えでした……! 「MOG MOG STAND」、帰りに寄っていきます!




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お話を伺った人:藤井みほな

藤井みほな

1990年、16歳で漫画家デビュー後、月刊誌「りぼん」を中心に活躍。1998年〜2002年にかけて、「りぼん」で連載した「GALS!」がメディア化もされ大ヒット。2019年にはTwitterを開始。現在、アプリ「マンガmee」で続編となる「GALS!!」を連載中。今も昔も渋谷をこよなく愛し続けている。


聞き手:劇団雌猫

劇団雌猫

アラサー女4人の同人サークル。「インターネットで言えない話」をテーマに、さまざまなジャンルのオタク女性の匿名エッセイを集めた同人誌「悪友」シリーズを刊行中。その他、イベントや執筆活動などもおこなっている。編著書に『浪費図鑑』『シン・浪費図鑑』『まんが浪費図鑑』『だから私はメイクする』『一生楽しく浪費するためのお金の話』。7月に新刊『本業はオタクです。シュミも楽しむあの人の仕事術』が発売した。

Twitter:@aku__you

ブログ:劇団雌猫