自転車乗りにとっての天国・神奈川県「橋本」に移住してアウトドアを楽しんだ3年間

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明神三国峠の写真明神三国峠。富士山バックの絶景が眺められます

皆さん、「橋本駅」はご存じでしょうか。神奈川県相模原市緑区にあるJRと京王線が通る駅です。

突然ですが、私の趣味はロードバイクです。2014年ごろ、『弱虫ペダル』のアニメを観たのをきっかけに、約30万円ほどかけてフレームを購入するところからスタートしました。

最初は川沿いなどを中心にサイクリングしていましたが、徐々にヒルクライムやレースにも参加するようになり、昨年はロードバイクで千葉を24時間かけて一周(約520km)したり、灼熱の熊谷で行われるバーニングマンレースに参加し、まさかの男女ペアカテゴリーで優勝を果たしたり、今年で7年目を迎える今も現在進行系で自転車の魅力にのめり込んでいます。

橋本駅の風景写真1

そんな自転車沼にどっぷりと浸かっている自分にとって、天国とも言えるのが橋本。最近は何かとリニア中央新幹線開通の話題で注目を集めることが多いのですが、実はアウトドア好きにとって素晴らしい魅力にあふれているんです。


地図からも周辺には緑豊かな風景が広がっていることが分かる

そこで今回は、趣味のロードバイクをきっかけに住み始めた橋本での3年間を振り返りながら、自転車乗りの視点から橋本の魅力をご紹介できればと思います。

自転車仲間に誘われて知った橋本の存在

私がロードバイクで山に登ることにハマったのは2015年秋のこと。

当時はまだ銀座のラグジュアリーブランドのお店に勤めており、東京都渋谷区にある初台に住んでいました。

初台はターミナル駅である新宿にほど近く、生活するのにも通勤するのにも不便は全くありませんでした。ただ、自転車にのめり込み、趣味を優先したいと考えるようになった自分には些か窮屈でもありました。

ロードバイクを楽しむのに最適な環境といえば、「交通量が少なく」「信号が少なく」「程よく起伏のある地形」があること。加えて「綺麗な風景」があると完璧ですが、あいにく都内の交通事情はこれらとは真逆仕様。ロードバイクを思う存分楽しむためには、そのたびに都内から脱出する必要があったのでした。

ただ、都内から自走するとなると、どこの山に行くにも片道50km以上はあり、おまけに交通量の多い道を通らねばなりません。

そのため、あのころは休みの度に新宿駅から始発輪行(ロードバイクの前後輪を外した状態で袋に入れて電車で運ぶこと)で、サイクリストの間では有名な箱根山(小田原駅)や、ヤビツ峠(秦野駅)に通う日々を送っていました。

田舎の風景写真サイクリストが好むのどかな田舎風景

ただ、輪行は楽しいけれど、頻繁に行くのはお金も時間もかかる。さて、どうしようかと考えていたちょうどその年の冬のことでした。

高い山が積雪で登れなくなり悶々としていたところ、自転車仲間の女子に「うちの近所に走りに来てみない? 高い山はないから満足してもらえるか分からないけど、延々と登ったり下ったりするし、交通量もないから走りやすいよ」と、誘われたのです。

橋本駅の風景写真2

このとき、初めて私は「橋本駅」の存在に気が付きました。

京王相模原線の終点駅で、新宿からは電車一本。都営新宿線直結なので、東は本八幡駅までつながる。JR横浜線も通っている上に、2027年にはリニア中央新幹線も通る予定の、実はとてもアクセスのいいエリアです。

橋本駅周辺の風景写真3北口は高層ビルが多く、比較的栄えています
橋本駅周辺の風景写真4南口は少し落ち着いた雰囲気の街並みです

駅近辺にはショッピングモールや映画館、温泉施設なども完備するほか、たくさんのバスが日々運行中。住んでみてから分かったことですが、生活を送るうえでも非常に便利なエリアだと思います。

橋本に通うことわずか2カ月で移住を決断

そんなこんなで、初めて橋本を訪れた日は、駅からスタートで50kmほどサイクリングの予定。走り始めてすぐ、市街地から5kmも離れれば里山風景が広がることに愕きました。

小倉橋からの風景写真小倉橋からの眺め(約7km*1

その日は、相模川沿いの道から愛川町に入り、宮ヶ瀬ダムまで出て湖をぐるっと回ったコースを走りました。


相模川を渡れば勾配8%前後が続く坂が目の前に立ちはだかり、距離こそ短く300m程でしたが、「普通に立派な坂じゃないか」と自転車仲間にツッコミを入れた記憶があります。

小倉橋から宮ヶ瀬までのアプローチは、高速インターとつなぐ新道が開通されてから交通量がかなり少なくなり、地元サイクリストの定番ルートになったよう。地形を活かしたジェットコースターのようにアップダウンを繰り返す坂道は、信号もほとんどないため爽快に走れました。

教えてもらった通り長い登りはほとんどなく、5分前後登れば下りになるので、体が疲れる前に終わる絶妙な長さ。そんな僅か50〜100mの上昇量の坂がいくつもあるのがこの地域のすごいところです。

また、休憩で立ち寄った服部牧場もオギノパン(パン屋)も坂を登った上にあるので、坂を頑張って登った後のジェラートと焼き立てパンは別格な美味しさがありました。

その後宮ヶ瀬ダムを見に行ったりして、始終楽しく話しながら走りましたが、終わってみればなんと54kmで800mも登っていました。

800mといえば、箱根湯本駅から標高874mの国道一号最高地点まで約1時間登り続けたのとほとんど変わらない……。それを気付かない内に登ってしまうとは、実にすごいことなのです。

国道一号最高地点の写真

こうして私は、完全にサイクリングをきっかけに橋本駅周辺(神奈川県相模原市)に俄然興味を持ちました。

それからは週2輪行で橋本駅スタートのサイクリングを繰り返し、相模原市の丘陵地帯のみならず、市外の山間部にも足を踏み入れていきます。

藤野の風景写真藤野の裏道(約25km)

そうして山間部を連続で走っていると、山梨県/静岡県/東京都の山岳地帯にもつながることが判明しました。しかも、山つなぎで100kmも走れば、約2500mほど登れる(富士山を海から登山口まで自転車で登ったのと変わらない)計算になります。

今まではどこかの高い山を目的地に出かけるサイクリングがほとんどでしたが、丘陵地帯や山間部をつなげて走る楽しさをこの地で見出すことができたのです。

城山湖の風景写真城山湖(約10km)
津久井湖周辺の吊り橋の風景写真津久井湖周辺の吊り橋(約7km)

こうして頻繁に初台から橋本を訪れているうち、ふとこう思いました。

「橋本って、自転車乗りにとっての天国じゃん!?」

それから引越しを決めたのは、初めて橋本に足を踏み入れてからわずか2カ月後のことでした。

月8日間不定休だった銀座の仕事を辞め、まとまった休みが取りやすい月8回25時間勤務のホテル業に思い切って転職。

ここから私の生活はロードバイクを中心に回り始めました(※当時家賃との兼ね合いもあり、正確には急行が止まらない一つ隣の「多摩境駅」の物件に決定)。

住んでみて感動する周辺地形の面白さ

住み始めてからは、周辺の道を次々と開拓する日々が始まりました。

オートバイでもおなじみの宮ヶ瀬ダム付近、ヤビツ峠、上野原市秋山地区雛鶴道路、道志みち、鶴峠、都民の森、和田峠、柳沢峠はもちろん、日帰りで富士山にだって登ってこられるのが橋本です。

宮ヶ瀬湖の風景写真宮ヶ瀬湖(約17km)
風張林道の風景写真風張林道(約55km)
上野原の風景写真上野原(約30km)

特に橋本を擁する相模原市緑区と、お隣の上野原市秋山は、丘陵地帯でありながらも山の奥には集落があります。そのため、そこに至るまでの県道はもともとの交通量の少なさに加えて、生活道路としても使われているので路面状況は常に綺麗に保たれており、サイクリングにぴったりなのです。

相模湖付近の坂の風景写真相模湖付近の坂(20km)

また、山間部に入れば無数の道が蜘蛛の巣のように交差されています。緩やかな勾配の道もあれば急な坂もあるため、その日の気分でコースバリエーションを変更できる自由度の高さがなんといっても魅力的です。

初心者からトレーニングにまで! おすすめのサイクリングコース

ここで、私がよく走っていたコースを紹介したいと思います。サイクリング用の手軽なコースから、脚力を鍛えるのにぴったりのハードなコースまであるので、もし良ければ参考にしてみてください。

初心者向けのサイクリングコース


橋本スタートで、裏道を活用した知る人ぞ知る感じのサイクリングコース。

まず、橋本から小さな丘・城山ダム展望台に向かいます。2km未満の登りで、青空とダム湖と遠くの市街が一望できるお手軽絶景ポイントです。

道志ダムの風景写真道志ダム

そこから津久井湖側に降り、国道には出ずに湖を挟んだ反対側の静かな県道を走ります。林道を彷彿とさせる1.5車線の県道が橋本には沢山あり、国道にさえ出なければ、ほとんどサイクリングロードといってもいいぐらい車が通りません。

県道の風景写真

一度山梨県の県境手前まで出て、アップダウンを繰り返しながら道志みち経由で宮ヶ瀬まで戻ってきます。全行程で信号は合わせて10個あるかないかで、終始快適に走れると思います。

トレーニングにもなるツーリングコース


橋本から近いツーリングルートというと、オリンピックのロードレースのルートにも含まれる「道志みち」をよく思い浮かべますが、私は道志みちと比べて全然交通量が少なく、アップダウンの激しい雛鶴道路を登りに選ぶことが多いです。

一度、都留まで出て、道坂峠を越えて下り基調の道志みちで橋本に戻って来れば、120km前後で2400mアップほどのコースになります。全行程路面も綺麗で極端にきつい勾配がないので、登りも下りもいいペースで走り続けられるオススメのコースです。

道志みちの風景写真道志みち

雛鶴道路と道志みちはひらけた景色も多く、トレーニングのみならず、ツーリングルートとしても最高だと思います。

お気に入りのトレーニングコース


東京都から山梨方面を経由するコースのお気に入り。橋本から八王子方面へ少し北上し、神奈川県/山梨県/東京都の三県を跨ぐ130km・2700mアップのルート。物足りなければ、帰りに宮ヶ瀬付近の峠を追加することも可能です。

3.6kmと短いながらガツンと登る和田峠、16kmでアップダウンを繰り返しながら登る鶴峠、そして頂上が東京都奥多摩周遊道路最高点である14km・平均斜度5%の歴としたヒルクライムコースの風張峠。3個のタイプ別の峠を一回のライドで走れる楽しいコースです。

脚力を鍛えられるハードコース


神奈川・静岡方面を経由するお気に入りでちょっとハードなルート。実は宮ヶ瀬はヤビツ峠とつながっているので、橋本から秦野市までは峠道一本で抜けられます(※本稿執筆時点、裏ヤビツ峠は災害復旧のため通行止め中)。

高松山の尺里峠はちょっとマニアックな道ですが、山深い雰囲気がたまりません。コース中にかなり急勾配の足柄峠と明神三国峠も含まれていますが、どれも富士山バックの絶景が眺められるので、とてもお気に入りの峠です。

沢山登ったあとは下り基調の道志みちを爽快に走り抜いてゴール。このコースは全行程距離も長く上昇量も多いため、日の長い春から秋までにオススメです。


このように脚力や体力に合わせて楽しめるので、お手軽サイクリングからハードなトレーニングまでさまざまな趣向のサイクリストが満足できる地域ではないかと思います。

しかも、山の奥に行ってもカフェやレストランが点在しているので、補給に困らないのもポイントが高いです。

橋本近辺でのお気に入りのスポット

ここまでひたすらに周辺地形の話をしてきましたが、橋本近辺にはお気に入りのお店もいくつもあります。今回はそのなかでもよく利用していたお店を2つご紹介させていただきたいと思います。 

パンパティ こむぎのおはなし

よく立ち寄らせていただいているサイクリストにフレンドリーなパン屋さんです。

こむぎのおはなしの外観写真(写真:株式会社パンパティ提供)

パンを購入した人にはコーヒーサービスあり、テラス席付きでロードバイクを泊めるバイクラックも完備なので、自然とサイクリストが集まる場となりました。

朝6時55分開店というのもあり、ここを集合地点に仲間でライド前の朝食を摂ってから出発なんて使い方もされております。

こむぎのおはなしの内観写真1※2018年にリニューアルされたため、現在は内観が異なります

こむぎのおはなしの内観写真2

相模原のサイクリストは親しみを込めてお店の名前を「PPT」と略称することも多いです。私はよく食べるメニューはひよこサンバです。ひよこの頭が3つ横並びにつながっているカスタードクリームパン。可愛いネーミングと見た目に惹かれてついついトングで取ってしまいます。

ビストロ ラント

上野原市秋山の山奥に佇む歴史のある定食屋さんです。平日でも昼時は駐車場が埋まる地元で愛されているお店。山梨方面へ雛鶴道路を走っていくと左手側に建物が見えてきます。

ビストロ ラントの看板写真

店の前のちょっと変わった牛のオブジェが目印ですが、その中でも一番のお気に入りはえび牛(※白い米粒肌の牛が背中にエビを背負っています)。

ビストロ ラントのオブジェ写真握り寿司を模したえびを背負う白い牛のオブジェ

初めて雛鶴道路を走った時、遠目から牛のオブジェの上に布団を干しているのかな……と思って近づいたらえびで三度見した思い出があります。えび牛が気になりすぎて三度目でつい我慢できずにお店に入ってしまいました。

お店の外があんな感じなので中はどうだろうとドキドキしながら入ってみれば、すごく寛げる広々とした店内で、靴を脱いで上がる感じのお店でした。サイクリストにも親切で、食べた料理がすべて美味しくてこのお店の虜になってしまいました。

リーズナブルな値段設定なのに、ボリューム満点で美味しいメニューが沢山。

お気に入りのメニューはレディースセット(男性も注文可)です!

ビストロ ラントのレディースセット写真1

ビストロ ラントのレディースセット写真2

パスタ、パン、サラダ、自家製デザート、ドリンク全部ついて950円とボリュームたっぷりなのに破格なお値段。サイクリストはライド中糖質をメインに補給するので、炭水化物と甘いものをまとめて摂れるこのメニューを個人的に「サイクリストセット」と呼んでいます(笑)。

住むとアウトドアがもっと楽しくなる

私なりの視点から橋本の魅力を振り返ってきましたが、やはり住むともっともっとアウトドアの趣味が楽しくなる地域。それが橋本だと私は思います。

実際に私は3年の間、心赴くままにロードバイクに乗っていくうちに、体力や走力がついてさらに遠くへ、一層沢山自転車を楽しめるようになりました。

サイクリングの写真

自然豊かなのに交通の便がよい。暮らしと自然がほどよいバランスを保たれている素敵なエリアだと、今回記事を書いて改めて思いました。

昨今は新型コロナウイルスの影響もあり、移住を考えている人も増えているのではないかと思います。都会の喧騒から離れ、アウトドアを満喫したい方に橋本はぴったりではないのでしょうか。


著者: (id:edamame0416)

篠さん

ロードバイクで登坂レースに出たり、気ままに景色の良い峠を巡ったりするのが好き。自転車の楽しさをSNSメインで発信。ブログではライドの記録や自転車乗りのために役立つ情報をつづっています。

ブログ:山は性癖です。

編集:はてな編集部

*1:橋本駅周辺から自転車で走行したときのおおよその距離を表しています。ルートにより大幅に変わるためご了承くださいませ