【商店街の住人たち】「食」を通じて「出番」「役割」「生きがい」を創出し、豊かな暮らしをかなえたい/武蔵野市・グリーンパーク商店街「MIDOLINO_」舟木公一郎さん

インタビューと文章: 小野洋平(やじろべえ) 写真:小野 奈那子 

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長年、そこに住む人々の暮らしを支えてきた商店街。そんな商店街に店を構える人たちにもまた、それぞれの暮らしや人生がある。
街の移り変わりを眺めてきた商店街の長老。さびれてしまった商店街に活気を呼び戻すべく奮闘する若手。違う土地からやってきて、商店街に新しい風を吹かせる夫婦。
商店街で生きる一人ひとりに、それぞれのドラマがあるはず。本連載では、“商店街の住人”の暮らしや人生に密着するとともに、街への想いを紐解いていく。

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■今回の商店街:グリーンパーク商店街(東京都武蔵野市)
武蔵野市緑町1丁目周辺に広がる商店街。約50の商店などが加入し、200mほどの路地の両側に八百屋や飲食店、クリーニング店などが並ぶ。商店街の名称「グリーンパーク」は、第二次大戦後、一帯に中島飛行機武蔵製作所を接収した進駐軍によって命名された。商店街をはじめ、線路敷跡であるグリーンパーク遊歩道などにも「グリーンパーク」の名が残る。



JR吉祥寺駅、三鷹駅からバスで約10分。バス停「武蔵野住宅」にほど近い、グリーンパーク商店街。2017年、この場所に生産・出店・販売する体験を通して食の仕事に挑戦できるシェアキッチン「MIDOLINO_」がオープンした。オーナーの舟木公一郎さんいわく、オープン当初は一時期に比べて人通りも減り、さみしくなりかけていたとのこと。しかし、舟木さんは食を通して商店街を盛り上げ、今では地域の拠点にまで発展させた。今回の主人公は、この舟木さん。地元の魅力や商店街の将来像について聞いてみた。

市民一人ひとりの持つ力で豊かな社会にしたい

―― 舟木さんはもともと武蔵野市にご縁があったのでしょうか?

舟木公一郎さん(以下、舟木):吉祥寺には13年ほど関わっていますが、この緑町界隈は「MIDOLINO_」をオープンさせるまで縁はありませんでした。生まれ育ったのは石川県の金沢市で、北海道大学在学中にアメリカへ留学。帰国後は音楽業界のエンジニア、保育園の理事、飲食店の経営、デイサービス等医療福祉分野のブランディングなどに携わってきました。

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「MIDOLINO_」オーナーの舟木公一郎さん

―― 仕事のジャンルが見事にバラバラですね。

舟木:そうですね。ただ、仕事を選ぶときの根っこに共通していたのは、ノーベル経済学賞受賞者でもあるインドのアマルティア・セン博士の「論理ではなくて、そこにいる1人に目を向ける」という社会への眼差しです。この考えに出会ったのは開発経済学を学んでいた学生時代。それからみんなが個性を生かして豊かな生活を送るにはどうすればいいのか、考えるようになりました。

―― なるほど。

舟木:振り返れば、どれも今の自分を形成するために必要な経験だったと思います。たとえば、音楽業界でエンジニアをしていたときには、「音楽」というカルチャーの世界においても欲望だけが増幅する資本主義が根底にあるように感じていました。大量生産・大量消費社会が前提の資本主義経済は、売れるか売れないかが判断基準のすべて。でも、私自身は売れるか売れないかよりも、大切にするべき「かけがえのないもの」がきっとあると思っていました。また、大量生産・大量消費を加速させる活動を続けたとして、“いい社会”につながるとは思えませんでした。そして「損得勘定の概念を超える価値観を創出できないか。大量生産・大量消費だけじゃない社会にするにはどうすればいいのか」といろいろ悩んだ揚げ句、「子どもの活動をしてみたい」という発想が浮かんだんです。

―― 子どもですか?

舟木:はい。自分以外の誰かのためにって考えた時に「子どものためならば」という方が多いのではと考えついたんです。子どものためならば、損得勘定なしに自分のエネルギーを注ぐことができる人が多いだろうと。というか、市民一人ひとりが「子どものために」という共通のビジョンを持ち、支え合う暮らしが実現できなければ未来はないと思いました。それで、子どものための活動をしてみようと考えました。時を同じくして、偶然ですが、三鷹にある保育園を運営する方に出会い、その縁から法人の理事に就任させていただくことになりました。運営受託という形で園の運営をはじめたので、募集や広報のチラシづくり、ホームページ・動画制作など、仕事に制限をつけずにあらゆることに挑戦しました。それを通して、「自分ができることで誰かに喜んでもらう」。この信用こそが人と人との結び付きで重要ということがわかりました。

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―― 飲食店の経営やデイサービスでブランディングの仕事もされたとのことで、こうした経験からは何を学ばれたのでしょうか?

舟木:人と人とのつながりのつくり方と、仕事の原点について学びましたね。「食」って最強の接着剤なんですよ。当たり前ですが、食べない人っていないですよね? つまり、「食」というフィルターを通すことで、人と人との出会いが豊かになり、新たな経済の循環を生み出せることに気がついたんです。「食」でつながる拠点を地域につくれば、全く価値観の違う人でも化学反応を起こせると思いました。

また、デイサービスは主に認知症の方が利用していたのですが、介護されるのではなく、畑仕事が得意な人は農作業をおこない、料理が好きな人は調理に参加するというように、それぞれのできることで人と関わる「出番」がありました。全部一人でできなくても誰かに支えてもらいながら、それぞれが「役割」があり、「ありがとう!」の言葉で自己肯定感が育まれ、そして「生きがい」を感じる。これこそが仕事の原点だと思ったんです。

―― お金を稼ぐことが仕事の本質ではない、と。

舟木:はい。「出番」「役割」「生きがい」があれば、どんな人でも輝けるのではないか。そして、しっかりと稼げる仕事の選択肢が地域にあれば、もっとみんな楽しく生きられるんじゃないかなって。じゃあ、自分がその仕事を自身でつくれる選択肢をつくればいい。そう思って「MIDOLINO_」をつくりました。

「MIDOLINO_」は“個性的な仕事”が生まれる拠点

―― 「MIDOLINO_」は、食分野に特化したシェアオフィスということですが、具体的にどのようなことをする場なのでしょうか?

舟木:「MIDOLINO_」は、シェアキッチンをベースにした仕事づくりの拠点です。飲食店営業、菓子製造業、そうざい製造業、ソース類製造業、粉末食品製造業といった5つの営業許可を取得しているので、自分が「やりたいな」という事業を、初期投資なしで、すぐに始められる場所です。また、駅前に店舗を構えなくても事業は成り立つ時代なので、店舗を構えず営むお店でもあります。店内は、フードコートのように複数の事業者が同時に出せるようなレイアウトになっているので、自然と他の事業者との信頼も生まれ、自分一人ではできない協働事業が徐々に生まれるようになってきました。

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施設内はオープンキッチンとなっており、木製のテーブルやイスが並び、落ち着いた雰囲気

ただ、お金を稼ぎたい、売れるものをつくりたいという動機では、もう誰も感動しないと思います。自分が熱烈に好きだ!というものを誰か届けて喜んでもらいたい、そういう想いが集まり、切磋琢磨しながら相乗効果を生んで、ここでしか味わえない感動と持続可能な事業が誕生する。そのための場づくり・関係づくりを心がけています。

―― つまり主な事業は、創業支援ということですよね。

舟木:創業支援というよりは、わかりやすくいうと、まちづくりの方が近いかもしれません。「支援」は「依存」を生みがちで、他人事、上から目線で自らリスクも取りませんが、私は現在、この地域に6店舗を借り、そのうち4店舗をサブリース(※)しています。地域の未来に責任を負ったまちづくり会社として、新しいチャレンジに伴走し、共に事業をつくる覚悟をもって、個性を活かした仕事づくりに取り組んでいます。

※サブリース…物件をオーナーから借り、それを入居者に転貸(又貸し)をする管理形態

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店内での飲食のほか、テイクアウトも行っている

――お客様だけでなく、働かれている方々もイキイキしていて楽しそうです。

舟木:ですよね。しかも、なかには趣味の域をはるかに超え、かなりの売り上げを出しているメンバーもいます。繁盛しているパン屋さん「木曜日パンの日 」さんなんて、午前2時から焼き始めて、4人くらいでパンを焼きまくってますからね。自分が本当につくりたいものをつくるという、ポジティブなエネルギーに満ち溢れていて、お客様とのコミュニケーションも心から楽しんでいます。ある意味、商店街は商店主のステージ。イキイキと働く人が輝ける場所なんですよね。

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オープンしたばかりの午前中から地域住民が訪れる

――今日でいえば、コーヒー屋さん、揚げ物屋さん、パン屋さんが「MIDOLINO_」で同時に飲食店を開いていますよね? 注文とか混乱しそうな気も。

舟木:でも、それぞれが他店のオーダーを聞いたり、お会計をしたりしています。普通はありえないですよね、他店を手伝うなんて。これがレンタルとシェアの違いだと思います。最近は協同飲食店化も進んでいて、コロッケ屋とパン屋がコラボすることも。曜日によって店舗の顔ぶれが違うのも、お客様にとっては魅力だと思います。

――初期投資を抑えて可能性に挑戦できるという意味でも、飲食店を開きたい方にとっては、素晴らしい場所ですよね。

舟木:この場所はアクセスが便利なわけでも、儲かりそうな場所でもありません。ただ、暮らしと生活の実態があります。飲食店の開業はハードルが高いですが、このエリアに暮らす人の生活をどれだけ豊かにできるかを見つけることこそが、商いの原点。「MIDOLINO_」は、そのきっかけづくりと、共に事業の方向性を見定めていく役割を担っているつもりです。

――オープンから4年が経ちますが、皆さんどのようなチャンスを掴まれたのでしょうか?

舟木:これまで延べ5000組以上の方に利用していただき、30組以上が「MIDOLINO_」をきっかけに創業されました。そのうち、はじめの2年半の間に2店舗がこの商店街で新規出店してくれたんです。以前のグリーンパーク商店街の姿からすると、これって奇跡だと思います。

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「MIDOLINO_」に加えて、シェアキッチン出身の2店舗も満席

――確かにすごいです。

舟木:これは駅前でもなく、金曜日の夜でもないんですよ? 日曜日の18時に3店舗が満席なんです。日曜の夜早い時間に地域の親しい方や家族と一緒に過ごすってなんかよくないですか? これはローカルさを象徴する、素敵な写真だと思っています。

――舟木さんのいう「人が集う場」になったわけですね。

舟木:少しずつですが、地域が豊かになってきている気がします。「MIDOLINO_」に人が集うだけではなく、既に事業者さんが商店街にシェアハウスを開業してくれたり、建築家夫婦がビルを購入して引越して来てくれました。ほかにも、地元の八百屋さんと事業組合をつくって、団地へ出張販売に行ったり、商店会長さんとの協働事業で商店街以外にもシェアハウスをはじめたり。商店街の枠を超えて街全体に新たな取り組みと事業をつくってきました。

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八百屋さんとの協働事業で、近所の団地で出張販売している様子

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「MIDOLINO_」を利用していた夫妻がオープンさせたスイス料理店「Le Pre(ルプレ)」

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名物は本場スイスから直輸入したスイスチーズのチーズフォンデュ

法律や理屈じゃない世界。商店街は「人間の当たり前」を支えている

――とはいえ、オープン当初はシャッターが目立つ商店街だったそうですが?

舟木:印象はそれに近かったかもしれません。これは商店街あるあるですが、オーナーさんが店舗を貸してくれないんですよね。知らない人に貸してトラブルを起こしたくないというのが大きい原因の一つでしょう。ただ、貸す決定権を持っているのはオーナーですから、街を変える力を持っているのはオーナーさんです。グリーンパーク商店会には、「とにかく家賃が安くてもいいから、商店街のために若い人に頑張って欲しい」というオーナーさんがいたからこそ、「Le Pre」さんは開店することができました。

――気持ち良いオーナーさんで良かったですね。

舟木:もちろん、こちらも借りて終わりではないですよ。コミュニティーに溶け込むためには、信用を得ることも大事です。もともと、この場所は八百屋だったのですが、内装は営業当時のままでした。そこで私はほぼ一人で解体、設計、改装を行ったんです。期間として3カ月、毎日一人で作業していたのでノイローゼになっていましたよ(笑)。しかし、“狂ったように何かをつくろうとしている自分”を地域にさらけ出すことで、僕は信用を築くことができたんだと思います。

――商店街に真摯に向き合う姿勢を見せたわけですね?

舟木:そうですね。毎日「いつになったらできるんですか?」と聞かれ続けましたが、その度に「すみません、頑張ります」と言いながら、やる気を伝えていました。その結果、見守ろう、応援しようと思ってくれる方が増えていったのかなと。今では、商店会の役員もやっていますし、消防団にも入りました。ローカルにどっぷり浸かっています(笑)

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「舟木君のところでやっている人だったらいいよ」と「MIDOLINO_」の卒業1人目に物件を提供してくれた、「つつみ文具店」オーナーの堤さん

――開店前から地域の方の信用を得ていたのは大きいですね。

舟木:法律や理屈じゃない世界ないですからね、信用を得るのは難しいですよ。ただ、理解しようとする姿勢を持つことが、信用につながるのかなとは思います。たとえば、お年寄りに毎回、同じ昔話をされるとしますよね。そのときに嫌な顔をするのではなく、傾聴することを大事にしています。というか、商店街の人たちとの気さくなコミュケーションも魅力ですから。これはお客様にとっても同じです。コロナ禍で家にひきこもっていると、話すきっかけがなくなりますよね。でも、商店街にくれば誰かと話すことができる。そういう見えない、当たり前を支えているのが商店街なんですよ。

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武蔵野エリアには「人と向き合う文化」がある

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――なぜ、この場所を選んだんですか? 駅からも割と離れていますよね。

舟木:よく聞かれます。おそらく、他の人はこんなリスクのある場所を選ばないでしょう。ただ、中央線沿線のエリアって多様なライフスタイルを持つ人が多いと思うんです。そのせいか、吉祥寺をはじめ、中野や高円寺など文化の成熟度の高さを窺える場所も多い。だから中央線沿線エリア、特に慣れ親しんだ武蔵野市は僕にとって居心地がよく、「MIDOLINO_」を受け入れてくれるはずだと考えました。でも、家賃が高いんです。吉祥寺駅前だったら2㎡で月40万円くらいの場所もありますし…。 現実問題として挑戦できるギリギリのエリアが、グリーンパーク商店街でした。

――舟木さんからみた、この商店街の良さとは?

舟木:距離感ですかね? 車が通らない、この道幅の狭さが良かったと思います。やはり、これだけ狭いと目が合った瞬間、挨拶せざるを得ないんです。逆に言えば、目が合ってしまう、この距離感が魅力です。これが嫌な人はそもそも商店街を通らないでしょうし。

――すれ違う方みんなと顔なじみになれそうです。

舟木:たしかに、吉祥寺は人気タウンです。知名度もあり、人も流入するようになりました。ただ、家賃が高くなりすぎたため、とても個人商店主が借りられる価格ではなく、新しい事業を始めるハードルが非常に高いのも実情です。しかし、私はこの武蔵野エリア、生活の中心地こそ、個性溢れるユニークな街にしたいんです。新しいアクションを起こせる拠点として、ここから産業と文化を発信したい。このグリーンパーク商店街は、その可能性を秘めていると思っています。

――とはいえ、廃れかけていた商店街での開業は大きな挑戦ではなかったですか?

舟木:そこまで大きな挑戦とは思わなかったですね。この商店街の徒歩10分圏内には1万人、自転車10分圏内には8万人が住むエリアです。それがわかっていたので、最悪自分でお店を始めれば、なんとかなるなと。

――では、オープンする際に不安や心配はなかったのでしょうか?

舟木:私、他の人がやらないことにこそ燃えるタイプなんですよ(笑)。むしろ、理解されないことをやり続けないと、自分の価値はないと思っているので。ただ、金融機関からは最後の最後まで「こんなプランが成功するはずない」「事業の実績も前例もないからリスクだ」「シャッター商店街でありえない」と反対され続けました。最終的に商工会の副会頭が「こういう取り組みこそ、商店街に必要だ」と後押ししてくれたのが本当に助かりました。

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――商工会の副会頭に感謝ですね!

舟木:そうですね。どこの馬の骨かもわからない私を信じてくれたのは有難かったです。こうしたところに武蔵野らしさを感じます。

――武蔵野らしいとは?

舟木:吉祥寺にクリエイターが多いからかもしれませんが、人を中身で判断しようとする人が多い気がしています。自分で言うのもおかしいですが、私っていつも変な格好をしているんですよ。今日は落ち着いた装いですが、過去には裸足で生活しているときもありました(笑)。でも、白い目で見るのではなく、「何がしたいんだ?」って、ちゃんと知ろうとしてくれる方が多いんですよ。そういった「人と向き合う文化」があるので、居心地が良いですね。

「健全な気持ち」を携えて、豊かな暮らしを目指す

――舟木さんは、「MIDOLINO_」の運営に留まらず、商店街でイベントを企画するなど精力的に活動されていますよね。今までにどんなイベントを企画されたんですか?

舟木:商店会のみんなで考案したものとして、子どもたちが楽しめるコンテンツをメインに「軒下フェスタ」というイベントを行いました。たとえば、特売品や美味しいものだけでなく、キッズダンスや和太鼓実演、高齢者・障害者への理解の一歩として、子どもを対象にした車椅子体験などを実施。年によっては4000人が来る日もありました。あとは、商店会長さんが凝りに凝って、魚をつかみ取りするための、水が流れる水槽をつくってくれました。会長は建築士なのですが、この凝り方は異様です(笑)。釣った魚は寿司屋の大将に捌いてもらい、向かいの焼鳥屋で焼いてもらう流れにしました。

――なんとも大掛かり!

舟木:ほかにも、「ビアガーデンストリート」を実施しました。これは商店街全体をフードコートに見立てた事業です。また、「MIDOLINO_」にいながら他店の料理をオーダーできるようにしました。本来、普通の飲食店ならば売り上げが下がるため、そんなことは絶対ありえないですよね。でも、自分のお店だけが儲けるよりも、来た人に楽しんでもらわないと、売り上げが下がる以前にそもそも誰も来てくれないと思うんです。だから、この商店街全体をまず楽しんでもらい、とにかく足を運んでいただくような流れをつくりたいです。

――近くにスーパーがありますが、勝機を見出せましたか?

舟木:いや、スーパーには勝てないです(笑)。スーパーには呼ばずとも人は集まります。なので、コバンザメ方式で、スーパーのお客様が1%でも商店街に来てくれたら僕たちは生き残れると考えています(笑)。

――なるほど。舟木さんは実店舗の価値をどこに感じていますか?

舟木:暮らしの実態に寄り添えるところ。具体的に言えば、実際に会って、会話が発生することです。お客様は空腹を満たすためだけにお金を使うわけではありませんから。物を手にするだけでは、心は絶対に満たされないと思います。買い物に行くという行動のなかで、誰かと会い、誰かと話せば、暮らしにメリハリが生まれる。ちょっと楽しくないですか? さらに買い物先に個性的な商店主がいる、こうした要素を持つのが商店街なんです。

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――お話を聞いていると、商店街のあるエリアに住みたい気持ちになってきました。

舟木:近くにスーパーがある、病院がある、学校がある、もちろん便利ですけど、暮らしの価値はそれだけじゃないはず。私は、単に商店街に活気を取り戻したいわけではなく、商店街に訪れることで楽しい気持ちになる人を増やしたいと思っているんです。こうした“健全な気持ち”を満たせる暮らしをこの街でかなえられたらって。

――最後に、これからの展望を教えてください。

舟木:これからもいろんな人がチャレンジができるきっかけをつくっていきたいですね。そこに私の出番があり、役割があり、生きがいがあります。そして、みんなで一緒に個性を活かした仕事をつくり、それぞれが思う豊かな暮らしを実現したいです。そのためには「嫌じゃない暮らし」の実感をつくることが大切だと思っています。

――「嫌じゃない暮らし」ですか。

舟木:そう。「楽しい」「幸せ」という感情じゃなくて、「嫌じゃない暮らし」は豊かな生活の土台に必要だと思うんです。何気なく、また明日がくることが嫌じゃない。商店街はそんな毎日を成り立たせる要素。イキイキとした商店街がある街には、きっと豊かな暮らしがあるんだろうなって思います。

そんな商店街を実現するためには、まず私自身がリスクをとり、チャレンジのきっかけをつくり、信頼が集まるプラットフォームをつくりたいと思っています。そのプラットフォームを活用してもらい、一人ひとりが自分たちの手で地域の暮らしを良くする。それがひいては、みんなが暮らしたいと思える街にもつながっていくのではないでしょうか。

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グリーンパーク商店街

www.musashino-shouren.com

著者: 小野洋平(やじろべえ)

 小野洋平(やじろべえ)

1991年生まれ。編集プロダクション「やじろべえ」所属。服飾大学を出るも服がつくれず、ライター・編集者を志す。自身のサイト、小野便利屋も運営。Twitter:@onoberkon 50歳までにしたい100のコト

編集:末吉 陽子(やじろべえ)