今日も僕は何かを求めて「秋葉原」へ行く

著: マンスーン 

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小さいころから秋葉原に行くのが好きだった。

うちの家族は家電を買うときに必ず秋葉原へ行くので、それが楽しみでしょうがなかった記憶がある。まだ「素敵なサムシング(カモン!)」というテレビCMが流れていた時代。子どもの僕はたくさんの機械がところ狭しと並べられている光景がすごく好きだった。特にテレビ売り場が好きで、ずらっと並んでいる景色をずっと眺めていた。親に頼んで買ってもらったCDコンポも、初めて自分で買ったMDプレーヤーも、全部秋葉原でそろえた。

でもその時の僕はまだ家電の街としての秋葉原しか知らなかった。

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それから時が経ち、高校生になった僕は高校の場所が御茶ノ水だった事もあり放課後は秋葉原へと通った。世間一般で言う「オタク」というものになった僕は、アニメ・ゲーム・漫画が何でもそろうこの街はなんて居心地がいいのだろうと思った。アソビットシティというエンタメ総合ビルに特に用もないのによく行っては1階から順に上って楽しんだり、メッセサンオーカオス館という洋ゲー(海外のゲーム)が売っている店に行って日本で未発売のゲームの試遊をしては目をキラキラさせていた。

サブカルチャーの街としての秋葉原を知った高校生の僕はただ毎日のように秋葉原に行くだけで、部活で汗水流したり、女の子と二人乗りで帰ったりとかのよくあるテンプレの「THE・青春」みたいな事は何もしてない。(帰宅部だったし男子校だったから)

いや、1つだけ青春だなと思った出来事があった。アダルトなグッズ専門店の店先に置いてあった『絶対にパンティが出るガチャガチャ』を友達とやってワクワクしながらカプセルを開けたら、引換券だけが入っていて18才未満の僕たちはまだ店の中には入れないからみんなで肩を落として泣きながら帰ったのは青春だった気がする。あの引換券まだ持っているのかな。引き換えに行って俺らの青春を取り戻したい。

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大学生になって郊外のキャンパスに通うことになってしまったのだが、秋葉原へは定期的に行っていた。2005年〜2008年ぐらいの秋葉原はとにかく刺激的な街だった。メイドカフェがどんどんオープンしたり、大通りにすごい卑猥な絵が普通に看板として出ていたり、RPGに出てくるような武器を売る店があったりと「秋葉原に行けば何かに出会える」と思ってしまうほど歩くだけで楽しい街になっていた。

毎週日曜日に行われる歩行者天国では出店があったり、パフォーマンスをする人がいたりして、まるでお祭りのようだったのを覚えている。あの忌まわしい通り魔事件の影響で、歩行者天国はしばらく中止になってしまい、再開した今でもパフォーマンスや出店などは全部禁止されてしまったが……とにかくあのころの秋葉原にはパワーがあった。

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今は、仕事で電子工作をするので、電子パーツを買いに週に一回は秋葉原に通っている。電子パーツの店は怖いというイメージがあるが実際は優しい人がたくさんいて、分からないことがあっても勇気を出して聞けばいろいろと教えてくれる。ぶっきらぼうな対応をされる事も無いとは言えないが、それもまた一興。全員が全員優しい世界なんて面白くないじゃないか。

ここ数年で有名な電子パーツ屋が閉店したり、ネット販売のみに切り替えたりと悲しい事もあったが、高架下にはまだたくさんの電子パーツが並んでいて、小学生からおじいちゃんまでが小さなパーツを探している。ちなみに秋葉原から少し離れているが、aitendoという女性店員だけの珍しい電子パーツ屋もあるから訪れてみて欲しい。

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昔、秋葉原は「20時にはどの店もほとんど閉まって人がいなくなる」というイメージがあった。飲食店も少なく、オタクは買ったものを早く家で楽しみたくてすぐ帰るからだ。

しかし、最近は飲食店や大型家電量販店が夜遅くまで営業しているので、20時過ぎの秋葉原はとてもにぎやかで人も多い。ちなみに、この前オープンした駿河屋というフィギュアなどを扱う中古ショップがAM7:00開店AM5:00閉店という22時間営業をしていて驚いた。いったい誰が深夜にフィギュアを買うんだ?と思い23時ごろ行ってみたのだが、外国人観光客がけっこう来店していて需要はあるのだな、と思った。

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今、秋葉原は飲食店の新規オープンが本当に多く、グルメの街としても認知されてきている。

アメリカから上陸したハンバーガーショップ『カールスジュニア』が秋葉原に1号店をオープンしたのも記憶に新しい。ちょっと歩けば、すぐにラーメン屋・カレー屋があるし、ケバブ屋の店員が「オニーチャン!オニーチャン!ケバブウマイヨ!」と陽気に声をかけてくるので食で困ることはない。(昔ケバブ屋に並んでいたところ店員から「ツギノ メガネ ナニ?」と言われたときはいくらなんでも陽気過ぎだろと思ったが)

牛すじチャーハンが魅力の中華料理店『雁川』やミシュランにも載ったとんかつ屋『丸五』。駅から少し離れているが、生姜がきいた醤油ラーメンが最高においしい『青島食堂』など挙げればキリがない程にグルメの街になっている。

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また、電気街の逆側にある昭和通り側は、安くてうまい飲み屋がたくさんあるのも魅力だ。軟骨をトロットロになるまで煮込んだ「皿ナンコツ」が名物の『やきとん元気』、3杯飲めばベロベロに酔えるキンミヤ梅割りが名物の『四文屋』、サワー系が全部自分で割るスタイルでガラナも置いてある『金子屋』、酒から料理までほぼ全品100円の『百飲』なんて店もあるから買い物でついついお金を使いすぎても安心して飲める。

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僕は毎週秋葉原に行って、とにかく街を歩いていろんな店に入ることにしている。ジャンク品を扱う店に行くと、元エンジニアだったであろうおじいちゃんたちがジャンクノートPCを見ながら「これは直せるよ」とか「あのパーツ持ってるよ」などという会話をしている。アニメショップに行けば、小学生がお母さんと一緒にグッズを選んでいる。お気に入りの古ぼけた喫茶店に入れば、店主がテレビを見ながらタバコを吸い、その後ろで若者たちがカードゲームをしている。

そんな光景を見て「秋葉原は、いろんな人も古いモノも新しいモノも全て受け入れてくれる街」なんだなと思った。人によって秋葉原はいろんな顔を見せてくれる。「家電を買う街」「アニメグッズを買う街」「PCのパーツを買う街」「ゲームを買う街」……。そしてその根本にあるのは何かを「好き」という気持ちだ。

渋谷・新宿・池袋などの繁華街と違って秋葉原は少し異様な街だ。特殊だったり、専門的な店が多く、近寄りがたい場所かもしれない。でも、それがどんなものであっても、自分が好きなものを好きでいていいんだと安心させてくれる大切な場所だ。

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秋葉原にはいつか住んでみたいなと思っている。一番大きな理由は、単価10円そこらの電子パーツを1つだけ買いにそれ以上の交通費を出して買いにいくのは精神的につらいからだ。(だからついでにいろいろと余計なものを買ってしまうから困る)楽しい街=住みやすい街ではないのは分かっているが、いつ訪れたっていろんな発見があるのだからきっと退屈はしないだろう。

そして今日も僕は何かを求めて「秋葉原」へ行く。

 

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著者:マンスーン

マンスーン

「ハイエナズクラブ」「オモコロ」などで記事を書いている工作ライター。理系大学出身をまったく生かせていない低い技術力で役に立たない電子工作をしたり、B級映画のVHSテープを収集したりしている。

ブログ:http://man-sooon.tumblr.com/Twitter:@mansooon