アートと暮す湾岸エリアのアーバンリゾートマンション
新交通ゆりかもめ「有明テニスの森駅」から東に向かって歩くこと8分。2020年6月にオープンした商業施設「ショッピングシティ有明ガーデン」を右手に見ながら首都高の高架をくぐり抜けると、ガレリアグランデの威容が目に飛び込んでくる。
マンションの足元には、樹木やウォーターガーデン、デザイン性に富んだオブジェが設置された公開空地が広がっていて、都会にありながらリゾートにいるかのような開放感が感じられる。マンションの共用エントランスへは、ウォーターガーデン内に通された橋状の回廊を通ってアプローチするなど、趣向が凝らされている。
エントランスのある1階からコンシェルジュカウンターがある3階までは足元から天井部までガラス張りの吹抜けになっているため、開放感に富み、天気が良い日は特に気持ちがいい。1階ホールの奥にはラウンジがあり、自動演奏機能付きのピアノが設置されている。音楽を聴きながら庭園の景観を楽しむこともできる。
マンション全体にいえることだが、共用部には随所にアート作品が飾られていて、落ち着いた雰囲気の中にも華やかさが加味されている。実際、この内装に惚れ込んで入居を決める人も少なくないとか。
ガレリアグランデには各階のエレベーターホールなどにもアート作品が飾られている。まさに日常生活のなかでアートに親しめるわけだ。
デザインを重視する感覚はもちろん共用部にも息づいている。プールの天井は波型にデザインされていて、夜になると曲線に沿って間接照明が灯され、ナイトプールのような雰囲気になる。副理事長のJさんにとっては、このラグジュアリー感のあるプールも購入の決め手のひとつだったという。
最上階の27階にあるバーラウンジでは、金・土曜日は19時~22時30分、日・祝日は17時~22時の間で外部からバーテンダーを招くバーカウンターも営業している。
最上階からさらに階段をのぼると、屋上のスカイガーデンへつながっている。スカイガーデンは南国リゾート風の装飾で統一されていて、360度広がる湾岸エリアのパノラマ眺望を楽しめる。海を見ながらの日光浴や、都心を眺めながらのパーティーを楽しめるのは、ガレリアグランデの住人の特権だろう。
元ある美しさを取り戻す、「美化再生プロジェクト」を始動
ご紹介した通り、ガレリアグランデにはさまざまな意匠が凝らされているが、管理組合では「美化再生プロジェクト」を推進中だという。
マンションを訪れた取材班は、デザイン性に富んだ美しいマンションに感心しきりだったが、住人からすれば、ところどころに気になる箇所があるのだという。管理組合法人理事長のSさんが説明してくれた。
「象徴的なのが共用部各所の照明です。私が理事長になってから試しに全点灯させてみると、照明器具や電気回路が故障したまま気づかずに放置されてきた箇所が複数ありました。2011年の東日本大震災の際、節電のために間引き点灯を始めたそうですが、これを続けているうちに、敢えて消灯しているのか、ランプや照明器具が寿命を迎えているのかが不透明になり、そのまま放置されてしまっていたようなのです。照明に限らず、時間の経過とともに本来の姿から徐々に変わってしまい、本当に必要な手入れができていない部分があることが発覚しました」
ちなみに、取材時の理事長と副理事長の計3名は、いずれもここ数年で中古物件として購入・入居した“ニューフェイス”だ。
「ガレリアグランデの管理組合理事は輪番制で、2年で入れ替わりますが、半年ほど前に今の顔ぶれになったんです。会話してみると、3名ともこのマンションのデザイン性に魅力を感じて購入したことが分かり意気投合しました。一方で、新築分譲時からの入居者に話を聞いてみると、マンション内外の見栄えが損なわれてきたことに心を痛めている方も少なくないのだと分かりました。せっかく価値観を共有する3名が理事としてそろったのだから、大規模修繕を待たずに、気になる部分から手を入れていこうとなったのです」(副理事長・Kさん)
こうしてSさんたち理事は「美化再生プロジェクト」をスタートさせた。
まずはマンション全体をチェックし、気になる31カ所をピックアップ。その上で、各所の清掃や照明のLED化、植栽の植え替えなど、本来の美しい姿を取り戻すために手を施すべき方法も考えた。
「入居者の皆さんに美化の効果や意義を実感していただくため、共用部の鏡に付いた指紋をふき取るなど、効果を感じやすい清掃から着手しました。また、エレベーター内に新築分譲当時の写真を掲示し、本来のマンションの姿をアピールしました。その上で、照明などにも手を入れていったのです」(Sさん)
ルールや仕組みも柔軟に考え工夫を凝らす
先述の通り、ガレリアグランデには、プールやバーラウンジといった共用スペースもある。しかし、入居者のアンケート回答には、少数ながら「使われていないのであれば(管理費や修繕積立金を節約するために)閉鎖やサービスの縮小を検討すべき」という要望もあったという。
「バーラウンジへの子どもの出入りを制限する、プールにはレーンをつくりキャップ着用を義務付けるなど、後付けでさまざまな制約が加わっていったようです。これが、利用者の使いづらさにつながったのではと推測しています」(副理事長・Jさん)
使用頻度の少ない共用施設をどうするかは、多くのマンションで浮上している問題だ。ガレリアグランデの理事たちは、「使いやすい形での存続」を目指すという。
「共用施設が充実していることに魅力や資産性を見出している入居者も多いからです。例えばプールなら、スポーツクラブのようにストイックに泳ぎたい人もいれば、リゾートホテルのようにプカプカ浮かんでリラックスしたいという人もいます。単に制限するのではなく、用途に応じて利用時間を設定するなど、柔軟性のあるルール改正によって、より多くの人が親しめるようにすることが大切だと考えています」(Sさん)
また、Sさんをはじめ現在の理事会メンバーは、今後、理事の顔ぶれが変わっても「美化再生プロジェクト」が引き継がれていくよう、課題管理表を作成し、運用しているという。
「私たちが理事になる前も、各所を修繕しているはずです。しかし、どのような理由で、どこにどのような処置を施したのかが、記録として残っていませんでした。理事のメンバーは2年ごとに交代するため、記録に残さなければ、継続すべき課題も埋もれてしまいかねません。私たちももうすぐ任期終了のため、課題はリストアップして可視化・保管しました。また、課題管理表を作成することで、スムーズに引き継げるようにしています」
各入居者の「ここに永く住みたい」という気持ちを育む
Sさんたちは、既に紹介したエレベーター内の告知や広報紙を通じ、入居者に向けて「元ある美しい姿を取り戻す」というコンセプトを幾度も発信している。
「共用部のあり方にしてもその使用ルールにしても、“変える”となると抵抗感を抱く人が出てきます。しかし、“元に戻す”を基軸としているためか、今期の取り組みについてはおおむね共感を得られていると感じます。通常、管理組合に届く住人からの意見書には、暮らしのなかで感じる不満や改善要求が記入されていることが多いのですが、美化の取り組みを評価してくださるような応援のコメントも多く寄せられています。これは心強いですね」(Sさん)
新築分譲時から住んでいるという元理事のMさんは、この美化再生プロジェクトについて次のように話す。
「着々と新築分譲当時の姿を取り戻していて、“そうそう、もとはこうだったよね”と思い出させてもらっています(笑)。ぜひ頑張って継続していきたいですね」
一方で、Sさんは「美化は手段に過ぎない」と言う。
「究極の目標は、入居者全員に“このマンションに永く住み続けたい”と思っていただくことです。理事として、そのためにできることは、何でも積極的に取り組みたいと思っています」