自走式駐車場2棟を擁する個性派大規模マンション
分譲マンションの管理は本来、住人が主体となって行うもの。とはいえ、スタートしたばかりの管理組合には経験もノウハウもなく、主体的に活動できるようになるにはそれなりの時間が必要だ。
今回紹介するのは、竣工から14年を迎えた川崎市幸区の「ザ・ミレナリータワーズ」。2020年夏までに第一回目の大規模修繕工事が完了し、近年、理事会の活動が活性化。さまざまな取り組みを始めていると聞いて取材に伺った。
最寄駅はビッグターミナル川崎駅から2駅、JR南武線の矢向駅。隣の鹿島田駅、JR横須賀線新川崎駅も徒歩圏にあり、複数駅・複数路線が利用できる。矢向駅から歩くこと7分。20階建てのカラフルな建物は遠目にも目立つが、マンションの全貌を目の当たりにすると、そのスケールは想像以上のものだった。
「色遣いが個性的でしょう? 国民的人気アニメに登場するロボットに似ているという人もいます」と出迎えてくれた理事会メンバー。
なるほど、アニメのキャラクターに勝るとも劣らない迫力と存在感がある。総敷地面積は2.7万㎡超と、けた違いのスケール。けやき、桜、紅葉など約300本もの樹木と植栽が敷地を覆い、北側にはコの字型の住棟に囲まれるように自走式駐車場が配置されている。
聞けば、駐車場が決め手になってこのマンションを選んだ人も多いようだ。昨今は駐車場の空き問題を課題とするマンションが少なくないが、この自走式駐車場は一貫して高い稼働率をキープしているという。
「自走式で、しかも駐車場使用料は500円~3000円と周辺相場と比べて破格の安さ。管理組合としては、機械式の立体駐車場のようにメンテナンスに多額の費用がかからないのもメリットです。全戸分の用意をするため、新しい住人がいつ入居してもすぐに利用できるよう、数台分の空きを確保して運用しています」(ザ・ミレナリータワーズ管理組合・斉藤理事長、以下同)
巣ごもり需要をとらえた共用施設見直しプロジェクト
マンションは4つの住棟で構成され、エントランスから続くアプローチに共用施設が集まる。ラウンジ、ライブラリー、ゲストルーム、フィットネスルームなど多彩だが、特筆すべきは屋外の施設だろう。敷地西側の樹木が茂るガーデンに、キッズプールとバーベキュー広場が設けられている。
休日には4つのバーベキューサイトがほとんど埋まり、夏はキッズプールが子どもたちに大人気だとか。マンションに居ながらにして、アウトドアやリゾート気分が味わえるとはうらやましい。
とはいえ、人気のある施設ばかりではない。理事会ではコロナ禍の巣ごもり需要をとらえて、共用施設をもっと活用してもらおうと見直しプロジェクトを進めているそうだ。
「共用施設は設備維持に費用がかかり、利用されなければいずれ管理費につけが回ってきます。そうならないよう、利用価値の高い設備を導入し、利用者から費用回収できる仕組みとすることで、設備を永続的に維持できるようにしていくことを考えています。
例えば、フィットネスルームは機材を入れ替え、新たに卓球台を置く予定。これまでもダンスやバレエの練習に専用利用する方が多く、機材を充実させれば用途はさらに広がります。また、ラウンジはピアノ練習の目的で1日数組の専用利用があります。そこで講師に来てもらって教室を開いたらどうかなど、いろいろなアイデアが出ています」
シアタールームをもっと活性化しようと旗を振るのは副理事長の鉄橋さんだ。
「みなさんに楽しみ方を知ってもらおうと体験会を開催しています。私が入居した当時のシアタールームは、なんとテレビが1台あるだけ。がっかりしました。せっかく素晴らしい部屋があるのにもったいないと、理事会に参加して機材を充実させました。例えば、イベントの後にみんなで集まってその日のビデオ上映会をするとすごく盛り上がります。魅力を知って、どんどん使ってもらいたいです」(鉄橋さん)
立候補者の増加で自主的な理事会運営が始動
ザ・ミレナリータワーズ管理組合では、住人同士の接触機会を減らすためオンライン化を推進。理事会はZoomを活用し、ラウンジに集まるリアルなミーティングと併用して、ハイブリッド型で運営している。
「理事会メンバーは約30人。月1回の理事会は、約半数がZoomを利用して参加するスタイルがすっかり定着しました。理事会をできるだけスムーズに進めるため3役が事前に協議を行い、議事録を資料としてオンラインストレージに保存しておきます。
さらにSlackやTrelloなどのオンラインツールを活用することによって、ペーパーレス化を推進。従来の理事会では毎回、約100枚×30部という膨大な枚数の資料を用意していましたが、それが大幅に削減し、資料を準備する管理会社の手間も省けました」(斉藤理事長、以下同)
オンラインツールの導入により、メンバー間のやり取りがスムーズになり、議題の管理がしやすくなったとも。また、スマホやパソコンの利用に不安のある住人のために、IT関係を専門とする理事会メンバーが相談会を実施。自宅のWi-Fi環境が悪い、パソコンが重いなど、毎回何かしらの相談があるそうだ。
在宅勤務者の増加に対応していち早くキッチンカーを導入するなど、コロナ禍にあっても住環境の向上に積極的に取り組んでいる理事会。しかし、理事会活動が活性化してきたのはごく最近だという。
「理事の任期は1年で、輪番制と立候補者で構成されており、毎年8割~9割が初参加になります。立候補で理事を続ける人がいないと、なかなか知見が広がらず、継続性が課題でした。昨年までマンション管理士を入れて補完していましたが、ようやく経験者の立候補が増えて活動が活性化してきたので、今期からは理事だけで運営しています」
理事会では、初めて理事会に参加する人がすぐに慣れてもらえるようにと、「管理組合ガイドブック」を作成。事前に説明会も開くそうだ。
「理事会に力がついてきて、いろいろなことにチャレンジできる良い状態。これを継続していくのが目標です。理事会の活動を手厚くサポートしてもらっている管理会社にはとても感謝しています。管理会社との関係が良好であることも理事会が活性化している要因だと思います」
マンションと地域の良好な関係を支える自治会
ザ・ミレナリータワーズの総戸数は747戸。住人のコミュニケ―ションを担当する自治会の取り組みについてもお聞きした。自治会長は理事を兼務する上杉さんだ。
「毎年の恒例行事は、夏に同時開催する防災訓練と納涼祭。防災訓練には消防署からはしご車や煙体験ハウスを派遣してもらい、納涼祭にはかき氷や焼きそばの屋台も出ます。昨年と今年はコロナ禍のため防災訓練のみの実施ですが、毎年たくさんの参加があり、とてもにぎやかです」(上杉自治会長、以下同)。
ちなみに防災対策については、自治会と理事会が協力し、防災に関する専門委員会を立ち上げ、川崎市とも連携しながら防災体制の強化を検討中だという。
また、自治会と管理組合が連携して取り組むのが、マンション内のマナーの啓発だ。
「毎月テーマを変えてデジタルサイネージや掲示板で案内を徹底しています。騒音、喫煙、粗大ごみ等の問題は、どこのマンションにも共通の課題で、抜本的な対応は難しい。丁寧に案内を繰り返すことが必要です」
デジタルサイネージは現在の2台に加えて、各エレベーターホールなどに計8台を設置する予定。また、管理組合に寄せられる相談事や意見、対応など過去の事例をまとめてマナーブックを作成、配布する計画も進めている。
自治会は地域とのコミュニケーションも担う。地域のお祭りには近隣の町内会と合同で参加し交流を深めているそうだ。
過去には、地域の子どもたちのために提供公園の使用ルールを変更し、ボール遊びのできる公園にした実績もある。
「提供公園は当初、ボール遊びが禁止でした。私たち自治会は、子どもたちが思いきり遊べる公園にしたいと管轄する川崎市と交渉。周囲にフェンスとネットを設置して、半分をボール遊びのできるスペースにしました。管理も市と自治会が協力して行っています」
愛着あるマンションの暮らし心地を自分たちで上げていく
理事会と自治会を中心に暮らし心地を進化させているザ・ミレナリータワーズ。最後に理事会役員のみなさんに、住人の目線でマンションの魅力と住み心地を語ってもらった。
眺望が自慢だと話してくれたのは、13階に住む久原さん。
「マンション竣工後に市の規制が変わり、この地域には9階以上の建物は建てられません。おかげで上層階は周囲に視界を遮るものがなく、南向きのわが家からは横浜ベイブリッジやランドマークタワー、西向きの住戸は富士山が眺められます。爽快な眺めは何年住んでも見飽きることがありません」(副理事長・久原さん)
一戸建てから住み替えた上杉さんは、環境が魅力だという。
「マンションを数物件見たなかで、一番環境が良かったのがここです。敷地がゆったりとしていて緑が豊富。先に紹介した通り、ボール遊びができる提供公園も自慢です。すでに免許は返納しましたが、以前は毎日車に乗っていて、自走式駐車場も快適に使っていました」(自治会長兼理事・上杉さん)
子育て中の鉄橋さんと磯田さんは、子育て環境がいいと口をそろえる。
「うちは子どもが5人。駐車場が安いので、大きい車を買って家族でいろんなところに出かけるようになりました。楽しみにしていたのは共用施設で、大好きなバーベキュー広場は何度も利用しています。共用施設が多いと管理費が高くなりがちですが、3000人近い住人がいますから、当面は心配ないでしょう」(副理事長・鉄橋さん)
「子どもが生まれたのを機に入居し、今は小学生です。緑が多いのでちょっと敷地内を散歩するだけで気持ちいいし、バーベキューやプールも楽しめます。小・中学校が近く、幼稚園のバスもマンションの目の前で乗り降りすることができました。子育てには申し分ない環境です。川崎駅近くに勤務していた時は、健康のために徒歩で通勤していました。気持ちよく歩ける距離ですよ」(会計・磯田さん)
立地、交通アクセスが魅力だというのは斉藤理事長。
「駅に近い物件を探していて紹介されたのがこのマンション。新川崎駅へも歩けるし、バス停も目の前。東京・横浜へのアクセスが良いので、いろんなところに出かけやすいです。駐車場が安いのもうれしい。週末は車でラゾーナ川崎プラザ、トレッサ横浜、武蔵小杉など、いろいろ行き先を変えて楽しんでいます」(斉藤理事長)
みなさんが語ってくれたように、元々、多くの魅力を備えているザ・ミレナリータワーズ。管理組合が取り組むさまざまなチャレンジは、住人のマンションへの愛着がパワーになっていると感じた。今後は、ますます住みやすく、楽しめるマンションになりそうだ。
※2021年のイベント開催、共用施設の使用は新型コロナウイルス感染症対策のため上記の通りではありません。また、共用施設の使用料等については、取材日時点での情報となります