住人経営で成熟進む、富士山の見える絶景マンション

シャンボール第2目黒の外観

南西側の道路に面した外壁に彫られているのが、マンションの顔となっている約3×10mの巨大レリーフ
物件名:
シャンボール第2目黒
所在地:
東京都目黒区
竣工年:
1972年
総戸数:
39戸

関東の富士見100景に隣り合うヨーロピアンなたたずまい

春の桜と同様、富士山を見ると心が躍るという日本人は多いだろう。そんな富士山が自宅から借景として眺められたら、その住まいの魅力はワンランクupするはずだ。

筆者はこれまで多くの「富士山が見える家」におじゃましてきた。取材を始めた駆け出しの頃は「でも、いくら富士山でもいつも見ていると飽きてしまうのでは?」と思い、聞いてもみたが、まさにそれは“愚問”だった。すべての人から「季節、時間帯によって富士山の見え方はかなり異なる。ある意味二度と同じ姿はない。まったく飽きることはありません」といった答えが返ってきたものだ。

今回取材したシャンボール第2目黒も「富士山の見えるマンション」のひとつ。物件横には、国土交通省関東地方整備局が「関東の富士見100景」に指定する「東京富士見坂」があり、同マンションも絶好の富士山ビューポイントになっている。

ちなみに「シャンボール」は、かつての住宅デベロッパー・大蔵屋が、1960年代~70年代を中心に首都圏、関西圏で供給したマンションシリーズの名称だ。世界遺産のフランス・シャンボール城にちなんだネーミングともいわれている。シャンボール第2目黒の外観を見ると、鉄製のバルコニー、富士見坂の傾斜を活用した高い外壁のデコラティブな装飾など、なるほどヨーロピアンな趣だ。

シャンボール第2目黒の銘板

エントランス前にあるクラシックなマンション銘板

シャンボール第2目黒のバルコニー

リゾートホテルのような趣もある各戸のアイアンバルコニー

シャンボール第2目黒のエントランス前

エントランス前に敷き詰められているのはイタリア製の大理石

シャンボール第2目黒のエントランス

エントランスを入ると真鍮の手摺付き螺旋階段とシャンデリアが出迎える。ここの床もイタリア製大理石

シャンボール第2目黒の噴水池

螺旋階段下にはかつて小ぶりの噴水池があった。今も遺されているこのライオンの口から池に水が供給されていたそうだ

最寄駅はJR山手線・東急目黒線・東京メトロ南北線が利用できる目黒駅。駅周囲は駅ビルのアトレ目黒をはじめ、商業施設、スーパー、飲食店などが充実しており、便利かつにぎやかなエリアだ。

シャンボール第2目黒は目黒駅からわずか5分程の場所に立っているが、富士見坂の周囲は瀟洒なマンションや一戸建てが並んでおり、閑静な環境が守られている。マンション内での取材中には「ホ~、ホケキョ♪」とウグイスのさえずりが聞こえてきた。

取材に応じていただいたのは、管理組合で理事を務める3人の男性。物件の魅力を尋ねると、いずれも、目黒駅の利便性と閑静な住環境の共存、そして富士山ビューを挙げた。

シャンボール第2目黒の理事

取材に応じていただいた3名。左から長澤さん、片寄さん、廣瀬さん

在住約44年の片寄さんは、「買った当時は共働き。仕事に向かう方向はほぼ正反対で、移動時間や乗り換えなどの負担が大体同じくらいで済み、互いの通勤に便利な場所だった目黒で家を探しました。今も恩恵にあずかっていますが、本当、駅の近さは代えがたい魅力ですね」と話す。

在住約40年の長澤さんは、「山の手の城南地区の落ち着いた住宅街の風情と、山手線の目黒駅が使える便利さ、どちらも手に入るのが良いですね。それとやっぱり、富士山。毎年11月~2月には、富士見坂に、富士山頂に太陽が沈む“ダイヤモンド富士”を撮ろうと多くの人がやって来ますよ」
もちろん長澤さんもダイヤモンド富士の絶景を、毎年楽しみにしている一人である。

東京富士見坂

物件横の東京富士見坂。斜度15%(!)。この辺りから富士山がよく見える。この日は春霞で見えなかった……

東京富士見坂の銘板

坂の途中に設けられている「関東の冨士見100景」を示す銘板

そして、新築分譲時から住み続けている廣瀬さん。
「もう50年以上前になるわけですが、友人から『近くにマンションが建つよ』と聞いて興味を持ちました。富士山が見えるというのも魅力的でしたしね。
富士山の眺望や目黒駅の利便性は、片寄さん、長澤さん同様魅力的に感じていますが、加えて、現役で仕事をしていたころは渋谷で飲んで最終を逃しても、歩いて帰宅できるのが助かったな(笑)。また、近頃は、恵比寿ガーデンプレイス横の厚生中央病院、目黒川沿いの東京共済病院、都立広尾病院など大きな病院が近いことも心強く感じています」

東京富士見坂の眺め

東京富士見坂からの絶景(画像提供/廣瀬さん)

東京富士見坂の眺め

夕景も素晴らしい(画像提供/廣瀬さん)

目黒川

マンションから約100m南側を流れる目黒川。桜の季節にはクルーズ船も登場する(画像提供/廣瀬さん)

「自主管理」の歴史が住人経営の出発点に

2022年で築50年だが、メンテナンス状態は良く、近年竣工したマンションにはない、クラシックなたたずまいが魅力のシャンボール第2目黒。以前にも、理事、理事長などの立場でマンション管理に断続的に関わってきた皆さんに、過去~現在の管理について教えていただいた。
まず珍しいのが、かつて「自主管理」を行っていたということだ。

「30年くらい前でしょうか、諸事情から竣工時から委託していた管理会社との契約を終了することにしまして、管理組合が、管理会社選定、その当時住み込みだった管理人募集を行いました。新聞求人を打ったり、職安にも行ったりして探し、新たな管理会社、管理人を決めました。
ただ、自主管理といっても、住人自らが清掃やメンテナンスをするわけではなかったので、私たちの負荷は以前とさほど変わりませんでした。自主管理は約10年間続いて終了し、その後、縁あって現在の管理会社さんにお願いして今に至っています」(長澤さん)

「マンションの管理・運営は、住民・管理会社・担当の管理人の3つが一体とならないと上手くいかないと思っていて、現在は、この3つが良い状態で推移しています。
月曜~土曜まで通いで来てくださる現在の管理人さんが、実にキメ細やかに仕事をしてくれる人なので、非常に助かっていますね。適度な距離感で住人とのコミュニケーションも取ってくれるので、彼を通じてマンション内の要修繕箇所やそのほかの気づきなども寄せられ、理事会の検討議案にのぼることもあります」(廣瀬さん)

自主管理の経緯を経た後『理事会が主体となって、住人のためになることを考える』という姿勢が受け継がれるようになったとのこと。住人のために行った改革として、最初に挙げられるのが、マンションの資産価値維持に大きな影響を与える長期修繕計画だ。

「当初の大規模修繕工事の実行スパンは10年でしたが、修繕積立金の集金状態や、ハードの劣化がそれほど急に進まなかったことから、12年に延長しています。過去に一度、修繕積立金の値上げを行った際には、管理組合が主導して住人に根拠や将来のシミュレーションを説明し、合意を得ました。来年には第4回目となる修繕工事を行う予定です」(廣瀬さん)

シャンボール第2目黒の共用物干し場

屋上には住人専用の共用物干し場がある。布団干しなどに使う住人が多いとのこと

シャンボール第2目黒は1972年竣工。1981年以前の建築で、旧耐震基準のマンションだ。築50年ということで、建て替え議論が起きていないかを聞いてみた。

「2011年の東日本大震災では目立った被害はありませんでした。大規模修繕工事前の調査では、建物自体は未だ老化が進んでいないことが確認できたので、現状は丁寧にメンテナンスを続け、存続させることで総会は一致しています」(片寄さん)

共用部分の更新でレトロモダンな暮らしを実現

改革の2つめとして教えていただいたのが、ゴミ集積場の新設だ。

「以前は回収日の朝に、各戸から出てきたゴミ袋をエントランス付近の公道にまとめて出していました。しかしいつしかカラスが集まるようになり、ゴミが散乱する始末に。富士見坂の美観を壊すことにもなり、これはまずいということで、およそ10年前に専用の集積場を設置しました。出入りはボタン開錠で、完全に屋外からシャットアウトされる構造。壁部分には小さな穴が無数に空いているパネルを使っており、臭いがこもらない工夫もしています。おかげでゴミの散乱問題は解決しました」(廣瀬さん)

シャンボール第2目黒のゴミ集積場

新設されたゴミ集積場

シャンボール第2目黒の外観

写真右下に見えるのがゴミ集積場。外観と一体化している

外壁と色を合わせた白い外観のゴミ置き場は、一見それと分からないほどマンションと一体化している。管理規約で回収日当日の朝のみにしか出せないルールにしたが、住人からさしたる不満は出てこなかったそうだ。何より、ゴミがカラスによって散らかされなくなったことが歓迎されたという。

そして改革の3つめは、昨年、空き駐車場を別用途に変えたこと。1台分を駐輪場にしたのだ。
「駐車スペースが1台空いたのですが、応募が無かったので、各々の駐車スペースを少し広げ、なおかつ、駐輪場のほうが長年飽和状態だったため、空いたスペースを新規の駐輪場にしてはどうか、ということを考えました」(長澤さん)

駐輪場に転用するにしても、ルールなしで、ただ並べるだけでは見た目が美しくない。そこで自転車を固定して駐輪できるサイクルラックの導入を決め、管理会社に複数の業者をピックアップしてもらった。

「その後は理事会で自ら動きました。空き区画のサイズを測定し、最も台数が多く、効率的にラックがレイアウトできるパターンをシミュレーション。結果、ひとつの業者に絞って購入し、業者さんに空き駐車区画の上にボルトで固定してもらいました。駐輪場1台分の料金は値上げしたのですが、住人アンケートを取ったところ使用を希望される方は多数いて、15台分がすぐ埋まりましたね」(片寄さん)

シャンボール第2目黒の駐車場

マンション南西側の平置き型駐車場

シャンボール第2目黒の駐輪場

左端が空き区画となり、このようにサイクルラックを設置して駐輪場に用途変更した

これまでの改善では、ほかにも住人の声を参考に、玄関ドアや複層ガラスへの交換、エントランスの自動ドア化、防犯カメラ設置など、適切なタイミングで共用部分をアップデートしてきた。清潔でクラシックな外観を維持する一方、快適で安全な生活を送れる機能で進化させ、レトロモダンな暮らしを実現している。

次世代にバトンを渡し、さらに魅力的なマンションに

現在、理事会は7名で構成。今回お話をうかがった3名のほか、もう1名理事を加えた計4名はほぼ固定されたメンバーという。残りの3名は輪番制で選ばれ、任期は2年となっている。

「管理規約を変えて、この理事構成の仕組みを導入したのは昨年です。先ほど申し上げたとおり、来年2023年に控えている大規模修繕工事に向け、これまで長くシャンボール第2目黒の管理に携わってきて、知見をもっている我々がオブザーバー的な役割を担って、できるだけ住人のためになる方向性を提案したほうが良いだろうということで、この理事構成としました」(廣瀬さん)

一般的なマンションの管理組合と比較すると、この変則的な理事構成が実現するのは、シャンボール第2目黒の総戸数39戸という規模にひとつの要因がある。従前は7階までの各フロアから1名ずつ理事を選んでいたため、このマンションには理事経験者が多い。賃貸も含めて全住人がほぼ顔見知りであり、意思疎通はしやすい環境である。総会でも意見交換は活発だという。

ここ数年では、保育園児、幼稚園児や小学校低学年のお子さんを育てているファミリーの入居が目立ってきており、住人の年代が幅広くなっている印象があるとのこと。今の理事会の取り組みが次世代に引き継がれ、シャンボール第2目黒がさらに魅力を増していくことに期待したい。

シャンボール第2目黒の外観

急斜度の坂に立っているため、エントランスは2階に位置している

シャンボール第2目黒のエントランス前

エントランス前には毎年GW頃に見ごろを迎えるつつじが(画像提供/廣瀬さん)

構成・取材・文/保倉勝巳 撮影/一井りょう

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