珍しい“黒湯”の天然温泉付設!「マナーブック」でソフトの充実も目指す

東京サーハウスの外観

東京サーハウスには誰でも散策が愉しめる芝生敷きの公開空地が隣接している
物件名:
東京サーハウス
所在地:
東京都大田区
竣工年:
2003年
総戸数:
758戸

銭湯密集地帯・大田区ならではの特別な共用施設

いきなり個人的な話で恐縮だが、筆者はマンション住まいだ。自宅の浴室もそれなりに快適なのだが、たまに広い湯船に浸りたくなり、近所の銭湯へ出かける。

そして、いつ行っても銭湯は裏切らない。熱い湯に身を沈めると、首や肩の凝りがじわりとほぐれ、やがて全身の筋肉が緩んでいく。広大な空間は実に開放的で、心身ともにリラックスできる。これはやはりマンションでは決して味わえない――と思っていたのだ、ここを取材するまでは。

それが、東京サーハウスである。

東京サーハウスの敷地内

敷地内には水と緑が配された美しいランドスケープが広がる

このマンションが立つ東京・大田区は、実は都内最多の銭湯密集地帯。大田区などの臨海部周辺には、淡褐色や黒褐色の「黒湯(くろゆ)」と呼ばれる温泉が広く分布し、古くから区内の銭湯に利用されてきた。東京サーハウスも土地の恩恵に預かり、共用施設棟「コモンハウス」内に黒湯の天然温泉を備えている。

ちなみに黒湯は、メタケイ酸や炭酸水素塩類(重曹)などを含む25度以下の温泉で、大昔の海水を由来とする「化石水」とのこと。天然温泉の撮影時、お湯のなかに手首あたりまで沈めてみると、指先が見えなくなるほどの濃い黒褐色だった。筋肉、関節の慢性的な痛みやこわばり、冷え性、胃腸機能の低下などなど多様な症状に効能があるそうだ。素晴らしい。

東京サーハウスのエントランス

エントランスオートロックを抜け、共用施設棟「コモンハウス」に入って行くと…

東京サーハウスにある黒湯の天然温泉

うわさの黒湯の天然温泉に到着!

東京サーハウスの黒湯

いかにもカラダに良さそうな色合い

東京サーハウスの露天風呂

露天風呂もある

東京サーハウスのフィンランド式サウナ

フィンランド式サウナも設置

東京サーハウス管理組合の副理事長が教えてくれた。

「やはり何と言ってもこの黒湯の天然温泉が、ウチの特徴です。24時まで営業しているので平日でも入れますし、土日は10時から開いているので、まだ日が高いうちにひと風呂浴びられるのも贅沢です。露天風呂もあるんですよ」

もちろんこの温泉は多くの住人にとってお気に入りの施設。顔見知りが多いことがある意味“抑止力”となって、モラル、マナーは良く守られていると思います、と話す住人もいた。

さらに温泉に隣接してウォーキングやアクアビクスなどにも活用されている、アクアウェルネスプールもある。一般的なスポーツクラブに比べても遜色ない充実ぶりだ。

東京サーハウスのアクアウェルネスプール

こちらがアクアウェルネスプール

住人の要望でフレキシブルに共用施設ルールを見直す

ただ、温泉、アクアウェルネスプールと大量に水を使う施設を備えていることは、管理には相当の負荷がかかるはずだ。理事長は、

「衛生面、水質、水温、ポンプ施設、脱衣場、浴場内などのメンテナンス、点検などチェックすべき項目は多いですね。実際の作業は専門業者さんにお願いしているわけですが、理事会ももちろん留意しています」

まさに天然温泉を備えるマンションの管理組合だからこその“仕事”だ。

「天然温泉のほかにも共用施設内には、和・洋のゲストルーム、ライブラリー、カフェラウンジ、大小の会議室ハウスホール、サウナ、アクアウェルネスプールなど多彩な施設が集積しており、たくさんの住人の皆さんが利用されています。お互い気持ち良く、フェアに使うための運用や、要望に対する使い方ルールのアレンジなども都度行っています」

コロナ禍においては、一旦全施設の利用を休止したが、都の感染防止ガイドラインに沿って徐々に再開した。

「理事会は月に1回の開催で、それを待っているとスピーディーに判断できないので、理事長と4名の副理事長の計5名でつくる理事会執行部に一任してもらい、再開を決めました。1台間隔を空けてランニングマシーンを使う、サウナ内でもディスタンスに留意していただくなどのルールを設けて、利用してもらっています」

東京サーハウスのフィットネスジム

朝6時から使えるフィットネスジム。出勤前にひと汗流す人も多い

東京サーハウスのシアタールーム

シアタールームはソフトを持ち込んでの映画鑑賞に加えて楽器演奏なども可能

理事会のフットワークの良さも後押しして、コモンハウスは再び住人コミュニティを育む場として機能し始めている。

イベント・行事の開催、3.6万㎡の敷地も住人交流を促す

さて、東京サーハウスのコミュニティといえば、もうひとつ欠かせないのが自治会、理事会が共催する季節のイベントだ。ほとんどが竣工以来続いているそうで、10数年の歴史がある。

餅つき、七夕、夏休みのラジオ体操などイベントの種類は多様で、なかでも盛り上がるのが夏祭りとのこと。敷地のほぼ中央にある水盤に囲まれた円形広場での歌手のコンサートや、ビール、焼きそばなどの屋台といった催し物で盛り上がり、毎年楽しみにしている人も多いそうだ。

東京サーハウスの餅つき大会

東京サーハウスのお正月の風物詩、餅つき大会(画像提供/東京サーハウス自治会)

東京サーハウス内のコロシアム風の広場

夏祭りのコンサート会場になるコロシアム風の広場。中央の円形舞台に歌手が立つ。右はコモンハウス

東京サーハウス内の桜の木

広場の周りは桜の木に囲まれている(画像提供/東京サーハウス自治会)

東京サーハウスでの「納涼の夕べ」の様子

「納涼の夕べ」のひとコマ。コロシアム底部の円形舞台がステージに(画像提供/東京サーハウス自治会)

東京サーハウスでのフリーマーケットの様子

フリーマーケットも開催。住人数が多いため、品ぞろえ豊富だ(画像提供/東京サーハウス自治会)

ある住人は、

「ひとつのマンション単位で、あんなにスケールの大きな行事が行われることに最初は驚きました。いまでは自分もお手伝いをする側に回っています」

また、他の住人からはこんな声も。

「もちろん、そうした行事のおかげで良い雰囲気のコミュニティができていると思うんですが、ここの広々とした敷地内の環境も手伝っていると思います」

東京サーハウス内の芝生広場

敷地内には芝生広場、散策路が広がる

東京サーハウス内の植栽

敷地内には樹々、植栽も豊富。緑越しに見える住宅棟が美しい

東京サーハウスでのラジオ体操

夏休みの朝には広大な敷地のスケールを活かしてラジオ体操を開催(画像提供/東京サーハウス自治会)

確かに東京サーハウスは非常に大きな規模のマンションであり、総敷地面積は約3万6000㎡。そのうち約73%がオープンスペースだ。中庭の芝生広場には一般の公園のようなジャングルジムなどの遊具が点在し、子どもたちが集まれる場所に事欠かない。それらの場所で、同じマンションに暮す子ども同士が友達になり、自然に付き合いの輪が広がっていくのだという。

親としても、敷地内の目の届きやすい範囲で遊んでくれているのなら安心できるだろう。マンション内の子どもは学年の上下に関係なく、友達になるケースが多いそうだ。そして、子どもがつくった輪を介して、親同士も交流するようになる――東京サーハウス流のコミュニティの育み方だ。

分かりやすさ重視の「マナーブック」で快適マンション暮しを

特別な共用施設、イベントや行事、そして広大な敷地。こうした要素によって、今後、東京サーハウスでの暮しの満足度はさらに向上していくだろう。

理事会では、それをさらに促し、盤石にするために、こんな取り組みを進めている。理事長が説明してくれた。

「ふたつの取り組みを進めています。まずひとつ目は防災に関する調査、検討です。2019年の台風19号によって多摩川の水が危険水域まで上昇しました。このマンションは、多摩川土手が目前の場所に建っています。幸いなことに水が土手を越えて敷地内に流れ込むことはなかったのですが、しかし、今後はどうなるか分かりません。

そこで、万が一、水が土手を越えた場合、どのように水が浸入してきそうかを予測するため敷地内外の高低差を測定。勾配の具合に応じて止水板、防水扉などの設置を検討し始めています」

そしてもうひとつは、全758戸に暮す、2千数百~3000の住人が快適な時間を送るための指針づくりだという。

「それが“マナーブック”の制作です。共用部分の無断使用や騒音、駐輪などのトラブル発生を未然に防ぐために遵守していただきたいことを言語化します。

東京サーハウスのマナーブック

マナーブック表紙。全戸に配布される(画像提供/東京サーハウス管理組合)

ただし、制作当初、載せるべきことを忠実に書いていたら、気が付くと管理細則をほぼそのまま書き写してしまっていました(笑)。非常に文字が多く、このままでは読みづらそうだと感じたので、方針を転換して、イラスト、箇条書きなどを用いて、子どもから大人まで誰にとっても分かりやすい内容に修正しました。

正直、印刷代などコストはそれなりにかかります。でも、ソフト面を充実させることは、ゆくゆくは資産価値の向上につながるはず。意義のある取り組みだと考えています」

マナーブックは、来期以降、現住人はもちろん、これから入居するすべての世帯に配布予定とのこと。この冊子もまた、東京サーハウスの財産となって、将来に引き継がれていくのだろう。

東京サーハウスの外観遠景

多摩川の対岸、川崎市側から板状の外観を望む。ここに住み始めてから土手のジョギングコースでランニングを始める人も多いとか

※2020年のイベント開催は新型コロナウイルス感染症対策のため上記の通りではありません。今後の開催は未定です

構成・取材・文/保倉勝巳 撮影/相馬ミナ

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