
2018年に、購入してから6年たった東京都東村山市のアパートを売り出したHさん。反響は予想以上に大きく、初日から問い合わせが殺到します。購入希望者はすぐに現れましたが銀行の融資が下りず、話が白紙に戻ること2回。あまり粘らず早く売ろうと方針を変更したといいます。
| 不動産区分 | アパート一棟 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都東村山市 |
| 築年数 | 31年 |
| 間取り・面積 | 土地面積…約148m2 延床面積…約103m2(16.5m2×6室) |
| ローン残高 | 約1000万円 |
| 査定価格 | 約3000万円 |
| 売り出し価格 | 3100万円 |
| 成約価格 | 2950万円 |
所有期間5年超のタイミングで売却を計画
埼玉県在住のHさんが、所有していた不動産を売却したのは2018年のことです。物件は、東京都東村山市にある築31年の木造アパート。6年前に物件を購入したときから、売却を考えていたそうです。
「賃貸用の不動産を売却する場合、所有期間によって譲渡所得にかかる税金の税率が変わり、所有期間が5年を超えると税率がグッと下がります。そもそも私の物件は築年数が古く、建物を維持管理していくにはそれ相応の費用がかかり、このままアパート経営をしても利益はあまり見込めません。ですから長く所有する気はなく、購入から5年を目途に手放そうと考えていました」
Hさんの物件は、最寄駅から徒歩5分の住宅街に立地。エントランスにオートロック設備を備え、女性専用アパートとして賃貸していました。
「アパートは6部屋あり、いずれも広さは16.5m2。大きな特徴は防音仕様になっていることで、入居者は近隣にある音楽大学の学生さんなど、楽器を演奏する人ばかり。ありがたいことに、毎年、大学が新入生向けに発行する冊子に学校の推薦物件として掲載してもらえたので、入居者募集に苦労することはありませんでした」

Hさんは、購入時に返済期間15年のローンを組み、残債が1000万円ほどあったといいます。
「早めに手放そうと考えていたので、いくらぐらいで売れそうか常にチェックしていました。周辺相場が上がってきていたのも、このタイミングで売却しようと決めたひとつの理由です」
相談相手の知人が営む不動産仲介会社に仲介業務を依頼
Hさんはアパートの売却について、早い時期から知人に相談していたそうです。
「私の地元の埼玉県で不動産仲介会社を営む、長い付き合いの知人です。さすがプロは情報が早いし、市場の動向にも詳しい。所有期間が5年を過ぎた頃から、その知人に市場の状況を聞きながら、売り出しの時期を探っていました。ですから物件を売り出すに当たっては、迷わず彼が経営する不動産仲介会社に仲介業務を依頼しました」
2018年1月、Hさんは知人の不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結びました。
「売り出し価格は、不動産仲介会社のアドバイスに従って、周辺相場より少し高めの3100万円にしました。購入時の価格が2100万円ほどだったので、相場はかなり上がっていましたね。当時は投資用の不動産を買いたい人がたくさんいたので、タイミングは申し分ない。それほど時間をかけずに売れるだろうと考えていました」
不動産仲介会社から提案された売却活動は、レインズ(REINS)への登録のみ。それだけで十分に反響があると予想していたそうです。
ちなみにレインズとは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営する不動産情報ネットワークシステム。会員の不動産会社が物件売却情報を広く共有し、契約相手をスピーディーに見つけるためのシステムです。
購入希望者は融資が下りず、法人への売却を検討
2018年2月、Hさんの物件は3100万円で売り出されました。不動産仲介会社はHさんの物件情報をレインズに登録。すると、初日から20件もの問い合わせがあったといいます。
「とにかく反響の大きさに驚きました。物件を見ないですぐ買いたいという話もあったくらいで、私たちが想定していた以上に投資用物件の市場は過熱していたようです。たまたまリフォーム中の部屋があったので内見にも対応し、20組ほどの購入検討者が内見に来ました。レインズの情報を見て、外観だけ確認に来た検討者も相当数いたのではないでしょうか」
問い合わせが殺到するなか、売り出し価格で買いたいという購入希望者がすぐに現れました。
「ところがローンの審査が通らなかったんです。不動産投資が過熱していたうえ、某銀行の不正融資問題など、トラブルの余波を受けて銀行が融資を渋り始めた時期だったようです。次の購入希望者も同様に銀行の融資が下りず、売買契約は白紙に戻ってしまいました。ローンの審査にそれぞれ3週間ほどかかり、思いのほか時間を取られたという感じです。
ローンの審査結果を待つ間も、1日に10件ペースで問い合わせがあり、不動産仲介会社は対応に追われていました。アパート経営の収支についての詳細な資料がほしいといった問い合わせには私が対応しており、とにかく忙しかったですね。もちろん高く売りたい気持ちもありましたが、あまり粘らず早く決めたいという気持ちのほうが強くなっていました」
そして、売り出しから2カ月がたった頃、購入を希望する法人が現れたといいます。
「ある不動産会社が2850万円で購入したいと言ってきたんです。さすがにそれでは売れないと一度は断わりましたが、交渉の結果2950万円で合意し、売却することにしました。2018年3月中旬に交渉がまとまり、4月に契約。7月末に物件を引き渡しました」
物件、知人、タイミングなどいろんな意味でラッキーだった
売却活動全体を振り返って、Hさんは「ほぼ満足しています」と答えてくれました。
「いろんな意味でラッキーだったと思います。まず、当時は市場が過熱していたこともあり、ほぼ思い通りの価格と期間で売れたこと。次に、不動産仲介会社を営む知人がいたので売るまでのプロセスに苦労がなかったこと。何より、物件の条件がよかったと思います。築年は古いものの、駅から徒歩5分の立地で、入居者も安定していた。もし、これが駅から徒歩20分かかる物件だったら、こうはスムーズに売れなかったでしょうね」
また、コロナ禍になる前にすべてが済んでよかったとも。
「もし売却時期がずれていたら、入居者の募集活動に影響があったと思います。アパート経営は予想していた以上に手間がかかったので、物件を手放してスッキリしました」と笑って話してくれました。
| 2018年1月 | ・知人の不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ |
|---|---|
| 2018年2月 | ・3100万円で売り出し ・購入希望者が現れるが、銀行の融資が下りず契約に至らないことが2回続く |
| 2018年3月 | ・購入希望の法人が現れる ・交渉の結果2950万円で合意 |
| 2018年4月 | ・売買契約を結ぶ |
| 2018年7月 | ・物件の引き渡し |
まとめ
- 売却が前提であれば、早めに不動産仲介会社に相談して情報収集を。
- 価格と期間、どちらを優先するかは状況に応じて柔軟に考えよう。
- 買い手が法人であればローン審査はなく、契約までがスムーズ。前向きに検討しよう。
取材・文/小宮山悦子 イラスト/石山好宏


