
親から相続した土地と、離婚時に財産分与した一戸建てをこの2年間で次々と売却したKさん。「売れないかもしれない」と心配していた不動産を全て売却できて、気分もすっきり。老後の蓄えができてとても安心したと言います。
| 不動産区分 | A…一戸建て B…土地 |
|---|---|
| 所在地 | A…愛知県豊橋市 B…静岡県浜松市 |
| 築年数 | A…約33年 |
| 間取り・面積 | A…土地162m2+延床面積127m2(豊橋市) B…土地63m2(浜松市) |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | ‐ |
| 売り出し価格 | A…1000万円(豊橋市) |
| 成約価格 | A…850万円(豊橋市) B…345万円(浜松市) |
賃貸に出していた一戸建ての売却を決意したが、「50戸連たん」制度の壁に困惑
愛知県豊橋市に住むKさんは、4年前に離婚した際、中古の一戸建てを財産分与で取得。その後は家賃7万5000円で賃貸に出していました。
ところが2020年6月、入居者から浄化槽が壊れたという知らせがあり、調べたところ修繕に100万円必要なことが判明しました。
「築33年にもなる古い家だけに、今後、入居者が変わるたびに屋根や壁などいろいろな所にリフォーム費用がかかることを考え、この際売却しようと決めました」
そこで、賃貸の仲介を依頼していた不動産会社に「売りたい」と相談を持ちかけたところ、驚きの答えが返ってきたと言います。
「『市街化調整区域なので売るのは大変。“50戸連たん”という制度があるから、自分で現地を歩いて調べてください』と仲介会社から言われたんです」と、思い出すのも悔しそうに語ります。
市街化調整区域とは、無計画な市街化を抑制するために定められている土地で、建物の建築や増築・改築にも厳しい制限がかかります。「50戸連たん」とは、市街化調整区域における建築物の許可制度のこと。
50戸以上の建築物が近接している地域で、基準に適合する区域であれば、市街化調整区域であっても建物を認める制度です。
「調査なんて自分でできるわけありません。でも、賃貸に出しても家賃より修繕費が重みそうだし、もし売れなければ、固定資産税をずっと払い続けなければならない状況です」
“50戸連たん”という耳慣れない制度や、仲介会社の「売るのは難しい」という言葉に困惑したKさん。制度の対象となるかどうか、行政や専門家に相談、調査を依頼するなど、専門的な知識が必要となるところです。
友人から「気にせず違う不動産仲介会社に頼んでみたら」とアドバイスを受けましたが、「すっかり弱気になってしまい、できなかった」と当時を振り返ります。
知人から購入希望があり、売り出しから2カ月のスピード契約に
「売れないかも知れない」と不安を募らせているとき、Kさんの遠縁に当たる人から家を買いたいという連絡が、仲介会社を通じて入りました。
「市街化調整区域とはいえ、家自体は出窓のあるしゃれた雰囲気。駅から徒歩5分と利便性もいい場所です。地元の地縁をよく知っている仲介会社が声をかけたようです。最初、仲介会社は1000万円で話をもっていきましたが、結局850万円での売却となりました」
“50戸連たん”という建築許可の問題があったにもかかわらず、売却を希望して約2カ月後には買い手が見つかるスピード契約となりました。
「縁がある人が買い取ってくれて、本当に良かったです。この辺りは坪単価32万円程度で販売されていますが、売ったのは坪単価17万円。古家が付いていたので、買い手に解体費の負担がかかるため、安くなったのかも知れません。いくらであっても売れたから満足です」
■市街化調整区域
市街化調整区域とは、農地や緑地の保全が優先され、原則として農業用などの例外を除き、新たに建物を建てにくい地域。建て替えや中古住宅を購入して増改築する場合も、基本的に自治体の許可が必要となります。市街化調整区域の物件は売却しにくいと思いがちですが、Kさんのようにうまく売却できるケースも多々あります。自治体によって、条例で市街化調整区域でも開発許可が出ているケースもあるので、担当部署に確認しましょう。
親から遺産相続した土地を売却。持っている不動産をすべて現金化
同じ年の9月、今度は15年前に父親から遺産相続した静岡県浜松市の土地も売却しました。
「親族の3人で相続した土地で、私が相続したのは庭の部分です。庭石や木があるので、造成して売ろうとしたところ、隣の人が『駐車場が欲しいから庭を広げたいので購入したい』と不動産会社を通じて言ってきたので、昨年、すでに庭の一部を隣家に売却していました」
そのときは、54m2を343万円で売却。今年は残りの土地も売ってしまおうと、同じ不動産仲介会社に売却希望を伝えました。
「その不動産仲介会社はとても親切でした。ここも市街化調整区域で、バスが1時間に1本程度しかなく、便利とはいいがたい場所ですが、『だからといって売れないということはないので、安心してください』と言ってくれたので、不安は全く感じませんでした」
利便性に劣る反面、海からも山からも離れていて、津波や崖崩れの心配が少ない場所。災害の被害が少ないことで、近年、人気が高まっているエリアだそうです。
購入希望者は3組ぐらいあり、その都度、担当者から報告がありました。
売却額は信頼していた担当者に一任。粘り強い売却活動のかいあって、残っていた庭の一部63m2を345万円で売却する契約が成立しました。
不動産会社は浜松市、Kさんの住まいは豊橋市と離れていましたが、
「書類等はゆうパックを使って送ってくれました。実際に会って手続きしなければならないときは、車を走らせて来てくれました。同じ不動産仲介会社でも対応が大違いだと思いました(笑)」

老後の蓄えができて大満足です
複数の不動産を所有していたKさん。昨年、全ての売却を終え、「気分的にすっきりしました」と笑顔を見せます。
「最初は、全く知らなかった制度に困惑し、不動産仲介会社の言葉に嫌な思いもしましたが、いい勉強になりました。反省点は、不動産仲介会社に誠意を感じなかったり、自分に合わないと思ったりしたら、違う会社に変えるべきだったこと。地元の会社で祖父の知り合いだったこともあり、古い付き合いを裏切ってはいけないと思ってしまいました。でも、ビジネスなのですから、こちらも割り切ったほうが良かったんです。今は老後の蓄えもできて、とても満足しています」と語ってくれました。
| 2020年6月 | ・賃貸に出していた豊橋市の一戸建ての売却を決意 ・不動産仲介会社に売却を依頼 ・市街化調整区域のため50戸連たん制度の調査が必要と知る |
|---|---|
| 2020年8月 | ・1000万円で売り出し ・850万円で売却 |
| 2020年初旬 | ・父親から遺産相続した浜松市の土地の売却を不動産仲介会社に依頼 |
| 2020年9月 | ・345万円で売却 |
まとめ
- 「不動産会社に誠意がない」と感じたら、途中からでも違う会社に変更するほうがベター。
- 遠方からでも不動産売却は可能。信頼できる不動産会社を見つけることが大事。
- 不動産の専門知識が必要なときは不動産会社や専門家に相談しよう。
取材・文/浅野真由美 イラスト/めんたまんた


